- 腹違いの兄弟がいる場合の相続分はどうなる?
- 腹違いの兄弟の相続に納得できない
- 事前に腹違いの兄弟との相続トラブルを回避したい
当事務所の相続対策チームには、このようなご相談が多く寄せられています。
腹違いの兄弟がいる場合、相続分が複雑化する上、相続人間での感情的な対立が激化しやすく、素人の方だけでの解決は難しくなります。
相続が「争族」となる前に、当事務所までお気軽にご相談ください。
腹違いの兄弟とは
腹違いの兄弟とは、母親(又は父親)が異なる兄弟をいいます。
相続が発生した段階になってから、異母(異父)兄弟の存在が発覚するケースがあります。
例えば、父親が昔、離婚した際、その前妻との間に幼い子ども(A)がいて、その後再婚して、2人の子ども(B、C)を授かったケースを見てみましょう。
この事案の場合、AとBCは、母親が異なる、腹違いの兄弟となります。
このような事案の場合、AとBCはお互いの存在を知らないことがあります。
ところがある日、父が高齢で亡くなったとします。
遺産分割協議はすべての相続人との間で行う必要があります。
そこで、遺産分割においては、まず、相続人の範囲を確定するため、過去の戸籍をたどって相続人の有無を調査します。BやCが相続人を調査する過程で、異母兄弟のAがいることが発覚しました。
そして、Aが相続権を主張してきたとします。
BやCからすれば、たとえAが父と血がつながっていたとしても、大昔に縁が切れているような者が突然、父の遺産取得を主張してくると納得できないでしょう。
他方で、Aとしても、父の記憶がなかったとしても、やはり自分の父親の遺産である以上、正当な権利を主張したいと考えてもおかしくありません。
BやCから非難されるいわれはないと考えるでしょう。
このような感情的な対立から、腹違いの相続問題は複雑化していくことがあります。
腹違いの兄弟の相続分は?
法定相続分について、民法900条は以下のとおり規定しています。
第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
1 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
2 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
3 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
4 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
では、腹違いの兄弟の場合はどうなるでしょうか?
具体例の方がわかりやすいので、上記の事例で解説します。
父が亡くなった場合
この場合の法定相続分は、母が2分の1です。
子どもの法定相続分は2分の1ですが、3人いますので、6分の1となります。
1/2÷3=1/6
前妻はもらえないのか?と思われるかもしれませんが、離婚しているので配偶者ではなく、法定相続分はありません。
前妻が亡くなった場合
前妻は再婚しておらず、Aの他に子どももいません。
したがって、この場合は、Aが前妻の全財産を相続します。
父と母が既に他界している場合:Bが亡くなった場合
Bに配偶者や子どももいない場合、Bが亡くなれば、AとCが相続人になります。
しかし、腹違いの兄弟であるため、民法900条4号但書(父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする)によって、Aの法定相続分はCの2分の1となります。
したがって、Aが3分の1、Cが3分の2となります。
父と母が既に他界している場合:Cが亡くなった場合でCに妻子がいる場合
Cが亡くなった場合、兄弟ではなく、優先順位の高い配偶者と子が相続人となります(民法900条1号、それぞれの法定相続分は2分の1)。
そのため、腹違いの兄弟の問題は生じません。
ところが、上記のケースで、もし、Cに子どもがいない場合はどうなるでしょうか?
この場合、相続人は、民法900条3号によって、「配偶者の相続分は4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は4分の1」となります。
そのため、Cの妻の相続分は4分の3となります。
AとBについては、残りの4分の1をわけることになりますが、腹違いのAの法定相続分はBの2分の1です。したがって、Aの法定相続分が12分の1、Bの法定相続分が12分の2(6分の1)となります。
異母兄弟の相続の問題点
異母兄弟の相続について、特有の問題があります。
以下、解説するのでご参考にされてください。
①異母兄弟がいないかの調査が難しい
遺産分割協議は、すべての相続人との間で合意を行う必要があります。
そのため、異母兄弟であっても、遺産分割協議に加わっていなければ、遺産分割協議自体が無効となってしまいます。
遺産分割協議が終わってから、長年月が経過した後、異母兄弟が現れて遺産分割協議の無効を主張するというケースは多くあります。
このようなトラブルを防止するために、相続が発生したら、相続人調査を行って、異母兄弟の有無を確認する必要があります。
ところが、相続人の調査は決して簡単ではありません。
すなわち、相続人の調査は、まず、戸籍謄本を何通も取り寄せる必要があります。
新しい戸籍から古い戸籍まで調べる必要があるのです。
また、戸籍については、慣れていないと見方がわからないということがあります。
したがって、素人の方が自分で相続人を調査すると「相続人の漏れ」が生じることが懸念されます。
②法定相続分の算出がわかりにくい
法定相続分は、複雑な算定式によって算出します。
法定相続の割合について詳しくはこちらのページをご覧ください。
異母兄弟の場合は、上記のとおり、通常の法定相続分とはならないことがあるためより一層、気をつけなければなりません。
③解決まで長期間を要する傾向
異母兄弟がいるケースは、親族間の対立が激化する傾向にあります。
対立が激化すると、相手に対する不信感が生じるため、遺産の範囲について争いとなることがあります。
例えば、被相続人の遺産目録を見ても、本当にすべての遺産が記載されているのか信じられなくなります。
また、遺産の範囲について争いがなくても、遺産の取り分について争いとなることがあります。
法定相続分といっても、異母兄弟の場合は不当であると感じる方が多いのです。
このような特殊性から、協議での解決が困難難しい傾向です。
相続人間の協議による協議による解決が難しい場合、家裁に遺産分割調停・審判を申し立てることとなります。
遺産分割調停等の手続は、一般的に長期間を要する傾向にあります。
どれくらいの期間が必要かは、相続人の数や争点の複雑性等によって異なりますが、短くて半年程度、長くなると数年かかっていると思われます。
異母兄弟がいるケースの遺産分割協議を成功させるポイント
遺産分割を進める前提として、相続人調査を的確に行わなければなりません。
素人の方が自分で行うのは難しく、また、可能であっても時間と労力を要するでしょう。
したがって、調査を専門家に依頼するという選択肢を持ち、検討すると良いでしょう。
相続問題に詳しい弁護士であれば、相続人調査についての依頼を受けてくれるでしょう。
相続人調査と同様に、法定相続分についても、専門家に相談するとよいでしょう。
相続人調査を依頼すると、法定相続分についてもアドバイスしてくれると思われます。
遺産分割協議を複雑化させず、協議で円満に解決させるために、専門家である弁護士に交渉を依頼するという方法が考えられます。
親族間では、冷静な話し合いが難しくても、プロの弁護士であれば、冷静に相手と交渉できるので、協議が成立する可能性が高くなります。