公正証書遺言や秘密証書遺言であればパソコンで作成できます。
自筆証書遺言は、内容や日付、署名が遺言者の自筆である必要があります。
ただし、自筆証書遺言に遺産目録を付ける場合、その目録は自書ではなく、パソコン等で作成したものでもかまいません。
遺言書をパソコンで作成できる?
公正証書遺言や秘密証書遺言であれば、パソコンで作成できます。
しかし、自筆証書遺言の場合には、内容や日付、署名については、遺言者の自筆が必要です。
ただし、遺産目録については、法改正によって、パソコン等で作成できることとなりました。
もっとも、この場合でも、目録に署名押印が必要となります。
パソコンで作成できる? | |
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自筆証書遺言 | △ 遺産目録は作成可 |
公正証書遺言 | ◯ 公証人が遺言書を筆記 |
秘密証書遺言 | ◯ ただし署名は必要 |
普段からタイプライターを使用している外国人が、タイプライターを使用して作成した遺言書について、自書に匹敵するものとして有効とした審判の例があります(東京家審昭和48.4.20)。
しかし、これは極めて特殊な例であり、基本的には認められないと考えてください。
また、カーボン紙を用いた複写の方法で記載した場合には、自書の要件を満たすとされていますが(最判平5.10.19)、文字も薄くなりますし、その必要性もあまりないと考えられますので、確実に有効とされる方法で遺言書を作成すべきです。
そこで、病気や障害などにより自分で文字を書くことが困難な場合には、自書の要件が不要な公正証書遺言やパソコンなどの機械を使用して作成することが許される秘密証書遺言の作成を検討すべきでしょう。
公正証書遺言の場合
公正証書遺言では、パソコンやワープロで作成した書面そのものを遺言書とすることができるわけではありませんが、それらで作成した書面を公証役場に持ち込み、公証人の面前で遺言者がその内容を口授し、それを聞き取った公証人が遺言書を筆記するため、遺言者としては自書する必要がありません。
秘密証書遺言野場合
秘密証書遺言は、同じく公証役場で公証人の関与のもとに作成されますが、遺言者がパソコンやワープロで遺言の内容を記載し、そこに署名・押印し、押印したものと同じ印章で封印すればよいため、遺言書の本文についてはパソコン・ワープロで作成することができます。
もっとも上記のように、署名は必要ですので、署名部分をパソコン・ワープロで記載することは許されません。
遺言書作成の注意点
当事務所の相続対策チームには、遺言書に関してたくさんのご相談が寄せられています。遺言書をめぐる問題は以下のとおりです。
注意点①法的に無効な遺言書を作成してしまう
上記のとおり、遺言書には、法定の要件があります。
この要件を満たさないと、せっかく遺言書を作成しても、遺言が無効となってしまうリスクがあります。
注意点②遺留分を考慮していない
次に、法的な有効要件を満たしていても、トラブルとなることが多々あります。
代表的な例として、他の相続人の遺留分を侵害している遺言書です。
遺留分にまったく配慮せず、特定の相続人を有利にする遺言書を作成すると、後日、他の相続人から訴えられるという可能性もあります。
遺留分について詳しくはこちらをご覧ください。
注意点③税務問題が考慮されていない
また、相続人間のトラブルまでは引き起こさなかったとしても、生前の相続税対策がなされていないと、多額の課税がされてしまうというリスクがあります。
多額の課税がされると、相続人の方が受け取れる遺産が目減りしてしまいます。
せっかく生前に遺言書を作成するのであれば、相続税についても対策を講じておくべきでしょう。
遺言書作成のポイント
上記の問題点を踏まえて、遺言書作成のポイントについて解説します。
POINT①優先順位を検討する
遺言書には、上記のとおり、公正証書遺言、秘密証書遺言、自筆証書遺言の3種類があります。
それぞれ特徴に応じたメリットとデメリットがあります。
どのタイプの遺言書にするかは、遺言者が「優先順として何を高く設定するか」によって判断すべきです。
例えば、「形式不備によって無効になるおそれを無くしたい」ということを重視するのであれば、公正証書遺言がベストです。
また、「費用をかけたくない」ということを重視するのであれば、自筆証書遺言がベストとなります。
POINT②資産内容を調査する
遺言書を作成する前提として、まず、自身にどのような資産があるのかを押さえる必要があります。
不動産や預貯金の他にも、株式、有価証券、生命保険、ゴルフ会員権、退職金など、遺産となり得るものが意外に多いものです。
また、資産内容を整理することで、相続税に対する対策も可能となります。
資産内容を整理するときは、財産目録があると便利です。
当事務所では、財産目録をホームページからダウンロード可能です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
POINT③適切な遺言書を作成する
自筆証書遺言や秘密証書遺言について、自分で遺言書の文面を作成するとき、法的に有効な遺言書を作成するように気をつけなければなりません。
遺言書については、法的に不備なものを作ると、死亡した後、トラブルとなって、遺言書の方の想いを叶えることが難しくなります。
そのため、専門家のサポートのもと、適切なものを作成するようにされてください。
なお、当事務所では、遺言書のサンプルをホームページからダウンロード可能です。
ダウンロードはこちらからどうぞ。
ただし、適切な遺言書は個々の案件ごとに異なります。あくまで参考程度にされてください。
まとめ
以上、パソコンを利用した遺言書の書き方について、説明してきましたが、いかがだったでしょうか?
遺言書は、作成方法について不備があると無効となる可能性があるので注意が必要です。
また、形式的な要件にばかり目が行きがちですが、内容面も重要となります。
中身がしっかりしていないと、遺言者の想いをつなぐことが難しくなったり、税務上損失を被る可能性もあります。
そのため、遺言書の書き方に関しては、相続に精通した弁護士に相談しながら、サポートを受けることをおすすめします。
当事務所の相続対策チームは、親身になって解決方法をご提案いたします。
当事務所のご相談の流れについてはこちらのページを御覧ください。
遺言書の作成についてはこちらのページもご覧ください。