家族信託は、家族信託に注力している弁護士に依頼するのが一番です。
家族信託を検討されている方は、ご自身の想いを実現させるために、どこに頼むべきか迷われているかと思います。
ここでは、家族信託の各種相談窓口の特徴や弁護士に依頼すべき理由、弁護士選びのコツについて、解説しています。
家族信託にご関心がある方は、ぜひ参考になさってください。
家族信託とは?
「家族信託」とは、わかりやすく言うと、財産の管理を家族に任せることです。
家族信託では、委託者、受託者、受益者の3名が当事者となります。
委託者とは、財産を保有する人で、財産の管理を任せる人のことです。
受託者とは、財産の管理を委託者から任せられ、実際に財産の管理や運用をする人のことです。
受益者とは、家族信託によって利益を得る人のことです。
受託者は、受益者のために、財産の管理や運用を行うことになります。
家族信託の目的(例えば、老後の生活資金の確保や、将来認知症になる場合に備えて財産の管理を任せておくなど)や、財産の管理・運用方法、誰を受託者として誰を受益者とするかなどは、信託契約や遺言によって定められます。
家族信託について、詳しくお知りになりたい方は、こちらをご覧ください。
家族信託は弁護士に頼むべき
家族信託のサポートの具体的内容
家族信託において、どのような専門家が必要となるかを解説する前に、まず家族信託で想定される業務として、どのようなものがあるかを知っておきましょう。
家族信託の業務としては、大別すると①法律相談、②信託契約書の作成、③契約後の事務遂行の補助があげられます。
それぞれの具体的内容や専門家の必要なスキルをまとめると、下表のようになります。
項目 | 具体的内容 | 必要なスキル |
---|---|---|
法律相談 | 相談者の状況についてのヒアリング 最適な解決方法の提案 |
相談者が抱える課題を発見する分析力 家族信託はもちろん、相続法や税法等の知識 |
信託契約書の作成 | 委託者、受託者、受益者の権利義務の内容等を定めた契約書を作成 | 将来の紛争(訴訟)を想定できる能力 契約条項の作成能力 |
契約後の事務遂行の補助 | 不動産登記、受託者名義の銀行口座開設など財産の管理・運用のサポート | 手続の進め方の知識 |
なお、上記のうち、特に高い専門性が必要となるのは、①法律相談と②信託契約書の作成業務です。
③契約後の事務遂行の補助は、手続的な業務であり、ご本人が自分で実施したとしても、さほど難しくはないでしょう。
例えば、不動産登記や銀行口座の開設は、誰かに実施してもらえると楽ですが、ご自身でも多少調査することで、進めていくことが可能な業務と考えます。
家族信託の相談先の特徴一覧
家族信託の相談先としては、弁護士の他に、司法書士、行政書士、税理士などの士業の他、会社などの団体も存在します。
上で解説した家族信託の業務内容に照らした各相談先の適否をまとめると下表のようになります。
弁護士 | 司法書士 | 行政書士 | 税理士 | 各種団体 | |
---|---|---|---|---|---|
法律相談 | ◯ | △ | △ | △ | × |
信託契約書の作成 | ◯ | △ | △ | × | × |
契約後の事務遂行の補助 | △ | ◯ | △ | △ | △ |
※一般的な傾向であり、個別の状況は想定していません。
弁護士について
法律相談や信託契約書の作成は「法律事務」に当たり、基本的には弁護士しかサポートすることができません。
すなわち、弁護士以外の者が法律事務を扱うのは、非弁行為(ひべんこうい)といって法律で原則として禁止されています(弁護士法72条)。
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
引用元:弁護士法 | e-Gov法令検索
このように法律が弁護士以外の者の法律問題への関与を規制しているのは、弁護士以外の者が法律事務に関与すると、間違った対応や詐欺的な行為等により深刻な事態に陥る可能性があるためです。
弁護士でない者が法律事務を扱えるのは、法律で例外的に定められた場合に限ります(同条ただし書)。
また、弁護士法の問題は度外視するとしても、後述する理由から、家族信託を任せるのは弁護士が適任です。
ただし、弁護士の中で、家族信託を取り扱う弁護士は限られているため、「家族信託に注力する弁護士」を探す必要があるでしょう。
不動産登記については、司法書士しかできないと考えている方も多いかと思います。
実はあまり知られていませんが、弁護士でも登記業務を行うことが可能です(弁護士法3条)。
なお、裁判所は、登記申請代理業務は弁護士法3条に規定する「その他一般の法律事務」に含まれる弁護士の本来的業務であると判断しています(東京高裁平成7年11月29日)。
しかし、多くの弁護士は登記業務を行っていません。
つまり、現実問題として、弁護士は登記を自ら行わずに知り合いの司法書士を紹介するか、外注していることが多いです。
そのため「契約後の事務遂行の補助」は「△」としています。
司法書士について
上で解説したとおり、弁護士以外の者が法律相談や信託契約書をサポートするのは、非弁行為の可能性があります。
もっとも、司法書士の場合、家族信託については例外的に許されるとする見解もあります。
しかし、非弁行為の可能性を度外視するとしても、家族信託の法律相談や信託契約書の作成能力という点では、一般的には弁護士の方が望ましいと考えます。
上で解説したとおり、家族信託において、相談者が抱える課題を的確に分析し、最善の提案をするためには、信託に関する法令はもちろん、相続法や税法等の様々な法律知識が必要となります。
また、最適な信託契約書を作成するためには、契約書の作成に普段から慣れ親しんでいることに加えて、将来の紛争(訴訟)を想定し、これを回避できる条項案を作成することが重要となります。
もちろん、司法書士の中には契約業務に関して研鑽を積んでいる方もいらっしゃいますし、反対に弁護士の中には契約業務をほとんど行っていない方もいます。
しかし、一般的な傾向としては、法律相談や契約業務に関しては、弁護士の方が望ましいといえるでしょう。
行政書士について
行政書士の主な仕事は役場に提出する書類の作成が主となります。
司法書士の箇所で解説したように、非弁行為の問題を度外視するとしても、信託、相続法などの法令を踏まえた法律相談や信託契約書の作成業務については、弁護士の方が望ましいと考えます。
また、行政書士は不動産登記は法律上できないため、「契約後の事務遂行の補助」についても対応が限定されてしまいます。
税理士について
税理士は、税務に関わらない法律相談や契約書の作成を行うことはできません。
しかし、家族信託においては、税務に関する知識が必要となる場合があります。
このようなケースでは税理士の力も必要となるため法律相談に関しては「△」としています。
また、税理士も不動産登記は法律上できないため、「契約後の事務遂行の補助」についても対応が限定されてしまいます。
各種団体について
一般の会社などが法令の根拠なく、法律相談や信託契約書のサポートを行うのは非弁行為の可能性が高いと考えます。
また、弁護士などの士業の場合、弁護士会などによる監督機能が働いていますが、一般の会社などの場合、監督機能が不十分であるためトラブルが懸念されます。
家族信託を弁護士に依頼すべき3つの理由
①相談者に最適なスキームを提案できる可能性が高い
法律相談では、まず相談者がおかれた状況を分析し、その相談者が抱える課題を解決するための方法を提示できることが重要となります。
例えば、障害のあるお子さんの将来の生活のことを心配している方がいらっしゃったとします。
このとき、賃貸不動産があれば家族信託を活用してその家賃収入をお子さんに配分するなどの選択肢が検討できます。
しかし、状況によっては、家族信託ではなく、遺言や成年後見などの方法の方がふさわしい場合もあります。
また、賃貸不動産に関しては、借地借家法などの他の法令の知識が必要となることもあります。
これらについて、最適なスキームを提案できる可能性が高いのは、法律の専門家と言われる弁護士です。
さらに、弁護士は税理士登録を行うことも可能であり、税務に強い弁護士も存在します。
このような弁護士であれば税務面を踏まえた相談も可能となります。
②適切な信託契約書を作成できる
契約書を作成する目的は、関係当事者(家事信託では委託者、受託者、受益者)の権利義務を確定するとともに、将来の紛争(裁判)を予防することにあります。
紛争(裁判)を予防するためには、裁判実務に精通している必要があります。
そして、裁判実務に精通しているのは間違いなく弁護士です。
また、契約書の作成は本来的に弁護士の業務であり、多くの弁護士が得意とするところです。
したがって、家族信託にくわしい弁護士であれば、適切な信託契約書を作成することが期待できます。
③契約後の様々な業務もサポートできる
信託契約後の手続業務については、弁護士以外であってもサポートが可能なケースは多いです。
そのため、例えば「不動産登記については司法書士に依頼する」こともできます。
しかし、家族信託を弁護士に依頼しておけば、このような手続業務について、自分で探すこと無く、その弁護士からの紹介を受けることが可能でしょう。
すなわち、弁護士であれば、相談段階から契約後の事後の手続まで、一貫して様々な助言を受けることが期待できます。
弁護士と司法書士で迷ったら
上で解説したとおり、 家族信託において、最も最適な専門家は「家族信託に注力する弁護士」です。
これに対し、「家族信託に注力する弁護士が少ない」という問題が指摘されています。
確かに、家族信託を取り扱っている弁護士は決して多くありません。
しかし、インターネットを活用することで、家族信託を取り扱う弁護士を探すことは十分可能です。
また、司法書士の場合も同様に家族信託をサポートしている方は決して大部分ではなく、一部にとどまっていると思われます。
したがって、「数の少なさ」を理由に、弁護士ではなく司法書士を選ぶ必要性はないと考えられます。
なお、近場に専門家がいない場合、遠方の専門家しか選ぶことはできませんが、最近ではオンライン相談で対応してくれる法律事務所も増えています。
どんな弁護士に相談したらいい?弁護士選びのコツ
家族信託に注力していること
弁護士と一口に言っても、得意な分野は異なります。
また、弁護士の中には、特定の分野に注力すること無く、幅広く何でも扱うという方もいらっしゃいます。
しかし、家族信託を成功させるためには高度な専門知識が必要となります。
したがって、まずは「家族信託に注力している弁護士であること」が重要なポイントとなります。
家族信託に注力しているかどうかを見極めるには、その法律事務所のWEBサイトを確認すると良いでしょう。
家族信託についての記事がない場合、取り扱っていない可能性があるため注意してください。
相続問題全般をサポートできること
家族信託のご相談では、課題の解決方法として家族信託ではなく他の方法(遺言や後見制度)の方が望ましい場合があります。
また、家族信託を進める場合でも、相続発生後のことも見据えた上での契約書作成等が必要です。
したがって、相続問題全般をサポートできることが事務所選びの重要なポイントとなります。
全国対応できること
家族信託に注力する弁護士は決して多くはありません。
そのため「自宅の近くに専門家がいない」という状況が想定されます。
このような場合、オンライン(LINE、Zoomなど)を活用した法律相談を受け付けてくれる事務所を探しましょう。
物理的に離れていても、全国対応してくれる事務所であれば、特に問題なく家族信託を勧めることが可能です。
家族信託の弁護士費用
家族信託を弁護士にご依頼される場合、30万円から100万円程度が費用の相場となるかと思われます。
ただし、財産が高額になると弁護士費用も増加する傾向です。
家族信託の弁護士費用については、下記のページでくわしく解説していますので、御覧ください。
デイライトに家族信託を依頼する3つのメリット
相続対策チームが対応
デイライト法律事務所は開設以来、弁護士の「専門特化」を第1の行動指針としています。
そして、当事務所には、相続問題に注力する弁護士・税理士のみで構成される相続対策チームがあり、家族信託を強力にサポートしています。
チーム内では家族信託に関する様々な情報を共有しており、専門性を高めています。
相続以外の法律にも対応
家族信託では、信託や相続以外の法律知識や経験が必要となることがあります。
デイライト法律事務所には、様々な専門チームがあり、必要に応じて他の弁護士と連携してサポートしています。
これにより、相続以外の法律にも対応できる体制を構築しています。
全国対応も可能
デイライト法律事務所は国内の主要都市のほか、米国や中国に拠点を有しています。
また、LINEやZoomなどの各種オンラインを積極的に活用しており、日本全国や海外から家族信託のご相談が可能です。
まとめ
以上、家族信託の専門家の選び方について、ポイントを解説しましたがいかがだったでしょうか。
家族信託については、家族信託に注力する弁護士に依頼するのが一番です。
デイライトの相続対策チームは、家族信託を強力にサポートしています。
LINEやZoomなどのオンラインを活用した全国対応も可能です。
家族信託についてご関心がある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。