遺産分割の対象となります。
トラブル防止のためには遺産分割協議書の作成がお勧めです。
預貯金や利息に関する判例の立場
被相続人(亡くなった方)の生前に発生した利息が相続財産となることは当然です。
しかし、相続開始後、預金の元金から生じた利息は、預金口座の名義人は亡くなっているため、どのように考えるかが問題となります。
この問題について、従来の裁判例は、「預金の元金から生じる利息、遅延損害金も、法定相続分に応じて各相続人に帰属する」と判示していました(東京高判平成21年8 月6日)。
この従来の裁判所の立場だと、各相続人は銀行に対し、自分の法定相続分の範囲で払戻しを請求することができることになります。
その場合、例えば、
遺産分割の結果として300万円を相続することになった相続人が、
遺産分割の前に預貯金から400万円の現金を引き出しているにもかかわらず、
他の相続人に対し差額の100万円の返却にも応じないといった対応をとることも考えられます。
上記の場合、相続問題の一回的な解決ができないといった不都合が生じる可能性があります。
ところが、平成28年12月19日、最高裁は、被相続人の普通預金債権、通常貯金債権、定期貯金債権はいずれも遺産分割の対象になると判示し、従来の判例を変更しました。
預貯金は遺産分割の対象になるの?~最高裁による判例変更~
平成28年12月19日、最高裁の大法廷決定により、被相続人の普通預金債権、通常貯金債権、定期貯金債権はいずれも遺産分割の対象になるとの判例変更がなされました。
この話を聞いたときに、預貯金が遺産分割の対象になるのは当然ではないかと思われる方もいるかもしれません。
しかしながら、従来の裁判所の立場だと、被相続人の預貯金は、相続の対象にはなるものの、遺産分割の対象にはならず、相続開始と同時に当然に相続分に応じて各相続人に分割されるとされていました。
この従来の裁判所の立場だと、各相続人は銀行に対し、自分の法定相続分の範囲で払戻しを請求することができることになります。
その場合、例えば、
遺産分割の結果として300万円を相続することになった相続人が、
遺産分割の前に預貯金から400万円の現金を引き出しているにもかかわらず、
他の相続人に対し差額の100万円の返却にも応じないといった対応をとることも考えられ、
相続問題の一回的な解決ができないといった不都合が生じる可能性があります(もっとも、実務上は、銀行側が相続争いに巻き込まれないために、相続人全員の同意がなければ払戻しには応じないといった対応をとることが多く、また共同相続人全員の同意の上で預貯金を遺産分割の対象とするというケースもありました。)。
今回の判例変更では、遺産分割は、共同相続人間の実質的公平を図りつつ相続により生じた相続財産の共有状態の解消を図るものであり、被相続人の財産をできる限り幅広く遺産分割の対象とすることが望ましいことを前提に預貯金を遺産分割の対象にできるとの判断がなされました。
これにより、上記のような不都合なケースを防ぐことができ、また預貯金を遺産分割の対象とすることに不服のある相続人がいたとしてもその相続人の同意を要せずして遺産分割の対象とすることが可能となり、より公平な遺産分割を行うことができるようになるでしょう。
とはいえ、遺産分割には法的に複雑な問題が絡み合っており、本当に公平な遺産分割を行うためには専門家による協力が必要であると思います。
親族間で争うことなく相続ができれば何よりですが、もし意図せず相続問題が発生してしまった場合には、知らないうちに損をすることがないよう、まずは一度専門家である弁護士にご相談することをお勧め致します。
平成28年12月19日 最高裁判決
「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」
解説
最高裁は、遺産分割は、共同相続人間の実質的公平を図りつつ相続により生じた相続財産の共有状態の解消を図るものであり、被相続人の財産をできる限り幅広く遺産分割の対象とすることが望ましいことを前提に預貯金を遺産分割の対象にできるとの判断を行ったものと考えられます。
これにより、上記のような不都合なケースを防ぐことができ、また預貯金を遺産分割の対象とすることに不服のある相続人がいたとしてもその相続人の同意を要せずして遺産分割の対象とすることが可能となり、より公平な遺産分割を行うことができるようになったといえます。
預貯金の取引履歴の開示
遺産分割の前に、預貯金の口座にいくら入っているのかを確認する必要があります。
そこで、銀行に対して、取引経過の開示を求めることができるかが問題となります。
この問題について、以前は銀行によって「相続人は1人でも請求できる」という扱いと、「共同相続人全員で請求しなければならない」という扱いがあり、対応が分かれていました。
この問題で、裁判所は、共同相続人は1人でも銀行に対し、被相続人の預金口座の取引経過の開示を求めることができると判示しました(最判平成21年1月22日)。
したがって、現在は、戸籍謄本等によって相続人であること、また、印鑑証明書や身分証明書で本人確認ができれば、銀行は1人からの請求でも取引経過を開示してくれるはずです。
預金の名義人死亡時の問題
預金者が死亡した場合に問題となりやすい点について、ご紹介いたします。
相続人が複数の場合遺産分割協議が必要
相続人が一人の場合、遺産分割協議は不要です。
しかし、相続人が2名以上の場合、誰がどの遺産を取得するかを話し合う必要があります。
これを遺産分割協議と言います。
遺言書がある場合その有効性が問題となるケースも?
被相続人(亡くなった方)の遺言書がある場合、法定の有効要件を満たす必要があり、これを欠くと遺言が無効となります。
銀行の手続が面倒
相続発生後、銀行に対して取引履歴を取り寄せたり、他の相続人から同意書を取り付けたりするのは骨が折れる作業です。
また、素人の方の場合、何が必要書類かわからない、という問題もあります。
預金の名義人が死亡したときのポイント
上記を踏まえて、預金名義人が死亡したときのポイントについて解説いたします。
遺産分割前における預貯金債権の行使
被相続人が亡くなった場合、葬式等の費用や病院への支払、配偶者の当面の生活費などそれなりの金銭が必要になります。
その資金として、生命保険金などを残してくれている場合には問題はないのですが、預貯金しかないような場合には、被相続人の死後は口座が凍結されてしまい、銀行は預貯金の払戻しを受け付けてくれないため、問題が生じていました。
この問題を解決するために、預貯金債権の一部について、遺産分割前でも払い戻しを受けることができるように法改正がされました。
遺産分割協議書を作成する
トラブルを防止するために、適切な遺産分割協議書を作成する必要があります。
しかし、遺産分割協議書は、専門知識がないと作成するのが困難です。
専門家に助言を求めて、適切な遺産分割協議書の作成を行うことがポイントとなります。
なお、当事務所では、遺産分割に関する書式集をホームページに掲載し、無料でダウンロードできるようにしています。ダウンロードはこちらからどうぞ。
ただし、適切な遺産分割の内容は個々の案件ごとに異なります。あくまで参考程度にされてください。