※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
Aさん(60代)
相談者 | Aさん |
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相続人 | 子どもAさん、子どもBさん、子どもCさん |
被相続人 | 90歳で死亡(女性Lさん) |
遺産 | 1000万円程度 |
相談の経過
Aは、母のLが亡くなって、その遺産を姉妹と分けようとして話し合いをしていましたが、Cと意見が対立して、協議がまとまりませんでした。
しかし、Bは、Aを慕っていたことから、その相続分をすべてAに譲渡する旨の合意をし、実印等も押した相続分譲渡証書を作成しました。
これでAとCの話し合いになるかと思ったAでしたが、それから半年以上経ったくらいに、Bの代理人から連絡文書が届き、相続分譲渡は無効であると書いてありました。
そして、その後Bが訴訟を提起してきたのです。
そこで、困ったAさんは、今後のことについて、弁護士に相談し、依頼をしました。
弁護士の関わり
Aさんから依頼を受けた弁護士は、まずはBの主張に合理性があるか検討し、反論をすることにしました。
Bは、錯誤や詐欺といった民法上の主張をしていましたが、いずれの主張もAさんから聞き取ることのできた事情や客観的な事情とは一致しておらず、Bの主張は突飛なものと言えました。
そのため、Bの主張が事実とはいえず、Aの反論が正しいことを裏付けるための証拠を集めたり、Bの主張が不合理であることについて、20枚以上にわたって事実や法的主張についての反論を書きました。
その後、当事者の尋問などもして証拠調べが終わりましたが、弁護士としての見通しはAさんの主張が全面的に認められ、相続分の譲渡は有効であることが確認されました。
補足
訴訟に至った場合、法的な知識等がなければ対応が難しく、対応を怠っていると、敗訴してしまう可能性もあるのが裁判です。
今回の事案では、弁護士が両者に就いていたため、法律上の問題や事実に関する争いが多くあり、書面も何ページにも及ぶものでしたので、弁護士なしに訴訟を最後までやり抜くのは難しかった事案と言えます。
また、多くの事案では書面などの客観的な証拠が乏しく、当事者の尋問が重要な要素になってきますが、弁護士を就けていない場合にはどのように尋問に対応したら良いかが分からず、当日も緊張してうまく話せないなど、尋問がうまくいかずに不利になるということがしばしばあります。
弁護士を就けることで、尋問がどういうものかを把握することができ、その練習を行うことで当日に備えることができたりもします。
相手の主張が不合理であるように思えても、適切な反論をせず、尋問等で失敗すると思わぬところで足元をすくわれますので、訴訟になった場合には弁護士への依頼はかなり重要になってくると言えるのです。
相続分譲渡の無効確認訴訟というのは、それほど数が多くなく、弁護士でも相続について相当の数を扱っていないと対応が難しいと言えます。
相続分譲渡に関する相談は、相続に強い弁護士に相談することが解決への第一歩となる事案と言えるでしょう。