自筆証書遺言と公正証書遺言には優劣関係はなく、遺言書は、後に作られたものが優先することになっています。
しかし、内容が抵触しない部分と抵触する部分がある場合には、抵触しない部分については前に作られた遺言書も有効です。
つまり、見つかった遺言のうち日付を見て後に作成されたものが全面的に有効であり、前に作られた遺言も、前の遺言に抵触しない限りでは有効ということになります。
このページでは、自筆証書遺言と公正証書遺言のように複数遺言書がある場合の優劣関係について、具体例を用いて弁護士が解説いたします。
複数の遺言書がある場合の優劣関係
遺言の優劣関係
遺言書には、自筆証書遺言や公正証書遺言、秘密証書遺言などがあります。
そして、その作成のための要件や手間などは遺言の種類ごとに異なっています。
しかし、遺言の種類によって優劣関係があるわけではありません。
公正証書遺言は公証役場を用いて行うことから、他の遺言に優先するように思われるかもしれませんが、そうではないのです。
では、遺言の優劣は何で決まるのでしょうか。
答えは簡単で、「日付」によって決まります。
遺言は、遺言者の最後の意思を表すものですので、後に作ったものが優先することが定められているのです。
しかし、前に作成された遺言もすべてが無効となるわけではありません。
前の遺言と後の遺言が抵触する部分だけが、撤回されたことになり無効となるのです。
具体例
具体例を交えて説明します。
まず、下記の二つの遺言があるとします。
【A遺言:平成29年4月1日】
① 不動産はCに相続させる。
② 預貯金はDに相続させる。
【B遺言:平成29年10月1日】
① 不動産は売却して、その売却代金をCとDで半分ずつ相続させる。
② お墓はDに承継させる。
この場合、A遺言の①は無効となりますが、②は無効となりません。そして、B遺言はすべて有効です。
つまり、以下のように考えるのです。
まず日付が後であるB遺言が優先しますので、B遺言の①及び②は有効となります。
次に、A遺言の①はB遺言の①と両立しませんが、A遺言の②はB遺言のいずれとも両立します。
そのため、A遺言の②は後の遺言と抵触するので無効となり、A遺言の②は後の遺言と抵触しないので、有効なままです。
まとめ
遺言書が複数ある場合には、どちらが優先するのか、前の遺言は効力があるのか迷うと思います。
その場合には日付を見ればどちらの遺言書が優先するのかわかることも多いですが、内容が抵触しているかどうかの判断は遺言書全体として判断する必要があるので、判断が困難な場合も少なくありません。
そのため、まずは一度専門家である弁護士に見せるようにしたほうが良いでしょう。
当事務所では、相続に専門特化した弁護士が対応しますので、気軽にご相談ください。