戸籍抄本とは、戸籍に入っている一部の人の身分事項(出生や婚姻、死亡など)を証明する書類(戸籍の一部分の写し)のことです。
この記事では、戸籍抄本に記載されている内容や戸籍謄本との違い、戸籍抄本が必要なケースや戸籍抄本の取り方などについて、弁護士がわかりやすく解説します。
戸籍抄本とは
戸籍抄本の読み方は?
「戸籍抄本」の読み方は「こせきしょうほん」です。
戸籍抄本とは?
そもそも「戸籍」とは、日本国籍のある人(日本人)が生まれてから亡くなるまでの身分事項(出生、婚姻、離婚、養子縁組、離縁、死亡など)を記録したものです。
「戸籍抄本」とは、ある戸籍に記録されている一部の人の身分事項を証明する書類(戸籍の一部分の写し)のことです。
「抄本」という言葉は、「一部分の写し」を意味します。
例えば、戸籍に夫婦と長男・長女の4人の身分事項が記録されている場合に、妻と長男に関する身分事項のみを記載した書類は「戸籍抄本」にあたります。
戸籍抄本の正式名称は「戸籍個人事項証明書」
戸籍抄本の正式名称は「戸籍個人事項証明書」です。
以前は戸籍が紙で管理されており、その頃の正式名称は「戸籍抄本」でした。
戸籍の管理が電子化(コンピュータ化)された現在では、戸籍の一部分の写しの正式名称は「戸籍個人事項証明書」です。
このように呼び方は変わりましたが、戸籍抄本と戸籍個人事項証明書はどちらも、戸籍に入っている一部の人の身分事項を証明する書類(戸籍の一部分の写し)であり、基本的には同じ内容が記載されています。
正式名称が「戸籍個人事項証明書」に変わった現在でも「戸籍抄本」と呼ばれることが多いことから、この記事では「戸籍個人事項証明書」のことを「戸籍抄本」と呼びます。
戸籍抄本の見本
イメージをつかんでいただくために、戸籍抄本(戸籍個人事項証明書)の見本をご覧ください。
戸籍抄本には何が記載されている?
戸籍抄本に記載されているのは大きく次の5つの内容です。
- ① 本籍
- ② 戸籍の筆頭者
- ③ 戸籍事項
- ④ 戸籍に記載されている人の情報
- ⑤ 身分事項
本籍
「本籍」とは戸籍が置かれている場所のことです。
本籍は、都道府県名、市区町村(郡)名、町(丁)字名、地番で表示されます。
戸籍の筆頭者
「戸籍の筆頭者(ひっとうしゃ)」とは、戸籍の一番上に記載されている人のことです。
日本人同士が結婚(婚姻)して新しい戸籍が作られる場合には、名字(姓)を変更しなかった人が筆頭者になります。
「筆頭者」は、住民票などに記載される「世帯主」(収入などの面で世帯を中心的に支える代表者)とは異なります。
戸籍事項
戸籍事項の欄には、戸籍自体に関することがらが記載されます。
具体的には、その戸籍が作られた年月日や変更された年月日とその原因(理由)などが記載されます。
また、戸籍法の改正によって戸籍の様式変更があった場合にはその旨が記載されます。
戸籍に記載されている者の情報
戸籍抄本の場合、「戸籍に記載されている者」の欄には、申請者が戸籍抄本への記載を希望した人の情報のみが記載されます。
記載される情報の内容は、対象者の名前、生年月日、父母の氏名・父母との続柄、養父母の氏名・養父母との続柄(養子の場合のみ)、配偶者区分(夫婦の場合のみ)などです。
身分事項
「身分事項」とは、出生、認知、養子縁組・離縁、入籍、婚姻・離婚、氏の変更、死亡、失踪などの、戸籍上のできごとのことです。
このような身分事項の変動があった場合には、戸籍の届出が必要となります。
例えば「出生」という身分事項については、戸籍に記載されている人の生年月日や生まれた場所、届出の年月日や届出人などの情報が記載されます。
戸籍抄本と戸籍謄本の違い
戸籍謄本とは、戸籍に記録されている全員分の身分事項を証明する書類(戸籍の全部の写し)のことです。
戸籍抄本と戸籍謄本は、いずれも戸籍に記録されている内容が記載された書類(戸籍の写し)である点で共通していますが、戸籍に記録されている全員分の情報(全部の情報)が記載されているのか、それとも一部の人の情報(一部の情報)が記載されているのか、という点で異なります。
戸籍謄本について詳しくは以下をご覧ください。
戸籍抄本と住民票(写し)の違い
「住民票」とは、ある市区町村に住んでいる人(住民)の居住関係を証明するために作られた記録のことをいい、住民票に記載された内容を証明する書類を「住民票の写し」といいます。
住民票には、住民の住所や氏名、生年月日、性別、住民となった日、届出日・以前の住所、世帯主の氏名、世帯主との続柄、本籍・筆頭者氏名、住民票コードなどが記録されます(外国籍の方については国籍や在留資格、在留カード番号なども記載されます)。
住民票には、出生や婚姻、死亡などの身分事項は記録されません。
これに対して、戸籍抄本は戸籍に記載された人の身分事項を証明する書類であり、出生・婚姻・死亡などの身分事項が記載される点で、住民票とは異なります。
また、戸籍抄本には住所が記載されません。
住民票 | 戸籍抄本 | |
---|---|---|
身分事項の記載 | ✕ | ◯ |
住所の記載 | ◯ | ✕ |
本籍・筆頭者 | ◯ | ◯ |
戸籍抄本が必要なケースとは?
戸籍抄本が必要なケースは、次のようなケースです。
- 年金の請求(本人の戸籍謄本、戸籍抄本、住民票、住民票の記録事項証明書のうちいずれか)
- 国家資格の受験・国家資格の登録(本人の戸籍謄本または戸籍抄本)
- 生命保険・簡易保険の請求(亡くなった方の戸籍謄本または戸籍抄本、受取人の戸籍謄本または戸籍抄本)※受取人が指定されている場合
婚姻や離婚の届出については戸籍謄本の提出を必須とする市区町村がほとんどですが、市区町村によっては戸籍抄本でもよいとされる場合があります。
戸籍抄本を利用できないケース
親族関係を厳密に証明する必要があるケースでは「戸籍謄本」の提出が必要となり、戸籍抄本を利用することはできません。
特に、相続に関する手続きでは誰が相続人となるのかを確認する必要があるため、戸籍抄本ではなく戸籍謄本が必要とされる(戸籍抄本を利用できない)場合がほとんどです。
例えば、相続人の調査、相続放棄・限定承認、相続税の申告、不動産の相続登記、遺言書の検認などがこれにあたります。
これらの場面では、被相続人(亡くなった方のことです。)の戸籍謄本等を取得する必要があります。
相続以外で戸籍謄本の提出が必要となる(戸籍抄本を利用できない)ケースとしては、パスポート申請があります。
戸籍抄本の取り方は4つ
戸籍抄本の取り方には、①役場等の窓口で取得する方法、②郵送で取得する方法、③コンビニで取得する方法、④オンラインで取得する方法、の4つの方法があります。
以下では、それぞれの方法について詳しく解説します。
戸籍抄本を役場等の窓口で取得する方法
役場等の窓口へ行って戸籍抄本を取得する方法(窓口交付)です。
窓口交付については、(1)自分で窓口へ行く方法のほかに、(2)代理人に依頼して窓口へ行ってもらう方法があります。
戸籍抄本はどこで取得できる?
戸籍抄本は本籍地の市区町村役場の窓口で取得できます。
また、市区町村によっては、役場の出張所・分室・行政サービスコーナー(各市区町村ごとに呼び方は異なります。)などで取得できる場合があります。
戸籍抄本を市区町村役場の窓口等で取得する場合には、戸籍交付業務の取扱時間内に手続きをする必要があります。
窓口交付で必要な書類とは?
窓口交付に必要な書類は、戸籍抄本を取得できる人(※)が自分自身で窓口へ行く場合と、代理人に依頼して窓口へ行ってもらう場合とで異なります。
※戸籍抄本を取得できる人:本人、本人の配偶者・直系血族(祖父母・父母・子・孫など)、法律で認められている第三者などです。
自分自身で窓口へ行く場合に必要な書類は次のとおりです。
必要な書類 | 説明 |
---|---|
①戸籍証明等請求書 |
|
②本人確認書類 |
|
③請求権限を確認できる書類 |
|
※詳細は各市区町村の窓口にご確認ください。
代理人に依頼して窓口へ行ってもらう場合、自分自身で窓口へ行く場合の書類(上の表の①〜③)に加えて、次の書類(④・⑤)が必要となります。
必要な書類 | 説明 |
---|---|
④代理人の本人確認書類 |
|
⑤委任状 |
|
※詳細は各市区町村の窓口にご確認ください。
本籍地以外で取得する場合
2023(令和5)年11月現在、本籍地以外の市区町村役場等の窓口では戸籍抄本を取得できません。
本籍地の市区町村役場へ行かずに戸籍抄本を取得したい場合には、郵送交付やコンビニ交付、オンライン申請を利用する必要があります。
もっとも、戸籍法の改正が行われたことにより、2024(令和6)年3月1日からは本籍地以外の役場等の窓口で戸籍抄本を取得できるようになる予定です。
取得にかかる費用
戸籍抄本を窓口で取得するのにかかる費用(手数料)は、原則として全国一律450円です。
手数料は現金で支払います。
戸籍抄本を郵送で取得する方法
戸籍抄本の申込みを郵送で行い、郵送で戸籍抄本を取得する方法(郵送交付)です。
郵送交付についても、(1)自分で郵送交付を請求する方法のほかに、(2)代理人に依頼して郵送交付を請求してもらう方法があります。
郵送の場合に必要なものとは?
郵送の場合に必要なものは、自分で郵送交付を請求する場合と、代理人に依頼して郵送交付を請求してもらう場合とで異なります。
自分で郵送交付を請求する場合に必要なものは次のとおりです。
必要なもの | 説明 |
---|---|
①戸籍証明等請求書(郵送用) | 各市区町村のHPからダウンロード・印刷して、必要事項を記入します。 |
②本人確認書類のコピー |
※本人の住所が記載されたものが必要です。 |
③請求権限を確認できる書類 |
|
④手数料 | 定額小為替(市区町村によっては普通為替や現金書留に対応している場合があります) |
⑤返信用封筒 | 返信用封筒に返送先の住所と氏名を記載し、必要な切手を貼ります。 |
※詳細は各市区町村の窓口にご確認ください。
代理人に依頼して郵送交付を請求してもらう場合、自分自身で窓口へ行く場合の書類(上の表の①〜⑤)に加えて、次の書類(⑥・⑦)が必要となります。
必要な書類 | 説明 |
---|---|
⑥代理人の本人確認書類 |
|
⑦委任状 |
|
取得にかかる費用
戸籍抄本を郵送で取得する場合、①交付の手数料に加えて②往復の郵送料(切手代)がかかります。
①交付の手数料は、原則として全国一律450円です。
②往復の郵送料(切手代)は、郵送の方法や送付する書類の重さによって変わります。
戸籍抄本をコンビニで取得する方法
コンビニに設置されているマルチコピー機(キオスク端末)で戸籍抄本を取得する方法(コンビニ交付)です。
コンビニ交付を利用するためには、以下の3つの条件をすべて満たすことが必要です。
- (1) 自分のマイナンバーカード(個人番号カード)を持っていること
- (2) 本籍地の市区町村がコンビニ交付に対応していること
- (3) コンビニの店舗にコンビニ交付に対応しているマルチコピー機が設置されていること
どれか1つでも条件を満たさない場合には利用することができません。
コンビニ交付の利用方法は、本籍地の市区町村に住所があるかどうかによって変わります。
本籍地の市区町村に住所がある場合、上の3つの条件を満たしていれば、すぐにコンビニへ行って戸籍謄本を取得することができます(一般的には戸籍抄本1枚あたり5〜10分程度)。
本籍地の市区町村に住所がない場合、事前に利用登録申請をする必要があります。
より具体的には、利用登録申請→利用登録完了→コンビニで戸籍抄本を取得、という流れになります。
コンビニ交付の場合に必要なものとは?
コンビニ交付の場合に必要なものはマイナンバーカードのみです。
マイナンバーの通知カード(紙製のもの)では取得することができませんので、ご注意ください。
必要なもの | 説明 |
---|---|
マイナンバーカード(個人番号カード) | 市区町村によっては住基カードで取得できる場合もあります。 |
取得にかかる費用
戸籍抄本をコンビニで取得する費用は、各市区町村によって異なります。
多くの市区町村では300円〜400円の間で設定しており、窓口で取得する場合(全国一律450円)よりも安く設定するケースが多いようです。
マルチコピー機を利用する場合、基本的に支払いは現金で行います(各コンビ二によって異なる場合があります)。
戸籍抄本をコンビニで取得する方法は以下をご覧ください。
戸籍抄本をオンラインで取得する方法
スマートフォンのアプリを利用して戸籍抄本の交付申込みをして、郵送で戸籍抄本を取得する方法です(オンライン申請)。
オンライン申請を利用するためには、以下の4つの条件をすべて満たすことが必要です。
- (1) マイナンバーカード(個人番号カード)を持っていること
- (2) 本籍地の市区町村がオンライン申請に対応していること
- (3) マイナンバーカードの読み取りに対応しているスマートフォンを持っていること
- (4) クレジットカードを持っていること
オンライン申請の場合に必要なものとは?
オンライン申請の場合に必要なものは、次のとおりです。
必要なもの | 説明 |
---|---|
①スマートフォン | マイナンバーカードの読み取りに対応しているものであることが必要です。 |
②マイナンバーカード(個人番号カード) | マイナンバーの通知カード(紙製のもの)では取得することができません。 |
③クレジットカード | 手数料の支払方法は基本的にクレジットカード払いのみです(※市区町村によって異なる場合があります)。 |
取得にかかる費用
戸籍抄本をオンラインで取得する場合、①交付の手数料に加えて②片道の郵送料(切手代)がかかります。
-
- ① 交付の手数料は、原則として全国一律450円です。
- ② 片道の郵送料(切手代)は、郵送の方法や送付する書類の重さによって変わります。
費用(手数料・郵送料の支払いは基本的にクレジットカード払いです。
4つの取得方法のメリットとデメリットのまとめ
4つの取得方法にはそれぞれ、次のようなメリット・デメリットがあります。
役場等の窓口で取得
-
メリット
- その場で取得できる(所要時間15分〜20分程度)
- マイナンバーカードがない場合でも取得できる
-
デメリット
- 決められた取扱時間内(多くの場合は平日の日中)に本籍地の役場等へ行く必要がある
- 本籍地と住所が離れている場合は窓口へ行くのが大変
郵送で取得
-
メリット
- 役所に行かずに取得できる
- 役所等のサービス取扱時間を気にしなくてよい
- マイナンバーカードがない場合でも取得できる
-
デメリット
- 必要書類等を用意するための手間がかかる
- 戸籍抄本の取得までに時間がかかる(申し込みから取得まで10日前後)
コンビニで取得
-
メリット
- 最寄りのコンビニで取得できる
- 早朝・深夜の時間帯でも取得できる(ただし市区町村により異なる場合もあり)
- 事前準備が済んでいれば短時間(5〜10分程度)で取得できる
- 窓口よりも費用が安い場合が多い(ただし市区町村により異なる)
-
デメリット
- マイナンバーカードがなければ利用できない
- 本籍地の市区町村がコンビニ対応していなければ利用できない
- 事前の利用申請が必要な場合(本籍地の市区町村に住所がない場合)、手続きの手間と時間がかかる
- マルチコピー機が設置されていない店舗では利用できない
オンラインで取得
-
メリット
- 役所に行かずに取得できる
- 役所等のサービス取扱時間を気にしなくてよい(24時間365日利用できる)※市区町村によって運用は異なる可能性があります
-
デメリット
- マイナンバーカードがなければ利用できない
- 本籍地の市区町村がオンライン申請に対応していなければ利用できない
- マイナンバーカードの読み取りに対応しているスマートフォンが必要
- 取得までに時間がかかる(申し込みから取得まで5日前後)
これらのメリット・デメリットを比較・検討して、ご自身のニーズに合った取得方法を選ぶことが大切です。
まとめ
- 戸籍抄本とは、戸籍(日本人の出生から死亡までの身分事項を記録したもの)に含まれている一部の人の戸籍情報が記載された書類(戸籍の一部分の写し)のことをいいます。
- 戸籍抄本と戸籍謄本は、記載されている内容が戸籍に入っている一部の人の情報か、全員分の情報かという点で異なります。
- 戸籍抄本が必要となるケースは、年金の請求、国家資格の受験・国家資格の登録、生命保険・簡易保険の請求(受取人が指定されている場合)などです。
相続に関する手続きなど、親族関係(相続人など)を厳密に証明する必要がある場合には「戸籍謄本」の提出が必要となり、戸籍抄本を利用することはできません。 - 戸籍抄本を取得する方法には、①窓口での取得、②郵送での取得、③コンビニでの取得、④オンラインでの取得、の4つがあります。
- 戸籍謄本や戸籍抄本の取得は弁護士などの専門家に依頼することもできます。
相続についてわからないことや不安なことがある場合、相続トラブルをかかえている場合には、あわせて弁護士に相談されることをおすすめします。 - 当事務所では、戸籍謄本・戸籍抄本の取得をはじめ、相続人の調査、遺産分割協議、相続トラブルの解決、相続登記、遺言書の作成などの相続に関するご相談に幅広く対応しています。
初回の相談は無料ですので、ぜひお気軽にご利用ください。