できます。
遺言の有効性を考える場合に、外国人が考えなければならないのは、①どの国の法律に従った方式で作成しなければならないのか、という問題と、②内容の有効性がどの国の法律で判断されるのか、という問題を考えねばなりません。
遺言とは
人が自分の死後、その効力を発生させる目的で、あらかじめ書き残しておく意思表示のことを遺言といいます。
遺言書は、その遺言が記された書面のことをいいます。
遺言では、一定の要件を満たした書き方を行わなければ「無効」となってしまいます。
また、内容自体の法的な有効性も必要となります。
遺言の要件や書き方について、詳しくはこちらのページをご覧ください。
外国人の場合
外国籍の方が日本において遺言を行う場合、国際相続の問題となります。
このような国際的な相続問題においては、「どこの国の法律が適用されるのか」を検討しなければなりません。
この点について、「法の適用に関する通則法」や「遺言の方式の準拠法に関する法律」という法律が規律しているため、こちらを調べることになります。
内容の有効性
内容の有効性については、法の適用に関する通則法に従って適用される法によって判断されます。
同法によれば、相続については被相続人(亡くなった人)の本国法(国籍を有する国の法)に従うものとされ(同法36条)、認知による親子関係の成立については認知当時の子の本国法の定める要件を満たすことが必要とされています(同法29条)。
第三十六条 相続は、被相続人の本国法による。
第二十九条 嫡出でない子の親子関係の成立は、父との間の親子関係については子の出生の当時における父の本国法により、母との間の親子関係についてはその当時における母の本国法による。この場合において、子の認知による親子関係の成立については、認知の当時における子の本国法によればその子又は第三者の承諾又は同意があることが認知の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。
方式の有効性
方式の有効性については、遺言の方式の準拠法に関する法律2条によって、下記のいずれかに定められた方式に従って作成すれば、有効な方式とされます。
- 行為地法(遺言をする国や地方の法律)
- 遺言の成立または死亡時に国籍を有した国の法
- 行為地法(遺言をする国や地方の法律)
- 行為地法(遺言をする国や地方の法律)
- 遺言の成立または死亡時に住所を有した国の法律
- 遺言の成立または死亡時に常居所を有した国の法律
- 不動産に関する遺言については、その不動産の所在している地の法律
上記のように、方式については、幅広く認められています。
日本に滞在している外国人は、自分の国籍を有する国の法律にしたがって作成することもできますし、日本民法が定める方式によって遺言を作成することができます。
なお、日本民法の遺言書の方式は3種類ありますが、下表のとおり、非常に厳格です。
遺言の種類 | 方式 |
---|---|
自筆証書遺言 | 遺言者自身が日付、氏名、財産の分割内容等の全文(目録を除く。)を自筆し、押印して作成。 |
公正証書遺言 | 証人2名以上の立会いの下に、遺言者が公証人に遺言の趣旨を口頭で伝え、公証人が遺言者の口述内容を筆記する方法で作成。 |
秘密証書遺言 | 作成した証書を封筒に入れ、証書に使ったものと同じ印章で封印する。その際、封入、封印は遺言者自身で行なう。証書の封印完了後、公証役場で遺言の存在を確認することが必要。その際、公証人1名と2名以上の証人も必要。 |
それぞれ、メリットやデメリットがありますが、基本的には公正証書遺言をお勧めしています。
遺言書の種類とメリット・デメリットについて、詳しくはこちらのページをご覧ください
まとめ
以上のことからすると、外国人の方が日本の方式にしたがって遺言書を作成するとしても、そこに書かれた相続の内容については、原則として本国法(国籍を有する国の法)に従わなければならないことを念頭においておき、本国法を入念に調査しておくべきです。
そして、遺言の有効性が争われた場合(遺言能力や、遺言者の意思表示に瑕疵があった場合)および効力が争われた場合(効力の発生時期などが争われた場合)にも、遺言当時の遺言者の本国法によってその有効性が判断されることになります(同法37条)。
以上のように、外国人であっても遺言を作成することはできますが、その人の国籍を有する国の法が関わってくることになるため、よく調べなければなりません。
また、どの問題が方式に関する問題で、どの問題が内容に関する問題かの判断は非常に難しく、一般の方ではよくわからないことは当然です。
私たちデイライト法律事務所では、国際分野に精通した弁護士が在籍し、外国人の方の相談を承っています。
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