精神的虐待を繰り返していた夫と熟年離婚を成立させた妻Kさん
解決方法:調停
子どもあり (1人)
離婚を切り出した
サポート無 | サポート有 | 利益 | |
---|---|---|---|
離婚 | ×不成立 | ○成立 | – |
財産分与 | 0円 | 150万円 | 150万円 |
婚姻費用 | なし | 月額5万円 | 月額5万円 |
年金分割 | なし | 50% | 50% |
Kさんは、夫と昭和50年に婚姻し、子ども1人を授かりました。
ところが、Kさんは、婚姻後、夫から日常的に暴言等の精神的虐待を受けていました。
例えば、Kさんがたった一度だけ寝坊したとき、夫はひどく怒鳴ったことがありました。
Kさんはそのことが忘れられなくて、それ以降朝5時前には目覚めるようになりました。
また、Kさんは夫に怒られるのが嫌だったため、十分に睡眠も取られなくなりました。
また、夫は、Kさんの目の前で、他人に「こいつはバカだから一緒になった。」などと発言していました。
Kさんが夫に少しでも何か言うと、夫は「口答えするな!」と怒鳴りつける始末でした。
その後、夫のKさんに対する暴言は頻度が増すようになり、Kさんが作る食事に対してまで愚痴を言い、Kさんに暴言を吐くようになりました。
このような虐待が続いたため、Kさんは、精神的に追い詰められ、数年前から心療内科を受診するようになり、不安神経症と診断されました。
そんなある日、Kさんは、両手首を骨折する怪我を負いました。
ところが、夫は、痛みもあり、ギブスをしたKさんに対して、いたわるどころか、「流し台の下を片付けておけ。」「埃がたまっているから掃除機をかけろ。」などと言って家事を強制しました。
Kさんはこのような生活に耐えきれなくなって、東京都内の娘夫婦の自宅に避難するという形で夫と別居しました。
そして、心療内科を受診したところ、うつ病と診断されました。
心配した娘夫婦が弁護士に相談し、依頼することになりました。
財産の状況
Kさん
不動産500万円(亡父からの相続財産)、預貯金約10万円 生命保険約110万円
夫
自宅約1300万円、預貯金約70万円、生命保険約70万円
弁護士は、夫に対して、協議離婚の申入れを行いました。
また、Kさんや娘夫婦が夫のことを極度に恐れていたため、夫に対して接触禁止を申し入れました。
しかし、夫は、娘婿に電話を掛け、娘婿に対して、脅迫的な発言をするなどしました。
そこで、弁護士は、二度と接触しないよう警告書を出しました。
また、夫が離婚には応じないと言い張ったため、離婚調停と婚姻費用請求の調停を申し立てました。
夫は、弁護士に依頼し、弁護士を通じて離婚には応じない、仮に離婚に応じないとしても年金分割には応じないなどと主張しました。
これに対して、弁護士は、離婚に応じた方が夫にとっても得であることを具体的に書面等で説明しました。
すなわち、本来であれば、夫が自宅を取得する場合、Kさんは、財産分与として、600万円程度を受け取れる権利があるところ、早期に離婚が成立することを条件に財産分与は100万円でよいという条件を提示しました。
それでも、夫は、年金分割に応じないなどと強行に主張しましたが、粘り強く交渉した結果、夫は観念し、離婚に応じました。
離婚調停では、年金分割として50パーセントを要求しました。
それでも、夫は、年金分割に応じないなどと強行に主張しました。
そこで弁護士は年金分割が公的な権利であり、Kさんは、専業主婦であっても50パーセントの分割を受けることができること、仮に、訴訟へ移行した場合、50パーセントの分割が認められることなどを主張した結果、年金分割に応じました。
本件では、Kさんは、経済的利益よりも、早期に離婚を成立させることを強く希望されていました。
そのため、訴訟へ移行することなく、調停段階まででなるべく早く離婚を成立させることを最優先させました。
熟年離婚の場合、高齢による判断能力低下等が見られる場合があります。
このような場合、相手方を説得するには、離婚に応じるメリットがあることを、具体的に、かつ、わかりやすく説明する必要があります。
また、本件では、Kさんは、東京の娘夫婦のもとに避難されていました。
またKさんは、体が悪いく、歩行することもままならなかったため、福岡にある当事務所までわざわざお越しいただかずに、打ち合わせはすべて電話等で行いました。
調停についても、基本的には代理人弁護士だけが出席し、Kさんは、最後に離婚調停が成立するときだけお越しいただきました。
なお、今回の事案のようなモラハラ夫について、くわしくは当事務所のDV・モラハラサイトをご覧ください。
相手方が婚姻費用を支払ってくれない場合、家庭裁判所に対して婚姻費用の調停を申立てることが可能です。
この調停において、相手方が婚姻費用を支払わないと強硬に主張した場合、調停は不成立となりますが、その場合、審判へ移行し、家庭裁判所の命令で婚姻費用の支払いが命ぜられます。
ただ、通常は調停段階で相手方の説得が可能ですので、審判に移行することは希です。
この婚姻費用の調停は、離婚調停とは別の手続です。
そのため別個に申し立てる必要がありますが、通常は同時に進行させることが可能です。
つまり、離婚調停と同じ期日に婚姻費用についても話し合うことが可能です。
そして、婚姻費用は、当事者の生活費であることから、離婚問題よりも、通常は早期に確定させます。
本件でも、まず、婚姻費用の調停を先行して成立させ、その後離婚を成立させています。
熟年離婚において、特に問題となるのは年金分割です。
通常、女性は専業主婦や夫の扶養に入っていることが多く、扶養に入っていなくても夫よりも収入が少ないため、治めている年金保険料が少ない状況です。
そのため、女性は年金分割を行うことで、受給できる年金が増加する場合がほとんどです。
特に熟年離婚の場合、夫が掛けている年金保険料の総額が多くなるため、年金分割によって、受給できる年金が大幅に増えます。
男性側は、逆に自分が受給できる年金が大幅に減少するため、強行に反対するケースが多い状況です。
このような場合、当事者同士が交渉しても、らちがあかない場合がほとんどです。
年金問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
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