遺産の開示を拒否された場合の調査方法とは?【弁護士解説】


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

遺産の開示を拒否された場合、当事者間のやり取りでは遺産を開示しない相続人も、弁護士が開示を求めることによって、任意に開示してくれる場合があります。

それでも拒否された場合は、相続財産の調査や、関係機関に照会するなどの方法が必要となります。

任意に開示してもらう

まず考えられるのが、遺産を管理している相続人に遺産を開示してもらうという方法です。

当事者間のやり取りでは遺産を開示しない相続人も、弁護士が開示を求めることによって、任意に開示してくれる場合があります。

しかし、弁護士が開示を求めても開示してくれない場合や遺産を管理している相続人がそもそも把握していない遺産があるような場合には、次のような方法で遺産を調査すべきです。

 

 

相続財産の調査

主な遺産の調査方法は次のとおりです。

不動産

不動産の存否確認

被相続人名義となっていた不動産の存否について全く分からないという場合には、まず、名寄帳の写しを役所へ請求する必要があります。

名寄帳には、被相続人名義となっていた不動産の一覧が記載されていますので、これを取得することで被相続人が所有していた不動産が判明します。

ただし、名寄帳に記載されているのは、当該役所が管理する地域の不動産のみですので、被相続人名義の不動産がありそうな地域すべてで名寄帳の写しを請求する必要があります。

名寄帳の写しを請求するには、①申請書のほか、②本人確認書類や③相続人であることがわかる戸籍及び相続人の住民票などが必要です。

なお、被相続人名義となっている不動産が予測できる場合には、お近くの法務局で不動産の登記事項証明書を入手し、名義人を確認すれば足ります。

不動産の登記事項証明書については、取得するために必要な書類はとくにありません。

 

不動産の評価

被相続人がどのような不動産を持っていたのかが判明した場合、その後の遺産分割段階で、必ず不動産の評価が問題となりますので、不動産の評価の調査も不可欠です。

不動産の評価方法は様々ありますが、一番簡単に評価額が判明するのは、固定資産評価証明書を入手するという方法です。

これを取得するには、名寄帳の写しを請求する場合と同じ資料を役所へ提出する必要があります。

ただし、固定資産評価証明書に記載されている固定資産税評価額は、実際の土地の時価よりも低い金額になっておりますので、不動産の査定をしてみることをお勧めします。

 

預貯金

相続人であれば、金融機関に対し、任意照会をすることが可能です。

基本的には、被相続人が利用していた金融機関及び利用していたことが予想される金融機関に対して照会手続をすることをすることになります。

預貯金口座の照会に必要な資料は金融機関により異なりますので、詳しくは金融機関に問い合わせていただくことにはなりますが、基本的には、①照会申込書、②被相続人の死亡の事実がわかる戸籍の写し、③相続人と被相続人の続柄がわかる戸籍の写しが必要となります。

 

預貯金が不明な場合

預貯金がどの金融機関にあるかもわからない場合、まずその特定が必要となります。

この場合、被相続人(亡くなった方)の自宅のそばの金融機関など、取引の可能性がある金融機関に対して、弁護士照会を行うという方法も考えられます。

対応方法は状況によって異なるため、相続問題に精通した専門家へのご相談をお勧めいたします。

 

株式、有価証券

被相続人が株式や有価証券を持っていた可能性がある場合には、これらの調査もすべきです。

被相続人が利用していた証券会社が判明している場合には、その証券会社に対して、株式の数や評価額等を問い合わせることになります。

証券会社がわからない場合には、証券保管振替機構(通称:ほふり)に対して、登録済加入者情報の開示請求を行い、利用していた証券会社を特定後、当該証券会社に対して、株式の数や評価額を問い合わせるという形になります。

 

生命保険等

生命保険金は、受取人に対し、生命保険契約に基づいて支払われるものですので、正確には遺産に含まれません。

しかし、受取人が指定されていなかった場合等には法定相続人が受取人とされることが多いため、被相続人がどのような生命保険等に加入していたかを調査する必要があります。

 

弁護士照会の活用

弁護士会照会とは、弁護士が依頼を受けた事件について、証拠や資料を収集し、事実を調査するなど、その職務活動を円滑に行うために設けられた法律上の制度(弁護士法第23条の2)です。

個々の弁護士が行うものではなく、弁護士会がその必要性と相当性について審査を行った上で照会を行う仕組みになっています。

引用元:弁護士会ホームページ

根拠条文
(報告の請求)
第二十三条の二 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

引用元:弁護士法|電子政府の窓口

なお、被相続人が生前契約していた保険会社を特定するには、預貯金の照会結果を基に、どの保険会社と取引があったのかを探すのが有効です。

※以前は、生命保険協会等に対し一括照会することが可能でしたが、この運用が終了してしまったため、保険会社を特定しなければならなくなっています。

 

 

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