非上場株式の評価とは?取引相場がない株式の計算方法を解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA


非上場株式の評価には、原則的評価方式と配当還元方式の2つがあります。

原則的評価方式においては、類似業種比準方式と純資産価額方式を会社規模に応じて組み合わせることにより株評価を行います。

配当還元方式は、少数株主等に該当する場合に用いられます。

この記事では、非上場株式の評価方法をわかりやすく解説しています。

非上場株式を相続する方や事業承継する後継者の方は、参考になさってください。

非上場株式の評価方法とは?

非上場株式の評価方法は、大きく分けて「原則的評価方式」と「配当還元方式」の2つがあります。

「原則的評価方式」においては、類似業種比準方式と純資産価額方式を会社規模に応じて組み合わせることにより株評価を行います。

「配当還元方式」は、少数株主等に該当する場合に用いられます。

※少数株主とは、所有割合が半数に満たない株主のことをいいます。

評価方法 ケース
原則的評価方式
  • 類似業種比準方式
  • 純資産価額方式
原則:少数株主に該当しないケース
配当還元方式 特例:少数株主に該当するケース

以下、それぞれの評価方法についてくわしく見ていきましょう。

 

 

原則的評価方法〜類似業種比準方式

類似業種比準方式は類似業種の株価、1株当たりの配当金額、年間利益金額、純資産価額方式を基に計算をする方法です。

類似業種比準方式の計算においては評価会社の1株当たりの資本金等の額が50円だった場合の株式数を基にして計算を行います。

※ワンポイント:なぜ50円とするの?

類似業種比準方式は1株当たりの配当金額や利益等を比較して計算する方法です。
配当や利益を比較するには1株当たりの額面金額が揃っていないと比較することができません。
そのため類似業種比準方式の計算においては、実際の株式数に関わらず、1株当たりの資本金等を「50円」とします。
2001年の商法改正まで株式の額面金額が原則的に50円とされており、現在でも多くの会社が資本金額を50円で割った数字を発行済み株式数としているケースが多いです。
しかし、商法改正から20年以上経っており、発行済み株式数が資本金額を50円で割った数字はない会社も増えているため、類似業種比準方式の計算においては1株当たりの額面金額を揃えることとしています。

類似業種比準方式の計算は次の算式によります。

それぞれの内容については後述します。

A ×( Ⓑ/B + ⓒ/C + Ⓓ/D ) ÷ 3 × 斟酌率

A=類似業種の株価
Ⓑ=評価会社の1株当たりの配当金額
ⓒ=評価会社の1株当たりの利益金額
Ⓓ=評価会社の1株当たりの純資産価額方式
B=類似業種の1株当たりの配当金額
C=類似業種の1株当たりの年利益金額
D=類似業種の1株当たりの純資産価額方式

斟酌率については従業員数、総資産価額、取引額に応じた会社規模ごとに定められています。
大会社=0.7
中会社=0.6
小会社=0.5

 

 

原則的評価方法〜純資産価額方式

純資産価額方式は資産の相続税評価額の合計額から負債の合計額と評価差額に対する法人税等相当額を控除したものにより計算します。

会社の決算書に記載されている資産の金額は取得価額等を基になっているため、相続税評価額に計算をし直します。

現預金などは決算書に記載されている金額と相続税評価額は同じですが、土地や建物等は異なる金額となることが多いです。

また、相続税評価においての資産とは金銭的に見積もることのできる経済価値のあるすべてのものと定められており、決算書に記載がないものであっても評価をしなければいけません。

負債については確実と認められるものに限られます。

そのため、未払いの税金等については決算書に記載が無くても評価には反映することとなり、必ずしも決算書の数字と一致するわけではありません。

評価差額に対する法人税等を計算するためには相続税評価における純資産から税法上の帳簿価格における純資産を控除した金額に37%を乗じて算出します。

なお、ここでいう純資産とは資産から負債を控除した金額をいいます。

そのため、純資産価額方式の計算を行うためには資産負債について相続税評価と税法上の帳簿価格に計算し直す必要があります。

計算例 前提:発行済み株式数 = 100株

相続税評価額 税法上の帳簿価格
資産 600,000 500,000
負債 200,000 200,000
純資産 400,000 300,000

評価差額に相当する金額:400,000 − 300,000 = 100,000
評価差額に対する法人税等相当額:100,000 × 37% = 37,000
純資産価額方式:400,000 − 37,000 = 363,000
1株当たりの純資産額:363,000 ÷ 100 = 3,630

 

会社規模による評価方法の違い

原則的評価方法においては会社規模に応じて評価方法が異なります。

会社規模は大会社、中会社の大、中会社の中、中会社の小、小会社の5つに分類されます。

大会社においては類似業種比準価額か純資産価額のいずれかを用いて評価を行います。

一般的には類似業種比準価格は純資産価額より低くなることが多いです。

大会社以外については折衷方式と純資産価額のいずれか低い金額を選びます。

折衷方式は類似業種比準価額と純資産価額に下表の割合を乗じて計算します。

 

会社規模による評価方法

大会社 = 類似業種比準価額又は純資産価額のいずれか低いほう

大会社以外 = 折衷方式又は純資産価額のいずれか低いほう

 

▶︎ 折衷方式で乗じる割合

会社規模 類似業種比準価額 純資産価額
中会社の大 0.9 0.1
中会社の中 0.75 0.25
中会社の小 0.6 0.4
小会社 0.5 0.5

計算例

会社規模:中会社の大
類似業種比準価額:1,000
純資産価額:2,000
折衷方式:1,000 × 0.9 + 2,000 × 0.1 = 1,100
評価額:2,000 > 1,100

したがって、1,100円となります。

 

配当還元方式について

少数株主等に該当する場合は配当還元方式で株式を評価します。
※少数株主とは、所有割合が半数に満たない株主のことをいいます。

配当還元方式は次の計算式により評価を行います。

評価会社の1株当たりの配当金額 ÷ 10% × その株式の1株当たりの資本金等の額 ÷ 50

1株当たりの配当金額については直前期末以前2年間における平均配当金額を、1株当たりの資本金等の額が50円だった場合の株式数で割ったものを用います。

なお、1株当たりの配当金額が2円50銭未満の場合は2円50銭で計算を行います。

配当還元価格より原則的評価方法が低い場合は原則的評価方法を用いることも認められています。

計算例

評価会社の1株当たりの配当金額:3円
1株当たりの資本金等の額:3,000円
3 ÷ 10% × 3,000 ÷ 50 = 1,800円

したがって、1800円となります。

 

 

まとめ

以上、非上場会社の株式の評価方法について、くわしく解説しましたが、いかがだったでしょうか。

非上場株式の評価には、原則的評価方式と配当還元方式の2つがありますが、その計算方法は複雑でわかりにくくなっています。

また、非上場株式を評価する状況は、相続や事業承継などの法的な問題に直面していると思われます。

そのため、非上場株式でお困りの方は、専門家へのご相談をお勧めいたします。

 

 


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