遺言書を書いた際に、平成〇年△月とまで書いたのですが、その後友人から日にちまで書かないと遺言が無効となると聞いて、後から日にちを書き足そうと思っています。
しかし、正確な日にちは覚えていないので適当な日を書こうと思うのですが、遺言が無効となったりはしないのでしょうか。
遺言書には日付が必要とされており、年月のみしか書いていない遺言書は無効です。
日にちを追加した場合には、その追加した日に遺言書が有効に成立したとするのが判例ですので、日付に不備があった場合には、気づいて日付を付け足した日の日付を書くようにしましょう。
遺言書とは
人が自分の死後、その効力を発生させる目的で、あらかじめ書き残しておく意思表示のことを遺言といい、遺言書はその遺言が記された書面のことをいいます。
遺言書の種類としては、①自筆証書遺言書、②公正証書遺言書、③秘密証書遺言書の3種類あり、3種類それぞれにおいて成立させるための要件が異なっていますので、注意が必要です。
遺言書の日付と遺言の有効性
日付の自書の重要性
公正証書遺言書や秘密証書遺言書の場合、公証人という専門家が関与するため日付が抜けるということは考えられません。
日付が抜けてしまうのは、自筆証書遺言の場合が想定されます。
自筆証書遺言の場合、日付を自署でしなければ、遺言自体が無効となってしまいます。
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
引用元:民法|電子政府の窓口
日付が求められているのは、
- ① 遺言書を書いた時点で遺言能力があったのかどうかを判断するため
- ② 遺言書が複数存在する場合には後に書いたものが有効となるので、その前後を判断するため
という理由だと言われています。
そのため、遺言書に書くべき日付というのは、年月だけではなく、日にちまで書いてないといけないとされているのです。
仮に日付がない遺言書で不動産の登記をしようとしても、登記は受け付けてはもらえません。
それほど遺言書において日付は重要視されているのです。
相談者のケースでは、日にちが記載されていないということなので、日付を書くまでは遺言は有効に成立していません。
後から日付を書き足すことの可否
では、後から日付を書き足すことで遺言書は有効となるのでしょうか。
この点について、最判昭和52年4月19日は、遺言書を書いて署名押印までした後、その8日後にその当日の日付を書いた遺言書を有効としました。
参考判例
「民法九六八条によれば、自筆証書によって遺言をするには、遺言者がその全文、日附及び氏名を自書し印をおさなければならず、右の日附の記載は遺言の成立の時期を明確にするために必要とされるのであるから、真実遺言が成立した日の日附を記載しなければならないことはいうまでもない。しかし、遺言者が遺言書のうち日附以外の部分を記載し署名して印をおし、その八日後に当日の日附を記載して遺言書を完成させることは、法の禁ずるところではなく、前記法条の立法趣旨に照らすと、右遺言書は、特段の事情のない限り、右日附が記載された日に成立した遺言として適式なものと解するのが、相当である。」
判例を踏まえた解説
上記の判例を前提とすると、遺言書の本文を書いた日を書くのではなく、実際に日付を書いた日を書けば有効となるといえます。
ただし、日付の書き足しが何年も経過してからの場合には、無効となる可能性もあるかもしれないので、全て書き直したほうが良いでしょう。
一方、遺言書自体を書いた日の日付を遡って書いた場合、それが無効とされる可能性もあるので、おすすめはできません。
手紙なお、後から日付を書いた場合、日付を書いた日が遺言書の成立日となることには注意が必要です。
遺言書作成のポイント
自筆証書遺言書は、厳格な様式が決まっており、少しでも様式が異なる場合には遺言書自体が無効となってしまうおそれがあります。
そのため、少し費用はかかってしまいますが、公正証書遺言を作成するのをおすすめしております。
遺言書の種類はどれが良いのか、遺言が有効に記載できているか心配な場合には、当事務所に気軽にご相談ください。
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