子どもへの虐待を繰り返す妻と離婚を成立させた夫Kさんの事例
世帯年収:450万円
婚姻期間:15年
解決方法:裁判
子どもあり (13歳)
離婚を切り出した
相手:30代パート
サポート無 | サポート有 | 減額利益 | |
---|---|---|---|
離婚 | 不成立 | 成立 | |
親権 | × | ○ | |
婚姻費用 | 月額10万円 | 0円 | 月額10万円 |
年金分割 | 50% | 0 | 50% |
Kさんは、15年前に妻と結婚し、その3年後に長女が誕生しました。現在、長女は13歳です。
Kさんの妻は、結婚前は大人しく、Kさんは妻のお淑やかなところを好きになって結婚しました。
しかし、結婚後、妻は些細なことで激高し、Kさんに暴言を吐くようになりました。
でも、Kさんは、子どものために、我慢していました。
ところが、妻は、子どもが小学校高学年になった頃から、子どもに対して虐待を行うようになりました。
妻は、子どもに対して異常なほど勉強を押しつけるようになり、子どもが言うことを聞かずに反発すると、叩いたり、子どもの物を壊したりするようになりました。
Kさんが虐待をいくら制止しても、しばらくすると同じことが繰り返されました。
そして、子どもは不登校となってしまいました。
Kさんは、妻を心療内科に連れて行ったところ、医師から社会不適合であると診断されました。
Kさんは、今後のことについて、弁護士に相談しました。
Kさんが遠方だったため、弁護士は、電話で相談に対応しました。
弁護士は、妻と離婚協議を行いました。
しかし、妻は協議離婚には応じてくれませんでした。
次に、弁護士は、離婚調停を申し立てましたが、妻は調停でも、離婚に応じませんでした。
そこで、仕方なく、弁護士は離婚訴訟を提起しました。
離婚訴訟では、裁判官の説得もあって、妻は離婚に応じると言ってきたので、和解離婚が成立しました。
弁護士は、まず、子どもへの虐待を防ぐために子どもを連れて別居することを助言しました。
別居の日を打ち合わせし、別居の日に合わせて、弁護士は、妻に対して、協議離婚申入書を送付しました。
そして、今後、Kさんと子どもに接近しないよう求めました。
妻は、弁護士を立てて、子の監護者指定と子の引渡しを求めて、家裁に審判と同保全処分を申し立ててきました。
弁護士は、審判において、妻の虐待の事実や、現在、子どもが健やかに育っており、妻と一緒に生活したくない意向を有していると反論しました。
そして、家裁調査官の調査では、Kさんの方が監護者として相応しいとの報告がなされました。
その結果、妻の申立ては認められませんでした。
その後の裁判では、妻は最終的に親権を諦めざるを得ないこととなり、和解で親権を取得することができました。
弁護士は、子どもへの虐待を防止するために、妻から離れて暮らすことが必要であると判断し、Kさんには子どもを連れて別居してもらいました。
別居の日に合わせて、弁護士は妻に協議離婚を申し入れ、離婚の交渉を開始しました。
すると、妻も弁護士を立て、離婚の意思はないことと、婚姻費用(生活費のことです。)を要求してきました。
これに対して、弁護士は、夫婦双方の年収や、現在、Kさんが子どもを監護していることから婚姻費用の支払義務はないと反論しました。
妻は納得せず、婚姻費用の調停を申し立ててきましたが、調停でも、支払義務はないと認められ、Kさんは婚姻費用を支払わなくてよいこととなりました。
離婚訴訟において、妻は、仮に、離婚が成立した場合に備えて、年金分割50パーセントを求めてきました。
Kさんは、虐待を繰り返してきた妻に対して、年金分割に応じることに消極的でした。
そこで、弁護士は、妻に養育費を求めない代わりに、年金分割の按分割合を0にすることを提示しました。
その結果、和解離婚が成立し、年金分割は0にすることに成功しました。
離婚訴訟において、裁判所が離婚を認めるのは、民法所定の離婚原因がある場合です。
DV事案は、離婚原因のうち、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当すると考えられるため、離婚が認められる可能性があります。
ただ、問題となるのは、その証明方法です。
DV加害者は多くの場合、自己の加害行為を否認してきます。
そのため、DVを主張する被害者側に立証する必要があります。
本件では、妻が子どもを虐待していたことの証拠として、妻の暴言の録音データや暴行によって生じた痣の写真がありました。
裁判では、これらを提出し、裁判官に相手方を説得してもらい、和解で離婚を成立させることができました。
通常、男性側が親権を取得するのは難しいと言われています。
本件では、妻の虐待の事実が認められたことが最終的に親権を取得できた大きな理由です。
子の監護者指定と子の引渡しの審判は、裁判ではなく、裁判で決着が付くまでの間の監護者を決める手続です。
あくまで裁判の前段階であり、一時的なものですが、この手続で勝てるか否かが後々の裁判で親権を取得できるかに重大な影響を及ぼします。
すなわち、通常はこの手続で監護者と認められれば、裁判で親権を取得できる可能性が極めて高いといえます。
本件でもこの手続で勝つことができたことから、妻は裁判で親権を諦めました。
別居後、離婚が成立するまでの間、収入が高い方は低い方の配偶者に対し、婚姻費用(生活費)を支払う義務があります。
この婚姻費用は、夫婦双方の収入や、扶養者の数等で算定されます。
本件では、夫婦双方の年収や、Kさんが子どもを監護していること等から、婚姻費用を支払う必要はありませんでした。
当初、妻は納得しませんでしたが、公平な第三者である調停委員会からの説得もあり、婚姻費用を諦めました。
年金分割は、婚姻期間中の厚生年金や共済年金の報酬比例部分が対象となります。
通常、この年金分割は、裁判等では50パーセントが認められる場合がほとんどです。
本件では、Kさんは妻のDV被害者であり、妻への年金分割に強い抵抗がありました。
また、妻からの養育費はそれほど望んでいませんでした。
このような状況だったので、養育費を求めないことと、年金分割の按分割合を0にすることを交換条件として、和解案を提示し、うまくまとめることができました。
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親権 | ○獲得 |