5年を超えない範囲で、遺産分割を禁止することが可能です。
遺産分割の禁止は、①遺言による方法、②相続人間の合意による方法、③家裁の手続による方法の3つの方法で禁止することができます。
ただし、相続税の申告を行うケースでは注意が必要です。
遺産分割とは
遺産分割とは、被相続人(亡くなった方)が死亡時に有していた遺産について、個々の遺産の権利者を確定させるための手続をいいます。
遺産分割の対象・手順などについて詳しく以下のページを御覧ください。
遺産分割は5年を超えない範囲で禁止できる
被相続人が死亡した後、相続人は遺産分割協議を行うことになります。
しかし、遺産によっては、その時点ですぐに分割協議を行うのが妥当でない場合があります。
また、相続人や遺産が確定していなかったりして、すぐに行うのが困難な場合もあります。
そこで、遺産分割については、5年を超えない範囲で分割協議を禁止することが可能とされています(民法第908条)。
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
遺産分割禁止の3つの方法
遺産分割の禁止は、次の3つの方法で行うことが可能です。
①遺言による方法
被相続人(亡くなった方)は遺産分割の禁止を遺言で行うことが可能です。
分割禁止の対象は、遺産の全部でも一部でもかまいません。
なお、遺言によらずに生前に指定することはできません。
②相続人間の合意による方法
遺産分割の禁止は、相続人が協議して分割禁止の合意を締結する方法でも可能です。
遺産は、相続人の共有状態にあります。
共有者全員が合意をすれば、共有状態の解消を先延ばしにすることが可能と考えられます。
③家裁の手続による方法
相続人間で遺産分割の禁止について合意ができない場合は、遺産分割禁止の調停を家庭裁判所に申立て、それでも合意が成立しなければ、裁判所に遺産分割禁止の審判を出してもらいます。
裁判所が遺産分割禁止の審判を出すには、遺産分割を禁止する特別の事由が必要です。
この特別の事由には、たとえば被相続人の死亡後、死後認知の訴えが提起されているなどして相続人が確定していない場合や、遺産が確定していない場合などが含まれます。
また、遺産の対象となる財産が裁判で所有権を争われていたり、不動産の境界が争われていたりと係争中である場合も、これに含まれる可能性があります。
遺産分割禁止の審判では、審判の申し立てを受けてから5年を超えない範囲に限定して出されることになります。
遺産分割の禁止を更新できる
相続人が協議して遺産分割の禁止を決める場合も禁止の期間は5年を超えることはできませんが、5年後に再度5年を超えない範囲で更新することは可能とされています。
遺産分割禁止の注意点
遺産分割の禁止は、相続税の申告を行うケースにおいて、注意が必要です。
すなわち、相続税については、原則として、相続開始から10ヶ月以内に申告・納付する必要があります。
この申告期限を過ぎてしまうと、相続税軽減の特例※が使えない可能性があります。
※具体的には以下のものです。
- 配偶者に対する相続税額の軽減(最低1億6000万円)
- 小規模宅地等の特例
- 農地の納税猶予
ただし、やむを得ない事情があれば、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、承認を受けることで、これらの特例の適用を受けることが可能です。
遺産分割の禁止は、この「やむを得ない事情」に該当すると考えられるため、特例の適用の可能性がある場合、税務上の手続も忘れないようにしましょう。
まとめ
以上、遺産分割の禁止について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか?
遺産分割が禁止されるのは、上記のとおり、原則5年間となります。
その趣旨は、無制限に遺産分割が禁止されることで、遺産が誰のものになるかもわからない不安定な状態を長期にわたり継続させるのは妥当でないと考えられているからです。
しかし、遺産分割を禁止すべきか否かは判断が難しい場合が多いです。
また、遺産分割の禁止にあたっては、税務上の手続が必要となる場合もあります。
そのため、遺産分割の禁止については、相続問題に詳しい弁護士に助言をもらわれることをお勧めいたします。
当事務所の相続対策チームは、相続問題に注力する弁護士・税理士のみで構成される専門チームであり、遺産分割や相続税の問題について、強力にサポートしています。
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