家庭内別居の婚姻費用のポイント【弁護士が事例で解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
掲載日:2016年4月28日|最終更新日:2020年6月3日

男女相手が離婚に応じてくれない場合どうしたらいいですか?

家庭内別居が続いている状態です。どうしたらいいですか?

家庭内別居の場合、婚姻費用はどうなりますか?

当事務所の離婚事件チームにはこのようなご相談が多く寄せられています。

このような場合の対処法について、当事務所の弁護士が実際の相談事例をもとに解説しますので参考にされてください。



ご相談者Eさん
職業:公務員
世帯年収:900万円
婚姻期間:25年
解決方法:調停
子どもあり (3人)
離婚を切り出した

相手:40代パート

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート無 サポート有 減額利益
離婚 ×
親権  ×
財産分与 2000万円  800万円  1200万円
婚姻費用 月額18万円 月額8万円 月額10万円
年金分割 50% 40% 10%

 

 

状況

夫婦喧嘩Eさんは、25年前に妻と結婚し、3人の子どもがいました。子どもは、上の子が大学生、下の子2人が高校生です。

しかし、妻の行き過ぎた宗教活動や、浪費問題から夫婦関係が悪化し、5年ほど前から家庭内別居の状況にありました。

妻は、自分が信仰している宗教に数百万円を寄付したり、知人を無理に誘ったりしていたました。

そのためEさんは妻に対して強い不信感を持っていました。

3年ほど前、Eさんは、妻に離婚調停を申し立てましたが、妻が離婚に応じませんでした。

Eさんは自宅の2階で生活し、妻は1階で生活していました。

また、Eさんは自分の食事は自分で作り、洗濯なども自分で行っていました。子ども達も離婚しても当然という様子でした。

Eさんは、これ以上、妻との共同生活に耐えられず、弁護士に相談しました。

 

弁護士の関わり

弁護士は、妻に離婚協議を申し入れました。すると、妻も弁護士を代理人として選任しました。そこで、弁護士は妻側の代理人と面談し協議を開始しました。そして、子ども達の親権を主張しました。

ところが、妻側の代理人は、Eさんの受け取る退職金の2分の1等、合計2000万円を要求してきました。

また、親権についても譲らないと主張してきたため、交渉は難航しました。

さらに、妻側は、婚姻費用として月額18万円を求めてきました。そのため、弁護士は離婚調停を申し立てました。

調停では、婚姻費用の適正額としては、月額17万円程度が適切であると調停委員が説得してきました。

しかし、Eさんは、子ども達の学費や生活費を全額負担していました。

そこで、弁護士は、本件は実質、妻1人の婚姻費用の額を算定するものであると主張し、婚姻費用の適正額は8万円であると反論しました。

その結果、調停委員もこちら側の主張を認め、月額8万円の支払い義務のみ認められました。

 

 

婚姻費用とは

弁護士婚姻費用とは、夫婦が結婚生活を送るために必要な全ての費用のことをさします。

具体的には、日常の生活費、医療費、子どもの養育費、教育費、公共料金の費用などです。

養育費と似ていますが、養育費は離婚成立後に発生する費用であり、婚姻費用は、離婚が成立するまでの費用です。

離婚を決意してから、実際に離婚が成立するまで、時間がかかり、別居状態になることが多くあります。

婚姻費用は、このような場合に、収入の多い夫(妻)が収入の少ない妻(夫)に対して支払われるものです。

婚姻費用について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

 

 

家庭内別居でも生活費を支払う必要がある?

弁護士婚姻費用は通常、別居状態のときに問題となります。

別居すると、収入が少ない方(通常は妻側)は生活が苦しくなるため、収入が多い側(通常は夫側)に対して、婚姻費用を請求し、その額について問題となるのです。

本件のように、別居はせずに同じ自宅内で生活する場合、通常のケースとは異なります。

しかし、婚姻費用は、夫婦の生活保持義務から生じるものであり、別居の有無に関わらず、婚姻費用の支払い義務が生じます。

 

 

婚姻費用の相場

婚姻費用の額は、当事者が合意によって決めることができます。

しかし、何の基準もなしに、当事者が合意するのは難しいです。

そこで、養育費と同様、額を算定するうえでの一般的な基準として、裁判所がつくった算定表があります。

この算定表は、婚姻費用の適正額を当事者の収入、子供の数・年齢という要素で判断しています。

婚姻費用の算定について、くわしくはこちらをごらんください。

 

しかし、婚姻費用の算定はあくまで参考程度にとどめるべきです。

本件では、夫婦双方の年収と子どもが3人であったことから、算定表上の婚姻費用の適正額は月額17万円程度となる事案でした。

調停委員は、形式的に判断し、当初、17万円を支払うよう説得してきました。

しかし、本件では、Eさんが子ども達と同居しており、かつ、子ども達の学費等生活費をすべて負担しているという状況でした。

したがって、調停委員会の和解案は不適切なものでした。

算定表は、このような特殊な事情を考慮していないので、注意が必要です。

 

 

まとめ

弁護士以上、家庭内別居の婚姻費用について、実際の事例をもとに解説しましたがいかがだったでしょうか。

家庭内別居であっても、基本的に、収入が多い方は収入が少ない方に婚姻費用を支払う必要があります。

婚姻費用には相場があって、算定表によって知ることが可能です。

しかし、算定表はあくまで参考であって、特殊な事案において、そのまま使用する公平な結果となりません。

婚姻費用については、専門的な判断が必要となる場合があるため、離婚問題に精通した弁護士へのご相談をおすすめいたします。

当事務所には、離婚問題に注力する弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、婚姻費用についても強力にサポートしています。

また、近くに専門家がいない遠方の方などは、LINEなどを利用したオンライン相談が可能です。

離婚問題でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

 

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