不倫相手に遺産を遺せるかは、具体的な事例によって異なります。
まず、不倫相手に遺産を遺すためには、不倫相手に遺贈をする必要があります。
遺贈とは、被相続人が遺言によって、無償で自己の財産を他人に与える処分行為であり、特定遺贈と包括遺贈とがあります。
遺贈については詳しくはこちらをご覧ください。
不倫相手への遺贈は有効?
不倫相手に遺産を遺贈することに問題はないのでしょうか。
この点、不倫相手への遺贈も法律行為であり、公序良俗に反する遺贈は無効とされるおそれがあります(民法90条)。
具体的には、婚姻関係が破綻する原因となった女性に対する全財産の包括遺贈は公序良俗に反し、無効とされた判例があります(東京地判昭和63年11月14日)。
一方、遺言者が不倫相手に遺産の3分の1を包括遺贈した事案において、遺言者と不倫相手との生活状況や交際期間の長短、遺言者夫婦の婚姻関係の破綻の程度、遺贈の割合等を総合的に考慮して、遺言内容が不倫関係の継続を目的とするものではなく、もっぱら生計を遺言者に頼っていた不倫相手の生活を保全するためになされたものであり、また遺言内容が相続人らの生活の基盤を脅かすものとはいえないとして、遺言が公序良俗に反し無効であるとはいえない旨判示した判決もあります(最判昭和61年11月20日)。
以上から、不倫相手に対し、遺産を遺贈する場合には、不倫相手との交際期間の長短、遺言者夫婦の婚姻関係が事実上破綻しているかどうか、遺言者が配偶者や子の生活にどの程度配慮しているか、遺贈の目的が不倫相手の生活を保全するためかどうか等を考慮する必要があります。
また、不倫相手に包括遺贈をした場合には、相続人と事実上紛争が生じるおそれが高いので特定遺贈の方法をとる等の工夫も必要となります。
不倫相手に財産を遺したい場合の対応
上記のように、遺贈という方法によって不倫相手に遺産を遺そうとすると、遺贈が無効になるおそれがあるのみならず、相続人と不倫相手との間で紛争化する可能性が高いというリスクがあります。
そこで、不倫相手に財産を遺したい場合の対応としては、不倫相手に遺産を遺贈する旨の遺言を作成した上、生前に贈与可能な財産を不倫相手に贈与しておく方法も考えられます。
不倫相手へ生前贈与した場合でも、贈与が民法90条の公序良俗に反し無効とされる恐れがありますが、この場合は民法708条の規定により、贈与した人が贈与を受けた人に対して贈与の対象物の返還を請求できないため、事実上贈与が有効であったことと同様の結果となります。
遺留分への配慮や生前に贈与してもよい財産かどうかの判断には注意が必要です。
専門家の意見を取り入れ、よく検討されることをおすすめします。
まとめ
以上のように不倫相手に遺産を遺せる場合はあります。
しかし不倫相手に包括遺贈などで遺産を相続させる場合には、相続人と事実上紛争が生じるおそれが高いので工夫や配慮が必要となってきます。
また、事後的に遺贈が無効とされたりといった場合もあるため、あらかじめ遺贈の有効性の検討をすべきです。
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