家族やお世話になった人に遺産を残したいときには、遺言書の作成を検討しましょう。
もっとも、そもそも遺言書とはどういったもので、どのように作成すればよいのかわからないという方も多くいらっしゃることと思います。
この記事では、遺言書とは何か、遺言書でどのようなことができるのか(遺言書の効力)、具体的な遺言書の作り方や必要書類、作成にかかる費用などについて、相続問題にくわしい弁護士がわかりやすく解説します。
遺言書(原案)の作成にご利用いただける自動作成ツールも紹介していますので、ぜひご活用ください。
目次
遺言書とは?
遺言書とは、遺言者(遺言を作る人のことです。)が、誰に・どの遺産を・どのように取得させるのかを記載した書面のことをいいます。
有効な遺言書がある場合には、相続人は基本的に遺言書の内容にしたがって遺産を分けることとなります。
遺言書には3つの種類がある
遺言書には、自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言の3つの種類があります。
それぞれの遺言書には特徴やメリット・デメリットがあるため、それらを理解した上で、ご自身の希望をよりよく実現できる種類の遺言書を作成することが大切です。
- ①自筆証書遺言
遺言者が全文を自筆(手書き)して作成する遺言書です。 - ②秘密証書遺言
遺言書の内容を秘密にしたまま、その存在だけを公証役場で証明してもらう遺言書です。 - ③公正証書遺言
遺言者が公証人に依頼して作成してもらう遺言書のことで、公文書としての性質をもつ遺言書です。
遺書と遺言書との違い
「遺書」とは、亡くなる人が書き残した手紙や日記のようなもので、多くの場合には自殺する人や死期の迫っている人が作成するものです。
遺書には過去のできごとや筆者の思い・気持ちなどが記載されることが多いといえます。
これに対して、「遺言書」とは、亡くなる人が自分の遺産をどのように処分するのかに関する意志を書いたものです。
「遺書」と「遺言書」は、いずれも亡くなる人が生前に書き残す書類である点で共通していますが、以下のような点で異なります。
- 「遺言書」の内容は主に遺産の処分に関するものであるのに対して、「遺書」は主に思いや気持ちを内容とするものであること
- 「遺言書」には法律(民法)で要件と効力(効果)が定められているのに対して「遺書」にはそのような定めがないこと(遺言書の要件については、後ほど「遺言書の作成方法・遺言書のひな形」の項目にて詳しく解説します。)
※なお、「遺書」というタイトルで記載された書類であっても、「遺言書」としての内容と要件を満たしている場合には、遺言書としての効果が認められます。
遺言書で決められること
遺言書に書かれた内容には、効力(効果)が認められるものと認められないものがあります。
「遺言書の効力(効果)」とは、遺言書に書くことによって誰かに権利や義務を与えたり、誰かの権利や義務を失わせたりできる効果があることをいいます。
遺言書に書くことで効力が認められる事項を「法定遺言事項」といいます。
法定遺言事項の代表的なものとして、次のようなものがあります。
推定相続人の廃除(民法893条)
遺言者が相続人になる予定の人(「推定相続人」といいます。)からひどい虐待や侮辱を受けた場合には、遺言書でその人を相続人から除外するという意志を示すことによって、その推定相続人に遺産を相続させないことができます。
これを推定相続人の廃除(はいじょ)といいます。
非嫡出子の認知(民法781条2項)
遺言者(男性)は、結婚関係にない女性との間に生まれた子ども(「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」といいます。)について、遺言書でその子どもが自分の子どもであると認めることによって、遺言者と非嫡出子の間に父子関係を発生させることができます。
これを非嫡出子の「認知」といいます。
認知された非嫡出子は、遺言者の「子」(相続人)として、遺産を相続できることになります。
※なお、母子関係は出産の事実によって当然に認められます。
未成年後見人の指定(民法839条、848条)
遺言者が亡くなった場合に未成年の子どもが残されてしまい、その子どもの親権者がいなくなるとき(遺言者の配偶者もすでに亡くなっている場合など)には、遺言書で子ども(未成年者)の代わりに財産の管理や未成年者の世話・教育などを行う人(未成年後見人)を指定することができます。
相続分の指定(民法902条)
遺言者は、遺言書でどの相続人にどのくらいの割合の遺産を相続させるのかを決めることができます。
これを「相続分の指定」といいます。
この場合、相続人は基本的に遺言書で定められた割合にしたがって遺産を相続することになります。
遺産分割方法の指定(民法908条)
遺言者は、遺言書で遺産をどのような方法で相続させるのか(例えば、土地をそのまま相続させるのか、それとも土地を売却したうえで金銭を相続させるのか、など)を指定したり、個々の遺産について、どの遺産を誰に相続させるのかを指定したりすることができます。
これを「遺産分割方法の指定」といいます。
この場合、相続人は基本的に遺言書で指定された方法にしたがって遺産を分けることになります。
遺贈
遺言者が相続人以外の者(例えばお世話になった知人や内縁の妻や夫など)に遺産を取得させたい場合には、遺言書でその者に遺産を取得させる(遺贈する)意志を示すことで、その者に遺産を取得させることができます。
遺言執行者の指定(民法1006条1項)
遺言者は、遺言書によって遺言執行者(遺言の内容を実現する人のことをいいます。)を指定することができます。
遺言執行者の指定は必須ではありませんが、遺言執行者を指定することによって遺産の分配等をスムーズに行うことができます。
遺言書を作成するメリット・デメリット
遺言書を作成するメリットとデメリットについて、解説いたします。
メリット
法的な効力が認められるものについては被相続人の「希望」を実現できる
遺言書は、被相続人となる方の「希望」を書面にしたものです。
希望には、法的な効力が認められるものと認められないものがあります。
上で詳しく解説したとおり、誰にどのような遺産を残すか、などの内容については法的な効力が認められます。
したがって、遺言書を作成することで、基本的には被相続人の希望を実現できるという大きなメリットがあります。
被相続人の想いを伝えることができる
法的な効果までは認められない事項も遺言書に記載することは可能です。
例えば、「兄弟仲良くやってほしい」「お母さんのことをよろしくお願いします。」などの文言は、法的な強制力はありません。
しかし、そのような遺言者の「想い」を親族に伝えることは可能です。
そして、そのような「想い」は、時として、法律上の効力よりも効果を発揮することがあります。
親族間の紛争を予防する
遺言書の記載内容を工夫することで、相続発生後の紛争を予防できる可能性があります。
例えば、遺留分の問題があります。
遺留分については、遺留分権利者が行使するか否かの自由があり、この権利を奪うことは、基本的にはできません。
しかし、遺留分の行使をしないように遺言書に記載しておくことで、遺留分権利者が権利を行使しないケースもあります。
このような記載は、法律上の効力までは認められませんが、紛争予防の可能性があるためメリットにあげられるでしょう。
デメリット
遺言書を作成すること自体の法的な意味でのデメリットは考えられません。
ただし、遺言書の内容に不満を持つ親族は少なからずいると思われます。
しかし、遺言書には大きなメリットがあります。
したがって、そのような不満の発生を気にするよりも、トラブルを防止するための適切な遺言書の作成の方が重要と考えます。
自筆証書遺言の作成方法・作成の流れ
遺言書の種類によって作成方法は異なります。
具体的な作成方法を解説する前に、まずは遺言書のサンプルをご覧いただき、「遺言書」がどういったものかのイメージをつかんでいただければと思います。
以下は自筆証書遺言のサンプルです。
自筆証書遺言は、遺言者本人が全文を手書きして作成する必要があります。
自筆証書遺言の要件
自筆証書遺言が有効な遺言書として認められるためには、次の5つの要件を満たす必要があります。
- 1. 遺言者が全文を自筆で書くこと(遺言書に添付する財産目録を除きます。)
- 2. 遺言者が正しい作成日付を自筆で書くこと
- 3. 遺言者が氏名を自筆で書く(署名する)こと
- 4. 遺言者が自筆証書遺言に印鑑を押すこと
- 5. 遺言書の訂正(変更)は民法のルールにしたがうこと
自筆証書遺言の作成の流れ
自筆証書遺言は、次のような流れで作成します。
- ① 遺言書の作成に必要なものを準備する
自筆証書遺言の作成に必要な紙やペン、印鑑、遺産や相続人・受遺者(遺言書によって遺産を受け取る相続人以外の者をいいます。)に関する資料(登記事項証明書や住民票など)を準備します。 - ② 自筆証書遺言を作成する(自筆する)
上で解説した自筆証書遺言の要件を満たすように作成します。 - ③ 自筆証書遺言を保管する
遺言者は自筆証書遺言の保管場所を決めて保管します。
自筆証書遺言は法務局で保管することもできます(自筆証書遺言の保管制度)。
自筆証書遺言の保管制度を利用する場合
自筆証書遺言は法務局で保管することができます(自筆証書遺言の保管制度)。
自筆証書遺言の保管制度を利用する場合には、上で説明した5つの要件に加えて、法務局(法務省)の定めるルール(遺言書の様式などに関するルール)を守って作成する必要があります。
自筆証書遺言を自宅の金庫やタンスなどで保管する場合、利害関係をもつ相続人などが遺言書を持ち出したり書き換えたりするリスクや、誰にも発見されないリスクがあります。
自筆証書遺言の保管制度を利用することで、こうしたリスクを避けることができます。
公正証書遺言の作成方法・作成の流れ
公正証書遺言は公証人が作成します。
基本的には遺言者が公証役場へ行って作成しますが、けがや病気などで公証役場へ行くことができない場合には、公証人に出張を依頼することもできます(ただし、割増費用や証人の日当が必要となります)。
公正証書遺言の要件
公正証書遺言が有効な遺言書として認められるためには、次の5つの要件を満たす必要があります。
- 1. 証人2人以上の立会いがあること
- 2. 遺言者が遺言の内容を公証人に伝えること(口頭または通訳人の通訳・自署などの方法)
- 3. 2の内容を公証人が筆記し、遺言者と証人に確認すること(読み聞かせまたは閲覧の方法)
- 4. 遺言者と証人が③の内容が正確であることを確認して、各自が署名・押印すること(遺言者が署名できない場合は公証人がその旨付記すること)
- 5. 上記1〜4の手続きにしたがって作成された遺言書であることを公証人が付記して、署名・押印すること
公正証書遺言の作成の流れ
- ① 遺言書の内容に関するメモ(下書き)の作成
どのような内容の公正証書遺言を作ってもらいたいかをあらかじめ考えておきます。 - ② 必要書類を準備する
公正証書遺言の作成に必要な書類を準備します。 - ③ 公証人との打ち合わせ(相談)
公証役場へ連絡して公証人との打ち合わせを依頼します。
公証人との打ち合わせは、事前に用意したメモ(下書き)をもとに行うのがおすすめです。
また、あらかじめ準備した必要書類を提出して、正式に公正証書遺言の作成を依頼します。 - ④ 公正証書遺言の原案の作成と修正
公証人は公正証書遺言の原案を作成して、遺言者に内容の確認を求めます。
必要に応じて遺言書の原案を修正し、内容を確定させます。 - ⑤ 公正証書遺言の作成日時の確定
公証人と相談して、正式に公正証書遺言を作成する日時を確定します。 - ⑥ 証人2名を手配する
公正証書遺言の作成には証人の立会いが必要となることから、証人2名の手配をします。
遺言者自身で証人を手配することができない場合、公証役場に紹介してもらうことができます(1名あたり7000円〜1万5000円前後の費用がかかります)。 - ⑦ 公正証書遺言を作成する・手数料を支払う
証人の立会いのもと、公証人が民法の要件にしたがって公正証書遺言を作成します。
公正証書遺言が完成したら、現金で手数料を支払います。
完成した公正証書遺言は公証役場で保管されます。
秘密証書遺言の作成方法・作成の流れ
秘密証書遺言は遺言者または代筆者が作成して封印し、公証役場で遺言書の存在を証明する手続きを行うことで完成します。
秘密証書遺言の要件
秘密証書遺言が有効な遺言書として認められるためには、次の7つの要件を満たす必要があります。
なお、秘密証書遺言としての要件を満たしていないものの自筆証書遺言としての要件を満たしている場合には、自筆証書遺言として効力が認められます。
- 1. 遺言者が遺言書に署名(氏名を自署)すること
- 2. 遺言者が遺言書に印鑑を押すこと
- 3. 遺言者が遺言書を封じ、綴じ目に遺言書に使用した印鑑を押す(封印をする)こと
- 4. 遺言者が公証人1人・証人2人以上の前に3の封書を提出して申述をすること
- 5. 公証人が封書に遺言書の提出日付と遺言者による申述内容を記載すること
- 6. 公証人、遺言者、証人が封書に署名・押印すること
- 7. 遺言書の訂正(変更)は民法の定める訂正ルールにしたがうこと(自筆証書遺言の場合と同様)
秘密証書遺言の作成の流れ
- ① 遺言書の作成に必要なものを準備する
自筆証書遺言の場合と同様に、遺言書の作成に必要なもの(紙や資料など)を準備します。 - ② 遺言書を作成する
秘密証書遺言の作成については、パソコンを使用したり代筆を依頼したりすることができます。 - ③ 遺言書を封筒などに入れて封をし、押印(封印)する
遺言書が完成したら、封筒に入れて糊付けするなどして封をし、綴じ目に印鑑を押します(封印)。 - ④ 証人2名を手配する
公正証書遺言の場合と同様に、証人2名の手配をします。 - ⑤ 公証役場で封書を提出して手続きをする
公証役場へ行って封印済みの遺言書を提出し、公証人・証人とともに手続きを行って秘密証書遺言を完成させます。 - ⑥ 秘密証書遺言を保管する
遺言者は秘密証書遺言の保管場所を決めて保管します。
自筆証書遺言の場合とは異なり、法務局への保管制度を利用することはできません。
遺言書を作成するための費用
遺言書の作成にかかる費用は、遺言書の種類や、遺言書の作成を専門家に依頼するかどうかによって大きく変わってきます。
例えば、自筆証書遺言を遺言者が自分で作成する場合の費用は0円〜3000円前後、公正証書遺言(原案)の作成を弁護士に依頼する場合の費用は20万円〜75万円前後(遺産が1000万円〜1億円の場合)です。
遺言書を作成するための費用は、大きく①実費と②専門家に依頼する場合の費用(報酬)の2つに分けられます。
このうち①実費の金額は、作成する遺言書の種類によって異なります。
②専門家に依頼する場合の費用(報酬)は、どの専門家に依頼するかによって異なります。
①遺言書を作成するための実費
遺言書の作成にかかる実費には、書類の取得費用や役所に支払う手数料、証人の日当などがあります。
下の表は、遺言書の種類に応じた実費の内訳と相場をまとめたものです。
遺言書の種類 | 実費の内訳 | 実費の相場(合計) | ||
---|---|---|---|---|
書類の取得費用 | 役所の手数料 | 証人の日当 | ||
自筆証書遺言 | ◯ | − | − | 0円〜3000円前後 |
秘密証書遺言 | ◯ | ◯ | ◯ | 1万1000円〜11万円前後 ※1 |
公正証書遺言 | ◯ | ◯ | ◯ | 10万円〜25万円前後 ※2 |
※1 秘密証書遺言の場合、公証役場に支払う手数料は1万1000円です。
証人の日当(2名分)は誰に証人を依頼するかによって異なり、0円〜10万円前後と金額の幅があります。
※2 公正証書遺言の場合、公証役場に支払う手数料は遺産の金額によって異なり、1000万円〜1億円程度の場合で5万円〜10万円前後です(証人の日当については秘密証書遺言と同じ)。
②専門家に依頼する場合の費用(報酬)
遺言書(原案)の作成を弁護士などの専門家に依頼する場合には、報酬を支払う必要があります。
専門家に依頼する場合の費用(報酬)の相場は、専門家の種類や遺産の金額によって異なります。
遺言書作成を弁護士に依頼する場合の費用
弁護士に依頼する場合の報酬の相場は、10万円〜50万円前後です。
遺言書作成を司法書士に依頼する場合の費用
司法書士に依頼する場合の報酬の相場は、8万円〜25万円前後です。
遺言書作成を行政書士に依頼する場合の費用
行政書士に依頼する場合の報酬の相場は、5万円〜20万円前後です。
それぞれの事務所によって報酬の金額は異なりますので、詳細については見積もりをもらうことをおすすめします。
遺言書を作成するための必要書類
次の表に示すように、遺言書を作成するための必要書類も遺言書の種類によって異なります。
■ 自筆証書遺言
- 特になし
■ 自筆証書遺言(保管制度を利用)
- 保管申請書
- 住民票の写し等(本籍・筆頭者の記載があるもの)
- 遺言者の身分証明書:運転免許証・マイナンバーカードなど
- 遺言書の日本語翻訳文(遺言書を外国語で作成した場合)
■ 公正証書遺言
- 遺言者の本人確認書類:印鑑登録証明書、運転免許証、マイナンバーカードなど
- 遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本(相続させる場合)
- 受遺者の住所の記載のあるもの(遺贈する場合)
- 受遺者となる法人の登記事項証明書(現在事項証明書や代表者事項証明書など)
- 遺産を特定するための書類(不動産の登記事項証明書、預金通帳など)
- 手数料を計算するための書類(固定資産税納税通知書・固定資産評価証明書など)
- 証人の確認資料(証人を自分で手配する場合)
- 遺言執行者の確認資料(遺言執行者を指定する場合)
■ 秘密証書遺言
- 遺言者の本人確認書類:印鑑登録証明書、運転免許証、マイナンバーカードなど
※状況に応じて追加書類(戸籍謄本等)が必要となる場合があります。
※必要書類は役所によって異なる場合があります。
自筆証書遺言の必要書類
自筆証書遺言を作成する場合の必要書類は特にありません。
もっとも、正確な内容の遺言書を作成するためには、不動産であれば不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)、預金であれば通帳や残高証明書などの客観的な資料を取得するのがおすすめです(これはすべての種類の遺言書に共通です)。
自筆証書遺言の保管制度を利用する場合には、保管申請書や住民票の写し、身分証明書等を提出する必要があります。
公正証書遺言の必要書類
公正証書遺言を作成する場合には、公証役場に対して、公的機関の発行した本人確認書類のほか、遺産を誰に取得させるのか(相続人または受遺者)に応じて異なる書類(戸籍謄本など)提出する必要があります。
また、遺産を特定するための書類(不動産の登記事項証明書や預金通帳など)や、遺産の価値がわかる資料(手数料の計算に必要)、状況に応じて証人や遺言執行者の確認書類などが必要となります。
秘密証書遺言の必要書類
秘密証書遺言を作成する場合には、公証役場に対して、公的機関の発行した本人確認書類を提出する必要があります。
遺言書を自動作成ツールで簡単に作成!
どの種類の遺言書を作成する場合でも、まずはご自身で遺言書の原案(下書き)を作成されることをおすすめします。
もっとも、一般の方が自力で原案を作るのは難しい面があります。
そこで、当事務所では相続問題にくわしい弁護士が監修した遺言書の原案(下書き)の自動作成ツールを提供しています。
必要事項を入力するだけで簡単に作成・ダウンロードすることができますので、ぜひご活用ください。
自分で遺言書を作成する場合の注意点
状況に応じた遺言書の種類を選択する
遺言書には、自筆証書遺言(保管制度もあり)・秘密証書遺言・公正証書遺言の3種類があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。
どの種類の遺言書を作成すべきかは、遺言者が何を重視するかによって異なります(例えば、金銭的負担を少なく作ることなのか、書き換えのリスクを少なくすることなのか、内容を誰にも知られないことなのか、など)。
遺言書を作成する際には、それぞれの遺言書の特徴やメリット・デメリットを正確に理解したうえで、自分の希望に合うものを選択することが大切です。
遺産を漏れなく洗い出し、財産目録を作成する
遺言書を書く前に、まずは遺産を漏れなく洗い出して財産目録として一覧化することをおすすめします。
財産目録を作成することで、遺言者は遺言に書き漏れている遺産がないかを確認することができるだけでなく、相続人が相続手続きをスムーズに進めるのにも役立ちます。
遺留分の侵害に注意する
遺言の内容が相続人の遺留分を侵害する場合(一部の相続人だけに遺産を相続させる場合など)には、遺留分をめぐるトラブルが発生する可能性があります。
遺留分は遺言によっても奪うことができないため、遺留分の侵害に注意することが大切です。
やむを得ず遺留分を侵害せざるを得ない場合には、付言事項を活用して、なぜ遺留分を侵害してでも一部の相続人に遺産を多く相続させる必要があるのかという理由を具体的に説明し、遺留分の請求をしないようにお願いするなどの工夫をすることが考えられます(ただし、法的な効力はありません)。
相続に強い弁護士に相談する
遺言書には無効になるリスクやトラブルを招くリスクなどがあることから、遺言書の作成について少しでも不安がある場合には、相続にくわしい弁護士に相談されることをおすすめします。
相続にくわしい弁護士に相談することで、遺言が形式的な要件を満たしているかどうかだけでなく、遺言の内容についても適切なアドバイスをもらえることが期待できます。
トラブルを防止するために遺言の内容をどのようにすべきか、等の具体的なアドバイスは「法律相談」にあたりますが、弁護士以外(司法書士、行政書士、税理士、コンサルタントなど)が法律相談を行うことは法律によって禁止されています。
なお、弁護士にはそれぞれ専門分野があり、相続分野は高度の専門知識が必要な分野であることから、弁護士の中でも相続問題に注力している弁護士に相談することが大切です。
遺言書作成は誰に頼んだらいい?
遺言書の作成について相談できる窓口として、弁護士、司法書士、行政書士、税理士、公証役場などがあります。
弁護士に依頼するメリット
遺言書や相続に関する基本的なルールは法律(民法)で定められているため、法律の専門家である弁護士に頼むのがベストです。
弁護士は、訴訟などの争いを解決する専門家ですので、万一争いになった場合を見すえた内容の遺言書や、遺言書をめぐる争いを避けるための遺言書の書き方などについて、適切なアドバイスをもらえることが期待できます。
また、こうした遺言書の内容に関する業務は個々の具体的な事案に応じて行う必要があります(このような事務を「法律事務」といいます。)が、法律によって、法律事務をすることができるのは基本的に弁護士だけであるとされています。
弁護士以外の者が法律事務をすることは「非弁行為」という違法行為にあたります。
相続問題に詳しい弁護士であれば、司法書士や税理士と連携していることが多く、相続登記や相続税の申告についてワンストップで相談をすることができるケースが多いといえます。
なお、相続は高度の専門知識を要する分野であるため、弁護士の中でも相続問題に関する知識と経験が豊富な弁護士(相続問題にくわしい弁護士)に頼むことが大切です。
弁護士に相談した場合には他の専門家に比べて費用が高くなることはデメリットであるといえます。
もっとも、遺言書をめぐるトラブルにまきこまれた場合にはその解決に多くの時間や費用がかかってしまう可能性があることから、専門家の費用は「安ければ良い」というものではありません。
遺言書の作成を司法書士に依頼できる?
司法書士は、登記手続きの代行や役所に提出する書類の作成を行う専門家です。
遺産の中に不動産(土地・建物・マンションなど)が含まれる場合には、相続登記の手続きについてあわせて依頼できるのがメリットであるといえます。
ただし、司法書士は基本的に、遺言書の種類や要件・効果に関する一般的な説明をすることができるのみで、具体的な状況に応じて遺言書の内容をどのようにすべきかといったアドバイスを行うことはできません。
遺言書の作成を行政書士に依頼できる?
行政書士は自治体に対する許認可の申請や役所に提出する書類の作成を行う専門家です。
遺言書に書く内容が明確に決まっている場合や、相続登記や相続税に関する相談をする必要がない場合には、他の士業に比べて費用を安く抑えることができるのがメリットであるといえます。
他方で、司法書士の場合と同じく、具体的な状況に応じて遺言書の内容をどのようにすべきかといったアドバイスを行うことはできません。
遺言書の作成を司法書士に依頼できる?
税理士は税務に関する専門家です。
税理士に相談することで、相続税の申告や節税対策を見すえた遺言書を作成することができるのがメリットです。
他方で、税理士は法律の専門家ではないため、税金に関連しない相続手続きについての依頼をすることは難しいといえます。
また、司法書士や行政書士の場合と同じく、具体的な状況に応じて遺言書の内容をどのようにすべきかといったアドバイスを行うことはできません。
遺言書の作成を公証役場に依頼できる?
公正証書遺言や秘密証書遺言を作成する場合には、公証役場で手続きをする必要があることから、その作成手続きについて公証役場(公証人)に相談することができます。
もっとも、公正証書の作成に関する公証役場(公証人)の職務は、遺言者の意志にしたがって遺言書を作成すること(公正証書遺言の場合)や、秘密証書遺言が存在するという事実を証明すること(秘密証書遺言の場合)です。
このように、遺言書の内容に関するアドバイスは公証役場(公証人)の職務の範囲外です。
公証人によっては遺言書の内容について一定のアドバイスをしてくれる場合もあります(公証人が弁護士資格を有している場合など)が、本来の職務ではないため、どの程度具体的なアドバイスをもらえるかは公証人しだいです。
まとめ
遺言書とは、遺言者が誰にどの遺産をどのように取得させるのかという意志を記載した書類のことです。
遺言書に書くことで効力が認められるものとして、遺産の分け方のほか、相続人に関する内容(推定相続人の廃除や非嫡出子の認知など)や遺言執行者の指定などをあげることができます。
遺言書として効力が認められるためには、民法の定める要件を満たす必要があります。
遺言書の作成にかかる費用や必要書類は遺言書の種類によってさまざまです。
せっかく作成した遺言書が無効となってしまうリスクや、相続人同士のトラブルを招いてしまうリスクを避けるためには、遺言書の作成について相続問題にくわしい弁護士に相談されることをおすすめします。
当事務所では、遺言書の作成をはじめ、相続人の調査や遺産の調査、遺産分割協議、相続登記、相続税の申告、相続トラブルの解決など、相続全般に関する幅広いご相談に対応しております。
相続問題に注力している弁護士で構成する相続対策専門チームが対応させていただきますので、安心してご相談ください。