先日、配偶者Aが他界しました。
Aとの間には子どもはなく、Aの両親も死亡しておりますが、何十年も連絡をとれていない弟のBがいると聞いています。
Aの預貯金口座はすでに凍結されているのですが、葬儀代などがかかるので、預貯金口座から払い戻しを受けたいと思っています。
銀行にはどのような書類を持って行けばよいのでしょうか。
また、その書類の集め方も教えてください。
今回の場合ですと、相続人は、配偶者である相談者さんとBさんということになるので、手続書類については、少なくとも①口座名義人が亡くなったことの分かる書類と、②窓口で払い戻しを受ける人が口座名義人の相続人であること、③その相続人の相続分が分かる書類が必要になります。
まず、①については、Aの死亡の記載のある戸籍謄本が必要になります。
次に、②については、相談者さんがAの配偶者なので、Aの死亡の記載のある戸籍謄本に記載があるはずなので、①と同じ書類で足ります。
最後に、③についてですが、③については、細かく分けるとⅰ)第1順位の相続人である子どもがいないことのわかる書類、ⅱ)第2順位の直系尊属が亡くなったことの分かる書類、ⅲ)第3順位の兄弟姉妹が存在することが分かる書類、に分けられます。
ⅰについては、Aさんの生前の戸籍がすべて必要になりますので、原戸籍や除籍謄本などを集める必要があります。
また、ⅱについては、Aさんの父母及び祖父母の死亡の記載のある戸籍が必要になります。
最後に、③については、Aさんの兄弟姉妹であるBさんの現在戸籍が必要になります。
なお、③については金融機関ごとに確認相続関係図の提出を求めてくる金融機関もあると思われます。
これらの書類の取得方法ですが、本籍地や筆頭者が分かる書類を取得していただき、本籍地の管轄の役所に問い合わせをして、戸籍をたどっていくしかありません。
払い戻しの手続
平成30年民法改正により、令和元年7月1日以降は、相続人は、預貯金の一部の払戻しを求められるようになりました。
これによって、銀行には多くの相続人が払戻の手続にいくものと思われますが、その手続きをとるためには、必要書類を集めて請求することになります。
この必要書類は銀行ごとに異なるのですが、このQAでは、大まかに最低限必要となる書類と取得方法を確認していきましょう。
何を提出する必要があるか
まず、預貯金口座からの払戻しを受ける大前提として、被相続人が死亡していることが必要になりますので、銀行は口座名義人の死亡の記載のある戸籍等の提出を求めてくることになります。
死亡診断書等でも代用できると思われますが、基本的には死亡の記載のある戸籍等を提出することになるでしょう。
次に、払い戻しを請求できるのは相続人ですので、請求者が相続人であることの証明書類が必要になります。
本件のように配偶者であれば、被相続人の戸籍と同じ戸籍に入っているので、①の書類と同じもので足りることになります。
一方、本件とは異なり、請求者が被相続人の父母のような場合には、第1順位の相続人である子どもやその孫がいないことを証明する必要がありますので、被相続人の生前の戸籍等がすべて必要になってきます。
請求者がどういった立場かによってこの必要書類は変わってくるのです。
最後に、払い戻しを受ける請求者の相続分によって請求できる額が変わりますので、その請求額確定のために相続分が分かる書類の提出を求められます。
本件のように配偶者が請求者である場合には、他の相続人がいるかその相続人の順位によって法定相続分が異なるので、他の相続人として誰がいるのかを証明する書類が必要になります。
本件では、第1順位である子どもがいないこと、第2順位である父母や祖父母が死亡していること、第3順位であるBがいることの3つを証明するために、被相続人の生前の戸籍全てと、父母や祖父母が死亡したことのわかる戸籍等、そして相続人であるBの戸籍謄本が必要になってきます。
なお、祖父母についてはその出生から相当な期間(世界最高齢である120歳を超える期間)が経過している場合には祖父母の戸籍等の提出を省くことができる場合もありますので、金融機関に確認してください。
書類の集め方
書類については、基本的には戸籍等なので、本籍地を管轄する役所に請求することになりますが、生前に転籍などを繰り返している場合、手元にある戸籍から本籍地をたどって取得していくしかありません。
特に兄弟姉妹が相続人である場合には、この戸籍の取得だけでも数か月を要する場合もあると思われます。
なお、弁護士が代行して戸籍等を取得することも可能です。
まとめ
今回挙げた必要書類は最低限のものであり、金融機関によっては相続関係図を求めたり、その他の書類を求めてくる可能性はありますので、まずは個別に金融機関に問い合わせをしてください。
そして、預貯金口座からの払戻しを受けるためには、上記のとおりいくつかの書類をそろえる必要があり、その書類は相続人が誰かによって異なるものです。
配偶者と子どもしかいないような場合にはその必要書類の取得にそれほどの時間はかからないことと思われますが、父母や兄弟姉妹が相続人となっている場合には、必要書類を集めるだけでも相当期間が必要となることが想定されます。
そのため、生前における遺された遺族のための対策は不可欠ですので、遺言や生命保険を用いるなど、遺された遺族が困らないような対策を専門家である弁護士とともに練っていくことが必要です。
まずは相続を専門とする弁護士にご相談ください。