私は、数年前に夫から暴力を受けて離婚をしました。
子どもの親権を得て育てているのですが、私が病弱なため、私に何かあった時に子どもが元夫に引き取られてしまうのではないかと心配です。
なにか対策はできますか?
親権者が死亡したとしても、子どもの親権が元夫に戻るわけではないので、元夫に引き取られてしまうわけではありません。
しかし、元夫が「親権者変更」の申立てを家庭裁判所にして、子どもの親権を戻そうとする可能性はあるでしょう。
そのため、遺言で未成年後見人を指定しておくことや、家族信託を合わせて用いることは考えられます。
遺言で未成年者後見人を指定する
離婚後の親権者が死亡した場合には、もう一方の親に親権が戻ると思われがちですが、そうではありません。
親権は、もう一方の親が親権者変更の申し立てをしない限り、戻ることはないのです。
しかし、親権者がいなくなっては子どもが困りますので、この場合には未成年後見人がつけられることになります。
未成年後見人は、親権者が遺言で指定する方法、又は親族その他の利害関係人の請求によって家庭裁判所が指定する方法のどちらかの方法により、指定されることになります。
子どものためにも、適切な未成年後見人を遺言で指定しておくべきでしょう。
未成年後見人として指定する人に制限はありませんが、多くは親権者の両親や兄弟姉妹であることが多いようです。
もっとも、未成年後見人を指定していても、親権者変更の申し立ては妨げられませんし、下記の審判例でも、元夫に対し親権者の指定がなされていますから、遺言による未成年後見人の指定をしていても安心はできません。
大阪家庭裁判所 審判 平成26年1月10日
「親権者による未成年後見人の指定がされているときでも、未成年後見制度が元来親権の補完の意味合いを持つにすぎないことに照らすと、親権者変更の規定に基づいて親権者を生存親に変更することが妨げられるべき理由はない。」
家族信託
元夫が親権者になった場合には、子どもが相続した財産を管理するのは、元夫ということになってしまいます。
そのため、元夫に親権者が指定されてしまうという万が一の場合に備えて、家族信託を設定するということが考えられます。
遺言によって、未成年後見人と指定していた親族を受託者、子どもを受益者として信託をすることになります。
子どもが成年になるまで、受託者に不動産の管理を任せたり、生活費や教育費を定期的に子どもに給付したりするといった内容にして、未成年である子どものために信託財産が用いられるようにします。
そして、子どもが成年に達した場合には、残っている信託財産全てが子どもの名義になるように信託契約をしておくことができます。
若いうちに遺言を残すというのは多くの人は考えないことですが、子どものために、遺言や家族信託をしておくということは重要ですので、一度当事務所に相談ください。
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