目次
遺言執行者とは
遺言をする際、遺言者は遺言執行者を指定したり、その指定を第三者に委託したりすることができます(民法1006条1項)。
遺言執行者とは、簡単に言えば、遺言書に書かれている内容を実現するために、各種相続手続きを進めていく人のことをいいます。
各種相続手続きとしては、例えば、相続財産目録の作成や、銀行等での預貯金の解約、法務局での不動産の名義変更などがあります。
遺言執行者をつけるメリット
遺言執行者がいれば、ご本人の想いをご家族に円滑に承継できます。
遺言の内容によっては、遺言執行者による執行が必要となる手続きがあります。
遺言認知(民法781条2項)
推定相続人の廃除(民法893条)
一般社団法人設立のための定款作成(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項)
これに対して、遺言執行者が必ず行う必要はないものの、いた方が便利な場合が多くあります。
預貯金、不動産などの遺産を特定の相続人に「相続させる」旨遺言書に記載されている場合、判例は、被相続人が死亡の時に、直ちに当該遺産は当該相続人に相続により承継されるとしています(最判平3.4.19)。
したがって、例えば、自宅などの不動産が被相続人名義となっている場合、その名義変更は当該相続人の単独名義で行うことが可能です。
しかし、不動産が他の相続人名義に移転登記がなされた場合、遺言執行者がいれば、その妨害を排除するため所有権移転登記抹消登記手続等を行うことが可能です(最判平11.12.16)。
また、預貯金についても、遺言執行者がいない場合、実際上は多くの金融機関で、「相続人全員からの署名捺印が必要」と言われます。
これに対して、遺言執行者がいる場合、遺言執行者から払戻請求をすれば、当該相続人の署名を取り付けた上で、預貯金の払い戻しに応じてくれることが多いです。
預貯金の払い戻しや不動産の名義変更はほとんどの遺産相続において必要な手続です。
したがって、遺言執行者がいれば、遺言の内容を円滑に実現できるといえます。
遺言執行者になれるのは誰?
法律上、遺言執行者と成り得る者は多く存在します。
自然人、法人でも、以下の欠格事由に該当しなければ、遺言執行者となることが可能です。
欠格事由
未成年者や破産者は遺言執行者となることができません(民法1009条)。
なお、遺言書作成時に未成年だった場合でも、遺言者の死亡時(相続発生時)に成人している場合は遺言執行者になることができます。
また、遺言書作成時には破産者でなかった場合でも、遺言者の死亡時(相続発生時)に破産者となった場合(※)には、遺言執行者になることができません。
※破産を申し立てて、破産手続開始決定後、復権するまで(免責許可決定が確定した時)の期間
実務上、遺言書作成を弁護士(又は弁護士法人)に依頼した場合にはその弁護士(又は弁護士法人)を、信託銀行に依頼した場合にはその信託銀行を、ご本人が遺言書を作成する場合は受遺者を遺言執行者とするケースが多く見受けられます。
しかし、遺言執行は遺族の利害関係が絡みます。
例えば、共同相続人の1人が遺言執行者になった場合、その相続人のみが遺言執行者としての相続財産の管理処分権限を有し、他の相続人は遺言執行を妨げる行為を行うことができなくなります(民法1012条)。
したがって、遺言執行の手続きをスムーズに行なうためには「誰を遺言執行者とすべきか」をよく考えて指定したほうがよいでしょう。
遺言執行者は誰にすべきか
実際には、受遺者や受遺相続人が遺言執行者となるパターンが多く見受けられます。
これは、受遺者や受遺相続人が遺産受け継ぐため、その者が遺言執行者となった方が手続上、面倒くさくないように思えるからです。
しかし、上述したように、遺言執行は親族等の利害関係が生じます。
また、利害対立まではいかなくても、特定の親族が遺言執行者となると、不信感が芽生え、将来にわたって禍根を残す可能性もあります。
したがって、親族間の対立が懸念される場合、中立的な立場にある第三者の方に遺言執行者となってもらうという方法を検討すべきです。
ただし、遺言執行は手続が面倒でため、相続についてのある程度の知識があった方が望ましい場合があります。
顔見知りの素人の方に対して、突然、「遺言執行者となってほしい」とお願いしても、その方は戸惑うと思います。
そのため、弁護士等の専門家を遺言執行者とすることも考えられます。
実際に、遺言書の作成を弁護士に依頼されると、その弁護士を遺言執行者とするケースは多く見受けられます。
遺言書の作成を依頼したご本人からすると、その弁護士に遺言執行を依頼した方が安心されるからです。
しかし、この場合、以下の点に注意すべきです。
弁護士が遺言執行者となる場合の注意点
以下の場合、遺言執行者に弁護士を指定することは慎重に検討しましょう。
遺言内容が相続人の遺留分を侵害する場合に、その遺言書の作成に関与した弁護士が遺言執行者となると、遺留分を侵害されている相続人から不信感を持たれてしまう可能性があります。
相続発生後に、相談されている弁護士が遺産分割や遺留分侵害額請求事件で受任する可能性がある場合、遺言執行者の地位と利益相反する可能があります。
遺言者よりも先に遺言執行者として指定された弁護士が死亡した場合、遺言執行どころではありません。
この場合、家裁に対して遺言執行者の選任を請求することとなってしまい手続が面倒です(民法1010条)。
また、死亡ではなくても、高齢や病気によって遺言執行ができないというリスクもあります。
したがって、自分よりも年配の弁護士ではなく、年が若い弁護士を遺言執行者とする方法もあります。
また、弁護士法人を遺言執行者とすれば、解散しない限り、死亡により遺言執行ができないというリスクはほとんどありません。
また、遺言では、予備的な遺言執行者を定めることもできます。
例えば、第1順位の遺言執行者として長男を指定し、長男が職務を行うことができない場合には、妹である長女の遺言執行者が職務を行う、などという形で定める場合です。
遺言執行者は複数選任できる?
遺言執行者は複数選任も可能です(民法1017条)。
遺言執行者が複数いる場合、遺言に別段の意思を表示していなければ、その任務の執行は、過半数で決することとなります。
ただし、保存行為(家屋を修繕する行為や債権の消滅時効を中断する行為などです。)については単独で可能です。
保存行為以外については、過半数によらないで行われた遺言執行は無効になりますが、後に追認することは可能と考えられています。
複数選任した場合の懸念として、遺言執行者同士の対立があげられます。
遺言執行の決定について、可否同数になった場合には、一方の遺言執行者の辞任や解任を検討するか、家庭裁判所に対し、遺言執行者の追加選任を求めることが考えられます。
遺言執行者は復任できる?
遺言執行者は、遺言に記載がない限り、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができません(民法1016条1項)。
現実問題として、遺言執行者に素人の方が選定された場合で手続が面倒な場合は、弁護士に遺言執行の事務を委ねられている例は見受けられますが、上記法律の定めとの関係で問題となる可能性があります。
そのため、遺言書に、「復任できる」旨、記載しておくことを検討しましょう。
なぜデイライトは遺言執行に強い?
最適な相続対策をご提案します
遺言執行者の指定は、上述したようなメリットがある反面、親族間の利害対立等の問題点も懸念されます。
遺言執行者を指定すべき、指定するとして、誰に対してどのような方法ですべきかは、具体的な状況に応じて異なります。
当事務所には、相続問題に特化した相続対策チームがあり、ご相談者の方の具体的な状況に応じて最適なプランをご提案しております。
例えば、事案によっては、当事務所の弁護士は遺言執行者とならずに身内の方を遺言執行者としていただき、面倒な手続きについてバックアップ的にサポートすることも可能です。
弁護士法人として永続的なサポートが可能です
相続対策は一時的な対応ではなく、長期間に渡るサポートが必要な場合が多くあります。
当事務所は、弁護士法人であり、永続的なサポートが可能です。
また、遺言についてご安心して任せていただけるように、「遺言あんしんサポート」をご用意しております。
サポート内容について、詳しくはこちらをご覧ください。
節税対策も可能です
相続は、法律だけではなく、節税対策も重要です。
当事務所の相続対策チームには、税理士資格を有する弁護士が在籍しております。
そのため、相続税の節税を踏まえたご提案が可能です。
また、相続税の申告などの際は、相続税専門の税理士をご紹介するなどして連携したサポートが可能です。
ご相談の料金
料金プランについて、くわしくはこちらをご覧ください。
財産が多数ある場合など複雑な場合には、遺産評価額の0.5~1%の額を加算することがあります。
ご相談の方法
相続問題でお悩みの方は、まずはお電話で法律相談をご予約ください。
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