自宅を妻にだけに相続させたい
共有持分のときの相続はどうすればいい?
住宅ローンが残っている場合に相続させることができる?
賃貸不動産を相続させる場合の注意点は?
当事務所の相続対策チームには、このようなご相談が多く寄せられています。
自宅はご家族の生活の基盤となる大切な資産です。
適切な内容の遺言書がないと、後日トラブルに発展する可能性があります。
相続が「争族」となる前に、当事務所までお気軽にご相談ください。
遺言がない場合の問題
ご家族が自宅に居住しているような場合、自宅はご家族の生活の基盤となっています。
例えば、夫、妻、子どもの3人家族で、夫名義の自宅に妻が居住し、子どもが独立している場合、当該自宅は妻の生活の基盤です。
このようなケースでは、夫に万一のことがあったときでも、妻が安心して自宅に住み続けられるようにしたいと感じることは自然です。
ところが、夫が生前に適切な遺言書を作成していない場合、夫の死後、自宅の相続をめぐってトラブルに発展する可能性があります。例えば、子どもが自宅の相続権を主張してくるなどです。
したがって、生前の相続対策が重要なポイントとなります。
自宅を相続させる遺言
特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言について、裁判例は、以下のとおり判示しています(最判平成3年4月19日)。
・特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継される。
遺贈との違い
遺贈とは、遺言で、財産の全部または一部を、相続人又は相続人以外の人に無償で贈与(譲渡)することをいいます。遺贈の効力は、遺言者が死亡した時に発生し、所有権移転の効果が生ずるとされています。
この遺贈と「相続させる旨の遺言」は混同されるため、以下、比較してみます。
相続させる遺言 | 遺贈 | |
---|---|---|
対象 | 相続人に限られる | 相続人以外も対象とできる |
相続登記 | 当該相続人が単独で相続登記の申請が可能 | 他の相続人との共同申請が必要 |
借地権、借家権 | 賃貸人の承諾は不要 | 賃貸人の承諾が必要 |
農地 | 農地法3条の許可が不要 | 農地法3条の許可が必要 |
上図のとおり、自宅を承継させたい対象が相続人であれば、遺贈よりも「相続させる旨の遺言」の方がメリットが大きいといえます。
遺言書の記載のポイント
自宅を特定の相続人に相続させたいときは、遺言書に対象者や当該不動産を特定して、「相続させる」と明記することが重要です。
不動産の特定方法については、登記事項証明書の情報のとおりに記載して特定します。
登記事項証明書については、当該不動産が戸建てなのか、マンションなどの区分建物かで項目が異なってきます。
また、遺言者の自宅に対する権利が完全な所有権なのか、共有持分なのかによっても、遺言書の記載内容が異なります。
例えば、自宅を購入する際、配偶者などに連帯保証人や連帯債務者になってもらうことがあります。この場合、自宅の所有権は2分の1ずつなどの共有持分となっていることが多くあります。
さらに、相続させる相手が一人なのか、複数なのかでも遺言書の記載内容は異なってきます。
例えば、妻だけに相続させたいのか、妻には2分の1、子どもにも2分の1などの一定割合を相続させたいのかで、遺言書の内容を変えなければなりません。
相続させる不動産に住宅ローンが残っている場合も記載内容に注意が必要です。
当事務所では、様々な遺言書の記載内容のサンプルをホームページに掲載しており、これらは無料でダウンロードできます。
遺言書の記載例のサンプルについては、こちらをごらんください。
遺言書は、記載内容だけではなく、どのような種類の遺言書にするかを検討しなければなりません。
また、当該種類に応じた法律上の要件を満たさなければ、せっかく遺言書を作成しても、無効となってしまう可能性があります。
遺言書の種類と書き方についての一般的な説明については、こちらをごらんください。