慰謝料の支払いに代えて自宅マンションを財産分与した夫の例

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA


ご相談者Sさん
職業:医師
婚姻期間:19年
解決方法:調停
子どもあり (長女(高校生))
離婚を切り出した

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート無 サポート有 利益
離婚 ×不成立 ○成立
養育費 月額30万円 月額15万円 月額15万円
慰謝料 1000万円 自宅を分与

 

状況

Sさんは50代の医師で、妻とは平成5年に婚姻しました。妻との間には長女がいました。

妻は、気が強い性格で、Sさんとはよくぶつかってきました。特になにが原因というわけではないものの、顔を合わせると口論という状態が続きました。

そんな生活が続き、平成13年頃より、次第にSさんは自宅に帰る前に、バーにより一杯のんでから帰宅するようになってしまいました。

ある日、同じ病院の女性の看護師と偶然バーで出会ったことから、その看護師と親しくなりました。

その女性看護師は独身とのことで、Sさんは、年甲斐もなく、ときめきを覚えました。というのも、同じ医療関係者ということで、とにかく話が合い盛り上がったのです。

妻にできない話も、その女性看護師にはできましたし、共感もしてもらえました。

話が弾むにつれ、Sさんは日増しに、その女性看護師に惹かれていきました。それは、女性看護師も同じだったようです。

ある日、Sさんと女性看護師は、男女の関係をもってしまいました。

良くも悪くも真っ直ぐな性格のSさんでしたので、その関係は真剣交際に発展しました。

交際から8年が経過し、平成21年、Sさんは大胆な行動にでました。

妻子を自宅に残したまま別居し、その女性看護師と同棲をはじめたのです。

Sさんは、別居生活を続けたものの、長女とは定期的に面会を続けて見守ってきました。

長女が高校に進学したのを契機に、頃合いだと判断したSさんは、妻との形骸化した関係を終わらせるべく、離婚を決意しました。

Sさんは、妻に離婚を求めましたが、妻は、経済的な不安を理由に離婚を拒否しました。

Sさんは、弁護士に頼ろうと思い、法律事務所を数軒回りましたが、いずれの法律事務所もいわゆる有責配偶者からの離婚請求は受任できないと言われてしまったようです。

落ち込んだSさんは、藁をもすがる思いで、当事務所を訪問したとのことでした。

 

弁護士の関わり

弁護士は、Sさんに見通しを伝えました。

確かに法的には有責配偶者からの離婚請求は容易には認められません。

しかし、それは「判決では離婚できない。」という意味にとどまり、交渉の結果次第では、離婚の同意を得ることが可能な事例は多々あります。

その結果、Sさんは、やってみなければわからないことを承知のうえで、当事務所の弁護士に離婚協議を依頼することにしました。

弁護士は、以下のように今後の生活に心配はいらないことを説明しました。

  • Sさんは長女に迷惑をかけないように養育費及び学費の援助は十分に行うといっていること
  • 妻の生活補償の観点からも裁判基準に比較して高額の慰謝料を検討していること

しかし、妻は頑なに離婚に応じませんでした。

このように、交渉がデッドロック状態になった場合、調停を申し立てることが有効なことは珍しくありません。

弁護士は、離婚調停を申し立てました。

調停手続きの中で、妻の今後の生活補償について、具体的な条件を提示する等して交渉を行いました。

すると、妻は、態度を軟化させ、条件次第では離婚に応じると言ってきました。

しかし、希望条件は具体的に以下のようにかなりの内容でした。

  1. 裁判基準にしたがった養育費
  2. 慰謝料1000万円
  3. 財産分与としての自宅マンションの取得

これに対し、弁護士は、以下のように説明し、2の慰謝料は支払えない旨を主張しました。

すなわち、自宅マンションは5000万円の価値があるため、本来、自宅マンションの取得を希望するのであれば、妻は、Sさんに対し、2500万円の代償金を支払う必要があります。

しかし、慰謝料に代えてSさんは代償金は放棄することにしました。

つまり、自宅を取得する時点で、Sさんは慰謝料2500万円を受領しているに等しいのです。

この説得が功を奏し、結果的に、1及び3の条件のみで、2の慰謝料は支払うことなく離婚調停を成立させることが可能となりました。

 

補足

不貞行為を行うなどの有責性がある場合、その配偶者からの離婚請求はとても困難となります。

判例では、次の要件を満たさない場合には離婚請求は認めないとしています。

  1. ① 別居期間が長期間に及んでいること。
  2. ② 未成熟子が存在しないこと
  3. ③ 相手方配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれるなどの事情がないこと。

そして、①の目安はひとつには10年と言われています。

このように、有責配偶者からの離婚請求で妻が離婚に応じてくれない場合、離婚の成立はとても難しくなります。

しかし、このような場合でも、弁護士をつけたうえで、粘り強く交渉することで、離婚の同意を得ることが可能なことがあります。

また、有責配偶者の場合、裁判基準に比して相手方に有利な条件は提示する必要はあるものの、その条件さえ覚悟できるというのであれば、いかに今離婚した方が有利かを説得的に説明することで離婚の同意を得る可能性は高まります。

実際に当事務所には、同種の解決事案も多くあります。(結果をお約束することはできませんが、交渉を行ってみる価値はあると思います。)

まとめると、有責配偶者からの離婚請求は、裁判基準に比して相手方に有利な条件提示を行うことが必要なものの、その条件がいかに相手方に有利なものかを説得的に説明することで離婚の同意を得ることが可能になりえます。

有責配偶者だからと諦めず、まずは、弁護士に相談してみましょう。そのうえで、弁護士と一緒に解決方法を模索しましょう。

 

 

 

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