※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
状況
被相続人 | 91歳で死亡(女性Yさん) 遺産:不動産及び預貯金5400万円程度 |
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相続人 | 異母姉妹Xさん、異母姉妹Aさん、兄弟の子どもBさん及びCさん、姉妹の子どもで海外在住のDさん及びEさん |
相談者 | Xさん |
相談の経過
Xさんは、姉妹のYさんが亡くなり、相続人と遺産分割を行おうとしたところ、海外にいた姉妹の一人がすでに亡くなっており、そのお子さん二人(DさんとEさん)が相続人となることを知りました。
しかし、Xさんは、DさんやEさんとは連絡を取ったことがなかったため、どうしようか悩み、亡くなった姉妹の住所にお手紙を送ることにしました。
お手紙を送って数か月が経過しても、何らお返事がない事から、困ったXさんは、今後のことについて、弁護士に相談しました。
弁護士の関わり
Xさんから相談を受けた弁護士は、まずは相続人を確定させ、その相続人がどこに住んでいるかを調査するために、戸籍やその附票を取得しました。
そして、確かに海外に相続人がいることを確認して、再度弁護士名で書面を送るとともに、調査の結果判明した電話番号に電話をかけてみることにしました。
その結果、DさんとEさんから連絡をもらうことができ、その後は遺産分割の話し合いをすることになり、早期に合意を取り付けることに成功しました。
その際、日本人の方とは違い、必要書類が国ごとに異なるため、その点も踏まえて、日本でいう印鑑証明に代わる宣誓供述書や、姉妹の死亡証明書など公的な文書を送ってもらい、無事に相続の手続を終えることができました。
また、遺産分割案は、Xさんに有利なものでしたが、あえてその事実は隠さずに丁寧に説明をすることで、B~Eさんには納得をしてもらうことができました。
そして、最終的にXさんは、通常の遺産分割よりも1200万円(本来の取得分の2倍以上)多く取得することができたのです。
補足
相続に当たっては、思いもよらぬ相続人がでてきて、連絡が取れずに遺産分割の話し合いができないということもあります。そうなると、協議がまとまらず遺産の名義変更や預貯金の引出ができないということにもなりかねません。
そのため、連絡がつかないような相続人がいる場合には、その人の住所を確認して連絡文書を送付したり、調査を行って電話するなどして相続人に連絡を試みることになります。
本件事案では、Xさん自身で連絡を試みても返事は返ってきませんでしたが、弁護士から連絡をした際には、それほど時間がかからずに返事が来ました。これは、弁護士から書面が来たということで連絡をしないといけないという心理が働くものと思われ、連絡先は分かるけど連絡は取れない人などには効果的な手段といえます。
仮に本件のように海外の方と連絡がつかなかった場合には、不在者財産管理人というものを裁判所に立ててもらって、その人と遺産分割協議をすることにはなりますが、その場合には、不在者財産管理人の選任手続なども含めて、かなりの時間を要するのが通常ですし、不在者財産管理人は法定相続分から譲歩することは許されないため、交渉の余地もなくなってしまいますので、その点でも相続人と連絡を取るというのは重要なことになってきます。
また、連絡がついたとしても、遺産分割協議が紛糾してしまってはどうにもなりませんので、相手方への不信感を抱かれないように、書面において事情を丁寧に説明するとともに、財産資料を開示し透明性を確保することが重要です。
今回のケースは、そのような丁寧な説明が功を奏した事例と言え、最終的には法定相続分の2倍以上の財産をXさんが取得することに成功しました。
加えて、今回のように海外の事案となると、英語の能力が必要になり、日本での不動産の登記名義変更のために必要な書類についても精通している必要がありますので、相続を専門にしている弁護士に依頼しないと、協議は整っても、手続きができないということになりかねません。
相続人の調査や相手方への説明の方法など、最終目標や相手に合わせた弁護士の活動が必要になります。
今回のケースは、弁護士を就けることで、当初は難しいと思われていたXさんの有利な遺産分割案での解決を得られた事案でした。
相続分は法律で決まっていますが、納得を得る説明や話し合い次第で最終的な遺産分割での取得分について多くの財産を取得することも可能ですので、まずは弁護士に相談することが大事です。