離婚した後に財産分与を決めることができた事例

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA


ご相談者Oさん
職業:会社員
世帯年収:1000万円
婚姻期間:7年
解決方法:協議
子どもなし
離婚を切り出した

相手:30代会社員

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート無 サポート有 減額利益
離婚 不成立 成立  –
慰謝料 300万円の支払い 0円 300万円
財産分与 1000万円の支払い 500万円の支払い
 500万円

 

状況

Oさんは、7年前に夫と結婚しました。Oさん夫婦には子どもはいませんでした。

夫はOさんの携帯電話をチェックしたり、友達と出かけることを許さなかったり、Oさんを束縛していました。

Oさんは、夫の異常な束縛をストレスに感じるようになり、男友達に相談するようになりました。

そして、Oさんは、その男性のことを好きになり、身体の関係を持つようになりました。

Oさんは、夫と離婚を決意し、別れたいと切り出しました。

Oさんは、他に好きな男性がいることを夫に話しました。

夫は、離婚はすると言いましたが、Oさんの貯金通帳を渡せと怒鳴ってきました。

Oさんは、夫の貯金も合わせてOさん名義の口座に1000万円の預貯金を持っていましたが、怖くなって仕方なく通帳を渡しました。

すると、夫は離婚届を役所に取りに行き、サインをした離婚届をOさんに渡しました。

Oさんは、離婚届を出すか迷い、一旦保管することにしました。

Oさんは、渡してしまった貯金のことなどが気になり、当事務所に相談に来ました。

 

※この事例は、以下争点ごとに弁護士の関わりと補足説明を掲載しています

弁護士の関わり

離婚の成立について

弁護士は、Oさんに離婚の意思について確認したところ、Oさんは、離婚を強く希望しました。

そこで、弁護士は、Oさんに対して、まず、離婚届を提出するようにアドバイスし、離婚を成立させました。

慰謝料の減額について

夫は、不貞行為の慰謝料を請求することを主張してきました。

これに対して弁護士は、慰謝料の支払い義務はないと主張しました。

また、夫も弁護士を立て、慰謝料300万円を求めてきました。

当事務所の弁護士は、夫側の弁護士に対して、不貞相手への慰謝料請求の有無について釈明を求めました。

すると、夫側の弁護士は、本件とは関係がないと言って回答を拒否してきました。

仮に、不貞の相手方が夫に対して慰謝料を支払っていた場合、夫の損害が回復されていることからOさんの慰謝料の支払い義務が消失すると主張しました。

その結果、夫側は、慰謝料の請求を諦め、慰謝料はゼロという内容で交渉が成立しました。

財産分与について

弁護士は、財産分与について、協議を申し入れました。

夫は、弁護士に対して、財産分与についてはOさんの通帳の返還を拒み、預貯金の全額を主張してきました。

これに対して、財産分与については2分の1である500万円のみ支払うと回答しましたが、夫は、「約束と違う。」と言ってきました。

また、夫も弁護士を立てて、弁護士からも預貯金全額(1000万円)を求めてきました。

これに対して、当事務所の弁護士は、単に通帳を畏怖して一時的に渡しただけであること、また、通帳を渡すことですべてを精算するという合意を締結していないことから、Oさんの預貯金すべてを渡すという財産分与の合意は成立していないと反論しました。

その結果、夫側の弁護士も当方の主張を理解し、財産分与は500万円を支払うという内容で交渉が成立しました。

 

補足

離婚の成立について

通常、離婚の協議では、慰謝料、財産分与、養育費等の離婚条件が決まってから離婚届を出すように助言しています。

今回のケースで、協議がまとまる前に、先に離婚届を出すようにしたのは、時間が経ってしまうと離婚が成立しない可能性があったからです。

すなわち、万一、夫の気が変わり、離婚に応じないと主張してきたとき(このような場合、夫は役場に離婚届の不受理を申請することが考えらます。)、裁判においてOさんの離婚請求が認められないリスクがあります。

裁判所は不貞行為を行った配偶者を有責配偶者と認定し、原則として離婚請求を棄却する傾向にあるからです。

したがって、本件では、まずは離婚届を提出し、その後に財産分与等を協議するという手段をとりました。

慰謝料の減額について

不貞行為の慰謝料請求の法的性質は、不真正連帯債務と呼ばれています。

簡単に言うと、被害者(本件では夫)は、加害者であるOさん、不貞相手に対して、いずれに対しても慰謝料を請求できるが、仮に、適正な慰謝料の支払いを一方から受けると、他方に足しては請求できない、というものです。

これは、慰謝料が損害を回復する制度であること、損害を回復した以上それ以上は取得できない、という価値観に基づくものです。

そこで、本件では、夫側の弁護士に対して、不貞相手への慰謝料の請求について釈明を求めたのです。

相手方は、裁判になったら負けを覚悟しなければならず、交渉で諦めさせることに成功しました。

財産分与について

今回、夫側が妻の預貯金全額を求めてくるのも、無理からぬものはありました。

夫としては、不貞行為を行った妻から離婚を求められ、感情的なっていたところ、預貯金の通帳を受け取ることの代わりに離婚届を渡していたからです。

ただ、Oさん側にも、言い分はありました。

夫から、通帳を渡すように大声で怒鳴られて、仕方なくその場を落ち着かせるために渡したこと、また、通帳を渡したとしてもそれをもって財産分与を終了させるという意思までは持っていませんでした。

通常、離婚の協議では、後々トラブルとならないように、合意の項目の中に、清算条項というものをいれます。

これは、簡単に言えば、夫婦が請求できるのは、合意書の中に書かれていることに限定され、合意成立後、他には何も請求できなくなるという条項です。

今回のケースも、このような条項がある離婚協議書を作っておけば、双方の意見の対立は起きず、トラブルは防止できたと考えらます。

 

 





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