遺言があると寄与分は認められない?事例で解説


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA


寄与分とは、相続人や親族のうち、亡くなった方の財産の維持や増加に特別な貢献をした人がいる場合に、その貢献を評価し、他の相続人との公平を図るために、その人に相続分以上の財産を取得させる制度です。たとえば、被相続人の介護や事業への貢献があった場合に適用されます。

ただし、遺言書がある場合には、原則として遺言書の内容が優先されるため、寄与分が考慮されないこともあります。遺言書の内容次第では、寄与分の主張が認められないケースもあります。

今回は、遺言書で遺贈がなされている場合の寄与分の取り扱いについて、具体的な事例をもとに、相続に詳しい弁護士が解説します。

遺言に対して寄与分についての相談例

事案

私は、長年母と同居し、介護が必要な母の身の回り全般の世話を引き受けてきました。
私には兄と姉がいますが、いずれも他県に住んでおり、母の介護にはほとんど協力してもらっていません。
この母が先日亡くなり、母の遺産すべての分配方法について詳しく書かれた遺言が見つかりました。
遺言によると、兄弟でほぼ同等に遺産を相続することになります。
しかし私としては、母の介護を長期間一人で担当してきたのですから、遺言に書いてある取得分以外にも、寄与分を主張したいと思っています。
この状況で、私は寄与分を主張できるでしょうか。

寄与分とは

寄与分とは、相続人や親族の中に、亡くなった方の財産の維持又は増加について特別の貢献をした人がいる場合、他の相続人との公平を図るために、その増加をさせた相続人等に対して、相続分以上の財産を取得させる制度です。

具体的には、親の家業に従事して親の財産を増やした人、寝たりきり状態の親を自宅で介護をして親の財産の減少を防いだなど、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をしたと評価できる場合に「寄与分」として、貢献した方の相続する財産を増やすことができます。

寄与分のイメージ図

 

 

遺言がある場合の問題

事例は、「遺産すべての分配方法について詳しく書かれた遺言書が存在する」というケースです。

このような状況から、すべての相続財産について、遺贈がなされていると考えられます。

遺贈

遺贈とは、被相続人(亡くなった方)が遺言によって無償で自己の財産を他人に与える行為のことを言います。

遺言の中で行われる行為であり、遺贈を受ける人の承諾なく、亡くなる人が単独でできる行為です。

 

遺贈と寄与分の関係

寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から「遺贈の価額」を控除した残額を超えることはできない、と民法で定められています(904条の2第3項)。

すなわち、寄与分という制度は、被相続人の意思に反しない限りでしか保障されていません。

したがって、財産の価額から遺贈の価額を差し引いた残りがゼロであれば、相続人は寄与分の主張ができなくなるのです。

今回のケースにおいては、遺言により「遺産のすべて」について、その分配方法が書かれているのであれば、寄与分の主張はできなくなってしまうと考えられます。

しかし、記載された財産以外にも他の財産が残っている可能性があります。

そのような状況であれば、寄与分を主張できる可能性は残されています。

したがって、遺言書に記載されている遺産がすべてか否かを調査することが重要となります。

なお、遺言書の中で、「その他一切の財産について誰に分配するのか」を、包括して記載した規定が設けてある場合があります。

このような規定があれば、寄与分の主張は難しいと考えられます。

 

 

まとめ

以上、遺言書で遺贈がなされている場合の寄与分について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか?

寄与分の制度は、共同相続人間の実質的公平を図るために設けられた制度ですが、このように遺言の内容次第では、その主張が封じられてしまうこともあります。

しかし、「すべての遺産が遺贈されているか否か」の判断は、相続専門の弁護士でなければ難しいと考えられます。

そこで、寄与分に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、相続専門の弁護士にご相談されることをおすすめします。

 

 

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