株式を相続した場合、相続税はどのくらいになるのか不安に感じている方はいませんか?
相続税の計算において株式は2種類に分類されます。
一つは上場している株式です。
これは株式市場があるため活発に取引されており、時価を調べることは容易です。
それに対し上場していない株式については活発な取引市場が無いため時価を把握することは難しいです。
この記事では相続税の計算における株式の評価方法と節税対策について、わかりやすく解説させていただきます。
ぜひ参考になさってください。
株の相続税の計算の流れ
STEP1 株を含む遺産をもれなく調査する
相続税はひとつひとつの財産に対してかかるものではありません。
亡くなった方の遺産総額に対して相続税がかかります。
そのため、株式に限らず全ての財産をもれなく調べなければいけません。
亡くなった方が遺した価値のある財産だけでなく、負債などのマイナスの財産も調査しましょう。
マイナスの財産がある場合は、相続税の計算において、亡くなった方の遺した財産から差し引くことができます。
プラスの財産とは
相続税の対象となるのは価値のある財産です。
プラスの財産は株式などの有価証券や預金、土地建物のような不動産があります。
借地権のような権利についてもプラスの財産として扱うので忘れないようにしましょう。
家財道具については生活用動産として相続税の申告対象となります。
マイナスの財産とは
負債というと住宅ローンのような借入金をイメージするかもしれませんが、相続税の計算における負債の範囲はもう少し広いものになります。
亡くなった時点で未払いであった固定資産税や住民税についても負債として取り扱うことができます。
STEP2 株式を正しく評価する
上場株式の評価
上場株式とは金融商品取引所に上場されている株式をいいます。
上場株式は次の4つのうち最も低い金額をもって評価を行います。
- ① 亡くなった日の最終価格
- ② 亡くなった日の属する月の毎日の最終価格の平均額
- ③ 亡くなった日の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
- ④ 亡くなった日の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
これらの金額は証券会社が発行する残高証明書に記載がある場合があります。
記載が無い場合であってもインターネットで調べることもできます。
計算例
亡くなった日:令和5年5月5日
上場株式:100株
- 5月5日の最終価格:300円
- 5月の毎日の最終価格の平均額:310円
- 4月の毎日の最終価格の平均額:290円
- 3月の毎日の最終価格の平均額:250円
最も小さい金額 = 250円
上場株式の評価額:250円 × 100円 = 25,000円
非上場株式の評価
非上場株式の評価方法は大きく分けて「原則的評価方法」と「配当還元方式」があり、原則的評価方法は「類似業種比準価額」と「純資産価額」という計算方法を用いて計算を行います。
原則的評価方法においては類似業種比準価格と純資産価額を会社規模に応じて組み合わせることにより株評価を行います。
以下、それぞれの評価方法についてくわしく見ていきましょう。
原則的評価方法
類似業種比準価額は類似業種の株価、1株当たりの配当金額、年間利益金額、純資産価額を基に計算をする方法です。
類似業種比準価額の計算においては評価会社の1株当たりの資本金等の額が50円だった場合の株式数を基にして計算※を行います。
類似業種比準価額は1株当たりの配当金額や利益等を比較して計算する方法です。
配当や利益を比較するには1株当たりの額面金額が揃っていないと比較することができません。
そのため類似業種比準価額の計算においては、実際の株式数に関わらず、1株当たりの資本金等を「50円」とします。
2001年の商法改正まで株式の額面金額が原則的に50円とされており、現在でも多くの会社が資本金額を50円で割った数字を発行済み株式数としているケースが多いです。
しかし、商法改正から20年以上経っており、発行済み株式数が資本金額を50円で割った数字はない会社も増えているため、類似業種比準価額の計算においては1株当たりの額面金額を揃えることとしています。
類似業種比準価額の計算は次の算式によります。
それぞれの内容については後述します。
A=類似業種の株価
Ⓑ=評価会社の1株当たりの配当金額
ⓒ=評価会社の1株当たりの利益金額
Ⓓ=評価会社の1株当たりの純資産価額
B=類似業種の1株当たりの配当金額
C=類似業種の1株当たりの年利益金額
D=類似業種の1株当たりの純資産価額
斟酌率については従業員数、総資産価額、取引額に応じた会社規模ごとに定められています。
大会社=0.7
中会社=0.6
小会社=0.5
類似業種の判定はその会社の売上高がどの業種に分類されるかで判定を行います。
決算書に記載されている売上を日本産業分類により分類を行い、それを国税庁が発表している業種目ごとの売上高に分類します。
類似業種比準価額の計算上の業種目には大分類、中分類、小分類の区分けがあります。
中分類に該当する場合はその中分類とその業種目が属する大分類、小分類に該当する場合はその小分類とその業種目が所属する中分類の評価をそれぞれ行います。
そのため、類似業種比準価額においては1つの会社に対して2つ評価額を計算することとなります。
これら2つの評価額のうち低い金額をもって、その会社の類似業種比準価額とします。
では、自動車小売業を例に業種区分の判定方法を確認しましょう。
事例 業種目判定例:自動車小売業の場合
業種目の判定では「日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価額計算上の業種目との対比表」(以下「対比表」)を使用します。
次の対比表の左側が日本産業分類で、右側が類似業種比準価額の業種目となります。
左側の「自動車小売業」は、右側の業種目では「機械器具小売業」として分類されています。
A=類似業種の株価について
類似業種の判定が終わりましたら、続いて類似業種の株価について確認しましょう。
先ほど確認した業種目の株価のうち、課税時期の属する月の3か月の各月平均、前年平均株価、課税時期の属する月以前2年間の平均のうち最も低い金額を選択することができます。
先ほどの自動車小売業(類似業種比準価額の業種目=機械器具小売業)で課税時期が7月の場合で確認しましょう。
上記一覧表を見ると、機械器具小売業の株価で選ぶことができる金額のうち最も低いものは321円となります。
また機械器具小売業は中分類のため、大分類:小売業の評価も必要となります。
小売業の株価のうち最も低い金額は409円です。
Ⓑ=評価会社の1株当たりの配当金額について
1株当たりの配当金額については直前期末以前2年間における平均配当金額を1株当たりの資本金等の額が50円だった場合の株式数で割ったものを用います。
計算例
資本金等の額:1,000万円
直前期の配当金額:70万円
直前々期の配当金額:50万円
まず、次の式より、1株当たりの資本金等の額が50円の場合の株式数は20万株となります。
1000万円÷50円=20万株
次に、2年間における平均配当金額を上記20万株で割ると、3となります。
(70万円+50万円)÷2÷20万=3
したがって、1株あたりの配当金額は3円となります。
ⓒ=評価会社の1株当たりの利益金額
1株当たりの利益金額については直前期以前1年間の法人税の課税所得金額のうち、固定資産売却益などの非経常的な利益を控除した金額を、1株当たりの資本金等の額が50円だった場合の株式数で割ったものを用います。
ただし、直前期と直前々期の利益金額の平均の方が低い場合は、そちらを用いて計算を行います。
なお、計算した利益金額がマイナスの場合は0として計算します。
計算例
資本金等の額:1,000万円
1株当たりの資本金等の額が50円の場合の株式数:20万株
直前期の利益金額:1,000万円(うち固定資産税売却益が200万円)
直前々期の配当金額:600万円
①(1,000万円ー200万円)÷20万=40
②(1,000万円-200万円+600万円)÷2÷20万=35
③ ①>②
したがって、1株あたりの利益金額は35円となります。
Ⓓ=評価会社の1株当たりの純資産価額
1株当たりの純資産価額は、直前期末における資本金等の額と法人税法上の利益積立金の額の合計額を1株当たりの資本金等の額が50円だった場合の株式数で割って計算します。
この金額がマイナスの場合は0として計算します。
計算例
資本金等の額:1,000万円
1株当たりの資本金等の額が50円の場合の株式数:20万株
直前期の資本金等の額:1,000万円
直前期の法人税法上の利益積立金額:5,000万円( 1,000万円 + 5,000万円 )÷ 20万 = 300
したがって、1株あたりの純資産価額は300円となります。
類似業種比準価額を計算するための要素はこれでそろいました。
先ほど紹介した次の計算式に当てはめて算出してみましょう。
具体例 A ×( Ⓑ/B + ⓒ/C + Ⓓ/D ) ÷ 3 × 斟酌率
【前提】
会社規模:中会社(斟酌率0.6)
業種目:自動車小売業 (小分類:機械器具小売業、中分類:小売業)
資本金等の額:1,000万円
- Ⓑ=評価会社の1株当たりの配当金額:3
- ⓒ=評価会社の1株当たりの利益金額:35
- Ⓓ=評価会社の1株当たりの純資産価額:300
小分類:機械器具小売業の計算
- A=類似業種の株価=321
- B=類似業種の1株当たりの配当金額=6円40銭
- C=類似業種の1株当たりの年利益金額=50円
- D=類似業種の1株当たりの純資産価額=288円
- Ⓑ/B:3 ÷ 6.4 = 0.46(小数点3位以下切り捨て)
- ⓒ/C:35 ÷ 50 = 0.70(小数点3位以下切り捨て)
- Ⓓ/D:300 ÷ 288 = 1.04(小数点3位以下切り捨て)
( Ⓑ/B + ⓒ/C + Ⓓ/D ) ÷ 3 = 0.73(小数点3位以下切り捨て)
321 × 0.73 × 0.6 = 140.5(小数点2位以下切り捨て)
中分類:小売業の計算
- A=類似業種の株価=409
- B=類似業種の1株当たりの配当金額=6円10銭
- C=類似業種の1株当たりの年利益金額=40円
- D=類似業種の1株当たりの純資産価額=293円
- Ⓑ/B:3÷6.1=0.49(小数点3位以下切り捨て)
- ⓒ/C:35÷40=0.87(小数点3位以下切り捨て)
- Ⓓ/D:300÷293=1.02(小数点3位以下切り捨て)
( Ⓑ/B + ⓒ/C + Ⓓ/D ) ÷ 3 = 0.79(小数点3位以下切り捨て)
409 × 0.79 × 0.6 = 193.8(小数点2位以下切り捨て)
評価額の比較
- ① 機械器具小売業 = 140.5
- ② 小売業 = 193.8
- ③ ① < ②
今回のケースでは機械器具小売業の評価額(140.5円)のほうが低いので、類似業種比準価額は機械器具小売業の金額を用いることになります。
以上から、類似業種比準価額は140.5円となります。
純資産価額
純資産価額は資産の相続税評価額の合計額から負債の合計額と評価差額に対する法人税等相当額を控除したものにより計算します。
会社の決算書に記載されている資産の金額は取得価額等を基になっているため、相続税評価額に計算をし直します。
現預金などは決算書に記載されている金額と相続税評価額は同じですが、土地や建物等は異なる金額となることが多いです。
また、相続税評価においての資産とは金銭的に見積もることのできる経済価値のあるすべてのものと定められており、決算書に記載がないものであっても評価をしなければいけません。
負債については確実と認められるものに限られます。
そのため、未払いの税金等については決算書に記載が無くても評価には反映することとなり、必ずしも決算書の数字と一致するわけではありません。
評価差額に対する法人税等を計算するためには相続税評価における純資産から税法上の帳簿価格における純資産を控除した金額に37%を乗じて算出します。
なお、ここでいう純資産とは資産から負債を控除した金額をいいます。
そのため、純資産価額の計算を行うためには資産負債について相続税評価と税法上の帳簿価格に計算し直す必要があります。
計算例 前提:発行済み株式数=100株
相続税評価額 | 税法上の帳簿価格 | |
---|---|---|
資産 | 600,000 | 500,000 |
負債 | 200,000 | 200,000 |
純資産 | 400,000 | 300,000 |
評価差額に相当する金額:400,000 − 300,000 = 100,000
評価差額に対する法人税等相当額:100,000 × 37% = 37,000
純資産価額:400,000 − 37,000 = 363,000
1株当たりの純資産額:363,000 ÷ 100 = 3,630
会社規模による評価方法の違い
原則的評価方法においては会社規模に応じて評価方法が異なります。
会社規模は大会社、中会社の大、中会社の中、中会社の小、小会社の5つに分類されます。
大会社においては類似業種比準価額か純資産価額のいずれかを用いて評価を行います。
一般的には類似業種比準価格は純資産価額より低くなることが多いです。
大会社以外については折衷方式と純資産価額のいずれか低い金額を選びます。
折衷方式は類似業種比準価額と純資産価額に下表の割合を乗じて計算します。
大会社 = 類似業種比準価額又は純資産価額のいずれか低いほう
大会社以外 = 折衷方式又は純資産価額のいずれか低いほう
▶︎ 折衷方式で乗じる割合
会社規模 | 類似業種比準価額 | 純資産価額 |
---|---|---|
中会社の大 | 0.9 | 0.1 |
中会社の中 | 0.75 | 0.25 |
中会社の小 | 0.6 | 0.4 |
小会社 | 0.5 | 0.5 |
計算例
会社規模:中会社の大
類似業種比準価額:1,000
純資産価額:2,000
折衷方式:1,000 × 0.9 + 2,000 × 0.1 = 1,100
評価額:2,000 > 1,100
したがって、1,100円となります。
少数株主の場合 = 配当還元方式
少数株主等※に該当する場合は配当還元方式で株式を評価します。
※少数株主とは、所有割合が半数に満たない株主のことをいいます。
配当還元方式は次の計算式により評価を行います。
1株当たりの配当金額については直前期末以前2年間における平均配当金額を、1株当たりの資本金等の額が50円だった場合の株式数で割ったものを用います。
なお、1株当たりの配当金額が2円50銭未満の場合は2円50銭で計算を行います。
配当還元価格より原則的評価方法が低い場合は原則的評価方法を用いることも認められています。
計算例
評価会社の1株当たりの配当金額:3円
1株当たりの資本金等の額:3,000円
3 ÷ 10% × 3,000 ÷ 50 = 1,800円
したがって、1800円となります。
株式以外の評価方法について
相続税の計算において財産の評価は時価によることとされています。
先ほどご説明した上場株式のように時価が明らかなものもありますが、土地や建物といった不動産については時価が明らかではありません。
そこで土地や建物については評価方法がそれぞれ定められています。
土地の評価方法は「倍率方式」と「路線価方式」に分類されます。
これらの方法はその土地の所在地によって決まっており選択できるものではありません。
一般的に郊外の土地は倍率方式、都市部の土地は路線価方式であることが多いです。
倍率方式は土地の固定資産税評価額にその土地ごとに定められている倍率をかけて評価を行います。
倍率については国税庁が公表している評価倍率表に記載があります。
路線価方式は評価する土地に接している道路に付されている路線価という金額に土地の形状などを加味した加算率を乗じた金額に土地の面積をかけて評価を行います。
STEP3 基礎控除を行い申告が必要か否かを判断する
基礎控除
相続により財産を取得したとしても亡くなった方の遺した財産の総額が基礎控除以下の場合には相続税の納付も申告も不要です。
基礎控除とは3,000万円と600万円に法定相続人の数をかけた金額の合計額です。
法定相続人は亡くなった方に妻や夫のような配偶者がいる場合は必ず法定相続人となり、それ以外については子ども、両親、兄弟の順に法定相続人となります。
法定相続人は順位が決まっており、選ぶということはできません。
そのため子どもが1人、兄弟が3人のケースでは基礎控除を増やすために兄弟を法定相続人とすることはできないので注意しましょう。
具体例 基礎控除額計算例
【前提】
妻、子ども2人、親1人
法定相続人:妻、子ども2人
基礎控除額:3,000万円 + 600万円 ×3 = 4,800万円
STEP4 相続税を計算する
基礎控除額を控除しても金額がある場合は、その金額を法定相続人が法定相続分に応じて財産を取得したものとして仮の相続税額を計算します。
ここで計算する金額はあくまでも相続税の計算のためのものであり法定相続人の実際の取得割合と異なる場合があります。
遺産の分割は相続人同士の遺産分割協議で決まり、必ずしも法定相続分で分割するとは限りません。
では法定相続分とはどのように決まるのでしょうか?
法定相続分とは誰が法定相続人になるかで決まります。
先ほどご説明した通り法定相続人になるには順位が決まっています。
夫や妻のような配偶者は必ず法定相続人となり、それ以外については子ども、親、兄弟の順番になります。
▶︎ 配偶者と子どもが法定相続人の場合
配偶者の法定相続分:1/2
子どもの法定相続分:1/2 (子どもが複数いる場合は人数で均等に割ります)
▶︎ 配偶者と親が法定相続人の場合
配偶者の法定相続分:2/3
親の法定相続分:1/3(親が複数いる場合は人数で均等に割ります)
▶︎ 配偶者と兄弟姉妹が法定相続人の場合
配偶者の法定相続分:3/4
兄弟姉妹の法定相続分:1/4(兄弟姉妹が複数いる場合は人数で均等に割ります)
仮で計算した相続税の総額を実際の取得割合に応じて按分します。
具体例で説明しましょう。
具体例
【前提】
法定相続人:妻、父親、母親課税遺産総額※:1億円2千万円※基礎控除後
実際の取得割合:妻60%・父親30%・母親10%とします。
①まず、仮の相続税の総額を計算します。相続税の総額
- 妻:1億2千万円 × 2/3 = 8千万円 8千万円 × 30%※ − 700万円 = 1,700万円
- 父親:1億2千万円 × 1/3 ÷ 2人 = 2千万円 2千万円 × 15%※ − 50万円 = 250万円
- 母親:1億2千万円 × 1/3 ÷ 2人 = 2千万円 2千万円 × 15%※ − 50万円 = 250万円
合計:2,200万円
※相続税の税率についてはこちら
②次に、実際の取得割合に応じて按分します。
- 妻(60%):2,200万円 × 60% = 1,320万円
- 父親(30%):2,200万円 × 30% = 660万円
- 母親(10%):2,200万円 × 10% = 220万円
取得割合に応じて按分した金額に2割加算や税額控除を加味して納付税額を計算します。
2割加算とは相続により財産を取得した方が亡くなった方の1親等の血族、亡くなった方の配偶者以外の場合に相続税の2割相当額が加算されるという制度です。
子どもや親は1親等の血族ですが兄弟姉妹は1親等の血族ではありません。
そのため兄弟姉妹が相続により財産を取得した場合は2割加算の対象となります。
相続税には下表のとおり、6種類の税額控除があります。
これらを加味して納付税額を計算します。
【相続税の税額控除一覧】
- ① 配偶者の税額軽減
亡くなった方の配偶者に対する税制優遇で少なくとも1億6000万円までの財産については税負担が生じない - ② 贈与税額控除
相続税の計算に含まれた財産に贈与税が課せられていた場合の控除
相続税と贈与税が二重に課税される事を排除することを目的としている - ③ 未成年者控除
相続人が未成年の場合は成年に達するまでの年数に応じて控除する
社会政策的配慮を目的としている - ④ 障害者控除
相続人が障害者の場合は85歳に達するまでの年数に応じて控除する
未成年者控除と同様に社会政策的入りを目的としている - ⑤ 相次相続控除
亡くなった方が10年以内に相続税を納付した場合は一定額を控除
相続が続いた場合の税負担を考慮している - ⑥ 外国税額控除
外国で相続税が課される場合は一定額を控除
上記のケースだと、妻は配偶者の税額軽減を受けるので、1320万円の税金を支払う必要がありません。
したがって、相続税は父親660万円、母親220万円となります。
相続税を自動計算機で簡単に計算
一般の方が自分で計算するのは非常に難しいものとなっております。
当事務所が制作した相続税の概算をシミュレーションできる計算機をご用意いたしました。
ご入力いただければ、概算の相続税額を算出することができますので、ご参考にされてください。
株式の相続で検討すべき税金対策
資産の組み換え(上場株式の場合)
先ほどご説明した通り、相続税の計算において財産を時価評価します。
ただし、土地や建物といった不動産については相続税特有の時価評価を行います。
一般的には土地や建物の相続税評価は時価(市場価格)より低いことが多いです。
そのため上場株式を売却し、その資金で不動産を購入することにより相続税評価を下げることができます。
特にアパート投資などの賃貸不動産については借主の権利が加味されるため自分で使っている不動産より低い評価額となります。
多額の経費で評価額を下げる(非上場株式の場合)
退職金などの多額の経費がある場合は非上場株式の評価額が下がる場合があります。
非上場株式は類似業種比準価額と純資産価額を用いることは先ほどご説明した通りです。
類似業種比準価額は配当、利益、純資産によって評価を行いますが、多額の経費がある場合には利益と純資産を抑えることができます。
純資産価額においても多額の経費は純資産を圧迫しますので株価の引き下げにつながります。
会社規模を大きくする(非上場株式の場合)
非上場株式は大会社、中会社、小会社で評価が変わります。
会社規模が大きければ大きいほど類似業種比準価額を用いる割合が大きくなります。
一般的に類似業種比準価額は純資産価額より評価額が小さいため、会社規模を大きくすることにより類似業種比準価額の割合が大きくなれば株式の評価額も小さくなります。
株式の相続でよくあるご相談
株式の相続税がかからないのはどのような場合か?
株式を含めた全ての財産の金額の合計額が基礎控除以下の場合は相続税がかかりません。
基礎控除は 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数となります。
また、非上場株式においては債務超過の会社の株式は評価額が0円となり、相続税がかかりません。
株式の相続税を払えない場合はどうなる?
相続税は相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告、納付をしなければいけません。
相続税の納付は原則として現金一括払いです。
この期限までに納税ができない場合は不納付加算税や延滞税といってペナルティが発生します。
また非上場株式に対する相続税については「事業承継税制」という制度を使えば納税を猶予することができます。
ただしこの制度を受けるためには手続きや要件等が複雑なうえ、納税猶予を受けている間は継続届出書という書類の提出が求められるため適用を受けるハードルは高いものとなっています。
まとめ
株式の相続でポイントとなる点は、その株式が上場しているかどうかです。
上場株式の場合は時価を把握することや換金することはそれほど難しくありません。
それに対して非上場株式は時価を把握するには株式の評価をしなければいけません。
先ほどご説明した通り非上場株の評価は非常に難しいものです。
評価をするには手間や時間がかかるうえ、一般の方が評価をするのは困難でしょう。
また、非上場株式は容易に換金することはできないうえ、事業の遂行上、経営に携わってない人に株式が渡ることは望ましくありません。
非上場株式を相続する際に誰が株式を引き継ぐのかというだけでなく、納税資金があるのか、事業を引き継ぐ相続人に相続財産が集中しないかなど様々な問題があります。
非上場株式を引き継ぐ方法は相続だけとは限りません。
会社の事業年度ごとの業績によって非上場株式の評価額は大きく変わることもあります。
どういった時期にどういった方法で株式を引き継ぐかで税負担が大きく変わることもあります。
株式の相続に対して不安に抱えている方がいる場合は、精通した専門家にご相談することをおすすめします。