未成年者の不倫でも慰謝料を支払う?【弁護士が事例で解説】
未成年者の不倫であっても、慰謝料を支払う可能性が高いと考えられます。
以下、実際の相談事例をもとに、詳しく解説します。
事例
解決方法:協議
慰謝料を請求された
相手:会社員
サポート無 | サポート有 | 減額利益 | |
---|---|---|---|
慰謝料 | 250万円 | 100万円 | 150万円 |
状況
Sさんは、相手方Hさんの夫であるMさんと約半年ほど交際をしていました。
Sさんは、Mさんと交際を始めた当初、Mさんが既婚者であることを知りませんでしたが、交際後しばらく経つと、SさんとMさんの共通の友人からMさんが既婚者であることを知らされました。
また、同時期に、HさんにSさんとMさんの関係が発覚してしまいました。
Sさんは、Mさんが既婚者であったことを知った後、Mさんと連絡を取るべきでないとは考えていましたが、既にSさんとMさんが深い関係になっていたことから、最後だと思い一度だけMさんと肉体関係をもってしまいました。
その後、しばらくHさんやMさんからSさんに対し何ら連絡はありませんでしたが、半年程経った後、Mさんの携帯電話を通して、HさんからSさんに対し慰謝料を請求する旨の連絡がありました。
まだ未成年者であったSさんは、今後どのようにすれば良いかわからず、ご両親と一緒に弊所までご相談に来られました。
弁護士の関わり
弁護士が依頼を受けてしばらく経つと、相手方弁護士からSさんに対し、慰謝料250万円を請求する旨の通知書が届きました。
これを受け、弁護士は相手方に対し速やかに受任通知を送付し、今後の連絡は全て弁護士を窓口としSさんへの連絡はしないよう要求しました。
また、弁護士は相手方に対し、Sさんが当初Mさんを既婚者と知らなかったことや、Mさん夫婦が離婚に至ってないこと等から、慰謝料250万円は高額すぎる旨の主張をしました。加えて、Sさんが未成年者であり資力がないため、事実上250万円もの大金を支払えない旨主張しました。
これに対し、相手方は、Sさんが反省をしていないことや、Sさん自身に資力がなくてもSさんの親に協力を仰ぐ等してちゃんと責任を負うべきだといった主張をしてきました。
その後、文書や書面による交渉を重ね、結果的には、請求額から150万円を減額した金100万円を支払うという内容で合意が成立しました。
補足
本事例では、Sさんが当初Mさんを既婚者と知らなかったこと、Mさん夫婦が離婚をしていなかったこと、Mさん夫婦の婚姻関係が短かったこと等から、裁判所による判断になった場合、慰謝料の総額は100万円を下回る可能性がありました。
そのため、裁判での解決をすることも考えられましたが、SさんやSさんのご両親は、出来る限り減額の交渉をして欲しいと考えてはいたものの、Sさんの将来を考え訴訟に移行することは絶対にしたくないとの意向でした。
したがって、弁護士は、相手方に裁判になった場合の見通しを主張しつつ、他方で訴訟を提起されないよう慎重に交渉を進めていく必要がありました。
本事例のように、未成年者が当事者になる場合、未成年者が精神的に追い詰められないよう窓口を弁護士にすることや、未成年者が裁判所に出頭しなくて済むよう訴訟を避けるための交渉をすることが求められるケースが多いです。
そのため、一般の慰謝料請求より弁護士が介入する必要性が大きいと考えられます。
未成年者の不倫の問題点とポイント
支払い能力がない場合が多い
未成年者の多くは収入がありません。
アルバイトをしている場合も想定されますが、通常は資力に乏しいと考えられます。
したがって、慰謝料の支払い能力がない場合が多いといえます。
このような場合、上記の事例のように、親に援助してもらうことを検討する必要があります。
また、親の援助が難しい場合、長期の分割払いや破産申立も視野に入れることとなります。
責任能力がない場合もある
未成年者だからといって当然に慰謝料を支払う法的責任がないということにはなりません。
しかし、年齢が低く、「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったとき」は責任能力がないこととなり、賠償義務を負いません。
第七百十二条 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
引用元:民法|電子政府の窓口
そして、責任能力の有無については、明確に何歳以上と定められていません。
しかし、過去の裁判例からすると、12歳前後で責任能力を認める傾向です。
過去の裁判例では、12歳2か月の少年で責任能力を否定したもの(空気銃で射撃し誤って他人を失明させた事案)があります(大判大正6年4月30日)。
他方で、11歳11ヶ月の少年で、責任能力を肯定したもの(雇い主のために賞品を届けに行く途中に自転車で衝突して怪我を負わせた事案)があります(大判大正4年5月12日)。
親が責任を負う場合がある
仮に、未成年者で責任能力がない場合、親などの監督義務者が原則として、被害者に対して損害賠償義務を負うこととなります。
第七百十四条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
引用元:民法|電子政府の窓口
まとめ
以上、未成年者の不倫問題について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。
未成年者であっても、不貞行為を行った場合、慰謝料の支払い義務が認められる場合があります。
しかし、未成年者の場合、支払い能力に乏しい場合が想定されます。
また、責任能力が認められない場合や、親が賠償義務を負うケースもあります。
これらの問題点について、的確に判断するためには専門知識と豊富な経験が必要です。
そのため、まずは慰謝料の問題を専門とする弁護士にご相談のうえ、今後について助言をもらうことをお勧めいたします。
この記事が不倫慰謝料の問題でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。
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