相続手続をせずに建物を解体できますか?【弁護士が解説】


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

 

建物を解体について質問です

私の父が亡くなり、私と弟が相続人となりました。

父の財産は特になく、土地建物があるくらいなのですが、建物はすでに30年以上経過しており、不動産業者にはほぼ無価値で、取り壊して更地にして売ったほうがいいと言われました。

私は更地にして売ってしまおうと考えているのですが、建物に愛着のある弟が、どうしても取り壊したくないと言ってききません。

建物は無価値であれば、遺産分割の対象にもならないと知人から聞きましたが、本当でしょうか?

また、遺産分割の対象になるとしても、無価値なので弟の同意なく取り壊してしまってもいいのではないかと思っているのですが、取り壊した場合には何か問題があるでしょうか?

 

弁護士の回答

相続手続をせずに勝手に建物を解体することはできません。

無価値物の建物でも、遺産分割の対象になり、遺産分割をするまでは相続人が共有している状態です。

相続人全員の同意を得るか、遺産分割協議を行い、建物と土地を取得した後に取り壊す必要があります。

上記の質問の場合、Aは、Bの同意なく勝手に建物を壊すことはできません。

そのため、建物を壊すためには、Bの同意を得るか、まず遺産分割協議を行って、Aが建物と土地を取得した後に建物を壊す必要があるのです。

仮に、Bの同意なく勝手にAが建物を取り壊した場合には、損害賠償責任や刑事上の建造物損壊罪に該当し得ます。

もっとも、建物が老朽化しており、取り壊さないと危険な状態にある場合などであれば、共有物に対する保存行為として取り壊しが許される可能性はあります。

価値がなくても遺産分割の対象になる

物に価値があるどうかは、遺産分割の対象になるかとは無関係です。

建物などの不動産や、家財などについては、その所有者が亡くなった時点で相続人に承継され、共有状態になります。

そのため、共有状態を解消するには、無価値物であっても、遺産分割の手続が必要となります。

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建物を取り壊すにはどうしたら良いか

仮に建物を取り壊す場合には、相続人全員の同意(本件では弟の同意)を得て取り壊すか、又は弟と遺産分割協議を行ったうえで相談者がその建物を取得して取り壊す必要があります。

もっとも、お父様の財産が不動産以外にないということであれば、相談者が土地建物を相続するとほぼすべての遺産を引き継ぐことになるので、弟が一定額の代償金を求めてくる可能性は高いでしょう。

その場合には、代償金を用意する必要がありますので、その額がいくらになるかも検討が必要です。

不動産の価値については、固定資産税評価額を参考にすることが多いです。

しかし、土地であれば路線価や公示価格などを基準にすることもありますし、不動産業者に査定をしてもらったりする方法もあります。

遺産分割協議の段階であれば、話し合いということになるので、どの額なら折り合いがつくのかを検討するべきでしょう。

固定資産税評価額は、役所で固定資産評価証明書又は名寄帳を取得すれば知ることができますし、路線価や公示価格はインターネット上で調べることができます。

また、不動産を弟がほしいと言っているのであれば、むしろ弟に取得させて、相談者が代償金をもらうということも考慮に値するでしょう。

 

 

勝手に壊した場合の問題

相続せずに解体した場合の問題点

仮に、同意を得ていない状態で建物を壊した場合には、弟の共有持分を侵害することになりますので、民法709条の不法行為に該当し、弟から損害賠償請求をされる可能性があります。

この場合、建物が無価値であるため、弟には損害がないとも思えますが、Bの愛着がある建物であれば、慰謝料ということも考えられますし、建物が未だに使用できる状態であれば裁判所も一定程度の損害を認めると思われます。

また、刑事上も刑法260条の建造物損壊罪にも該当し得ますので、懲役5年以下の刑が科される可能性もありますので、注意が必要です。

根拠条文

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用元:民法|電子政府の窓口

(建造物等損壊及び同致死傷)
第二百六十条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

引用元:刑法|電子政府の窓口

 

 

同意なく取り壊せる場合はないのか

どんな場合でも取り壊せないかといえばそうではありません。

例えば、建物が老朽化しており、そのままにしておくと崩れてしまったりして近隣の財産や人に対して損害を与えてしまうような危険な状態にある場合などは、そのまま放置しておくことこそ無責任です。

そのため、民法でも共有物の保存行為として、そのような危険な状態にある建物の取り壊しを認めていると解されます。

もっとも、その判断は難しいため、弁護士に一度ご相談ください。

相続では、財産の処分方法や取得する財産の評価額をめぐって争いになることが少なくありません。

その場合には、その財産価値の算定を適切に行わなくてはいけません。

また、遺産分割協議がまとまった場合に作成する遺産分割協議書を適切に作成しないと、不動産の登記ができない場合もあります。

当事務所では、相続に特化した弁護士が連携業者を用いて査定を行うなどして適切な財産評価を行い、遺産分割協議の見通しをお伝えし、遺産分割協議書の作成までお手伝いしております。

まずは一度気軽にご相談ください。

 

 

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