法律上、お墓は祭祀の主宰者に帰属することとなります。
お墓は誰が相続する?
お墓の世話を誰がするかという問題は、亡くなった被相続人に代わってお墓を取得する相続人は誰かという問題であると思います。
ここで、お墓等のいわゆる祭祀財産には、系譜、祭具、墳墓の3種類があり、祭祀財産については、祖先の祭祀の主宰者に帰属するとされています(民法897条)。
(系譜=家系図など、祭具=位牌、仏壇などの祭祀・礼拝に使用されるもの、墳墓=墓石・墓碑などの遺体や遺骨を葬っている設備)
そのため、祭祀財産については、相続財産とはならないため、遺産分割の対象にはなりませんし、相続分や遺留分、特別受益等の問題も起こりません。
祭祀の主宰者とは?
祭祀の主宰者とは、祭祀財産を管理していく者のことをいいます。
では、祭祀の主宰者はどのように決まるのでしょうか。
祭祀の主宰者は、第1に被相続人の指定により、第2に慣習により、第3に家庭裁判所の審判により定まるとされています。
被相続人の指定
被相続人(亡くなった方のこと)は、生前、祖先の祭祀を主宰すべき者を指定できます。
指定の方法は、法律上は特に定めがありません。そのため、口頭でも可能です。
例えば「墓を守ってくれ」との発言を祭祀の主宰者の指定と解した審判例があります(前橋家審平3.5.31)。
しかし、トラブル防止のために意思を明確にしておきたいのであれば、遺言書に明記しておいた方がよいでしょう。
慣習
被相続人による指定がない場合、法律上、慣習によって祭祀の主宰者を決めることとなります。
しかし、現時点において、このような慣習は、存在しないと考えられます。
裁判所も慣習に従った判断として祭祀の主宰者を指定した事例は、少なくとも筆者の経験上ありません。
そのため、この条項の法的な意義は極めて低いと考えます。
家庭裁判所の審判
被相続人の指定がなく、慣習も存在しない場合は、家裁が一切の事情を考慮して、祭祀の主宰者を決めることとなります。
一切の事情については、以下の要素が考えられます。
- 被相続人との身分関係や生活関係
- 被相続人の意思
- 祭祀承継の意思及び能力
- 祭具との場所的関係
- 祭具等の取得の目的や管理の経緯等
お墓の管理者を話し合いで決定できる?
祭祀の主宰者について、決定方法は、上記のとおり、法律で定められています。
では、法律の規定に従わず、話し合いで決定することは可能でしょうか?
お墓の世話を誰がするかについては、実際には、ほとんどのケースで、話し合いで行われています。
また、話し合いに参加しなかった者については、話し合いの結果に拘束されずに、上記法律に基づいて審判の申立てが可能と考えられるため、話し合いによる決定も有効と考えられます。
祭祀財産の承継の注意点
祭祀財産の承継については、承認や放棄の制度はなく、祭祀主宰者とされた者は、権利を放棄したり、辞退したりできるわけではありませんが、承継をしたところで祭祀を行う義務を課されるわけではありません。
被相続人の祭祀承継について争いがある場合、祭祀承継の問題が遺産分割とは別個の審判事件であることから、遺産分割とは別に、祭祀承継者の指定の審判の申立てをする必要があります。
もっとも、当事者全員に争いがない場合には、遺産分割手続きの中で、祭祀承継者を指定して祭祀財産を取得させることにより調停を成立させることは可能です。
なお、遺体・遺骨の所有権の帰属については、「慣習上の祭祀主宰者に遺骨が帰属する。」(最三小判平成元年7月18日)とされています。
まとめ
以上のように、祭祀財産については、状況によって遺産分割とは異なる手続が必要となります。
そのため、祭祀財産も含めた遺産分割の勧め方にご不安がある方は、是非一度、専門家である弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
当事務所の相続対策チームは、相続問題に注力する弁護士が所属しており、親身になって解決方法をご提案いたします。
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