子どもを連れ去った夫と子どもを取り返した上で離婚できたMさんの事例

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
ご相談者Mさん
職業:30代会社員
世帯年収:700万円
婚姻期間:14年
解決方法:調停
子どもあり (3人)
離婚を切り出した

相手:30代会社員

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート無 サポート有 利益
離婚 不成立 成立
親権 争いあり
養育費 5万円支払う 6万円 月額1万円の増額
面会交流 毎月4回年2回の宿泊 毎月3回年1回の宿泊
財産分与 120万円支払う 50万円支払う 70万円の減額
年金分割 なし 50% 50%
婚姻費用 なし 月額8万 未払分30万円 月額8万円の増額
未払分30万円の獲得

状況

Mさんは、平成19年に夫と結婚し、3人の子どもに恵まれました。

しかしながら、夫は、Mさんに対し次第に粗暴な振る舞いをするようになり、Mさんに腹を立てた時に物を投げたり壊したりするようになりました。

そのような中、夫がMさんの交友関係に激怒し、Mさんの携帯電話を破壊し、「殴るぞ。」と脅すという事件がありました。

Mさんは、身の危険を感じると共に、このままでは子ども達にも悪影響を与えると考え、平成27年4月頃、子ども達を連れて実家に帰り、夫との別居を開始しました。

別居の際、Mさんとしてはすぐにでも夫と離婚をしたい気持ちではありましたが、幼い子ども達のことを考え、一度夫と距離を置き冷静に考えた後に離婚をするか否かを決めることにしました。

また、Mさんは、子ども達にとって父親は大切な存在であると考えていたため、別居中も宿泊を伴う面会交流を頻繁に行う等、父子交流には積極的に協力をしていました。

しかしながら、別居後1年程経過した後も、Mさんは夫との婚姻関係を継続していこうとは思えなかったため、当事務所の弁護士を通じ、夫に協議離婚を申し入れることを決めました。

ところが、その矢先に、夫が面会交流後も子ども達を返さないという事件が起こりました。

そのため、Mさんは、離婚請求に加え、子ども達の引渡しを求める請求に関しても、相談をされました。

 

 

弁護士の関わり

弁護士は、裁判所に対し、すぐに「子の引渡し請求」及び「子の監護者指定請求」の申立てを行いました。

その際、少しでも早く子ども達を引渡してもらえるよう仮処分の申立てもしています。

「子の引渡し請求」等の事件においては、Mさんの監護下で子どもを養育することがいかに子ども達の福祉に適うかということを、これまでの監護実績を示す証拠とともに主張立証していきました。

その結果、仮処分の申立てが認められ、その後の本案においても子ども達の監護者をMさんとする審判を獲得することができました。

子どもの引渡しを受けると、すぐに離婚調停及び婚姻費用分担調停を申し立てました。

婚姻費用については、算定表の基準に従った毎月の婚姻費用額に保育料分の加算をすべきである旨の主張や、未払分の婚姻費用を求める主張をしていきました。

また、離婚については、監護権者がMさんに決まるまでは夫も親権がほしいとの主張をしていましたが、監護権者がMさんと決まった後は親権について特段争う姿勢ではありませんでした。

そのため、淡々と財産関係を整理した上で財産分与額を定めていき、離婚についても調停で終わらせることができました。

 

 

補足

本件のメインの争点について解説します。

監護権・親権について

本事例では、親権を争う前提として、子の引渡しと子の監護権を争いました。

監護権とは、簡単にいうと、実際に子どもの世話をする権利のことをいい、裁判所が子の監護権者を判断する際には「子の利益」が最優先されます。

具体的には、父母等が監護権者として適格かを図るための考慮事情を比較衡量して、誰を監護者とすることが一番子の利益に適っているかをみることになります。

考慮事情としては、監護能力、意欲、家庭環境(資産、収入、住居等)、居住環境、教育環境、子に対する愛情、従来の監護状況、親族等の援助の見込みなどの父母の事情、子の年齢、性別、きょうだい関係、発達状況、子の意向などを総合的に判断します。

本事例では、子ども達の監護状況が長期間安定していたにもかかわらず、夫が急に子ども達を連れ去ったという特殊性がありました。

そのため、比較的認められ難い「仮処分」が認められ、また従前のMさんの監護実績等が重視され、本案についてもMさんが監護者として指定されました。

しかしながら、本事例においてスムーズに「子の引渡し請求」や「子の監護者指定請求」が認められたのは、Mさんのこれまでの監護実績だけではなく、早期に裁判手続きをとったことが重要なポイントになります。

夫が子を連れ去ったにもかかわらず、すぐに法的手続きをとらなかった場合、時間が経過すればするほど夫が監護者と指定される可能性が高くなってしまいます。

なぜなら、時間が経過するに連れ夫の監護実績が積まれていくことになりますし、裁判所は子どもの監護状況が安定している場合にわざわざ子の環境を変更することには消極的だからです(監護状況が安定している場合、その状況を継続することが子の福祉に適うと考えられるからです。)。

したがって、子の連れ去りがあった場合には、一日でも早く専門家である弁護士に相談をされてください。

監護権について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

婚姻費用について

一般的に、婚姻費用は、双方の収入を踏まえ標準算定方式を見てその適正額を決定します。

しかしながら、標準算定方式においては、公立幼稚園・小学校・中学校・高等学校に関する学校教育費を指数として考慮しており、私立学校の教育費は考慮されていません。

そのため、子が私立幼稚園や保育園を利用しており、公立の場合よりも教育費がかかる場合には、婚姻費用にそれら教育費を加算すべきである旨の主張をしていかなければなりません。

本事例においても、標準算定方式に従った婚姻費用額をそのまま適用するのではなく、保育料を基礎収入に応じて按分した額を婚姻費用額に加算すべきである旨主張していきました。

その結果、標準算定方式のみをみた場合よりも、月額1万円程度加算した金額で婚姻費用の調停を成立させることが出来ました。

また、本事例では、未払分の婚姻費用があったため、未払婚姻費用の支払いも請求しています。

未払分については、いつから未払分が発生するのかという「婚姻費用の始期」が問題になることがあります。

本事例では、婚姻費用の始期が争点になることはありませんでしたが、上述のように、「保育料分の加算」や「婚姻費用の始期」等の複雑な問題が生じた場合には、標準算定方式だけで解決をすることは困難です。

そのため、婚姻費用について争いになり得る場合には、少しでも早く弁護士に相談することをお勧めいたします。

婚姻費用について、詳しくはこちらをご覧下さい。

 

標準算定方式(養育費・婚姻費用算定表)について、東京家庭裁判所のHPをご覧下さい。

 

 

 





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