友人であるAが半年前に死亡していたということを最近知りました。
私は生前にAに1000万円を貸していたので、Aの相続人である子どもBに1000万円を返してほしいとお願いしました。
しかし、Bは、私から催促を受けた後に相続放棄をしたようで、申し訳ないがお金は返せないと言われました。
しかし、Bは父親であるAから生前に不動産の贈与を受けていますし、Aにお金を貸した際にはBも同席しており、借金があったことはBも知っていたはずですから、Aの死亡後3か月経過後の相続放棄が認められるのは納得がいきません。
泣き寝入りするしかないのでしょうか。
相続放棄の無効を争って裁判を提起することが考えられます。
また、 生前の不動産の贈与について、詐害行為取消権を行使することも考えられるでしょう。
相続放棄後に無効を争えないのか
相続放棄の効力
相続放棄は、家庭裁判所に申述の申立てをして行います。
この申し立てによって、申述が受理されるのですが、申述の受理について誤解されていることがしばしばあります。
この家庭裁判所の申述が受理されるという意味は、裁判所が「相続放棄をしたこと」を確認しているだけであり、「相続放棄が有効」であることを確認しているものではありません。
裁判所が受理したのだから、相続放棄は有効に成立していると考えている人も多いかと思いますが、それは完全に誤解に基づいています。
すなわち、相続放棄の申述が受理された後であっても、貸金の返還請求の裁判を相続人相手に提起し、その裁判の中で相続放棄が無効であることを争うことができるのです。
本件では、相続人である子どもBが以前から借金の存在を知っていたということですので、父親であるAの死亡後半年経過した時点でされた相続放棄は無効と判断してもらえる可能性もあります。
相続放棄が無効であれば、Bが債務を相続しますので、Bに対して貸金の返還を請求することができます。
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
引用元:民法|電子政府の窓口
生前贈与の詐害行為取消しの余地
また、相続放棄を争うのではなく、相続人である子どもBは父親であるAから受けた不動産の生前贈与契約の取消しを求めて裁判を提起するということも考えられます。
詐害行為取消しができるのは、本件だと以下の場合です。
- ① AのBに対する生前贈与の前にお金を貸していたこと
- ② 贈与時にAが無資力であったこと(お金がないこと)
- ③ Bが、不動産をBがもらうことで借金の返済ができなくなることを知っていたこと
以上の要件が満たされる場合には、不動産の贈与がなかったことになり、不動産はAの相続財産に復帰しますので、不動産を売却して借金の返済を求めることもできるようになります。
本件では、生前に不動産をもらった時点でAはお金を持っていなかったのか、相続人である子どもBは借金が返済できなくなることを知っていたのかが問題となると思われますが、詐害行為取消しが認められる可能性は十分にあるといえます。
相続放棄の申述が受理されても、争うことはできますので、泣き寝入りせずに一度弁護士に相談すべきです。
当事務所では、相続に専門特化した弁護士が対応しますので、まず一度ご相談にお越しください。
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