親の土地に家を建てるのは特別受益となる?【弁護士解説】


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

特別受益について質問です

父が亡くなりました。

私の妹は、父の生前に、父から土地を無償で借りてその上に建物を建てて生活していました。

また、私の姉は、父の建物に無償で住んでいました。

姉と妹の土地の無償使用、建物の無償使用は、それぞれ特別受益にあたるのでしょうか。

 

 

弁護士の回答

土地の無償使用については、一定程度特別受益にあたる可能性があります。

建物については、特別受益とは言えないと考えられます。

 

特別受益とは

民法は、被相続人(亡くなった方)から特定の相続人への贈与等があった場合に、その贈与等を相続分の前渡しとみて、計算上その贈与等を相続財産に持戻して(加算して)相続分を算定するとしています(民法903条)。

ここでいう贈与等のことを特別受益といいます。

根拠条文
(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
(略)

引用元:民法|電子政府の窓口

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無償使用の場合に成立する契約

では、土地や建物の無償での使用は、特別受益に該当するのでしょうか。

土地や建物の無償使用は、民法上、使用貸借契約という契約が成立していると考えられます。

根拠条文
(使用貸借)
第五百九十三条 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。

引用元:民法|電子政府の窓口

よく似ているものに、賃貸借契約があり、こちらについては聞かれたことがあるかと思います。

賃貸借契約は、土地や建物などを借りるときに、賃料を設定しますが、使用貸借契約は無償という点で異なります。

 

 

土地の使用貸借

質問の例では、妹が父から土地を無償で借りてその上に建物を建てて生活していました。

このような土地の無償使用については、土地使用借権の生前贈与があったとして、土地使用借権相当額が特別受益に当たる可能性があります。

理由

使用貸借契約の成立により、土地の上に建物が立っており、土地の売却が平地と比べるとある程度は困難となります。

そのため、一定程度(1〜3割り程度)、土地が減価すると想定されるので、その分を使用貸借権相当額と考え、使用貸借権の設定により、妹が特別受益として取得したと評価される可能性があります。

ただし、この例で、妹が父と同居して、介護をしていたような場合、これと使用貸借権相当額は対価関係に立つとも考えられるので、特別受益に該当しない可能性もあります。

なお、地代家賃相当額が特別受益であるとの主張も考えられます。

しかし、使用貸借契約は、賃貸借契約ではなく、借地借家法の適用がなく、解除の制限などもないため、基本的には地代家賃相当額という主張は難しいと考えられます。

 

 

建物の使用貸借

質問の例では、姉が父の建物に無償で住んでいました。

しかし、建物の使用貸借については、基本的には特別受益には当たらないといえます。

理由

建物の場合は、土地の場合と異なり、明け渡しが容易であって経済的な価値がないと考えられます。

また、父が姉に建物の無償の使用を認めている場合、通常、持ち戻し免除の意思表示があると考えられます。

さらに、建物の無償使用は、土地以上に恩恵的な要素が強く、遺産の前渡しとは評価できないと思えます。

 

持ち戻し免除の意思表示とは

特別受益が認められると、その分の財産が相続財産に持ち戻されます。

しかし、被相続人として特別受益の持戻しを望まない場合が少なくありません。

その場合に、被相続人が特別受益を持ち戻す必要がない旨の意思表示をすることで持戻をなくすことを持戻免除の意思表示といいます。

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まとめ

建物や土地の無償使用については、常に黙示の持戻免除の意思表示を考える必要があります。

特に、被相続人の希望で同居していた場合や被相続人の介護等で同居していた場合などでは、そもそも使用借権が認められないこととの判断や、特別受益にあたらないとの判断がされる場合があると思われます。

こういった問題は専門家でないとなかなか判断は困難ですので、一度弁護士にご相談するほうが良いと思います。

このようなトラブルは当事務所にお気軽にご相談ください。

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