家族信託は、一般的に信託できる財産が少ない場合や本人が若く健康な場合は、利用価値が乏しくなります。
ここでは、家族信託が不要なケースの具体例だけでなく、家族信託のメリットを活かせるケースについて、わかりやすく解説しています。
この記事を読むことで、家族信託が必要ではないケースと家族信託をした方がメリットがあるケースの違いがわかりますので、ぜひ最後までご覧ください。
家族信託とは
「家族信託」とは、財産管理の方法の一つです。
委託者(財産を有する人で、財産の管理を任せる人のことです。)は受託者(財産の管理を委託者から任せられ、実際に財産の管理や運用をする人のことです。)に対し、特定の目的のために財産の管理を任せます。
受託者は、受益者(家族信託によって利益を得る人のことです。)のために、財産の管理や運用を行うことになります。
家族信託の目的(例えば、老後の生活資金の確保や、将来認知症になる場合に備えて財産の管理を任せておくなど)や、財産の管理・運用方法、誰を受託者として誰を受益者とするかなどは、信託契約(委託者と受託者との間の契約です。)や遺言によって定められます。
家族信託は、財産の管理・処分を別の家族(受託者)に任せることで、財産の管理・運用をその家族に行ってもらい、家族信託の目的を実現させる制度です。
家族信託が不要なケースとは
具体的な状況にもよりますが、一般的に家族信託が不要又は適切でないケースとしては、下表のものが考えられます。
不要な場合
- ① 委託者の財産がない場合
- ② 信託できる財産が少ない場合
- ③ 委託者の財産に農地が含まれている場合
- ④ 委託者本人が若く健康な場合
適切でない場合
- ⑤ 財産の管理を任せる親族がいない場合
- ⑥ 家族間の対立が存在する場合
以下、それぞれのケースについて解説していきます。
①委託者の財産がない場合
家族信託とは、財産管理の方法の一つで、委託者が受託者に対し、特定の目的のために財産の管理を任せる制度になります。
そのため、委託者の財産がない場合には、家族信託を利用する必要はないといえます。
ここで重要なのは、家族信託で信託財産として運用できる財産は、あくまで委託者の名義の財産に限られるという点です。
例えば、委託者が不動産や預貯金を多く持っていましたが、家族信託を考える前に、子どもや孫に生前贈与という形で財産を譲渡してしまっている場合、生前贈与された財産は、委託者の財産ではなくなっています。
この場合には、その財産を信託財産にすることはできなくなってしまいますので、生前贈与をした財産以外の財産があるかを検討する必要があります。
現金や不動産など、資産運用に適した財産がない場合には、家族信託を利用する必要はないといえるでしょう。
②信託できる財産が少ない場合
信託できる財産が少ない場合、家族信託の制度自体を利用することはできます。
しかし、家族信託制度を利用するためには、信託契約書を自分で作成する場合であっても、費用がかかったり手続きが複雑であったりといった問題があります。
そのため、信託できる財産が少ない場合は、家族信託制度によって得られる利益と家族信託制度のコストを比較して、家族信託制度を利用する必要があるかを決める必要があるでしょう。
家族信託をご自身で行う場合の費用について、詳しくお知りになりたい方は、こちらをご覧ください。
③委託者の財産が農地だけの場合
信託できる財産が少ない場合と関連しますが、委託者の財産に農地が含まれている場合は注意が必要です。
法律上、「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいいます(農地法2条1項)。
農地法上の「農地」または「採草放牧地」に当たるかは、登記簿の記載からではなく、土地の現在の利用状況から判断するというのが裁判所の考え方です(最判昭38.10.24)。
例えば、登記簿上は「宅地」と記載されていても、実際は畑として利用されている土地であれば、その土地は、農地法上の「農地」ということになります。
そして、農地法上の「農地」または「採草放牧地」に該当する土地(以下単に「農地」といいます。)について、所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合(以下単に「権利を移転する場合」といいます。)には、農業委員会の許可を受けなければならない、とされています(農地法3条1項)。
信託財産とする際は、委託者から受託者に所有権を移転させる必要がありますので、上記の権利を移転する場合に該当し、農業委員会の許可が必要となりますが、ここで問題があります。
信託の引受けにより権利を移転する場合には、農業委員会は、上記の権利の移転について、許可することができない、と定められているのです(農地法3条2項3号)。
家族信託も「信託の引受け」に該当しますので、家族信託を理由とした農地の権利の移転について、農業委員会は許可をしてくれないという結論になってしまいます。
また、農業委員会の許可を受けないで行った所有権等の権利の移転は無効となります(農地法3条6項)。
したがって、農地法による規制の結果、農地を信託財産とすることはできないという結論になってしまいます。
すなわち、農地ではなく、宅地などにしてしまうことにより、農業委員会の許可を不要とする方法です。
今後の法改正により、農地のままで信託財産にする方法も創設される可能性もありますが、現在の法律では、農地のままで信託財産とすることはできません。
そのため、家族信託の制度を利用する場合には、農地を除いた他の財産で、家族信託をすべきかどうか検討する必要があるでしょう。
④委託者本人が若く健康な場合
委託者本人が若く健康な場合に、家族信託を利用する必要はあるでしょうか。
結論としては、委託者次第にはなりますが、これから解説するような、家族信託を利用することでの制約も考慮した上で、家族信託を利用するかどうかを決める必要があります。
家族信託を利用すると、委託者の財産の所有権(管理権)は、受託者に移転し、委託者は、自由に財産の管理や処分ができなくなってしまいます。
委託者本人が若く健康な場合には、委託者が自分で財産の管理や運用をしたいと思う方もいるかもしれませんが、信託契約の効力が発生してからは、委託者が、信託財産とした財産については、自分で管理をすることはできなくなります。
また、委託者が生前贈与をしたいと思った場合、委託者に処分権限がありませんので、信託財産を贈与することはできません。
信託財産の範囲は、信託契約で定められていますので、信託契約の内容を変更すれば、信託財産を委託者の個人財産に戻すことは可能といえますが、この方法は委託者と受託者双方にとって手間がかかる方法といえます。
また、受託者であれば、財産の管理や処分が可能ですので、委託者が受託者にお願いして対応してもらうこともできますが、委託者が自分で動けない分、不便に感じることも多いと思われます。
したがって、委託者本人が若く健康な場合は、家族信託を締結するよりも、任意後見制度(将来の意思能力の低下に備え、後見人をあらかじめ選定しておく制度)など、財産の処分権を移転させない方法を検討すべきでしょう。
⑤財産の管理を任せる親族がいない場合
家族信託は、委託者が受託者に対し、特定の目的のために財産の管理を任せる制度です。
そして、受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有することになります(信託法2条5項)。
信託契約によって、受託者の権限に制約を加えることもできますが(信託法26条)、基本的には、信託財産の管理・処分に加え、信託の目的のために必要な行為であれば、受託者の権限で行うことが可能です。
具体例として、アパートを信託財産として設定した家族信託において、年数の経過によってアパートのリフォームをする必要が生じたケースを例に説明します。
受託者は、不動産の改良のためのリフォームに関する請負契約を締結をすることも可能ですが、リフォームの代金を支払うために銀行から借入をした時、銀行から借入をして生じた債務は、「信託財産責任負担債務」(信託法21条5号)になります。
「信託財産責任負担債務」とは、受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務のことをいいます(信託法2条9項)ので、受託者が、信託財産によって債務を弁済することになります。
そのため、受託者の財産管理がずさんであったり、無用な改良行為を行ってしまうと、信託財産の価額が減少することになってしまいかねません。
そこで、委託者は、自己の財産の管理等を、安心して任せることのできる家族を受託者として定めるべきですが、そのような親族がいない場合は、家族信託を利用すべきではないでしょう。
その他にも、他に身寄りのない方であれば、受託者を定めることができないため、家族信託制度を利用すべきではないといえます。
⑥家族間の対立が存在する場合
信頼できる家族はいるものの、家族間で仲が悪く、家族の一人に財産の管理処分を任せたときに、他の家族が異論を唱えることが想定される場合には、家族信託を利用するかどうかを慎重に決めるべきです。
家族信託は、家族のうち一人を受託者に定め、受託者に委託者の財産の管理や処分等を任せる制度であり、受託者には様々な権限が付与されることになります。
そのため、家族の中に、受託者が財産管理をすることに異論を唱える人がいた場合、家族間において、信託財産の管理や処分等について、深刻な争いを生じさせることになりかねません。
家族間の争いは、いずれ委託者(兼受益者)が亡くなり、相続が発生した場合でも顕在化する可能性がありますので、家族間の争いを生じさせることはできる限り避けるべきでしょう。
必ずしも、家族信託の利用が家族間の争いの火種になるとまでは言えません。
しかし、家族信託では、比較的高額な財産の管理や処分等が問題となりますので、委託者としては、家族の仲が良いのか悪いのかを確認してから、家族信託の利用を検討すべきでしょう。
また、過去に相続問題でトラブルがあったなど、既に家族の仲が悪いなどの事情が分かっている場合には、家族信託を利用するよりも、(公正証書)遺言の内容を工夫し、家族間の争いを起こさない方法で次代に財産を遺す方法を検討すべきでしょう。
家族信託が不要なケースと家族信託が適切ではないケースとして、6つのケースを紹介しました。
家族信託だけが、委託者の財産の維持管理や運用、次代への引き継ぎをする方法ではありません。
遺言や後見制度など、家族信託以外の方法が適切なケースもありますので、自分の財産状況や家族関係などを確認し、それぞれの事情にあった方法を選択することが重要といえます。
家族信託のメリットを活かせるケースとは
それでは、家族信託のメリットを活かせるケースにはどのようなケースがあるでしょうか。
①委託者が孫の代まで財産の相続方法を指定することを希望している
まず、委託者が、自分の子の代だけでなく、孫の代についてまで、「誰にどの財産を受け継がせたい」という明確な希望を持っているケースが考えられます。
同じような効果をもたせる方法としては、他に遺贈(いぞう)という方法も考えられます。
遺贈とは、遺言によって、特定の誰かに特定の財産を引き継がせることです。
では、遺贈によって、孫の代まで相続方法を指定することができるのでしょうか。
これを後継ぎ遺贈といいます。
遺贈の方法による後継ぎ遺贈については、これを肯定する見解と否定する見解があり、その有効性に不安が残ります。
仮に、遺贈の方法による後継ぎ遺贈が無効と判断されてしまうと、委託者の意思が反映されず、孫の代で遺産分割をやり直さなければならなくなってしまいます。
一方で、家族信託では、委託者が比較的自由に信託契約の内容を決めることができるので、委託者の子を第二次受益者とし、孫を第三次受益者とするといった、後継ぎ遺贈と同じような効果をもった合意をすることも可能です。
したがって、委託者が、自分の子の代だけでなく、孫の代まで、誰にどの財産を受け継がせたいという希望を持っている場合、積極的に家族信託制度の利用を検討すべきでしょう。
後継ぎ遺贈とは、最初の遺言者(図のAさん)が、第一次受遺者(図のBさん)に財産を受け継がせ、仮に第1次受遺者(図のBさん)が亡くなった場合には、第二次受遺者(図のCさん)にその財産を受け継がせるという内容の遺贈です。
学説では、これを肯定する見解と否定する見解があります。
②障がいのある子どものために家族信託を利用する場合
子どもに知的障がいがある場合において、親が不動産を所有しており、その不動産の家賃収入を、子どもの生活費に充てたいと考えた場合、家族信託は有用な選択肢の一つとなります。
家族信託を利用しない場合、親が存命の間は問題ありませんが、親が逝去した際に遺言を作成していなかった場合は、法定相続人である子が不動産を相続します。
しかし、子どもには不動産を管理して運用するだけの能力はなく、不動産の家賃収入が途絶えてしまう可能性があります。
他方、遺言で子ども以外の第三者に不動産を遺贈した場合、その第三者が、子どもの面倒も見てくれればよいですが、家賃収入を受け取る権利も第三者が受け継ぐことになりますので、将来、子どもの面倒を見てもらえなくなるという不安が残ります。
家族信託を利用すれば、不動産を管理する人を受託者とし、障がいのある子どもを受益者とする信託契約を締結することで、不動産の管理を受託者に任せつつ、賃料による収益を子どもに渡すことが可能になります。
そして、仮に、委託者である親が逝去した場合でも、受託者が引き続き不動産を管理し、子どもに収益が渡る仕組みを作ることができるのです。
さらに、信託契約で、障がいのある子どもに相続が発生した場合には、障がいのある子ども(受益者)の逝去を、信託契約の終了事由と定めておくとともに、信託財産を、障がい者支援施設にあげることを定めておく方法が考えられます。
この場合の施設のことを「帰属権利者」と呼びます。
家族信託を利用することで、障がいのある子どもの生活費を確保し、親が逝去した場合にも子どもの生活費を確保した上で、子どもが逝去した場合に不動産を施設に寄贈することまで一つの信託契約で定めることができるのです。
なお、障がいのある子どものために家族信託を利用する場合、受益者(障がいのある子ども)が受託者の監督が期待できないため、信託契約において、「受益者代理人」(受益者の代理人であり受益者に代わって受託者の監督をする人)を定めたりする場合もあります。
さらに、障がいのある子どもの身上監護(介護・福祉サービスの利用契約や施設入所の契約締結など)の必要があれば、後見人を選任し、受託者の監督をしてもらう方法も考えられます。
このように、家族信託制度を活用すれば、障がいのある子どものためだけでなく、将来の信託財産の活用方法(寄付等)まで一度に取り決めることが可能になることもあります。
③認知症などに備えたい時
認知症などが原因で、物事について判断する能力が低下すると、自分の財産の管理が難しくなってしまいます。
民法上、精神上の障害により事理を弁識する能力(自分の行為の結果をきちんと理解する能力のことをいいます。)の低下が生じた人については、事理弁識能力の低下の度合いに応じて、成年後見・保佐・補助という制度(後見制度)が用意されています。
しかし、後見制度の目的は、財産管理や身上監護(介護・福祉サービスの利用契約や施設入所の契約締結など)について、単独でできない方をサポートする制度です。
後見制度と民事信託制度は、共に財産管理を目的の一つとする制度ですが、後見制度は財産の維持を目的とする制度であり、財産の運用をすることは想定されていません。
そのため、認知症などの理由で事理弁識能力が低下してしまい、後見制度の利用が開始した場合には、財産の運用をすることは難しくなってしまいます。
一方、民事信託制度は、委託者の事理弁識能力がしっかりしている段階で、受託者に自分の財産の維持管理や運用をしてもらう制度です。
そして、仮に、信託契約後に委託者の事理弁識能力が衰えたとしても、事理弁識能力がしっかりしている時と変わらずに、財産の運用を受託者に行ってもらえる点が、後見制度にはないメリットといえます。
将来、認知症になった場合に備える方法は複数ありますが、家族信託で信託財産とする財産があり、自分の財産を運用して、自分の介護費用などに充てることを希望する人にとっては、家族信託は有用な制度であるといえるでしょう。
家族信託で失敗しないポイント
家族信託のメリットやデメリットをおさえる
家族信託のメリットは、大きく以下の3つの点にあります。
①信託財産の所有権(管理権)を受託者に委ねることができる
委託者の老後の生活資金の確保の場合など、委託者が高齢である場合には、委託者自身が財産の管理をすることが負担になる場合が考えられます。
家族信託では、信託財産の管理権は、受託者が行使することになりますので、委託者の負担を減らすことが可能です。
ただし、受託者に管理を委ねることは、デメリットにもつながりますので注意が必要です。
家族信託は、信託財産の所有権(管理権)を受託者に委ねる制度ですので、農地の場合など、信託財産の所有権が移転できないような場合は、家族信託以外の方法を選択すべきです。
②受益権の内容を自由に設定できる
信託法上、受益権は債権であると考えられています。
そのため、受益権の内容を決めるにあたっては、当事者が自由にその権利の内容を決めることができるという「契約自由の原則」が適用されます。
受益権の内容として、受益者に、信託財産の運用利益の何パーセントを与えるか、あるいは固定の金額を支払うかなどについて、自由に定めることが可能です。
一方で、受益権を自由に設定できるという点が家族信託のメリットである以上、信託財産が少ない場合には、得られる利益も少なくなりますので、家族信託以外の方法を選択して財産管理を行う方が良い場合が増えてくるといえます。
③財産管理の方法の自由度が高い
家族信託と似た制度として、後見制度があります。
後見制度は、被後見人(判断能力が衰えてしまった方)の財産を守るための制度であり、財産の維持に重きを置かれる制度であるということができます。
一方、家族信託は、委託者の財産を信託財産として管理するとともに、受託者が信託財産の運用をすることも可能であるという点が大きなメリットといえます。
信託財産の積極的な運用によって、受益者(兼委託者)の利益にもなるほか、信託財産自体の増加も期待することができるでしょう。
一方、家族信託には、デメリットも存在します。多くは、信託契約の締結によって、信託財産の所有権が、委託者から受託者に移転することに起因するものです。
詳しくは、家族信託のデメリットについて解説したページがございますので、そちらをご参照ください。
また、家族信託が必要ないケースで、無理に家族信託制度を利用してしまうと、資産の運用という家族信託のメリットを受けられないばかりか、費用だけがかかってしまうという場合も想定されます。
また、家族信託制度の利用に適さない財産しか存在しないケースでは、家族信託制度を利用しようとしても、信託が実行できなかったという結果に終わってしまうことも考えられます。
そうなってしまうと、家族信託を進めるためにかけた労力は全て無駄になってしまいますので、大きなデメリットといえるでしょう。
ただし、家族信託が必要ないケースや、家族信託制度の利用に適さない財産しか存在しないケースにおいて、家族信託を利用してしまったことに関するデメリットは、家族信託制度の特色を理解していれば、防ぐことができるデメリットといえます。
効率的な財産の運用のためにも、家族信託制度への理解は必須といえるでしょう。
家族信託に精通した弁護士に相談する
信託契約書の作成前に弁護士に相談したり、信託契約書の作成などを弁護士に依頼をすることにより家族信託の手続きを進めていくという方法が考えられます。
専門家である弁護士が契約書をチェックすることで、自分では気づくことができなかった信託契約条項の問題点に気づくことができ、場合によっては、他の制度の方が適切であるというアドバイスをもらうことも可能になるでしょう。
ただし、家族信託を手掛けることのできる専門家は少ないのが現状です。
家族信託には、家族信託特有の問題や、公証役場や司法書士との連携が必要な場面が多いため、家族信託に精通した弁護士に相談しなければ、契約書のチェックが不十分なまま終わってしまうことも想定されます。
そのため、家族信託に精通した弁護士を探し、家族信託の手続きのサポートをお願いすべきであるといえるでしょう。
相続問題をサポートできる法律事務所へ相談する
また、家族信託は、財産を承継する方法としても利用されるため、相続に関する問題が生じる可能性が高いといえます。
家族信託は、信託財産の所有権(管理権)を委託者から受託者に移転させる制度です。
そのため、信託財産は、法的には、委託者の財産ではなくなりますので、もし委託者が逝去された場合には、信託財産は相続の対象になりません。
ここで問題となるのが、遺留分についてです。
信託契約に基づく信託財産の所有権の移転の問題(相続財産ではなくなってしまう点)と、法定相続人が最低限相続財産を受け取る権利(遺留分)の問題は、切っても切れない関係にあります。
制度上、家族信託は、相続発生前に信託契約の内容を決定することができますので、将来の相続の紛争を避けるためには、信託契約書作成の段階から、相続発生時に想定される問題を予測し、問題に対する対応策を講じておく必要があります。
そのためには、相続に精通した弁護士に相談し、相続特有の問題についてアドバイスをもらうことが有用です。
まとめ
家族信託について、家族信託の利用価値が乏しいケースや、家族信託を積極的に利用したほうがいい場合を解説いたしましたが、いかがだったでしょうか。
家族信託は、制度自体は、受託者に財産の管理を任せるというものですが、信託契約を締結する際に決めておくべき内容が多岐にわたるなど、実際に家族信託を始めるためには様々な手続きを行う必要があります。
そのため、財産状況などの理由から、家族信託を開始しても思ったより家族信託のメリットを得られないケースも想定されるところです。
一方で、どのようなケースであれば、家族信託を利用するメリットがあるかどうかについて、判断が難しいと思われる方も多いかと思います。
家族信託について興味があるものの、どういった場合に家族信託をすべきかわからない方や家族信託をやってみたいと考えてはいるものの、具体的に何から始めれば良いかわからないという方は、一度、家族信託及び相続に精通する弁護士にご相談されると良いでしょう。
当事務所には、家族信託に注力する弁護士で構成される相続対策チームがあり、家族信託を強力にサポートしています。
LINEやZoomを活用した全国対応も行っていますので、家族信託にご興味がある方はお気軽にご相談ください。