相続放棄の手続きを自分で行う場合には、①手間や時間がかかる、②相続放棄について適切な判断をできないリスクがある、③期限内に間に合わず相続放棄できなくなるリスクがある、④債権者の対応も自分でしなければならない、などのデメリットがあります。
デメリットが大きい場合には、相続に強い強い弁護士に手続きを依頼するのがおすすめです。
この記事では、相続放棄の手続きをしたほうがよいケースや相続放棄の手続きの流れ、相続放棄を自分で行うメリット・デメリット・相続放棄に必要な書類、相続放棄にかかる費用などについて、相続にくわしい弁護士がわかりやすく解説します。
目次
相続放棄の手続きが必要なケース
相続放棄とは、被相続人(亡くなった方のことです。)の一切の相続を辞退することをいいます。
相続の対象となる遺産は、被相続人のプラスの財産(土地や建物、預貯金、自動車、美術品など)だけでなく、マイナスの財産(借金、ローン、未払いの税金など)も含まれます。
相続放棄をするとはじめから相続人にならなかったものとして扱われ、被相続人のマイナスの財産を含むすべての遺産を一切引き継ぎません。
以下のようなケースでは、相続放棄の手続きをした方がよいといえます。
マイナスの財産がプラスの財産を上回っているケース
マイナスの財産がプラスの財産を上回っている場合には、相続人自身の財産を使って借金等の返済を行わなければなりません。
そのため、マイナスの財産がプラスの財産を大きく上回っているようなケースでは、一般的には相続を放棄したほうがよいといえます。
遺産を特定の相続人に集中させたいケース
プラスの財産とマイナスの財産を含むすべての遺産を特定の相続人だけに相続させたいケースでは、相続放棄をする必要があります。
プラスの財産のすべてを特定の相続人(例えば長男A)に集中させるだけでよければ、相続放棄の手続きをすることなく、「すべての遺産を長男Aに相続させる」という内容の遺産分割協議を成立させることで足ります。
しかし、借金やローンなどのマイナスの財産についてもすべてを特定の相続人に相続させたい場合には、他の相続人が相続放棄をする必要があります。
マイナスの財産は遺産分割の対象外であり、「法定相続分(ほうていそうぞくぶん)」という、民法で定められた割合にしたがって、当然に各相続人に相続される(引き継がれる)こととされているためです。
相続人の中でマイナスの財産に関する負担割合を決めたとしても、その負担割合を外部(金融機関やなどの貸主)に主張することはできません。
例えば、被相続人の妻と長男・次男の3人が相続人となるケースでは、各相続人の法定相続分はそれぞれ、妻が1/2、長男が1/4、次男が1/4です。
このケースで被相続人に銀行に対するローンがある場合、妻、長男、次男はそれぞれ、上記の法定相続分にしたがって借金を引き継ぎます。
仮に相続人の3人が「ローンの財産を含むすべての遺産は長男が相続する」という合意をしたとしても、これを銀行に対して主張することはできず、銀行は妻に対して1/2、長男・次男に対してそれぞれ1/4の割合で、ローンの返済を求めることができるのです。
したがって、マイナスの財産を含むすべての遺産を特定の相続人に引き継がせたことを対外的に主張したい場合には、相続放棄をする必要があります。
相続トラブルに関わりたくないケース
遺産の分け方をめぐって相続人同士でトラブルになるケースは少なくありません。
遺産をもらえるメリットよりも、相続トラブルに関わらないメリットの方が大きい場合には、相続放棄をしたほうがよいでしょう。
特に、被相続人が遺産の分け方を遺言書で指定していない場合には、相続人全員が集まって話し合い(「遺産分割協議」といいます。)をする必要がありますが、相続人同士の仲が悪い場合には話し合いが紛糾し、トラブルに発展することがあります。
被相続人が遺言書を作成している場合でも、遺言書の内容に不満をもつ相続人から言いがかりをつけられてトラブルになったり、調停や訴訟を起こされたりする可能性があります。
相続放棄をすると、はじめから相続人にならなかったものとして扱われるため、遺産分割協議に参加する必要がなくなり、相続トラブルに巻き込まれるリスクが小さくなります。
このように、相続トラブルに関わりたくない場合には相続放棄をすることが有効であるといえます。
特定の遺産を相続したくないケース
被相続人が遺言書を作成しており、特定の相続を特定の相続人に相続させるという指定をしているケースでは、遺産は基本的に遺言書の内容にしたがって分けられます。
遺産の分け方について遺言書の内容にしたがわなくてもよいのは、遺言書が無効な場合、または、相続人全員が遺言書にしたがわないことに合意している場合、のいずれかです。
もっとも、遺言書で指定された遺産を相続したくないというケースもあることでしょう。
例えば、農地や森林のように管理が難しい遺産を相続することとなるケースで、買い手がつかず売却するのも難しいような場合などです。
このようなケースでは、相続放棄をすることが考えられます。
ただし、一部の財産だけを放棄することはできず、相続放棄を選択する場合には一切の財産を引き継ぐことができなくなる点には注意が必要です。
他に高価な財産を相続できる可能性がある場合には、相続放棄の判断は慎重に行うことが大切です。
相続放棄の手続きの流れ
手続きの流れ
相続放棄の手続きは、次のような流れで行います。
遺産の調査
相続放棄をするかを検討するために、まずは被相続人の遺産の内容を調査し、金銭的に評価します。
相続の対象となる遺産には、プラスの財産(預貯金や不動産など)だけではなくマイナスの財産(借金、ローンなど)も含まれます。
マイナスの財産が上回っている場合には、相続人自身の財産を使って借金等の返済を行うことになります。
後になってから「相続放棄しなければよかった」または「相続放棄しておけばよかった」といった後悔をしないよう、遺産の調査は丁寧に行うことが大切です。
なお、不動産や株式の評価は専門家でも判断が分かれるとされており、これらの財産が遺産に含まれている場合には、一般の方が自力で遺産の評価を行うことは難しいと考えられます。
相続の放棄は、相続開始(被相続人が亡くなったこと)を知った日から3ヶ月以内に行わなければならないという期間制限があります。
そのため、遺産の調査について少しでも不安がある場合には、相続にくわしい弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。
相続放棄の検討
遺産の状況や他の相続人との関係などを踏まえて、相続放棄をするかどうかを検討します。
相続放棄の手続きが必要なケース(相続放棄をしたほうがよいケース)については、上で解説したとおりです。
基本的に相続放棄は撤回したり取消したりすることができません。
後悔のない決断をするためにも、相続放棄をすべきかどうかの判断に迷われる場合は相続に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。
必要書類等の準備
相続放棄をすることに決めたら、必要書類等の準備をします。
相続放棄の手続きは家庭裁判所に申立てを行う必要があり、その際には相続放棄申述書や戸籍謄本などの書類を提出します。
戸籍謄本等は市区町村役場に申請して取得する必要があります。
状況によっては膨大な数の戸籍謄本等を取得しなければならず、申請から取得までに数週間程度かかる可能性があります。
相続放棄をする場合には、できるだけすみやかに必要書類を準備されることをおすすめします。
相続放棄の必要書類については、後ほど別途説明します。
相続放棄の申述
相続放棄の申述は、家庭裁判所に相続放棄申述書等の必要書類を提出して行います。
家庭裁判所の窓口に直接持参して提出する方法のほか、郵送で提出する方法も認められています。
3ヶ月の期限が迫っているときには、窓口に直接持参するのが安全です。
郵送する場合には、レターパックや簡易書留、特定記録郵便などを利用して、期限前に到着しているかを確認することが大切です。
また、提出した書類について裁判所からの問い合わせがある可能性もありますので、書類のコピーを取って手元に残しておくことをおすすめします。
遺産の数が多いために調査に時間がかかってしまう場合など、3ヶ月の期限内に相続放棄をすべきかどうかの判断をすることが難しい場合には、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることができます。
家庭裁判所からの照会に対する回答
相続放棄の申述(必要書類等の提出)から1〜2週間程度が経過すると、家庭裁判所から相続放棄に関する照会書が届きます。
照会書は、申述人が自分自身の意思で相続放棄の申述をしたのかどうかを確認するためのものです。
照会書と一緒に回答書が同封されていますので、指定された期限内に回答を記入して返送します。
手続きの完了(申述受理通知書が届く)
回答書の内容に問題がなければ相続放棄の申述は完了し、回答書を返送してから1〜2週間程度で相続放棄申述受理通知書(相続放棄の手続きが完了したことを知らせる書類です。)が届きます。
相続放棄の手続きはどこで行うの?
相続放棄の手続きは、家庭裁判所に申立てをして行います。
申立てはどの家庭裁判所に対して行ってもよいわけではなく、被相続人の最後の住所地を管轄(担当)する家庭裁判所に対して行う必要があります。
それぞれの裁判所が管轄(担当)する区域については、裁判所のホームページで調べることができます。
参考:裁判所の管轄区域
相続放棄の手続きの必要書類
相続放棄の手続きの申立てをする際には、(1)相続放棄申述書に加えて、(2)添付書類を提出する必要があります。
相続放棄申述書
家庭裁判所に対して相続放棄を申し立てるための書類です。
相続放棄の申述書には、相続放棄をする方(申述人)の情報や被相続人の情報、相続の放棄をすること(申述の趣旨)、相続放棄をする理由などを記載します。
相続放棄申述書は以下よりダウンロードしていただくことができます。
添付書類
添付書類として、相続放棄をする方(申述人)や被相続人の身分関係を証明する書類(戸籍謄本等)を提出する必要があります。
どのような書類を添付書類として提出する必要があるかは、被相続人と申述人の続柄によって異なります。
すべての申述人に共通する添付書類
すべての申述人に共通する書類は以下の2点です。
(1) 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
住民票除票とは、かつて住民登録をしていた方が死亡や転出などによって登録を削除された住民票のことをいい、死亡したことの証明等に用いられます。
住民票除票は、被相続人の住所地の市区町村役場で取得することができます。
戸籍の附票とは、新しく戸籍を作った(本籍を定めた)以降の住所(住民票登録)の移り変わりを記録したものです。
戸籍の附票は戸籍簿と一緒に本籍地の市区町村で保管・管理されており、被相続人の本籍地の市区町村役場で取得することができます。
(2) 相続放棄をする方(申述人)の戸籍謄本
戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で取得することができます。
申述人ごとに異なる添付書類
上記以外に必要となる書類は、被相続人との続柄によって異なります。
※状況によっては追加の書類が必要となることがあります。
相続放棄の手続きを自分でするメリットとデメリット
相続放棄の手続きを自分でする場合には、次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・専門家に依頼する費用を抑えられる | ・手間と時間がかかる
・適切な判断をできないリスクがある ・期限に間に合わないリスクがある ・債権者の対応も自分でしなければならない |
それぞれの状況に応じてメリット・デメリットのどちらが大きいかをよく検討し、相続放棄の手続きを自分でするのか、それとも専門家に依頼するのか、を決めることが大切です。
メリットについて
相続放棄の手続きを自分でするメリットは、費用を抑えられることです。
司法書士や弁護士などの専門家に相続放棄の手続きを依頼する場合には3万円〜10万円前後の費用がかかりますが、自分で手続きをする場合にはこの費用を節約することができます。
デメリットについて
相続放棄の手続きを自分でするデメリットとして、次のようなものがあります。
手間と時間がかかる
上で解説したように、相続放棄の手続きをする際には、戸籍謄本等のさまざまな必要書類を取得して提出しなければなりません。
戸籍謄本等の取得には本人確認等の手続きが必要とされるため、事前準備を含めて多くの手間と時間がかかります。
専門家に依頼する場合には必要書類の取得を含む手続きの全体を任せることができますが、自分で手続きをする場合には、すべてを自力で行う必要があります。
適切な判断をできないリスクがある
自分で相続放棄の手続きをする場合には、本当に相続放棄をするべきなのかについて、適切な判断をできないリスクがあります。
弁護士などの専門家に相続放棄の相談や依頼をする場合には、遺産の状況や他の相続人等の関係、相続人の希望など、さまざまな点を考慮した上で、相続放棄をするべきかどうかについて適切なアドバイスをもらうことができます。
手続きを自分でする場合には、このような判断も自力で行わなければなりません。
そのため、例えば、マイナスの財産の方が多いと自己判断して相続放棄をしたものの、実はプラスの財産の方が多かった、といった結果になってしまうリスクがあります。
相続放棄を一度してしまうと、原則として撤回したり取り消したりすることができません。
相続放棄をすべきかどうかの判断に迷われている場合には、相続に強い弁護士などの専門家に相談するなどして、慎重に判断されることを強くおすすめします。
期限に間に合わないリスクがある
相続放棄には被相続人が亡くなったことを知った日から3ヶ月という期限があり、基本的にはこの期限を過ぎると相続放棄をすることができなくなります。
相続放棄の手続きをするためには、遺産(相続財産)の調査や書類の取得など、さまざまな事前準備をする必要があることから、3ヶ月という時間はあっという間に過ぎてしまいます。
どうしても3ヶ月の期限に間に合わない可能性がある場合には、家庭裁判所に期限延長の申立てをすることもできますが、その手続きにも手間と労力がかかります。
債権者の対応も自分でしなければならない
被相続人に借金やローンがあるケースでは、相続の放棄をするにあたって債権者(貸主等)とのやり取りが発生することがあります。
相続放棄の手続きを自分でする場合には、こうした債権者の対応も自分自身で行う必要があります。
やり取りの中で借金等の返済を求められることもあり、精神的な負担を感じられる方もいらっしゃいます。
弁護士に相続手続きを依頼する場合には、債権者(貸主等)の対応についても代理してもらうことができますので、負担を軽減したい場合には弁護士への依頼を検討してみましょう。
相続放棄の手続にかかる費用
相続放棄の手続きにかかる費用は大きく、
- ① 家庭裁判所に提出する必要書類の取得にかかる費用
- ② 家庭裁判所に支払う手数料等
- ③ 手続きを弁護士等の専門家に依頼する場合の費用
の3つに分けられます。
相続放棄の手続きを自分でする場合の費用は3000円〜4000円前後です。
手続きを専門家に依頼する場合、これに加えて3万円〜10万円前後の費用がかかります。
以下では、①〜③の費用についてよりくわしく解説します。
必要書類の取得にかかる費用
上で解説したように、必要書類は被相続人との続柄によって異なるため、それに応じて取得にかかる費用も異なりますが、一般的には申述人1人につき1000円〜2000円前後です。
必要書類 | 費用 |
---|---|
住民票除票・戸籍の附票 | 300円 / 通 |
戸籍謄本 | 450円 / 通 |
除籍謄本 | 750円 / 通 |
改製原戸籍謄本 | 750円 / 通 |
※金額は各市区町村ごとに異なり、また、取得方法(窓口・郵送・オンラインなど)によっても金額が異なることがあります。
家庭裁判所に支払う手数料等
家庭裁判所に支払う手数料等の内訳は以下のとおりで、申述人の人数によって金額が変わります。
申述人が1人の場合は1200円〜1300円程度です。
費用 | |
---|---|
収入印紙(申立の手数料) | 申述人1人につき800円 |
連絡用の郵便切手 | 400円〜500程度 |
※連絡用の郵便切手の金額は各裁判所によって異なります。
専門家に依頼する場合の費用
相続放棄の手続きは弁護士または司法書士に依頼することができ、その際にかかる費用の相場は3万円〜10万円程度です。
それぞれに依頼する場合の費用は以下のとおりです。
弁護士に依頼する場合
相続放棄の手続きを弁護士に依頼する場合の費用は、相続放棄をする方(申述人)1人につき5万円〜10万円前後が相場です。
同じ被相続人について他に相続放棄をする方がいる場合には、費用を割り引いてくれる事務所もあります。
当事務所の弁護士費用は以下をご覧ください。
司法書士に依頼する場合
相続放棄の手続きを弁護士に依頼する場合の費用は、相続放棄をする方(申述人)1人につき3万円〜5万円前後が相場です。
相続放棄の手続きをどの専門家に依頼すべき?
相続放棄の手続きは、相続に強い弁護士に依頼するのがおすすめです。
司法書士に依頼するデメリット
相続放棄の手続きは司法書士も行うことができ、一般的には弁護士に依頼する場合よりも安い費用で依頼することができます。
ただし、司法書士に依頼する場合には以下のようなデメリットがあります。
代理できる範囲が限られている
司法書士が代理できる事項の範囲は限られています。
司法書士が代理することができるのは、相続放棄に関する書類の作成や請求金額が140万円以下の民事事件のみです。
遺産分割協議などの家事事件(親族や相続に関する争いごとのことです。)や140万円を超える民事事件(主に金銭の支払いに関する争いごとのことです。)については代理することができません。
相続放棄の手続きについても、司法書士名義で書類の作成や申立てをすることはできず、書類には相続放棄をする方(申述人)本人が署名・押印する必要があります。
家庭裁判所から送付される相続放棄照会書等の書類を司法書士が代理で受け取ることはできず、相続放棄をする方(申述人)本人が受け取らなければなりません。
また、相続に関連して調停や訴訟などのトラブルに巻き込まれた場合には、別途弁護士を探して相談・依頼しなければならない可能性があります。
これに対して、弁護士であれば民事事件のほか相続に関する事件全般を代理することができます。
相続放棄照会書等の書類は家庭裁判所から弁護士宛てに送ってもらい、弁護士から回答書を返送してもらうことができます。
他の相続人から調停や訴訟を起こされた場合にも、そのまま手続きを代理することができます。
このように、司法書士に依頼する場合には、代理できる範囲が限られているため自分自身で対応しなければならない事項が多いというデメリットがあります。
法律相談の範囲が限定的
また、司法書士は対応できる相談の範囲が限られているという点もデメリットです。
司法書士は、上の項目で説明したような代理できる事項に関する法律相談のみを行うことができ、この範囲を超えたアドバイスを行うことは違法になります。
より具体的には、一般的な司法書士が法律相談を行える範囲は登記の手続きや書類の作成等についてのみであり、認定司法書士(国の定める認定試験に合格した司法書士のことです。)であっても、140万円以下の民事事件に関するものに限られています。
相続放棄の手続きを依頼するケースでは、そもそも相続放棄をするべきかどうかの判断に迷われているケース、遺産分割協議の進め方について悩んでいるケース、遺言書をめぐる争いに巻き込まれているケースなど、相続に関連する他の悩みや問題を抱えていることがあります。
しかし、司法書士はこれらのような相続に関するトラブルについてアドバイスをする権限がありません。
弁護士であれば法律事務全般を行うことができるため、相続放棄の手続きだけでなく、相続全般に関する幅広い相談に対応することができます。
相続放棄に関する書類の作成依頼にとどまらず相続に関連する相談をしたい場合には、弁護士に依頼するのがおすすめです。
相続放棄を弁護士に依頼するときの注意点
相続に強い弁護士に依頼する
相続放棄を弁護士に依頼するときには、相続に強い弁護士に依頼することが大切です。
それぞれの弁護士には専門分野があり、弁護士によっては相続問題をあまり取り扱っていないこともあります。
相続放棄などの相続分野は高度の専門知識と経験が必要とされる分野です。
そのため、相続問題の取扱件数が少なく、相続分野にそれほどくわしくない弁護士に依頼してしまうと、かえって時間や労力がかかってしまったり、損をしてしまったりするリスクがあります。
相続に強い弁護士かどうかは、例えば以下のような観点から判断することができます。
- 弁護士紹介のページで、専門分野として「相続」が記載されている
- ホームページやブログ、SNS等で相続に関する情報発信をしている
- 相続問題の取扱件数が多い
信頼できる弁護士に依頼する
相続に強いだけでなく、信頼できる弁護士であるかどうかも重要なポイントです。
決して安くはない費用を支払うのですから、質問に丁寧な受け答えをしてくれない弁護士や、弁護士費用がいくらかかるのかを教えてくれない弁護士などには、あまり依頼したくないですよね。
信頼できる弁護士かどうかを確認するための方法としては、実際の依頼者による口コミを確認する方法や、法律相談を利用するなどの方法があります。
法律相談とは正式な依頼をする前に行う相談のことで、手続きの概要や見通しなどについて相談することができます。
法律相談での受け答えから、誠実に対応してくれそうか、細やかなフォローをしてくれそうか、などの点を確認することができます。
ホームページやSNSを見ても本当に相続に強い弁護士なのかどうかの判断がつかない場合には、法律相談を活用して、相続問題の取扱実績などを確認してみるのもよいでしょう。
事前に見積もりをもらう
相続放棄を弁護士に依頼する場合には、事前に費用の見積りをもらいましょう。
明朗会計な弁護士事務所であれば、要望に対して見積書を作成し、金額感についてしっかりと説明してくれるはずです。
後から「予想外の金額を請求された」というトラブルに巻き込まれないためにも、事前に見積もりをもらうことが大切です。
相続放棄の手続についてのQ&A
相続放棄は生前に申請できますか?
例えば、一部の相続人が生前に「相続を放棄します」という内容の書類を作成しても、その書類には何の効力もありません。
相続放棄の手続きは、被相続人が亡くなった後(相続開始後)に家庭裁判所で手続きを行うことが必要です。
相続トラブルに巻き込まれたくないなどの理由でプラスの財産を引き継ぎたくない場合には、被相続人に頼んで、自分以外の相続人にすべての遺産を分配するという内容の遺言書を作成してもらい、生前に遺留分(遺留分)を放棄することで、生前の相続放棄と似ている状況を作ることができます。
なお、遺留分の放棄とは、「遺留分」という法律で保障されている遺産の最低限の取り分を放棄(辞退)することをいいます。
ただし、上記の方法をとることができるのは、被相続人が遺言書の作成に協力してくれた場合に限られます。
また、借金やローンなどのマイナスの遺産については、「特定の相続人に相続させない」という内容の遺言書を作成したとしても、金融機関等の貸主が同意しない限り、その内容を金融機関等に主張することはできません。
したがって、被相続人にマイナスの遺産を引き継ぎたくない場合には、被相続人の亡くなった後に相続放棄をするほかありません。
相続放棄に必要な切手はいくらですか?
相続放棄の申立て(申述)をする際には、あらかじめ決められた金額の郵便切手を購入して家庭裁判所に納める必要があります。
一般的に、相続放棄に必要な郵便切手は400円〜500程度ですが、各家庭裁判所によって取扱いが異なる可能性がありますので、詳細は管轄の家庭裁判所にお問い合わせください。
東京都内の家庭裁判所の場合には、84円切手4枚、10円切手4枚、合計376円分の切手が必要です。
納めた郵便切手は、裁判所との間の書類のやり取り(連絡)に使用されます。
まとめ
・相続放棄の手続きは自分で行うこともでき、専門家に依頼する費用を節約できるという経済的なメリットがあります。
・他方で、相続放棄の手続きを自分で行う場合には、手間やリスクがかかる、専門家相続放棄について適切な判断をできない可能性がある、期限内に間に合わず相続放棄できなくなるリスクなどがある、などのデメリットもあるため、注意が必要です。
・相続放棄は、被相続人が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述書と添付書類を提出して行う必要があります。
3ヶ月の期限を過ぎると、基本的には相続放棄をすることができなくなってしまいます。
・また、相続放棄の申述をした後は撤回したり取り消したりすることができないことから、相続放棄をするかどうかの判断は慎重に行うことが大切です。
・相続放棄をすべきかの判断に迷われている場合や、少しでも疑問や不安がある場合、相続トラブルに巻き込まれる可能性がある場合などには、相続に強い弁護士に相談されることを強くおすすめします。
・当事務所では、相続問題に注力する弁護士で構成する相続対策専門チームを設置しています。
相続放棄のご相談をはじめ、遺産や相続人の調査、遺産分割協議、遺言書の作成、相続登記、相続税の申告・節税対策など、相続全般に関する幅広いご相談を承っていますので、ぜひ安心してご相談ください。