母が亡くなりました。
母の面倒を見ていた兄に遺産はどのくらいあるのか聞いたところ、はぐらかされてしまい、遺産がどのくらいあるかもわかりません。
兄は相続税の申告をしているようなのですが、その確定申告書にどのくらいの遺産があるか書いてあるはずです。
兄は絶対に見せてくれないと思うのですが、提出先である税務署から兄の相続税申告書を見せてもらうことはできないのでしょうか?
税務署が所持している兄の相続税申告書を見せてもらうことはできないでしょう。
相続税申告書を開示してもらえるか
相続税申告書
兄が所持している相続税申告書を見たい場合には、
① 兄に申告書の控えを見せてもらう
② 兄の申告書を所持している税務署に見せてもらう
といった二つの可能性が考えられます。
しかし、任意に相続税申告書控えを見せてくれるような状況であれば、そもそも紛争にならないため、紛争状態になった後に①が実現される可能性は相当低いといえます。
そうすると、可能性としては、税務署から見せてもらうということができるかという問題になります。
税務署は開示してくれるのか
①税務署の任意の開示の可能性
税務署が、兄の相続税申告書を任意に開示してくれる可能性はありません。
相続税申告書は、個人情報の固まりであり、税務署は個人情報の取扱いについて大変厳しいので、相続税申告書を見せてくれるということはまず考えられないことです。
②裁判所を使った開示の可能性
裁判では、裁判所を用いた証拠収集手続きがあり、その一つに、文書提出命令というものがあります。
この手続きは、裁判所が文書の所持者に該当する文書を提出するように命じてくれるという手続きです。
この手続きを用いれば、相続税申告書も提出してもらえるのではないかと思うかもしれませんが、この命令にも拒否できる場合が定められています。
そして、相続税申告書は、その拒否事由のうち
「公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」
に該当する可能性があります。
③裁判例
相続税申告書が、
「公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」
であるかどうかについて判断した裁判例として、平成28年5月26日福岡高裁宮崎支部の決定があります。
この裁判例は、結論として上記拒否事由に該当すると判断しました。
その当否については議論の余地がありますが、高等裁判所の決定ですので、実務上は相続税申告書は文書提出命令ができないというのが基本となると思われます。
申告書以外で遺産を確認する方法
相続税申告書が開示してもらえないからと言って泣き寝入りする必要はありません。
遺産を探す方法はいくつかあり、遺産の調査方法について詳しく紹介しておりますので、参考にしてください。
遺産を調査した後も、遺産の評価が困難であったり、調査した預貯金の引出しに疑問があることはよくあることです。
また、生前贈与などの法的問題についてもしばしば紛争が生じます。
相続は法的な問題や税の問題、感情の問題などが錯綜する難しい問題ですので、弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所では、相続に専門特化した弁護士が対応しますので、まずは一度当事務所に相談に来てください。
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