相続放棄の必要書類には、相続放棄申述書やその添付書類があります。
この記事では、相続放棄の必要書類やその入手場所などについて、相続にくわしい弁護士がわかりやすく解説します。
相続申述書についてはサンプルを無料でダウンロードしていただくこともできますので、ぜひご活用ください。
相続放棄の必要書類の一覧
相続放棄の必要書類は、被相続人と相続放棄をする方(「申述人」といいます。)の続柄によって異なります。
次の表は、申述人ごとの必要書類とその入手場所を一覧にしたものです(同じ書類は1通で足ります)。
なお、状況によっては追加書類の提出を求められることがあります。
必要書類 | 被相続人との続柄 | 入手場所 | ||
---|---|---|---|---|
配偶者・子または孫 | 父母または祖父母 | 兄弟姉妹または甥姪 | ||
相続放棄申述書 | ◯ | ◯ | ◯ | 最寄りの家庭裁判所等 |
被相続人の住民票除票または戸籍の附票 | ◯ | ◯ | ◯ | 住民票除票:被相続人の住所の市区町村役場戸籍の附票:被相続人の本籍地の市区町村役場 |
申述人の戸籍謄本 | ◯ | ◯ | ◯ | 申述人の本籍地の市区町村役場 |
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本等(※1) | ◯ | ー | ー | 被相続人の本籍地の市区町村役場 |
本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本 | ◯
※孫の場合(子の書類が必要) |
ー | ◯
※甥姪の場合(兄弟姉妹の書類が必要) |
被相続人の本籍地の市区町村役場 |
被相続人の生まれてからなくなるまでのすべての戸籍謄本等 | ◯
※孫の場合(子の書類が必要) |
◯ | ◯
|
被相続人の本籍地の市区町村役場 |
被相続人の子(及びその代襲者)の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本等 | ー | ◯ | ◯
|
被相続人の子の本籍地の市区町村役場 |
被相続人の直系尊属(※2)の死 | ー | ◯
※祖父母の場合 |
◯
|
被相続人の直系尊属の本籍地の市区町村役場 |
※1「戸籍謄本等」とは、戸籍謄本(こせきとうほん)、除籍謄本(じょせきとうほん)、改製原戸籍謄本(かいせいげんこせきとうほん)のことをいいます。
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) | 現在の戸籍に記載されている全員の身分関係を証明する戸籍の写しのことです。 |
---|---|
除籍謄本 | 婚姻や死亡、本籍地の変更などによって、ある戸籍に入っている全員がその戸籍から抜けて誰もいなくなったことを証明するための書類のことです。 |
改製原戸籍謄本 | 改正前の戸籍法にもとづいて作成された戸籍の写しのことです。 |
なお、「戸籍謄本」の現在の正式名称は「戸籍全部事項証明書」です。
かつて戸籍が紙で管理・保管されていた頃の正式名称は「戸籍謄本」でしたが、戸籍が電子化されたことによって、正式名称は「戸籍謄本」から「戸籍全部事項証明書」に変わりました。
ただし、現在でも「戸籍全部事項証明書」は「戸籍謄本」と呼ばれることが多いことから、この記事でも「戸籍謄本」と呼びます。
※2 「直系尊属」とは、父母や祖父母、曽祖父母など、縦のラインでつながる上の世代の親族のことをいいます。
すべての申述人は、上記の書類に加えて収入印紙と郵便切手を家庭裁判所に納める必要があります。
相続放棄の必要書類とは?
相続放棄をする方(申述人)は、家庭裁判所に相続放棄申述書と添付書類を提出する必要があります。
共通する必要書類
被相続人との続柄に関係なくすべての申述人に共通する必要書類は次のとおりです。
相続放棄申述書
相続放棄申述書とは、家庭裁判所に対して相続放棄の意志を示すための書類です。
相続放棄申述書のサンプル(ひな型)は裁判所のホームページからダウンロードすることができます。
また、当事務所でもサンプル(ひな型)をご用意していますので、こちらからダウンロードしてご利用ください。
相続放棄申述書サンプルの無料ダウンロードは以下をご覧ください。
被相続人の住民票除票または戸籍の附票
すべての申述人は、被相続人の住民票除票または戸籍の附票のどちらかを取得して提出します。
ある市区町村で住民登録をしていた方が他の市区町村へ転出したり死亡したりすると、住民登録が抹消されます。
この住民登録が抹消された住民票のことを「除票」といいます。
住民票除票は、被相続人の住所地の市区町村役場で取得することができます。
戸籍の附票とは、戸籍の原本と一緒に本籍地の市区町村で保管・管理されている書類です。
戸籍の附票には、新たにその戸籍が作られてから(本籍が定められてから)現在に至るまで(あるいはその戸籍から除籍されるまで)の住所の移り変わりが記録されています。
戸籍の附票は、被相続人の本籍地の市区町村役場で取得することができます。
申述人の戸籍謄本
すべての申述人自身の戸籍謄本を取得して提出する必要があります。
戸籍謄本は申述人の本籍地の市区町村役場で取得することができます。
さらに、上記の書類に加えて、以下を納めることが必要です。
収入印紙(800円分)
家庭裁判所に対する申立ての手数料として、申述人1人につき800円分の収入印紙を購入して納める必要があります。
郵便切手(連絡用)
裁判所との間の連絡(書類の郵送)に使用される切手を購入して納める必要があります。
相続放棄の場合、一般的には400円〜500程度の郵便切手を納付する必要があります。
各家庭裁判所によって納付する郵便切手の金額は異なる可能性がありますので、詳細は管轄(担当)の家庭裁判所(被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所)にお問い合わせください。
ご参考までに、東京都内の家庭裁判所では、84円切手4枚、10円切手4枚、合計376円分の切手を納める必要があります。
裁判所の管轄(担当)地域はこちらで調べることができます。
以下は続柄によって異なる書類の解説となります。ご自身のケースを選択してください。
配偶者のケース
被相続人の配偶者(常に相続人になります。)が相続放棄をするケースでは、上で解説した「共通する必要書類」のほかに、次の書類を提出します。
被相続人の本籍地の市区町村役場で取得することができます。
なお、被相続人が亡くなった場合には、7日以内に市区町村役場に死亡届を提出する必要がありますが、死亡届が受理されると戸籍謄本に被相続人の死亡が記載されるとともに、住民票が抹消されます。
申述人である配偶者は被相続人と同じ戸籍に入っていることから、死亡届が受理された後であれば、「共通する必要書類」としてあげた「申述人の戸籍謄本」を1通提出するだけで足り、追加で書類を取得する必要はありませんます。
子どもまたは孫(第1順位の相続人)のケース
第1順位の相続人である被相続人の子ども(代襲相続の場合は孫)が相続放棄をするケースでは、上で解説した「共通する必要書類」のほかに、次の書類を提出します。
被相続人の本籍地の市区町村役場で取得することができます。
申述人である被相続人の子どもが未婚で被相続人と同じ戸籍に入ってる場合には、配偶者が申述人となる場合と同じく、「共通する必要書類」としてあげた「申述人(子ども)の戸籍謄本」を1通提出するだけで足ります。
両親の離婚等によって申述人が被相続人と異なる戸籍に入っている場合や、申述人自身の結婚によって新たに戸籍を作った場合には、被相続人の戸籍謄本等を別に取得して提出する必要があります。
孫のケース(代襲相続の場合)
孫は原則として相続人にあたりませんが、代襲相続(だいしゅうそうぞく)の場合には例外的に相続人になります。
代襲相続とは、被相続人が亡くなった時点で本来の相続人がすでに亡くなっている場合で、本来の相続人に子どもがいるときに、その子どもが本来の相続人の代わりに相続することをいい、代わりに遺産を相続する人のことを「代襲相続人」といいます。
被相続人が亡くなった時点でその子どもがすでに亡くなっており、その子ども(被相続人にとっての孫)がいるときは、被相続人の孫が代襲相続人になります。
被相続人の孫が代襲相続するケースでは、子どもの場合の必要書類に加えて、次の書類を提出します。
被相続人の子どもの本籍地の市区町村役場で取得することができます。
申述人である被相続人の孫が未婚で本来の相続人(被相続人の子ども)と同じ戸籍に入っている場合には、「共通する必要書類」としてあげた「申述人(孫)の戸籍謄本」を1通提出するだけで足ります。
父母または祖父母(第2順位の相続人)のケース
第2順位の相続人である被相続人の父母(父母がすでに亡くなっている場合には祖父母)は、被相続人の子どもやその代襲相続人(孫)がいない場合(相続放棄・相続廃除・相続欠格によって相続権を失った場合を含みます。)に、相続人となります。
被相続人の父母または祖父母が相続放棄をするケースでは、上で解説した「共通する必要書類」のほかに、次の書類を提出します。
被相続人の父母または祖父母が相続放棄をする場合には、他に第1順位の相続人(被相続人の子どもや孫)がいないことを確認するために、被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続するすべての戸籍謄本等(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本)を提出する必要があります。
これらの書類は、被相続人の本籍地の市区町村役場で取得することができます。
本籍地は結婚等によって変更されること(転籍)があるため、状況によっては複数の市区町村役場から戸籍謄本等を取得しなければならないことがあります。
戸籍の変更があった場合には、最新の戸籍謄本の戸籍事項欄に前の本籍地が記載されるため、この戸籍事項欄をたどることで、過去の本籍地を確認することができます。
第1順位の相続人(被相続人の子ども・孫)が被相続人の亡くなった時点ですでに亡くなっているときには、他に代襲相続人がいないことを確認するために、被相続人の子・孫の生まれてから亡くなるまでの連続するすべての戸籍謄本等を提出する必要があります。
これらの書類は、被相続人の子ども・孫の本籍地の市区町村役場で取得することができます。
祖父母のケース
被相続人の祖父母が相続人になるのは、被相続人の亡くなった時点で父母がすでに亡くなっており、祖父母が健在の場合です。
被相続人の祖父母が相続するケースでは、父母の場合の必要書類に加えて、次の書類を提出します。
被相続人の父母の本籍地の市区町村役場で取得することができます。
兄弟姉妹または甥姪(第3順位の相続人)のケース
第3順位の相続人である被相続人の兄弟姉妹(代襲相続の場合は甥姪)は、被相続人の子どもや孫のほか、父母や祖父母もいない場合(相続放棄・相続廃除・相続欠格によって相続権を失った場合を含みます。)に、遺産を相続します。
兄弟姉妹または甥姪が相続放棄をするケースでは、上で解説した「共通する必要書類」のほかに次の書類を提出します。
父母または祖父母(第2順位の相続人)のケースで説明したとおりです。
被相続人の本籍地の市区町村役場で取得することができます。
父母または祖父母(第2順位の相続人)のケースで説明したとおりです。
被相続人の子ども・孫の本籍地の市区町村役場で取得することができます。
甥姪のケース(代襲相続の場合)
被相続人の甥姪は原則として相続人にあたりません。
ただし、被相続人が亡くなった時点で兄弟姉妹がすでに亡くなっており、その子ども(被相続人にとっての甥姪)がいるときは、甥姪が代襲相続人になります。
甥姪が代襲相続するケースでは、兄弟姉妹の場合の必要書類に加えて、次の書類を提出します。
被相続人の兄弟姉妹の本籍地の市区町村役場で取得することができます。
申述人である甥姪が未婚で本来の相続人(被相続人の兄弟姉妹)と同じ戸籍に入っている場合には、「共通する必要書類」としてあげた「申述人(孫)の戸籍謄本」を1通提出するだけで足ります。
申述人が未成年者または成年被後見人のケース
相続放棄をする方(申述人)が未成年者または成年被後見人の場合には、「共通する必要書類」や申述人と被相続人との続柄に応じて必要となる書類のほかに、以下の書類を提出します。
申述人が未成年者のケース
相続放棄をする方(申述人)が未成年者の場合には、基本的に未成年者の親権者が代わりに相続放棄の手続きを行います。
この場合には、次の書類を提出します。
親権者の本籍地の市区町村役場で取得することができます。
親権者と被相続人または未成年者が同じ戸籍に入っている場合(例えば、親権者が被相続人の妻である場合など)には、「共通する必要書類」としてあげた「申述人の戸籍謄本」を1通提出するだけで足ります。
親権者と未成年者の利害が対立する場合(例えば、被相続人の妻(未成年者の親権者)と未成年の子どもが相続人になるケースで、子どもだけが相続放棄をする場合など)には、「特別代理人」の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
特別代理人が選任されているときには、その事実を証明するために、特別代理人の選任審判書謄本を提出する必要があります。
選任審判書謄本は、特別代理人を選任する手続き(審判)が完了すると、家庭裁判所から本人や特別代理人に送付されます。
また、選任審判書謄本と合わせて審判の確定証明書を提出します。
確定証明書とは、特別代理人を選任する審判が確定(選任審判書謄本を受け取ってから2週間で確定します。)したことを証明することを証明する書類のことです。
確定証明書は、未成年者本人の住所を管轄する家庭裁判所に申請して取得することができます。
申述人が成年被後見人等のケース
相続放棄をするためには意思能力(相続放棄をした場合の結果を正確に理解したうえで判断できる能力のことです。)が必要とされています。
重度の認知症や知的障がい等によって意思能力がない場合には、成年後見人の選任を家庭裁判所に申し立て、成年後見人が相続放棄の手続きを代理で行う必要があります。
この場合には、「共通する必要書類」や申述人と被相続人との続柄に応じて必要となる書類のほかに、以下の書類を提出します。
成年後見人が選任されると、「後見登記」に被後見人や後見人の氏名、住所、後見人の権利の範囲などが記録(登録)されます。
成年後見登記事項証明書とは、この後見登記に記録(登録)されていることを証明するための書類で、後見人が正当な権利をもっていることの証明等に利用されます。
成年後見登記事項証明書は、本人の本籍や住所にかかわらず、最寄りの法務局・地方法務局で取得することができます。
成年後見人の選任審判書謄本は、成年後見人の選任手続き(審判)した際に裁判所が完了すると、家庭裁判所から本人や後見人等に送付されます。
選任審判書謄本を提出する場合には、あわせて審判の確定証明書を提出します。
確定証明書は、被後見人の住所を管轄する家庭裁判所に申請して取得することができます。
相続放棄の必要書類の書き方
相続放棄の必要書類のうち、相続放棄申述書については申述人が作成しなければなりません。
相続放棄をする方(申述人)が未成年者や成年被後見人の場合には、親権者や成年後見人が代理で作成します。
相続放棄申述書の用紙(ひな型)は全国の家庭裁判所の窓口等で入手することができます。
また、裁判所のホームページ等に掲載されているひな型をダウンロードして印刷することもできます。
当事務所のホームページでも相続放棄申述書のひな型を提供していますので、ダウンロードしてご活用ください。
相続放棄申述書には次のような内容を記載します。
- 申述書を提出する家庭裁判所
- 作成年月日
- 相続放棄をする方(申述人)の情報(本籍・住所・氏名・生年月日・職業・被相続人との関係等
- 法定代理人の情報(未成年者や成年被後見人等の場合、法定代理人の住所・氏名等)
- 被相続人の情報(本籍・最後の住所・氏名・死亡年月日等)
- 申述の理由(相続開始を知った年月日・相続放棄の理由・相続財産の概要等)
相続放棄申述書の書き方について、くわしくは以下の記事で解説しています。
必要書類の提出方法
相続放棄の申述書は、相続放棄申述書や添付書類を被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に提出して行います。
提出方法には、(a) 直接家庭裁判所に持参して窓口に提出する方法のほか、(b) 郵送で提出する方法があります。
相続放棄の必要書類についてのQ&A
相続放棄の必要書類は家庭裁判所によって異なりますか?
ただし、個々の状況によっては、各家庭裁判所の判断で追加書類の提出を求められることがあります。
そのため、相続放棄の必要書類については、事前に提出先の家庭裁判所(被相続人の最後の住所地の家庭裁判所)に確認されることをおすすめします。
相続放棄の必要書類はどこでもらえますか?
相続放棄申述書
相続放棄申述書は申述人が自分で作成する必要があります。
相続放棄申述書の用紙は、全国の家庭裁判所の窓口でもらうことができます。
また、裁判所のホームページ等でダウンロードして印刷することもできます。
当事務所でもサンプル(ひな型)を提供していますので、ぜひご活用ください。
相続放棄申述書サンプルの無料ダウンロードは以下のページをごらんください。
住民票の附票
住民票の附票は、住民登録のある市区町村役場でもらう(取得する)ことができます。
取得の費用は、1通につき300円程度です(市区町村や取得方法によって異なることがあります)。
戸籍謄本類
戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本、戸籍の附票は、本籍地の市区町村役場で取得することができます。
取得の費用は、以下のとおりです(市区町村や取得方法によって異なることがあります)。
戸籍謄本 | 450円程度/通 |
---|---|
除籍謄本 | 750円程度/通 |
改製原戸籍謄本 | 750円程度/通 |
戸籍の附票 | 300円程度/通 |
戸籍謄本の取り方についてくわしくはこちら
成年後見登記事項証明書(申述人が成年被後見人の場合)
成年後見登記事項証明書は最寄りの法務局・地方法務局で取得することができます。
取得の費用は、1通につき550円です(2024年8月現在)。
成年後見人の選任審判書謄本・確定証明書(申述人が成年被後見人の場合)
成年被後見人の選任審判書謄本は、家庭裁判所から成年後見人宛てに送付されます。
選任審判書謄本を紛失した場合など、追加で発行してもらう場合の手数料は審判書謄本1枚につき150円です。
審判の確定証明書は、被後見人の住所を管轄する家庭裁判所に申請して取得することができます。
取得の費用は、1通につき150円です。
相続放棄は自分でできますか?
法律上、相続放棄の手続きを弁護士等の専門家に依頼しなければならないという決まりはありません。
相続放棄の手続きを自分でする場合には、専門家に依頼するための費用を抑えられるというメリットがあります。
ただし、相続放棄の手続きを自分でする場合には次のようなデメリットがあります。
適切な判断をできないリスクがある
相続放棄をするかどうかを判断するためには、相続人の遺産の価値を正確に把握しておくことが大切ですが、遺産の評価は専門家でも難しい場合があります。
判断を誤ると、相続放棄をしたことによって損をしてしまう、相続放棄をしなかったことによって重い責任を負担することになってしまう、などの不利益を受ける可能性があります。
相続放棄をするかどうかの判断に迷う場合には、相続に強い弁護士などの専門家に相談されることを強くおすすめします。
時間と労力がかかる
相続放棄をするためには、相続人や遺産の調査、必要書類の取得などの事前準備が必要です。
また、被相続人に借金やローンなどがある場合には、債権者等とのやり取りが発生する可能性があります。
相続放棄の手続きを自分でする場合には、これらの手続きをすべて自力で行う必要があります。
また、相続放棄の手続きには、相続の開始(被相続人が亡くなったこと)を知ってから3ヶ月以内に行わなければならないという期間制限があります。
遺産や相続人の数が多く調査に時間がかかりそうな場合、遺産の評価が難しい場合、仕事をしており準備になかなか時間を割けない場合などには、専門家に依頼するのがよいでしょう。
必要書類の取得にはどのくらい時間がかかりますか?
異なる複数の戸籍の謄本を請求する場合にはさらに時間がかかることがあります。
また、除籍謄本や改製原戸籍謄本についてはさらに時間がかかるケースが少なくなく、状況によっては取得までに1ヶ月前後を要することもあります。
そのため、必要書類の準備はできるだけ早く始めることをおすすめします。
印鑑証明は相続放棄の必要書類ですか?
「印鑑登録証明書」とは、使用した印鑑が実印であることを証明する公的な書類のことです。
また、「実印」とは、個人が市区町村に登録をして公的に認められた印鑑のことです。
不動産取引や自動車の購入などの重要な取引の場面では、間違いなく本人が契約をしたことを確認するために実印の使用を求められることがあり、その際には合わせて印鑑登録証明書の提出を求められるのが一般的です。
相続放棄の場面では、相続放棄申述書に印鑑を押す必要がありますが、使用する印鑑は実印でなくてもよいとされています。
したがって、相続放棄申述書に押された印鑑が実印であることを証明する必要はないため、印鑑登録証明書を提出する必要もありません。
銀行預金の相続放棄をするにはどんな書類が必要ですか?
相続放棄する遺産の内容によって必要書類が変わることはありません。
また、相続放棄をする場合にはすべての財産を放棄しなければならず、一部の財産だけを放棄することはできません(遺産のうち「銀行預金だけを放棄する」ということはできません)。
なお、相続放棄をした相続人がいるケースでは、銀行預金を相続した他の相続人は、銀行から「相続放棄受理証明書」の提出を求められることがあります。
相続放棄受理証明書とは、家庭裁判所が相続放棄を認めた(申述を受理した)ことを証明する書類のことで、相続放棄をした申述人本人のほか、利害関係人(債権者や他の相続人など)が家庭裁判所に申請して発行してもらうことができます。
相続放棄の申述人以外の相続人が相続放棄受理証明書を申請する場合の必要書類等は、次のとおりです。
必要書類等 | 備考 |
---|---|
相続放棄申述受理証明申請書(利害関係人用) | 裁判所の窓口やホームページで取得可能 |
身分証明書(運転免許証、健康保険証等)のコピー | |
内容被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本 | 利害関係(相続関係)の疎明資料。相続関係によって異なる可能性があるため、詳細は各家庭裁判所に確認のこと。 |
申請者の戸籍謄本 | |
返送用封筒(住所・宛名を記載したもの) | |
返送用郵便切手(84円〜) | 通数や利用する郵便の種類によって金額が異なるため、詳細は各家庭裁判所に確認のこと。 |
収入印紙(申述人1人の証明書1通につき150円分) | 発行手数料 |
まとめ
・相続放棄をするためには、家庭裁判所に「相続放棄申述書」とその添付書類を提出する必要があります。
・添付書類の内容は、被相続人と相続放棄をする方(申述人)の続柄によって異なります。
・相続放棄の必要書類は膨大になることがあり、取得に多くの時間がかかるケースもあることから、できるだけ早く準備を始めることをおすすめします。
・相続放棄の手続きは自分で行うこともできます。
ただし、事前準備のための時間や労力が必要となることや、相続放棄をすべきかどうかの判断を適切に行えないリスクがあることなどから、少しでも判断に迷う場合には、相続に強い弁護士に相談・依頼されることをおすすめします。
・当事務所では、相続に強い弁護士で構成する相続対策専門チームを設置しており、相続放棄の手続きをはじめ、遺言書の作成、遺産分割協議、相続登記、相続税の申告・節税対策、相続トラブルなど、相続全般に関する幅広いご相談をうけたまわっています。
遠方の方にはオンラインでのご相談にも対応しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。