相続放棄後にしてはいけないこと|弁護士が解説


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA


相続放棄後には、相続財産の処分や隠匿・消費をしてはいけません。

これらの行為をすると、相続放棄が無効となり、プラスの遺産・マイナスの遺産を問わず一切の遺産を相続しなければならなくなります。

この記事では、相続に強い弁護士が、相続放棄後にしてはいけないことについて具体例をあげながらわかりやすく解説します。

相続放棄をしようとする方、又はすでに相続放棄をした方はぜひ参考になさってください。

相続放棄とは?

「相続放棄」とは、亡くなった方(「被相続人」といいます。)の遺産を一切引き継がないことをいいます。

相続の対象となる遺産には、不動産や預貯金、自動車、時計などのプラスの遺産だけでなく、借金やローン、未払金などのマイナスの遺産もあります。

相続放棄をすると、初めから相続人にならなかったものとして扱われるため、プラスの遺産であるかマイナスの遺産であるかを問わず、一切を引き継ぎません。

根拠条文

民法第939条

相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

参考:民法|e-Gov

被相続人に多額の借金がある場合などには、相続放棄を検討することになります。

なお、遺産を相続するかどうかについては次の3つの選択肢があり、相続放棄はそのうちの1つの選択肢です。

  • 単純承認:プラスの遺産・マイナスの遺産を含む一切の遺産を条件なしに引き継ぐことをいいます。
  • 限定承認:マイナスの遺産をプラスの遺産が上回る限度で遺産を引き継ぐことをいいます。
  • 相続放棄:プラスの遺産・マイナスの遺産を含む一切の遺産を引き継がないことをいいます。

相続放棄をするためには、定められた期間内に家庭裁判所に対する申述(申立て)をして受理される必要があります

 

 

相続放棄後にしてはいけないこと

相続放棄後には、次の行為をしてはいけません。

  1. ① 相続財産(遺産)の処分
  2. ② 相続財産の隠匿(いんとく)・消費

相続放棄後にこれらの行為をしてしまうと、受理された相続放棄は無効になり、単純承認をしたものとして扱われます(法定単純承認)。

その結果、プラスの遺産・マイナスの遺産を問わず一切の遺産を相続しなければならないことになります。

 

相続財産の処分

相続財産の「処分」とは、相続財産(遺産)の状態や性質を変える行為のことをいいます。

このような行為は、本来は遺産を相続する人だけが行えるはずのものです。

このような相続財産の「処分」行為をした人は、本当は遺産を放棄するつもりがなく遺産を相続するつもりである、と受け取られてもしかたがないといえます。

そこで、民法は、相続放棄の前後を問わず、相続財産の「処分」行為をした人については単純承認をしたものとして扱うこととしているのです。

 

「処分」にあたる行為

具体的には、次のような行為が相続財産の「処分」にあたります。

  • 被相続人の預貯金の解約・名義変更・引き出し
  • 被相続人の自宅の解体・売却
  • 被相続人の株式の売却・議決権行使
  • 賃料の振込先の変更
  • 被相続人の債権の取り立て

基本的には単純承認したものとして扱われ、相続放棄は無効となります。

以下では、それぞれの行為について解説します。

 

被相続人の預貯金の解約・名義変更・引き出し

被相続人の預貯金を解約したり、被相続人の預貯金を自分名義に変更したり、被相続人の預貯金を引き出したりする行為は、通常、「処分」にあたります。

被相続人の通帳やキャッシュカードを預かっている場合には、できるだけ早く他の相続人や相続財産管理人(相続人が誰もいない場合に相続財産を管理する人のことです。)に渡すのが安全です。

なお、預貯金を引き出して被相続人の仏壇や墓石を購入する場合には、遺族として自然な行為であり「処分」にはあたらないと考えられています(参考判例:大阪高裁平成14年7月3日)。

 

被相続人の自宅の解体・売却

相続財産(遺産)に含まれる被相続人の自宅を解体して土地を更地にしたり、売却したりする行為は、「処分」にあたる行為の典型例です。

被相続人から管理を任されていた家が老朽化しているような場合でも、自己判断で勝手に解体してしまうと「処分」にあたります。

相続放棄後の自宅の管理は、他の相続人や相続財産管理人に任せましょう。

なお、老朽化した自宅の一部を修繕する行為(例えば、崩れかけている塀を修理する場合など)は「保存」行為にとどまるものであり、「処分」行為にはあたらないと考えられています。

 

被相続人の株式の売却・議決権行使

相続財産(遺産)に含まれる被相続人の株式を売却する行為は相続財産の「処分」にあたります。

また、被相続人の所有していた株式の議決権を行使して取締役を選任する行為も相続財産の「処分」にあたるとされています(参考判例:東京地裁平成10年4月24日)。

 

賃料の振込先の変更

被相続人が生前に所有していたマンションを誰かに賃貸していた場合、その賃料の振込先を自分名義に変更する行為は相続財産の「処分」にあたります(参考判例:東京地裁平成10年4月24日)。

 

被相続人の債権の取り立て

被相続人の債権(誰かに金銭の支払い等を請求できる権利のことです)を取り立てて金銭を受領する行為は、相続財産の「処分」行為にあたり、単純承認したものとして扱われます(参考判例:最高裁昭和37年6月1日)。

なお、被相続人の債権について単に支払いを催促する行為については、「処分」行為にはあたらず「保存」行為にすぎないという考え方もあります。

しかし、必ず「保存」行為と評価されるという保障はないことから、相続放棄後は単なる支払いの催促であっても行わないことをおすすめします。

 

賃貸マンション・アパートの解約

相続放棄後に被相続人が賃借していたマンションやアパートを解約する行為は、相続財産の「処分」にあたる可能性が高いとされています。

賃貸借契約を解約する行為は、「賃借権」という財産権を失わせる行為と評価できるためです。

被相続人が亡くなったことを知った家主(貸主)や管理会社から解約を求められた場合には、他の相続人や相続財産管理人と話し合ってもらうようにお願いしましょう。

 

「処分」にあたらない行為

民法によれば、「保存」行為や短期賃貸借は相続財産の「処分」にあたりません。

また、社会的な慣習として認められる行為も「処分」にあたらないと考えられています。

これらの行為をしても単純承認をしたものと扱われることはなく、相続放棄は有効なままです。

さらに、相続財産に含まれない財産については「処分」行為をしても、単純承認が成立することはありません。

 

保存行為

「保存行為」とは、相続財産の現状の価値を維持するための行為をいいます。

次のような行為は「保存行為」にあたるとされます。

  • 腐敗しやすいものの売却・廃棄
  • 老朽化した自宅の修繕︎

 

短期賃貸借

短期賃貸借とは、5年以内の土地の賃貸借、3年以内の建物の賃貸借などをいいます(民法第602条)。

これらは、保存行為の一種であると考えられています。

 

被相続人の葬儀費用等の支払い

被相続人の預貯金・現金の中から被相続人の葬儀費用の支払いをしたり、被相続人の墓石・仏壇等を購入したりする行為は、それらが不相当に高額でない限り、相続財産の「処分」にはあたらないと考えられています。

これは遺族として自然な行為(慣習の範囲内の行為)であると考えられるためです(参考判例:大阪高裁平成14年7月3日)。

 

相続財産に含まれない財産の処分

死亡保険金や遺族年金などは相続財産に含まれない財産です。

そのため、これらを受け取って自分のために使ったとしても「相続財産」の処分にはあたらず、単純承認したものと扱われることはありません。

 

判断の分かれる行為

次のように、個々の状況によって相続財産の「処分」にあたるかどうかの判断が分かれる微妙な行為もあります。

  • 被相続人の債務の支払い
  • 被相続人の治療費・入院費の支払い
  • 遺品の形見分け

これらの行為については相続財産の「処分」にあたると判断されて相続放棄が無効になるリスクがあることから、できるだけ行わないようにしましょう。

また、事前に相続に強い弁護士に相談されることを強くおすすめします。

 

被相続人の債務の支払い

相続債権者(被相続人の債務(借金やローン、未払金等)の支払いを相続人に請求できる人のことです。)から債務の支払いを求められた場合に、その支払いに応じる行為が相続財産の「処分」にあたるかどうかについては見解が分かれています。

すでに支払期限を過ぎている被相続人の債務であれば、被相続人の遺産の中から支払いをしても相続財産の現状を維持する「保存」行為にすぎず「処分」行為にあたらないとする見解があります。

しかし、被相続人の相続財産の中から被相続人の債務(借金・ローンなど)の支払いをする行為について、相続財産の「処分」にあたるとした判例がある(参考判例:富山家裁昭和53年10月23日)ことから、相続財産の中から支払いをすることは避けましょう。

なお、自分自身の財産で被相続人の債務を支払う行為(立替払いをする場合)については、「相続財産」の処分にあたらないと考えられています(参考判例:福岡高裁宮崎支部平成10年12月22日)。

このように、被相続人の債務の支払いについては、判断を誤ると相続財産の「処分」にあたり単純承認として扱われる可能性があることから、他の相続人や相続財産管理人に任せるのが安全であるといえます。

 

被相続人の治療費・入院費の支払い

被相続人が生前に入院して治療を受けておりそのまま亡くなった場合、被相続人の相続財産の中から治療費や入院費を支払う行為は、「保存」行為にすぎず、相続財産の「処分」にはあたらないとする考え方があります。

過去の裁判例の中にも、被相続人の相続財産を入院費の支払いの一部にあてたことは相続財産の「処分」にあたらないとしたものがあります(大阪高裁昭和54年3月22日)。

しかし、この点についてはまだ最高裁の判例があるわけではなく、治療費や入院費も「債務」の一種であるから、慎重に判断する必要があります。

具体的な状況によっては相続財産の「処分」にあたると判断される可能性も十分にあることから、相続財産の中から治療費や入院費の支払いをするのは避けるべきです。

 

遺品の形見分け

被相続人の遺品(相続財産)を形見分けとして受け取る行為や、形見分けとして誰かに贈与する行為が、相続財産の「処分」にあたるかどうかは、形見分けされる遺品の経済的な価値によって異なります。

経済的価値が高くない(常識的な範囲内の)遺品の形見分けについては、相続財産の「処分」にあたらないと考えられています(参考判例:東京地裁平成21年 9月30日など)。

これに対して、被相続人の遺品の大部分を持ち帰る行為や、経済的価値の高い遺品を持ち帰る行為などは、相続財産の「処分」または「隠匿」にあたるとされています(参考判例:東京地裁平成12年3月21日)。

相続放棄をする場合には、一定の経済的な価値がある遺品については、形見分けという名目であっても受け取らないのが安全です。

形見分けについて判断に迷われる場合には、相続に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

相続財産の隠匿・消費

相続財産の隠匿や消費をした場合にも、相続放棄は無効となり、単純承認をしたものとして扱われることになります。

相続財産の「隠匿」とは、相続債権者や他の相続人などの利害関係人に対して相続財産(遺産)のありか(所在)をわからなくすることをいいます。

相続財産の「消費」とは、勝手に相続財産(遺産)を処分して元の価値を失わせることをいいます。

これらの行為は、債権者などの利害関係人に対する裏切り行為(背信的行為)にあたります。

民法は、これらの裏切り行為に対するペナルティとして相続放棄を無効にし、マイナスの遺産を含めたすべての遺産を相続しなければならないこととしています。

具体的には、次のような行為が相続財産の隠匿・消費にあたります。

 

被相続人の預金通帳の存在や保管場所を教えない行為

被相続人の預金通帳を預かり保管している場合に、その存在や保管場所を教えない行為は、相続財産のありかをわからなくする行為であり、「隠匿」にあたります。

被相続人の宝石を売却して自分の借金を返済する行為

被相続人の宝石をこっそり売却して自分の借金の返済にあてる行為は、相続債権者に損害を与える裏切り行為であるといえ、相続財産の「消費」にあたります。

 

 

相続放棄の注意点

相続放棄をする場合には、次のような注意点があります。

 

一部のみの相続放棄はできない

一部の遺産だけを相続放棄することはできません。

例えば、「被相続人の土地だけは相続するが、それ以外の遺産は相続放棄する」ということは認められません。

相続放棄をする場合には一切の遺産を相続することができなくなります。

そのため、事前に遺産の調査を行い、遺産の全体像を把握した上で相続放棄をするかどうかを判断することが大切です。

 

相続放棄は撤回・取消しできない

一度相続放棄が受理されると、その後は原則として相続放棄を撤回・取消しすることができません。

例外的に撤回や取消しが認められるのは、騙されたり脅されたりして相続放棄をしてしまったような場合に限られます。

「相続放棄をしなければよかった」という後悔をしないためには、事前に遺産の調査をしっかりと行い、相続放棄のメリット・デメリットをよく検討した上で判断することが大切です。

 

相続放棄には期間制限がある

相続放棄をする場合には、自分のために相続があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述をしなければならないという期間制限があります。

この期間制限のことを「熟慮期間(じゅくりょきかん)」といいます。

熟慮期間を過ぎると、被相続人の遺産について単純承認をしたものとして扱われ、その後は原則として相続放棄をすることができなくなります(相続放棄の申述をしても受理されません)。

熟慮期間を過ぎてしまった場合でも相続放棄が認められる可能性はゼロではありませんが、やむを得ない特別の事情があったと認められる場合に限られます。

単に「熟慮期間という制度を知らなかった」という理由は認められませんので、注意が必要です。

なお、被相続人の遺産の数が多く、期間内に遺産の調査が終わらない可能性があるときには、家庭裁判所に期間の伸長の申立てをすることができます。

熟慮期間を過ぎてしまうと相続放棄が認められるハードルが非常に高くなることから、熟慮期間が迫っているときには、期間の経過前に延長の申立てをしましょう。

 

相続財産の処分や隠匿・消費は相続放棄の前後にかかわらずNG

相続財産の処分や隠匿・消費は、相続放棄前であるか相続放棄後であるかを問わず、してはいけない行為です。

相続放棄前にこれらの行為をすると、単純承認をしたものとして扱われ、その後は相続放棄をすることができません(相続放棄の申述は受理されません)。

 

相続トラブルに注意

相続放棄によって相続トラブルに巻き込まれる可能性があるため、注意が必要です。

特に、被相続人に借金やローンなどのマイナスの遺産がある場合には、相続放棄をすることで他の相続人や後順位の相続人に迷惑がかかり、トラブルになるケースがあります。

トラブルを避けるためには、相続放棄によって迷惑をかける可能性のある人に対して、事前に相続放棄をする予定であることを説明しておくことが大切です。

 

 

相続放棄で失敗しないために

相続放棄をすべきかを事前によく検討する

相続放棄で失敗しないためには、そもそも相続放棄をするのがベストの選択なのかを、事前によく検討することが大切です。

具体的には、相続財産(遺産)の内容をできるだけ正確に把握した上で、相続放棄をするメリット・デメリットを比較検討することが大切です。

 

相続財産の取り扱いに注意する

この記事で解説してきたように、相続財産の取り扱いを間違えると相続放棄が無効になってしまうリスクがあります。

特に、遺品の「形見分け」など、相続財産の「処分」にあたるかどうかについて判断の分かれる行為には注意が必要です。

 

相続に強い弁護士に相談する

相続放棄は相続法に関する高度の専門知識が必要となる分野です。

そのため、一般の方が相続放棄のメリットやデメリットを正確に判断することはかなり難しい面があります。

相続に強い弁護士に相談することで、相続放棄がベストの選択なのかどうか、相続放棄をする場合の注意点は何か、相続トラブルを避けるために何をすべきか、といった点について適切なアドバイスをもらうことができます。

相続放棄について後悔のない判断・行動をするためには、できるだけ早い段階で相続に強い弁護士に相談されることを強くおすすめします。

 

 

相続放棄とNG行動に関するQ&A

債権者から請求されたらどうすればいい?


相続放棄後に被相続人の債権者から借金やローンの請求をされた場合には、債権者に相続放棄が受理されたことを説明しましょう。

相続放棄が受理されると初めから相続人にならなかったことになるため、借金やローンの支払いをする義務はありません。

もっとも、相続放棄が受理された事実は世間に公表されたり債権者に通知されたりすることはないことから、事情を知らない債権者から支払いを求められるケースがあります。

多くの場合には、相続放棄が受理された際に家庭裁判所から送付されてくる「相続放棄申述受理通知書」を債権者に提示することで、請求はストップします。

債権者によっては「相続放棄申述受理通知書」ではなく、「相続放棄申述受理証明書」の提出を求めることがあります。

「相続放棄申述受理証明書」は、相続放棄が受理された後、家庭裁判所に請求することで交付を受けることができます。

 

アパートの貸主から遺品処分の同意を求められたらどうすれば?


相続放棄後に、被相続人が借りていたアパートの貸主から、部屋に残っていた遺品(家電等)の処分について同意を求められた場合、自分自身で同意をすることは避けましょう。

遺品処分の同意を求められた場合には、貸主に事情を説明して他の相続人や相続財産管理人と話し合うよう依頼するのが安全です。

遺品の処分について同意をしてしまうと相続財産の「処分」にあたり、単純承認したものと扱われて相続放棄が無効になる可能性が高いためです。

遺品の価値がきわめて低い場合(廃棄するしかないような場合)には、遺品処分の同意は「保存行為」として認められる場合があります。

そのような場合でも「処分」として扱われるリスクがあることから、リスクが複数の業者から見積もりをしてもらい、資産としての価値がないことを確認したという客観的な証拠を残しておくことが大切です。

また、遺産を処分したことによって他の相続人等とトラブルになるリスクもあることから、少しでも判断を迷われる場合には、相続に強い弁護士に相談することを強くおすすめします。

 

相続放棄した後の家はどうなりますか?


相続放棄後に、引き続き被相続人の家を管理している場合やその家に住み続けている場合には、できるだけすみやかに他の相続人や相続財産管理人に引き渡す必要があります。

また、家を引き渡すまでの間は、相続放棄をした方は自分の財産と同じ程度の注意を払って管理する義務を負います(民法第940条)。

この義務に違反して家を壊したり、勝手に他人に貸したり、家の中の遺品を売却したりすると、単純承認したものとして扱われ相続放棄が無効になるだけでなく、他の相続人等に対して損害賠償義務を負うことにもなるため、注意が必要です。

 

相続放棄をしたら携帯料金はどうなるの?


相続放棄をした場合、被相続人が使っていた携帯の未払料金を支払う義務はありません。

携帯料金は被相続人のマイナスの遺産に含まれるものであり、相続放棄が受理されると、その支払い義務を一切引き継ぐことはありません。

相続放棄後に、被相続人の遺産の中から携帯料金の支払いをしたり、契約の解約をしたりすることは避けましょう。

これらの行為は「相続財産の処分」にあたり、単純承認したものとして扱われる可能性があるためです。

携帯電話の支払い請求を受けた場合には、他の相続人や相続財産管理人にその旨を伝えて対処してもらうようにしましょう。

 

相続放棄をしたらバレる?


相続放棄をした事実が世間に知られる(公表される)ことはありませんが、他の相続人や相続債権者などの利害関係人には知られることになります。

他の相続人や相続債権者などの利害関係人に相続放棄の事実を隠していたとしても、これらの利害関係人は、家庭裁判所に相続放棄の申述の有無に関する照会(問い合わせ)をすることができるためです。

他の相続人とのトラブルを避けるためには、相続放棄の事実を隠すのではなく、むしろ相続放棄をする予定があることを事前に伝えておくことを強くおすすめします。

 

 

まとめ

相続放棄後にしてはいけないことは、①相続財産の処分、②相続財産の隠匿・消費です。

これらの行為をすると、相続放棄が無効になり、マイナスの遺産を含めて一切の遺産を相続しなければならなくなります。

相続財産の「処分」とは、相続財産の状態や性質を変える行為のことをいい、預貯金の解約や名義変更、自宅の解体・売却、株式の売却・議決権行使、債権の取り立てなどがこれにあたります。

相続財産の「隠匿」とは、相続財産(遺産)のありか(所在)をわからなくすることをいい、管理保管している遺産(預金通帳や宝石など)を隠す行為や、その存在・保管場所をあえて教えない行為などがこれにあたります。

相続財産の「消費」とは、勝手に相続財産(遺産)を処分して元の価値を失わせることをいい、被相続人の預貯金を自分の借金の返済に使う行為などがこれにあたります。

遺品の形見分けについては相続財産の「処分」あるいは「隠匿」にあたるかどうかについて見解が分かれているため、注意が必要です。

一般的には、経済的(金銭的)な価値が高くない遺品については、持ち帰ったり他人に与えたりしても「処分」や「隠匿」にあたることはないと考えられています。

相続放棄や遺品の取り扱いについて少しでも不安がある場合には、相続に強い弁護士に相談されることを強くおすすめします。

当事務所では、相続に強い弁護士で構成する「相続対策専門チーム」を設置しており、相続放棄に関するご相談はもちろんのこと、遺言書の作成、遺産分割協議、相続トラブル、相続登記、相続税の申告・節税対策など、相続全般に関する幅広いご相談をうけたまわっています。

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