※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
状況
被相続人 | 90歳で死亡(男性Dさん) 遺産:不動産及び預貯金1300万円程度 |
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相続人 | 配偶者Cさん、子どもAさん、Bさん |
相談者 | Aさん |
相談の経過
Aさんは、父親であるDが死亡し、他の相続人であるCさんやBさんと話し合いをして、遺産分割協議を進めてきましたが、CがAには生前贈与がたくさんあることを強く主張してきたため、3年間話し合ってきても、全く遺産分割がまとまりませんでした。
その後、Cさんは、代理人を通じて遺産分割の調停を申し立ててきましたが、協議と話し合いの内容が変わらなかったため、結論として、調停もまとまらずに終わるかに思えました。
そこで、困ったAさんは、今後のことについて、弁護士に相談し、依頼をしました。
弁護士の関わり
Aさんから相談を受けた弁護士は、Cさんがなぜそのような主張をしているのかを詳しく聞き取り、実際にAさんがDさんから受けた贈与などは特別受益に該当するのかを検討しました。
そうすると、Cさんは自分が預貯金や不動産を取得したいという意向であること、代わりにCさん所有の不動産をAに譲る気持ちがあることを確認できたので、Cさんの不動産の価値を査定してもらって、代償財産として受け取る道がないかを模索しました。
Cさん所有の不動産はAの相続分の倍以上である1000万円を超える価値があったため、Cさん所有不動産をもらうことができれば、Aさんには大きなメリットがあるということが分かりました。
一方、Aさんの受けたという生前贈与は、実際には特別受益を構成しない可能性の高いものであったため、それについては法的な反論をすることにしました。
以上のことを踏まえて、弁護士は、相手方の代理人弁護士にCさんが多く遺産を取得する代わりに、Cさんの所有不動産をAさんに譲渡することを提案しました。
そうしたところ、2回の調停で話し合いをまとめることができ、結果としてAさんが弁護士に依頼してからたった3か月足らずで事件を解決することができました。
補足
遺産分割手続きは、長引くと何年もかかることがある手続きです。
その理由は、相続が感情的な対立の大きくなりやすいものであり、一度固執しだすと、解決の糸口が見えにくくなるからです。
表面上は対立していたとしても、納得できればどこかで折り合うことが可能な場合がほとんどであり、そのような妥協点はないのかを探す作業が必要になります。
もっとも、まずは相手がどこに不満を持っているのかを探り、その不満を解消するために丁寧に説明をして説得していくことなどが必要となります。
このような説得のためには、相続に関する知識・経験だけではなく、依頼者などへの丁寧な聞き取りなどから、柔軟な解決策の提示を第三者目線で行うことが必要となります。
弁護士は、依頼者の代理人ではありますが、このような観点から、当事務所では第三者の客観的な目線でのアドバイスを心がけております。
そして、本件は、そのような第三者的目線を持つことで、3年かかった遺産分割をたったの3か月という短期間で解決することにつながった事例だったといえます。
また、不動産を扱う際には、登記の知識や税金の知識が必要になります。
今回の事例でも、Cさん所有の不動産を譲渡するということで、相続税だけではなく贈与税などが問題となる事案でしたが、税理士資格も持つ弁護士が対応していますので、その点もしっかりと検討したうえで、Aさんにとって不利益のない解決をできました。
相手方への説明の方法など、最終目標や相手に合わせた弁護士の活動が必要になります。
今回のケースは、弁護士を就けることで、安易な長期化を避け、早期の解決を得られた事案でした。
遺産分割の話し合いの中では、相続だけに目を向けるのではなく、相続以外のこれまでの経緯を踏まえた上で、その中で解決策がないかを検討することが必要となります。
そのような解決策に行き詰った際には、まずは相続に強い弁護士に相談することが解決への第一歩となります。