相続人の順位とは?ケース別にわかりやすく解説


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

相続人の順位とは、亡くなった方(「被相続人」といいます。)の遺産を取得することができる相続人の優先順位のことをいいます。

相続人の順位については、被相続人が遺言書で指定する場合のほか、法律(民法)のルールに従って決められる場合があります。

この記事では、相続人の順位がどのように決められるのか、相続人がいくらの遺産をもらえるのか、といった点について、相続にくわしい弁護士が具体的な事例をあげてわかりやすく解説します。

相続人の順位とは?

相続人の順位とは、どの相続人が優先的に被相続人の遺産を相続するのか、という相続人間での相続の優先順位のことです。

そもそも「相続人」とは、被相続人の遺産を引き継ぐ権利と義務をもつ人のことをいいます。

相続人の範囲は民法で定められており、①被相続人の配偶者(妻・夫)、②被相続人の子、③被相続人の直系尊属、④被相続人の兄弟姉妹が相続人にあたります。

被相続人が遺言書を作成する場合、被相続人は原則として自由に相続人の優先順位を指定することができます。

被相続人が遺言書を作成しない場合、相続人の優先順位は民法のルールによって決められます

一般的には「相続人の順位」という場合、後者の民法のルールによって決められる相続人の優先順位を指すことが多いといえます。

相続人の順位

民法の定めている相続人の順位は下表のとおりです。

被相続人が遺言書で相続人を指定していない場合には、この順位にしたがって遺産を相続します。

相続人の順位一覧

 

常に相続人:被相続人の配偶者

被相続人の配偶者(妻・夫)は常に相続人となり、他の相続人(被相続人の子・直系尊属・兄弟姉妹)がいるときは、他の相続人と同順位として扱われます。

「被相続人の配偶者」とは、被相続人と法律上の婚姻関係にある妻または夫を指します。

内縁の妻・夫や、離婚した元妻・元夫は法律上の婚姻関係にないため「配偶者」にあたらず、遺産を相続することはできません。

 

第一順位:被相続人の子

第一順位の相続人は被相続人の子どもです。

被相続人の子どもは、他の相続人(被相続人の直系尊属や兄弟姉妹)よりも優先的に遺産を相続します。

「被相続人の子」とは、被相続人と法律上の親子関係にある子どもを指します。

養子縁組によって法律上の親子関係となった養子や、認知された非嫡出子(婚姻関係にない男女の間に生まれた子どものことをいいます。)、離婚した元配偶者との間に生まれた子どもも、被相続人と法律上の親子関係にあります。

したがって、これらの子どもはいずれも第一順位の相続人として遺産を相続することができます。

代襲相続・再代襲相続

被相続人に子どもと孫(子どもの子ども)がいる場合で、被相続人よりも先に子どもが亡くなったときには、孫が子どもの代わりに遺産を相続します。

これを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」といいます。

遺産を代襲相続する人(孫)のことを「代襲相続人」、代襲相続される人(子ども)のことを「被代襲者」といいます。

代襲相続人である孫は、亡くなった相続人の地位を引き継ぐこととなるため、第一順位の相続人になります。

さらに、被相続人に子どもと孫とひ孫がいる場合で、被相続人よりも先に子どもと孫が亡くなったときは、ひ孫が子どもの代わりに遺産を相続します。

これを「再代襲相続」といいます。

 

第二順位:被相続人の直系尊属

第二順位の相続人は被相続人の直系尊属(ちょっけいそんぞく)です。

直系尊属とは、被相続人の父母、祖父母、曽祖父母などの、縦のラインでつながる上の世代の親族のことをいいます。

直系尊属は、第一順位の相続人である被相続人の子どもや代襲相続人(孫)がいない場合に、遺産を相続します。

直系尊属の中にも優先順位があり、被相続人と最も近い関係にある直系尊属(父母)が優先されます。

また、「被相続人の直系尊属」には被相続人と養子縁組をした養父母も含まれます。

 

第三順位:被相続人の兄弟姉妹

第三順位の相続人は被相続人の兄弟姉妹です。

被相続人の兄弟姉妹は、被相続人の子・孫(第一順位の相続人)や被相続人の親・祖父母(第二順位の相続人)がいない場合にはじめて、遺産を相続します。

代襲相続

被相続人に兄弟姉妹と甥・姪(被相続人の兄弟姉妹の子ども)がいる場合で、被相続人よりも先に兄弟姉妹が亡くなったときは、甥・姪が兄弟姉妹の代わりに第三順位の相続人として遺産を相続します(代襲相続)。

子どもの場合とは異なり、兄弟姉妹の場合には再代襲相続はありません。

 

 

どの相続人がいくらもらえるの?

どの相続人がいくら(どのくらい)遺産をもらえるのか、という遺産の取り分を割合であらわしたものを「相続分(そうぞくぶん)」または「相続割合(そうぞくわりあい)」といいます。

具体的にどの相続人がいくらの遺産をもらえるのかは、次の計算式によって計算されます。

遺産全体の金額  ✕  各相続人の相続分

 

指定相続分と法定相続分

相続分には大きく指定相続分と法定相続分の2種類があります。

指定相続分

指定相続分とは、被相続人が遺言書によって指定する遺産の取り分のことです。

被相続人は、遺言書を作成することによって、どの相続人にいくら(どのくらいの割合)の遺産を与えるのかを原則として自由に指定することができます(指定の限界については後ほど説明します)。

法定相続分

法定相続分とは、相続人が複数人いる場合に、どの相続人がいくら(どのくらいの割合)の遺産をもらうべきかについて、法律(民法)が定めている目安のことをいいます。

法定相続分は、被相続人との関係性の近さなどを考慮して公平の観点から定められていることから、遺産を分ける際の目安・基準として利用されます。

必ず法定相続分のとおりに遺産を分けなければならないという強制力をもつものではありません。

法定相続分の基本的なルールは、次のとおりです。

相続人が単独で遺産を相続する場合

相続人(配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹)が単独で遺産を相続する場合の法定相続分は、以下のとおりです。

  • 配偶者だけが相続人となる場合の法定相続分は100%です(一人で遺産を独占します)。
  • 配偶者以外の相続人(被相続人の子、直系尊属、兄弟姉妹)が2人以上で遺産を相続する場合、それぞれの相続人の遺産の法定相続分は、人数で等分した割合となります(※)。

例えば、被相続人の子ども1人のみが相続人となる場合の法定相続分は100%(一人で遺産を独占)、3人が相続人となる場合の法定相続分はそれぞれ1/3ずつです。

また、被相続人の父母がともに相続人となる場合の法定相続分は、それぞれ1/2ずつです。

※例外として、父親または母親の片方だけが同じ兄弟姉妹(いわゆる「半血」の兄弟姉妹)の法定相続分は、父母の両方が同じ兄弟姉妹の1/2とされています。

配偶者と他の相続人がともに遺産を相続する場合

配偶者と他の相続人がともに相続人となる場合の法定相続分は、次のとおりです。

相続人 法定相続分
配偶者と子 配偶者:子=1/2:1/2
配偶者と直系尊属 配偶者:直系尊属=2/3 : 1/3
配偶者と兄弟姉妹 配偶者:兄弟姉妹=3/4 :1/4
  • 配偶者以外の相続人が2人以上いる場合には、上記の割合をさらに人数で等分したものが法定相続分となります。例えば、被相続人の妻と子ども2人(長男・長女)が相続人となる場合の法定相続分は次のとおりです。
    妻の法定相続分:1/2
    長男・長女の法定相続分:それぞれ1/4(計算式:1/2 ✕ 1/2 = 1/4)
  • 代襲相続人(孫や甥姪)は、被代襲者(子や兄弟姉妹)の法定相続分を引き継ぎます。例えば、妻と代襲相続人である孫1人が相続する場合の法定相続割合はそれぞれ、妻1/2、孫1/2です。
  • 代襲相続人が2人以上いる場合には、被代襲者の法定相続分を人数で等分したものがそれぞれの法定相続分となります。例えば、被相続人の姉が先に亡くなった場合で、姉の長男(甥)と長女(姪)2人が代襲相続人となる場合、甥・姪の法定相続分は、それぞれ1/8(計算式:1/4✕1/2=1/8)です。
【 相続の順位と法定相続分 】

ここまで説明してきた相続人の順位と法定相続分をまとめたものが、以下の表です。

法定相続人と相続割合一覧

 

どの相続人がいくらもらうかを決める方法

どの相続人が遺産をいくらもらうかを決める方法には、大きく3つの方法があります。

  1. ① 被相続人が遺言書で決める方法(指定相続分)
  2. ② 相続人同士の話し合いで決める方法(遺産分割協議・遺産分割調停)
  3. ③ 裁判所が決める方法(遺産分割審判)

①被相続人が遺言書で決める方法(指定相続分)

上で説明したように、被相続人は遺言書を作成して、どの相続人にどのくらいの(いくら分の)遺産を取得させるかを自由に決めることができます。

②相続人同士の話し合いで決める方法(遺産分割協議・遺産分割調停)

被相続人が遺言書を残していなかった場合、どの相続人がいくらの遺産をもらうのかは、相続人全員の話し合いで決めることとなります。

相続人だけの話し合いで決める場合を「遺産分割協議」といいます。

相続人だけでは話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の調停委員会に間に入ってもらったうえで話し合いを行い、誰がいくらの遺産をもらうのかを決めることができます(これを「遺産分割調停」といいます)。

遺産分割調停には家庭裁判所が介入しますが、調停はあくまでも相続人同士の話し合いによる解決をめざす手続きであり、相続人全員が合意することができない場合には、調停は不成立に終わります。

遺産分割協議または遺産分割調停のどちらを行う場合であっても、相続人は法定相続分を参考にして、誰がいくらの遺産をもらうのかを決めるのが一般的です。

法定相続分はあくまでも目安・基準にすぎないため、相続人全員が合意していれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることもできます。

③裁判所が決める方法

遺産分割調停が不成立に終わった場合、自動的に「遺産分割審判」へと移行します。

遺産分割審判では、相続人から提出された資料などをもとに、どの相続人がいくらの遺産をもらうのかを家庭裁判所が判断します。

家庭裁判所は基本的に、法定相続分に従って遺産の取り分を決めることになります。

 

 

相続人の順位と法定相続分の具体例

ここでは、被相続人が遺言書を残していない場合に、相続人の順位と法定相続分がどのようになるのかについて具体例で解説します。

具体例①

被相続人には、①妻A、②妻Aとの間に生まれた子X、②離婚した元妻Bとの間に生まれた子Y、③結婚していない女性Cとの間に生まれた子Z(被相続人は過去にZを認知した。)がいる。

この事例では、妻A、子X・Y・Zが第一順位の相続人となります。

また、X、Y、Zの法定相続分に差はありません。

したがって、妻A、子X・Y・Zの法定相続分は、それぞれ次のとおりです。

妻Aの法定相続分:1/2

X・Yの法定相続分:それぞれ1/6 (計算式:1/2 ✕ 1/3 = 1/6)

 

具体例②

被相続人には、①妻A、②妻Aの連れ子X(被相続人と養子縁組はしていない。)、③母親B、④父親Cがいる。

この事例では、妻A、母親B、父親Cが第二順位の相続人となります。

Aの連れ子であるXは被相続人との間には法律上の親子関係がないため、相続人にあたりません。

妻A、母親B・父親Cの法定相続分は、それぞれ次のとおりです。

妻Aの法定相続分:2/3

母親B・父親Cの法定相続分:それぞれ1/6 (計算式:1/3 ✕ 1/2 = 1/6)

なお、仮に被相続人がAの連れ子Xと養子縁組をしていた場合、妻Aと連れ子Xが第一順位の相続人となり、母親B・父親C(第二順位)は相続人となりません。

 

具体例③

被相続人には、①長男A、②長男Aの子(被相続人の孫)X・Y、③次男B(次男には子どもがいない。)、④長女C(長女Cには子どもがいない。)がいた。

長男Aは被相続人より先に死亡した。

この事例では、被相続人の孫(長男の子)であるX・Yが、長男Aを代襲相続することとなります。

したがって、孫X・Y、次男B、長女Cが第一順位の相続人となります。

孫X・Yの法定相続分は、本来の長男Aの法定相続分を均等に人数割りした割合となります。

孫X・Y、次男B・長女Cの法定相続分は、それぞれ次のとおりです。

孫X・Yの法定相続分:1/6(計算式:1/3 ✕ 1/2 = 1/6)

次男B・長女Cの法定相続分:それぞれ1/3

 

具体例④

被相続人には、①妻A、②姉B(両親が同じ)、③弟C(母親が異なる)がいる。

この事例では、被相続人の妻A、姉B、弟Cが第三順位の相続人となります。

妻Aと姉B・弟Cは、3/4:1/4の割合で遺産を相続します。

さらに、姉Bと弟Cは1/4の法定相続分を分け合うことになりますが、弟Cはいわゆる半血の兄弟であるため、弟Cの取り分は姉Bの1/2となります(姉B:弟C=2/3:1/3)。

以上より、妻A、姉B・弟Cの法定相続分は、それぞれ次のとおりです。

妻A:3/4

姉B:1/6(計算式:1/4 ✕ 2/3 = 1/6)

弟C:1/12(計算式:1/4 ✕ 1/3 = 1/12)

 

 

相続人の順位の注意点

相続人は必ず戸籍謄本等で確認する

相続が開始したら、まずは戸籍謄本等を取り寄せて相続人を正確に把握することが大切です。

被相続人の隠し子など、存在の知られていない相続人がいる可能性があるためです。

優先順位の高い相続人を把握できていなかった場合には、相続人全員で行わなければならない遺産分割協議が無効になってしまったり、想定外の相手から遺留分の請求を受けてしまったりする可能性があります。

被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本(除籍謄本や改製原戸籍謄本等を含みます。)を取り寄せて、相続人を漏れなく確認することが大切です。

 

遺言書の指定が優先される

被相続人が遺言書を作成して民法のルールとは異なる相続人の優先順位を指定している場合、基本的にはその遺言書で指定された順位が優先されます。

事例
被相続人には長男太郎(第一順位の相続人)と母親(第二順位の相続人)、妹A子(第三順位の相続人)がいる(配偶者や親、その他の兄弟はすでに他界)。被相続人の妹は病気で身体の不自由な被相続人と同居し、献身的に介護してくれたことから、妹に遺産の一部を相続させたいと考え、「長男太郎に遺産の三分の二を、妹A子に遺産の三分の一を、それぞれ相続させる。」という遺言書を作成した。

この事例で、妹A子は第三順位の相続人ですが、長男太郎(第一順位の相続人)とともに相続人となることができ、遺言書の内容にしたがって遺産の三分の一を相続することができます。

お世話になった低い順位の相続人に遺産を相続させたいという場合には、遺言書を活用することが考えられます。

 

遺留分に注意

上で説明したように、被相続人は遺言書を作成することによって、原則として自由に相続の順位や相続分を指定することができますが、遺留分(いりゅうぶん)による制限があるため、注意が必要です。

遺留分とは、相続人のうち、被相続人の配偶者、子、直系尊属に対して法律(民法)が保障している、遺産の最低限の取り分のことです(兄弟姉妹には遺留分の保障がありません)。

この遺留分は遺言書によっても奪うことのできない権利です。

遺言書等によって遺留分を侵害された相続人は、侵害の原因となっている遺産を受け取った他の相続人に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを請求することができます。

例えば、被相続人には①妻X、②関係性の良くない一人息子(長男)A、③母親Yがいるというケースで、「遺産の1/2を妻Xに、1/2を母親Yに、それぞれ相続させる」という遺言書を作成した場合について検討してみましょう。

この事例で、被相続人は第一順位の相続人である長男Aの相続分をゼロに指定し、第二順位の相続人である母親Yに遺産を相続させる内容の遺言書を作成することによって、長男Aの遺留分を侵害しています。

この場合、長男Aは他の相続人に対して、遺留分の支払いを請求することができます。

遺留分を侵害する遺言書は相続人間のトラブルにつながるリスクがあるため、注意が必要です。

なお、兄弟姉妹(第三順位の相続人)には遺留分の保障がないため、仲の悪い兄弟姉妹に遺産を渡したくない場合には、兄弟姉妹の相続分をゼロとする(兄弟姉妹以外にすべての遺産を取得させる)内容の遺言書を作成することで、その目的を達成することができます。

 

相続人が相続の順位を変えることはできない

相続人の順位を変更できるのは被相続人だけであり、相続人同士の合意で相続の順位を変えることはできません。

例えば、被相続人が遺言書等を残さずに亡くなった場合で、被相続人の夫と子ども(長男・次男)のほかに被相続人の母親(第二順位の相続人)がいるときに、夫と子ども(長男・次男)全員が合意しても、母親をまじえて遺産分割協議をすることはできません。

どうしても被相続人の遺産の一部を被相続人の母親に与えたいという場合には、相続人の誰か(例えば夫)がいったん遺産を相続した上で、その相続した遺産を母親に贈与するなどの方法をとる必要があります。

 

相続放棄・相続廃除・相続欠格によって順位が変わることがある

相続放棄(そうぞくほうき)、相続廃除(そうぞくはいじょ)、相続欠格(そうぞくけっかく)はいずれも、相続権を失わせる(もしくは自ら失う)制度です。

これらの制度によって上の順位の相続人全員が相続権を失った場合には、次の順位の相続人が遺産を相続します。

例えば、被相続人に妻と長男・次男(第一順位の相続人)、母親がいるというケースで、長男と次男の両方が相続放棄をした場合には、被相続人の妻と母親(第二順位の相続人)が遺産を相続することになります。

相続放棄・相続廃除・相続欠格の内容は、それぞれ次のとおりです。

相続放棄 相続人になる予定の人(「推定相続人」といいます。)が、自分の意志で相続を辞退する制度です。
相続廃除 被相続人に対するひどい虐待や侮辱などの著しい非行行為があった場合に、被相続人の意志で推定相続人の相続権を失わせる制度です。
相続欠格 推定相続人が違法行為等(例えば、遺言書の偽造等)によって自分にとって有利に遺産相続を進めようとした場合に、法律上当然に相続権を失わせる制度です(被相続人等による申し立ては不要)。

ただし、相続廃除・相続欠格については代襲相続があります。

例えば、被相続人の長男が相続廃除された場合で、長男の子ども(被相続人にとっての孫)がいるときは、長男の子どもが第一順位の相続人として遺産を代襲相続します。

これに対して、相続放棄については代襲相続がありません。

被相続人の立場から、推定相続人である配偶者や子ども(第一順位)・父母等(第二順位)からひどい虐待や暴言を受けるなどしたため、一切の遺産を渡したくないという場合には、相続廃除を検討しましょう。

配偶者・子ども・父母については遺留分が保障されているため、相続放棄、相続廃除または相続欠格のいずれかによって相続権自体を失わない限り、一定の遺産を相続することができるためです(兄弟姉妹については遺言書で取り分をゼロに指定するだけで足ります)。

 

相続人の順位についてのQ&A

相続の第一順位の相続人は誰ですか?


第一順位の相続人は、「被相続人の子」です。

相続の時点で被相続人の子のほかに配偶者がいるときは、配偶者も被相続人の子と同順位(第一順位)の相続人になります。

「被相続人の子」とは、被相続人との間に法律上の親子関係がある子どものことをいいます。

また、被相続人の子どもがすでに亡くなっている場合で、子どもの子ども(孫)がいる場合には、孫が代襲相続人となり、子どもの順位(第一順位)を引き継いで遺産を相続します(代襲相続)。

また、上でも説明したように、被相続人の養子や認知された非嫡出子、離婚した元配偶者との間の子に生まれた子どもも被相続人との間に法律上の親子関係が認められるため、第一順位の相続人となります。

これに対して、再婚した配偶者の連れ子(養子縁組をしていない場合)や孫(子どもが生きており代襲相続人とならない場合)は、第一順位の相続人にあたりません。

 

死亡した場合の相続順位は?


上で解説したとおり、親が死亡した場合、第一順位の相続人は子供となります。

 

 

相続人が誰もいない場合はどうなる?



遺言書がある場合とない場合で異なります。

遺言書がある場合

被相続人が遺言書を作成していた場合、遺産は遺言書に従って取り扱われます

例えば、遺産を与える相手(特定の団体や人)を指定していた場合、遺産は遺言書で指定された相手が取得します。

遺言書がない場合

被相続人が遺言書を作成していない場合、家庭裁判所が相続財産清算人(被相続人の遺産の管理を行う人のことです。)を選任します。

相続財産清算人は、まずは遺産の中から被相続人の借金等の支払いを行います。

借金等の支払いをしてもなお遺産が残っている場合、特別縁故者からの請求があったときには、家庭裁判所の判断によって特別縁故者に遺産を取得させることができます。

特別縁故者(とくべつえんこしゃ)とは、亡くなった方との間に特別な結びつきが認められる人のことをいい、例えば、内縁の妻や夫、被相続人を献身的に看護・介護していた人などがこれにあたります。

特別縁故者への財産分与をしてもさらに遺産が残っている場合、相続財産管理人は被相続人の財産について国庫帰属(財産を国に取得させることをいいます。)の手続きをします。

 

 

まとめ

・相続人の順位とは、被相続人の遺産を相続できる相続人の優先順位のことです。

・被相続人は、遺言書を作成して相続人の順位を自由に決めることができます(ただし、遺留分による指定の限界があります)。

・被相続人が遺言書で相続人の順位を指定していない場合、相続人の順位は法律(民法)のルールにしたがって決められます。

相続人の順位は相続人同士の合意によっても変更することはできません。

・法律(民法)は、それぞれの相続人の遺産の取り分について、目安となる割合(法定相続分)を定めています。

法定相続分は必ずそのとおりに遺産を分けなければならないという強制的なルールではなく、目安・基準にすぎないため、遺言書や相続人同士の合意によって変更することができます。

・遺産相続については民法でさまざまなルールが定められており、ルールの全体像を正確に把握するためには高度の専門知識が必要です。

相続人同士のトラブルを避け、遺産相続で損をしないためには、相続について少しでも疑問や不安がある場合には相続問題にくわしい弁護士に相談されることを強くおすすめします。

・当事務所では、相続問題にくわしい弁護士で構成する相続対策専門チームを設置しています。

相続人の調査や遺産の調査だけでなく、遺言書の作成、遺産分割協議、遺産分割調停・審判、相続登記、相続税の申告・節税対策など、相続に関する幅広いご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

 

 


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