目次
公正証書遺言の証人とは
公正証書遺言を作成する際は、法律上、証人2名以上が必要とされています。
- 証人は、実際何をするのでしょうか?
- どのような人に証人になってもらえばよいのでしょう?
- 証人になってくれる人はどのようにして探せばよいのでしょう?
- 証人になってもらうのに、費用はかかるのでしょうか?
- 証人になる場合、何か注意することはあるでしょうか?
今回は、こうした証人に関する疑問について、解説していきます。
公正証書遺言の証人の役割|実際にはどんなことをする?
公正証書遺言の作成に立ち会う
証人は、遺言をする人(遺言者)、公証人とともに、公正証書遺言が作成される場に立ち会います。
公正証書遺言作成の流れ
公正証書遺言が作成される当日の流れは以下のようになります。
なお、証人として公証役場に行くときには、本人確認書類(運転免許証など)と印鑑を持っていく必要があります。
以下、詳しく当日の流れを解説します。
遺言者が、公証人に対し、証人らの前で、遺言の内容を口頭で伝えます。
公証人は、それが正常な判断能力を有する遺言者の真意であることを確認します。
証人も、遺言者の様子を見聞きして、遺言者が自分の意思で遺言内容を伝えているか、遺言者が正常な判断能力を有しているかなどを確認しましょう。
公証人は、公正証書遺言を、遺言者と証人らに読み聞かせるか、閲覧させるかし、内容を確認してもらいます。
公正証書遺言は、あらかじめ遺言者と公証人が打ち合わせて、作成してあることが多いです。
遺言者と証人らは、公正証書遺言の内容を確認し、間違いがなければ、署名・押印をします。
間違いがあると思った場合は、その場で修正できることもありますので、申し出ましょう。
そして、公証人も公正証書遺言に署名・押印し、公正証書遺言の完成となります。
参照:1遺言 3公正証書遺言の作成 「Q4.公正証書遺言はどのような手順で作成するのですか」|日本公証人連合会HP
公正証書遺言の作成当日の流れの詳細については、以下のページもご覧ください。
(公正証書遺言)
第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
引用元:民法|電子政府の窓口
証人の役割
証人は、公正証書遺言作成の場面に立ち会うことで、
- 遺言者に人違いはないか
- 遺言者の判断能力は正常か
- 遺言者が自分の意思に基づいて遺言内容を公証人に伝えていたか
- 出来上がった公正証書遺言に遺言者の意思が反映されているか
を確認する役割を果たします。
証人に確認させることにより、公正証書遺言が遺言者の真意に基づいて作成されることを確保し、遺言をめぐる後日のトラブルを未然に防止することが期待されています。
公正証書遺言の証人は誰に依頼するべき?
証人に必要な資格
証人になるのに特別な資格は必要ありません。
しかし、法律上、証人になることができない人がいるので注意が必要です。
証人になれない人
証人には、以下の欠格事由があります(民法974条)。
1 未成年者
2 推定相続人及び受遺者
3 推定相続人や受遺者の配偶者及び直系血族
4 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
これらの者が証人となっていた場合、公正証書遺言は無効になります。
証人になる人は、遺言に利害関係がなく、判断能力も十分な人でなければならないため、1~4に当てはまる人は証人になれないとされているのです。
(証人及び立会人の欠格事由)
第九百七十四条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一 未成年者
二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
引用元:民法|電子政府の窓口
公正証書遺言の証人がいない場合、証人なしにすることはできる?
公正証書遺言を作成するとき証人2名以上が必要なことは、法律で決められています。
最低でも2名の証人なしに、有効な公正証書遺言を作成することはできません。
自分で証人を見つけられない場合や、遺言の内容を知人に知られたくないなど知り合いには頼みなくない場合は、公証役場で紹介してもらうこともできます。
公正証書遺言の作成について弁護士に相談していた場合、弁護士や弁護士事務所の事務員などに証人になってもらえることもあります。
公正証書遺言の証人になってもらう場合にかかる費用はいくら?
自分で証人を探してくる場合は、特に費用は必要とされていません。
謝礼などの有無、金額は、当事者の自由です。
証人を公証役場で紹介してもらった場合は、費用がかかります。
金額は、公証役場によって様々ですが、1人につき7000円~15000円程度です。
証人になるとトラブルに巻き込まれることはある?注意点と対処法
証人は、遺言が本人によってなされたかどうか、本人に正常な判断能力があったかどうか、公正証書遺言が本人の意思を反映して作成されたかどうかなどを確認する役割を担っています。
そのため、相続人などの間で公正証書遺言の有効性について紛争が起こった場合は、証人となった人が、公正証書遺言が作成されたときの状況などについて説明を求められたり、場合によっては裁判所で証言するよう求められることもありえます。
たとえば、一部の相続人が、「公正証書遺言が作成されたとき、遺言者は認知症で、判断能力がなかった。」と主張したとします。
このような場合に、証人となった人が、「当日の遺言者はどのような様子だったか。」、「付き添ってきた人はいたか。」、「どのようなことを話していたか。」、「はっきり話せていたか。」などについて、説明や裁判所での証言を求められる可能性があるのです。
このように、証人になる場合は、後日トラブルに巻き込まれることもありうると心に留めておきましょう。
そして、実際に公正証書遺言の作成された状況について説明を求められたときは、公正証書遺言を作成した当日のことをよく思い出し、落ち着いて、本当のことを誠実に説明するようにしましょう。
まとめ
今回は、公正証書遺言の証人の役割、証人になれる人、証人をお願いするのにかかる費用、証人となった場合の注意点などについて解説しました。
公正証書遺言をするためには、2名以上の証人に立ち会ってもらうことが必要です。
証人には、公正証書遺言が本人の意思を反映して作成されたかどうか、本人に正常な判断能力があったかどうかなどを確認してもらいます。
遺言者ご自身で証人になってもらう人を見つけることができない場合には、公証役場で紹介してもらうこともできますし、弁護士に相談することもできます。
証人になった場合、後日、公正証書遺言を作成した時のことについて説明を求められる可能性もあることは覚えておきましょう。