男性でも親権を諦めない。父親が娘の親権を獲得できた事例

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  

ご相談者Hさん
職業:50代会社員
世帯年収:700万円
婚姻期間:13年
解決方法:裁判
子どもあり (実子1人、養子2人)
離婚を切り出した

相手:40代会社員

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート無 サポート有 利益
離婚 不成立 成立
親権
財産分与 相当額支払う 0円 100万円以上の減額
婚姻費用 6万円 2万5000円 月額3万5000円の減額

状況

Hさんは、平成18年に妻と結婚し、同年娘が生まれました。

また、妻には前夫との間に2人の子がおり、Hさんと2人の子は養子縁組を結びました。

婚姻後、Hさんと子ども達の関係は非常に良好でしたが、妻のうつ病等が原因で、夫婦仲は次第に悪くなっていきました。

そして、平成27年12月頃、妻は子ども達を連れて自宅を出て行きました。

別居後、Hさんとしては、妻とは離婚をしたいと考えていたものの、子ども達の親権は獲得したいと考えていました。

というのも、Hさんの娘は、Hさんにとって待望の初実子であり、養子縁組をした2人の子ども達との関係も非常に良好だったからです。

また、妻は、うつ病の影響もあってか、ご飯を作らなかったり、お酒ばかり飲んでいたりと、子ども達の生活環境は非常に悪い状況でした。

そのため、Hさんは、自分が親権を獲得した方が子ども達の養育にとって望ましいと考えていました。

別居状態が継続している中で、Hさんと妻は離婚調停を行いましたが、妻も子ども達の親権を希望したため、離婚は成立しませんでした。

そこで、Hさんは、親権を獲得して離婚を成立させるためにはどうすれば良いか悩み、当事務所の弁護士に相談をされました。

 

 

弁護士の関わり

まず、弁護士とHさんが話合いを重ねた結果、養子である2人の子については親権者を妻とし、娘の親権のみを主張していくということになりました。

2人の養子は既に高校生以上であり妻に対しても十分に自己主張できる年齢であったことや、子ども達も実親である妻の親権に服することを希望すると考えられたからです。

他方で、娘は未だ幼く、親が生活環境を整えてあげなければならない状況でしたが、妻は家事をせず飲酒ばかりしている状況であったため、妻ではなくHさんの下で監護した方が良いと考えられました。

そこで、弁護士は、離婚訴訟を提起するよりも娘の監護状況をすぐに変更すべきと判断し、子の引渡し及び子の監護者の指定を求める審判を申立てました。

なぜなら、離婚訴訟において親権を争うと時間を要することが予想され、また事実上妻が子の監護をしている状況でHさんが親権を獲得できる可能性は著しく低かったからです。

審判の中では、妻の下ではなくHさんの下で娘を監護することが娘の福祉に適うということを、証拠も用いながら具体的事実を指摘した上で主張していきました。

また、裁判所が調査官による調査を実施した際には、弁護士は調査に関するアドバイスをするだけでなくHさんが調査官と面談するときには同席をし、出来る限りHさんの負担が少なくなるよう努めました。

結果的に、子の引渡しが認められ、子の監護者はHさんに指定するとの裁判所の判断が出ました。

娘の監護者がHさんとなったため、弁護士は妻に対し、離婚についての交渉を始めました。

しかしながら、妻は、娘の監護者がHさんとなった後も親権を諦めることができず、親権者をHさんとした上での離婚には応じてくれませんでした。

弁護士は、妻の言い分も聞きながら何度も説得を試みましたが、妻が決断できまいまま時間が過ぎていきました。

そのため、弁護士とHさんは、離婚訴訟を提起することにしました。

ところが、弁護士が訴訟を提起し、裁判所から妻に対し第1回期日の連絡がなされた段階で、妻はようやく離婚に応じるとの決断をしました。

結果的には、訴訟の第1回期日が来る前に、訴訟外で離婚に関する和解が成立し、Hさんは娘の親権を獲得した上で離婚をすることに成功しました。

 

 

補足

本件のメインの争点について解説します。

親権について

親権とは、具体的に、①身上監護権(子どもの身の回りの世話をすること)、②財産管理権(子どもの財産を管理すること)、③法定代理権(子どもを代理して法律行為を行うこと)の3つに分けることができます。

日本においては、父母の婚姻中には子は父母の共同親権に服し(民法818条1項3項)、父母が離婚する場合は父母のいずれか一方の親権に服することになります(民法819条1項2項)。

このように、離婚後の親権は単独親権とされていることから、離婚の際に親権について争いになることが少なくありません。

離婚後の親権者を父母のどちらに定めるかについては、様々な事情を考慮して決められますが、過去の監護実績や現在の監護状況は比較的重視されることが多いと感じています。

そのため、本事例のように相手方が子の監護をしている状況で親権を獲得したいと考える場合には、まずは子の監護権を獲得することを目指していくべきでしょう。

逆に言うと、監護権が親権の一部であることもあり、事前に監護権を獲得していると後に親権についても認められる可能性が高くなります

監護権について

監護権とは、簡単にいうと、実際に子どもの世話をする権利のことをいいます。

裁判所が子の監護権者を判断する際には「子の利益」が最優先されます。

具体的には、父母等が監護権者として適格かを図るための考慮事情を比較衡量して、誰を監護者とすることが一番子の利益に適っているかをみることになります。

考慮事情としては、監護能力、意欲、家庭環境(資産、収入、住居等)、居住環境、教育環境、子に対する愛情、従来の監護状況、親族等の援助の見込みなどの父母の事情、子の年齢、性別、きょうだい関係、発達状況、子の意向などを総合的に判断します。

本件では、妻が娘を連れて家を出ており、妻に監護実績を積まれていくと親権や監護権の獲得が難しくなるという状況でした。

そのため、弁護士はすぐに子の引渡し請求と子の監護者指定の法的措置を取りました。

これらの手続きの中で、Hさんの下でも一定期間子の様子をみるべきだとの主張をし、一時的ではあったものの娘がHさんの下で過ごすことができました。

その結果、もともとHさんに監護能力があったということに加え、実際に娘の監護をしても何ら問題がなかったことが評価され、娘の監護者をHさんとする審判を得ることができました。

父親でも親権を諦めないで

一般的に、父親が子の親権を獲得できるケースはかなり少ないと思います。

しかしながら、本件のように母親が子を虐待していたというような事情がない場合でも、結果的に父親が親権者となることができる場合もあります。

離婚を考えられている方で、「妻より子の世話をしてきた」、「子にとっては自分(父親)が親権者となった方が良い」と思われている方は、早々に親権を諦めるのではなく、是非一度弁護士に相談されてみてください。

 

 





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