生活費をくれないモラハラ夫への対処法【弁護士が事例で解説】
世帯年収:1000万円
解決方法:協議
子どもあり (2人)
離婚を切り出した
Sさんは夫と結婚して専業主婦になり、子どもが二人いました。夫の年収は約1000万円でした。
夫は結婚してから別人となったようにSさんに暴言を吐き、行動を支配するようになりました。
Sさんは、夫のモラハラに耐えかね、子どもを連れて実家へ帰りました。
しかし、夫はSさんに生活費をまったく渡さなくなりました。そこで、Sさんは当事務所に夫との離婚をご依頼されました。
弁護士は、Sさんの代理人として、夫に協議離婚の申し入れを行い、同時に、婚姻費用を内容証明郵便で請求しました。
当初、夫は婚姻費用を渡さないと言い張りましたが、交渉の末、離婚が成立するまで婚姻費用として月額20万円を支払ってもらう内容の合意を締結しました。
婚姻費用を取り決めた後、弁護士は様々な離婚条件(親権、養育費、面会交流、財産分与等)について、夫と交渉を行いました。
そして、受任してから約半年後、双方の合意のもと離婚が無事に成立しました。
妻には生活費をもらう権利がある
この事例の依頼者のように、夫が生活費を渡してくれず、離婚を考える方は大勢いらっしゃいます。
収入があるのに、生活費を渡さない行為は経済的DVといって、離婚が認められる可能性があります。
夫が生活費を渡さない根本的な原因としては、モラハラ気質であることが考えられますが、自己愛性人格障害などの可能性もあります。
いずれにせよ、離婚が成立するまで、収入が多い配偶者は他方に対して生活費(婚姻費用といいます。)を支払う法的な義務があります。
つまり、妻には、生活費をもらう権利があるのです。
婚姻費用について、婚姻費用の算定やポイントはこちらをご覧ください。
離婚調停は、あくまで離婚とその条件を決めるための手続きです。
そのため、離婚に迷われている場合は申し立てるべきではありません。
婚姻費用については、別に、婚姻費用分担調停というものがあります。
夫がお金に対して執着心が強かったり、モラハラの傾向がある場合、婚姻費用を支払ってくれない場合が多々あります。
そのような場合、家庭裁判所へ調停を申し立てることで、調停委員が説得してくれたり、それでも夫が応じない場合は審判に移行して、婚姻費用の支払い命令を出すことが可能です。
しかし、裁判所を利用すると時間と労力がかかってしまい、相談者の負担になります。
そのため、すぐに調停を申し立てるのではなく、専門家に相談し、弁護士の回答を得て進める方がよいでしょう。
協議で進める場合のポイント
婚姻費用の支払いの始期(いつから支払ってもらえるか)は、婚姻費用の請求を行ったときからと考えられます。
つまり、後から過去に遡って支払ってもらえる可能性は低いと思われます。
そのため、協議で進める場合は、請求の意思を明確にしておくことがポイントとなります。
そこで、この事案では、弁護士が妻の代理人として、弁護士名で内容証明郵便によって婚姻費用を請求しています。
内容証明郵便とは、文書を受取人に送付したことを郵便局が証明してくれるものです。
このようにしておくと、後から、「請求されていない」などの夫側の反論を防止することができます。
協議離婚について詳しくはこちらをご覧ください。
調停の注意点
調停委員会は3名で構成されています。
家裁の調停委員というと、プロの法律家であると思っている方が多いです。
しかし、実際に対応する調停委員の2名は法律家ではなく素人の方がほとんどです。
1名は裁判官ですが、調停成立時など特別な場合しか調停室には来ません。
そのため、調停の席上において、間違った情報が伝えられることがあります。
多いのは、「婚姻費用は、調停申し立て時からのみ請求できる」というものです。
上記のとおり、婚姻費用は請求の意思を明示したときから発生すると考えられます。
調停員の方々の仕事はあくまで仲介であり、悪気もないのですが、このような誤情報が伝えられることがあるので注意が必要です。
まとめ
婚姻費用は、生きていくためにとても重要な制度です。
そのため、適切な額の婚姻費用を受け取る必要があります。
しかし、相手方がモラハラ夫の場合、婚姻費用の受け取るに苦慮されることが多くあります。
また、相手方が支払ってくれる場合も、適切な婚姻費用の額の算定は専門家ではないと難しいと思われます。
当事務所では、離婚問題に注力した弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、離婚に関する様々な情報やノウハウを共有しており、モラハラ被害に苦しむ方々を強力にサポートしています。
全国対応しており、遠方の方に対しては、LINEなどを活用したオンライン相談も実施しています。
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