相続放棄は自分でできる?手続きの流れやデメリットを解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

相続放棄の手続きは自分で行うこともできます。

ただし、手続きを自分で行う場合には、さまざまなデメリット・リスクがあります。

例えば、相続放棄をすべきかどうかを適切に判断できず後悔することとなるリスク、手続きのミスによって相続放棄が認められなくなるリスク、対応を間違えてトラブルにつながるリスクなどがあります。

この記事では、相続放棄の手続きを自分で行う場合の手続きの流れやデメリット・注意点、専門家に依頼するメリットなどについて、相続にくわしい弁護士がわかりやすく解説します。

相続放棄を自分でするか、それとも専門家に依頼するかを判断される際の参考にされてみてください。

相続放棄手続きは自分でできる?

相続放棄手続きは自分ですることができます。

手続きを弁護士等の専門家に依頼しなければならないという決まりはありません。

相続放棄手続きを自分でする場合には、専門家に支払う費用を節約できるというメリットがあります。

もっとも、相続放棄はすべての遺産を一切引き継がなくなるという重大な効果をもたらす手続きであることから、慎重に判断することが大切です。

以下では、相続放棄の手続きの流れや、手続きを自分で行う場合のデメリット等についてくわしく解説していきます。

 

 

相続放棄を自分で行う場合の手続き

手続きの流れ

相続放棄を自分で行う場合には、以下の手続きをすべて自分で行うことになります。手続きの流れ

 

1.自分のために相続が開始されたことを知る

相続放棄の手続きは、自分のために相続が開始されたことを知った時から3ヶ月以内にする必要があります。

この期間制限のことを「熟慮期間(じゅくりょきかん)」といいます。

「自分のために相続が開始されたことを知った時」とは、①被相続人が亡くなって相続が開始された事実、②自分が相続人になる事実、の2つ事実を知った時を意味します。

多くのケースでは、①の被相続人が亡くなったことを知った時点で、同時に②自分が相続人になることを知ることになります。

ただし、前の順位の相続人全員が相続放棄をしたことによって自分が相続人になった場合などには、①のタイミングよりも②のタイミングが後になります。

 

2. 遺産を調査する

自分のために相続が開始されたことを知ったら、まずは被相続人の遺産の内容をしっかりと調査することが大切です。

相続人が引き継ぐ遺産には、預貯金や不動産などのプラスの遺産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの遺産も含まれます。

マイナスの遺産は、被相続人が亡くなって相続が開始されると同時に、法律(民法)で定められた一定の割合(これを「法定相続分」といいます。)にしたがって、当然に相続人に引き継がれます。

そのため、プラスの遺産だけでなくマイナスの遺産についてもしっかりと調査して把握することが大切です。

 

3. 相続放棄を検討する

マイナスの財産を含めて遺産の内容や状況を把握したら、それを元に相続放棄をするかどうかの検討をします。

遺産を相続をするかどうかについては、相続放棄を含めて次の3つの選択肢があります。

  1. ①単純承認:被相続人の遺産をそのまますべて引き継ぐことをいいます。
    プラスの遺産だけでなくマイナスの遺産もすべて引き継ぎます。
  2. ②限定承認:被相続人の遺産について、プラスの遺産がマイナスの遺産を上回っている限度で引き継ぎます。
  3. ③相続放棄:被相続人の遺産を一切引き継がないことをいいます。
    プラスの遺産もマイナスの遺産も一切引き継ぐことはありません。

限定承認または相続放棄を選択する場合には、3ヶ月の熟慮期間内に手続きをする必要があります。

どの選択をするのが良いかは、それぞれの相続人の置かれている状況によって異なりますが、以下のようなケースでは、相続放棄を検討すべきです。

 

【相続放棄を検討すべきケース】
明らかにプラスの遺産をマイナスの遺産が上回っているケース

被相続人から引き継ぐこととなるプラスの遺産よりも、借金やローンなどのマイナスの遺産が明らかに上回っている場合には、相続放棄を検討すべきです。

この場合、相続人は自分の財産を使って被相続人の借金やローン等を返済する必要があります。

したがって、借金やローン等の返済義務を免れたい場合には、相続放棄を検討すべきです。

 

相続トラブルに巻き込まれたくないケース

相続人が複数いる場合で、他の相続人との関係がよくない場合には、相続トラブルに巻き込まれるリスクを回避するために相続放棄をすることが考えられます。

相続の場面では、誰がどの遺産を相続するのか、誰がどのくらい遺産を相続するのか、などをめぐってトラブルになることが少なくありません。

また、一度トラブルになると感情的になって合理的な判断をすることができず、解決までに長期間を要する傾向にあります。

そのため、もらえる遺産の価値を考慮しても、相続トラブルに巻き込まれた場合の手間や労力、費用(調停や訴訟に巻き込まれた場合の弁護士費用など)等のデメリットが上回る場合には、相続放棄を検討すべきです。

 

特定の相続人に遺産を集中させたいケース

特定の相続人にすべての遺産を集中的に引き継がせたい場合には、他の相続人全員で相続放棄をする必要があります。

例えば、被相続人の遺産の大部分が事業に関するものであり、事業を引き継ぐ長男にすべての遺産を相続させる場合などです。

 

絶対に相続したくない遺産があるケース

管理・処分の困難な遺産を絶対に相続したくない場合などには、その遺産の相続を避けるために相続放棄をすることが考えられます。

ただし、一部の遺産のみを相続放棄することはできず、相続放棄を選択すると一切の遺産を引き継げなくなることから、他の選択肢を含めて慎重に検討することが大切です。

 

4.必要書類等を準備する

相続放棄の申述をする際には所定の必要書類を提出する必要があるため、これらの書類の準備を行います。

相続放棄をする方(「申述人」といいます。)は、「相続放棄申述書」を作成するとともに、所定の添付書類(戸籍謄本等)を取得して提出する必要があります。

添付書類の内容は被相続人と申述人の続柄によって異なります。

相続放棄の必要書類については、後ほど別途解説します。

 

5.相続放棄の申述をする

必要書類(相続放棄申述書と添付書類)の準備ができたら、これらを家庭裁判所に提出して相続放棄の申述を行います。

必要書類は家庭裁判所の窓口に直接持参し、または郵送で提出することができます。

3ヶ月の熟慮期間が迫っているときには、窓口に直接持参することをおすすめします。

ほとんどのケースでは、その後に裁判所から相続放棄の申述に関する照会(問い合わせ)を受けることになるため、矛盾のない回答をできるように、書類のコピーを取って保管しておくことをおすすめします。

 

6.家庭裁判所からの照会に回答する

申述から1〜2週間すると、家庭裁判所から相続放棄の申述人に対して相続放棄に関する照会(問い合わせ)が行われるのが一般的です(照会が行われないケースもあります)。

家庭裁判所は申述人に対して相続放棄に関する「照会書」を郵送します。

この照会は、申述人が真意で相続放棄の申述をしたのか(本人以外が勝手に申述の手続きをしていないか、誰かに強制されて申述をしていないか)を確認するために行われます。

照会書のほかに「回答書」が同封されていますので、申述人は指定された期限内(通常は10日前後です。)に記入して返送する必要があります。

個々の状況によっては、家庭裁判所から追加で問い合わせを受けることがあります。

 

7.相続放申述受理書を受け取る( 手続きの完了)

回答書の内容に問題がなければ、家庭裁判所は相続放棄の申述を受理します(問題がある場合には不受理となります)。

無事に申述が受理された場合には、回答書を返送してから1〜2週間程度で「相続放棄申述受理通知書」が届きます。

「相続放棄申述受理通知書」は、相続放棄が受理され、手続きが完了したことを知らせる書類です。

 

手続きの場所

相続放棄の手続きは、被相続人の最後の住所地を管轄(担当)する家庭裁判所で行う必要があります。

申立てはどの家庭裁判所に対して行ってもよいわけではないため、注意が必要です。

裁判所の管轄(担当)区域については、以下のページで調べることができます。

裁判所の管轄区域について

引用:裁判所の管轄区域|裁判所

 

必要な書類

相続放棄の手続きに必要な書類は、(1)相続放棄申述書と(2)添付書類です。

 

(1)相続放棄申述書

「相続放棄申述書」は、家庭裁判所に対して相続放棄をする意思があることを示すための書類です。

「相続放棄申述書」には、申述人の情報や被相続人の情報、相続放棄をする理由などを記載します。

相続放棄申述書のフォーマットはこちらからダウンロードしていただくことができます。

 

(2)添付書類

さらに、添付書類として、相続放棄をする方(申述人)や被相続人に関する書類(戸籍謄本等)を提出する必要があります。

添付書類の内容は以下のとおりで、被相続人と申述人の続柄によって異なります。

 

【被相続人の配偶者・子ども】
  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
  • 相続放棄をする方(申述人)の戸籍謄本
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本

 

【被相続人の両親・祖父母】
  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
  • 相続放棄をする方(申述人)の戸籍謄本
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
  • 被相続人の子どもが先に亡くなっている場合、その子どもの出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
  • 被相続人の祖父母が相続人になる場合は、被相続人の父母の死亡の記載のある戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本

 

【被相続人の兄弟姉妹】
  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
  • 相続放棄をする方(申述人)の戸籍謄本
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
  • 被相続人の子どもが先に亡くなっている場合、その子どもの出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
  • 被相続人の父母や祖父母の死亡の記載のある戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
    ※状況により追加書類の提出が必要となることがあります。

 

相続放棄の費用

相続放棄を自分で行う場合の費用の相場は、申述人1人あたり数千円〜5千円前後です。

実費の主な内訳は、家庭裁判所に提出する添付書類の取得費用(1000円〜3000円前後)と収入印紙代・郵便切手代(1200円〜1300円前後)です。

 

 

相続放棄を自分で行うデメリットとは?

相続放棄の手続きを自分でする場合にはデメリットもあります。

具体的には、次のようなデメリットがあります。

相続放棄を自分で行うデメリットとは?

相続放棄について適切な判断をできないリスクがある

自分で相続放棄の手続きをする場合、本当に相続放棄が最善の選択肢なのかについて、適切な判断をできないリスクがあります。

上で解説したように、遺産の相続については単純承認・限定承認・相続放棄の3つの選択肢があります。

それぞれにメリット・デメリットがあるため、3つのうちどれを選択するのが良いかは相続人の置かれている状況によって異なります。

適切な判断をするためには相続に関する専門知識と経験が必要となるため、一般の方が自力で判断を行うことはかなりハードルが高いといえます。

相続放棄は一度受理されると、原則として撤回したり取り消したりすることができません。

適切な判断をできなかった場合には、相続放棄が受理された後で「やっぱり単純承認や限定承認をしておけばよかった」という後悔をする可能性があります。

 

手続きを間違えて相続放棄を認められないリスクがある

自分で相続放棄の手続きをする場合、手続きを間違えて相続放棄が認められなくなるリスクがあります。

相続放棄の申述は必ず認められる(受理される)というものではなく、状況によっては認められない(不受理となる)こともあります。

例えば、熟慮期間を過ぎてしまって相続放棄が認められなくなったり、相続放棄申述書の書き方を間違えたために相続放棄が認められなくなったりするなどのリスクがあります。

そのため、自分で相続放棄をする場合には、相続放棄に関する注意点を事前によく確認することが大切です。

相続放棄の注意点については、後ほど詳しく解説します。

 

時間と手間がかかる

相続放棄の手続きを自分でする場合には、多くの時間と手間がかかるというデメリットがあります。

相続放棄をする際には、相続放棄に関するルールや注意点を調べて十分に理解したうえで、必要書類等を準備して裁判所に提出し、裁判所からの照会に対応する必要があります。

これらの手続きすべてを自力で行わなければなりません。

特に、遺産の数が多い場合や分散している場合や、遺産の中に評価の難しいものが含まれている場合、相続人の数が多く利害関係が複雑な場合などには、一般の方が自力で手続きをするのはかなり難しいと思われます。

その上、基本的にはこれらの手続きを3ヶ月の熟慮期間内に行う必要があります。

平日の日中にお仕事をされている方が、被相続人のお葬式などで多忙な中、さらに相続放棄の準備をすすめるのはかなり大変です。

さらに、被相続人に借金やローンがある場合には、相続の放棄にあたり債権者(貸主等)とのやり取りが発生するケースがありますが、このような債権者対応も自力で行う必要があります。

債権者とのやり取りにおいては、借金等の返済を求められることもあり、精神的な負担を感じられる方もいらっしゃいます。

 

トラブルにつながる可能性がある

相続放棄の手続きを自分でする場合には、対応を誤ってトラブルにつながる可能性があります。

相続放棄は、プラスの遺産もマイナスの遺産も一切引き継がなくなるという大きな効果をもたらすものです。

そのため、特に被相続人のマイナスの遺産が多い場合には、相続放棄をすることで他の相続人や後順位の相続人に迷惑がかかるため、トラブルになる可能性があります。

自力で手続きをする場合には、こうしたトラブルの可能性を意識することができず、そのためにトラブルを避けるための適切な対処をすることができないリスクがあります。

 

 

相続放棄手続きを自分でする場合の注意点

相続放棄の手続きを自分でする場合には、次のような点に注意する必要があります。相続放棄手続きを自分でする場合の注意点

一部の遺産の相続放棄はできない

相続放棄をする場合には、プラスの遺産・マイナスの遺産を問わず、一切の遺産を引き継ぎません。

一部の遺産のみの相続放棄(例えば、不動産については相続放棄するが、銀行預金については相続するなど)はできません。

したがって、相続放棄をするかどうかを判断する際には、遺産の調査を十分に行った上で慎重に判断することが大切です。

 

相続放棄には期間制限がある

相続放棄の手続きは、自分のために相続が開始されたことを知った日から3ヶ月以内にしなければならないという期限制限(熟慮期間)があります。

相続放棄をしないまま3ヶ月の熟慮期限を過ぎると、相続人はすべての遺産を相続したものとして扱われ(これを「単純承認」といいます。)、その後は基本的に相続放棄をすることができなくなります(申述しても受理されません)。

熟慮期間の経過後に被相続人の借金が発覚したという場合、相続放棄が認められるためにはやむを得ない特別の事情が必要です。

そのような特別の事情が認められない場合、相続放棄をすることはできません。

相続放棄をするためには、遺産の調査や必要書類の作成・取得など、さまざまな事前準備をする必要があることから、熟慮期間の制限を意識することが大切です。

 

期間の伸長

遺産の数が多い場合や遺産が各地に分散している場合など、遺産の調査が難航して3ヶ月の熟慮期間内に相続放棄の申述をできない可能性があるときは、家庭裁判所に期間の延長の申立てをすることができます。

延長の申立てをする場合には所定の必要書類を準備して提出する必要があり、また、延長の申立ても熟慮期間内に行う必要があります。

 

相続放棄は撤回・取消しできない

一度した相続放棄は、原則として撤回や取消しができません。

撤回や取消しが認められるのは、騙されたり脅されたりしたことによって相続放棄をしてしまったような例外的な場合だけです。

例えば、相続放棄の申述が受理された後で新たに高価な遺産が発見されたとしても、そのことを理由に相続の放棄を撤回・取消しすることはできません。

単純承認や限定承認をしておけばよかった、という後悔をしないためには、遺産の調査をしっかり行ったうえで、相続放棄がベストの選択かどうかをよく検討することが大切です。

 

単純承認に注意する

熟慮期間を過ぎる前であっても、「相続財産の処分」にあたる行為をすると、相続人は遺産について単純承認をした(マイナスの遺産を含むすべての遺産を相続する)ものとして扱われ、相続放棄が認められなくなってしまいます。

「相続財産の処分」にあたる行為とは、遺産の状態や性質を変える行為のことをいいます。

例えば、遺産を売却する行為(被相続人の不動産の売却など)、遺産を私的に消費する行為(預貯金を引き出して自分自身の借金を返済する行為など)、遺産の名義変更行為(被相続人名義の預貯金自分名義に変更する行為など)、遺産の破壊(被相続人の家を取り壊す行為など)がこれにあたります。

相続放棄を検討している場合には、「相続財産の処分」にあたる行為をしてはいけません。

相続財産の処分にあたるかどうかの判断が分かれる微妙なケースもあることから、判断に迷う場合には、相続に強い弁護士に相談されることを強くおすすめします。

 

 

相続放棄手続きを専門家に依頼するメリットは?

相続放棄の手続きを専門家に依頼するメリットとして、以下をあげることができます。

  • 相続放棄をすべきかどうかについて適切なアドバイスをもらえる
  • 相続放棄の手続きを代行してもらえる
  • トラブルを避けるためのアドバイスをもらえる
  • 関連する相続手続きやトラブルについて相談できる

ただし、専門家の種類によって対応できる範囲は異なるため、注意が必要です。

相談放棄を依頼する専門家の選び方については、次の項目で詳しく解説します。

 

相続放棄をすべきかどうかについて適切なアドバイスをもらえる

相続放棄を専門家に依頼することで、そもそも相続放棄をすべきか、相続放棄以外により適切な方法があるのか、等について、適切なアドバイスをもらうことができます。

相続放棄がベストな選択であるのかどうかは、遺産の状況や他の相続人との関係性など、さまざまな要素を考慮して判断する必要があり、適切な判断をするためには相続法に関する高度の専門知識や経験が必要となります。

相続にくわしい専門家(弁護士)に相談・依頼することで、相続法に関する専門知識と過去の経験に基づく適切なアドバイスをしてもらえることが期待できます。

 

相続放棄の手続きを代行してもらえる

専門家に相続放棄の手続きを代行してもらうことで、手続きにかかる時間と手間を節約することができます。

弁護士・司法書士に依頼することで、相続放棄申述書の作成や添付書類の取得を代行してもらうことができます。

 

トラブルを避けるためのアドバイスをもらえる

上でも解説したように、相続トラブルは長期化する傾向があることから、できる限り未然に防ぐことが大切です。

相続放棄について他の相続人等とのトラブルが発生するリスクがある場合には、専門家(弁護士)に相談・依頼することで、専門知識と経験にもとづいて、トラブルを避けるための対処法についてアドバイスを受けることができます。

 

関連する相続手続きやトラブルについて相談できる

相続放棄の手続きを専門家(弁護士)に依頼する場合には、関連する相続手続き(例えば、相続登記や相続税の申告・節税対策)や相続トラブル等について合わせて相談することができます。

一括して相談することで、手続きを効率的に進めることができます。

 

 

相続放棄手続きの専門家の選び方

相続放棄の手続きを代行できるのは弁護士と司法書士のみです。

行政書士は相続放棄をするかどうかを判断するために行う相続財産(遺産)の調査や戸籍謄本等の取得のみを代行することができ、相続放棄申述書の作成を代行することはできません。

各専門家が対応できる事項の範囲は、次の表のとおりです。

弁護士 司法書士 行政書士
戸籍謄本等の取得
相続財産の調査
相続放棄に関する法的アドバイス × ×
相続放棄の申述 ×
債権者の対応 × ×
相続トラブルの対応 × (△) ×

 

相続放棄手続きは弁護士に依頼するのがおすすめ

上の表からわかるように、弁護士は相続放棄に関する一連の手続きをすべて行うことができます。

具体的には、相続財産の調査の代行、相続放棄をすべきかのアドバイス、相続放棄に関するトラブルを避けるためのアドバイス、相続放棄の必要書類等の準備の代行、相続放棄の申述(家庭裁判所からの照会に対する回答を含みます。)の代行、などをすべて行うことができます。

また、弁護士は法律に関する専門家であることから、相続に関する手続き全般を代行することができるほか、相続問題全般に関する法的アドバイスをすることができます。

このように、相続放棄手続きを弁護士に依頼する場合、依頼者は上で説明した「相続放棄手続きを専門家に依頼するメリット」のすべてを享受することができます。

これに対して、司法書士は相続放棄に関して対応できる事項の範囲が限定的です。

そのため、相続放棄について少しでも疑問や悩みがある場合には、弁護士に相談することを強くおすすめします。

 

弁護士の選び方

もっとも、相続放棄はどの弁護士に依頼してもよいというものではありません。

以下では、弁護士選びのポイントについて解説します。

 

相続にくわしい弁護士を選ぶ

相続放棄を弁護士に依頼する場合には、相続にくわしい弁護士を選ぶことが大切です。

弁護士には専門分野があり、弁護士によっては相続問題にそれほどくわしくない(あまり取り扱っていない)場合もあります。

相続放棄をはじめとする相続分野は高度の専門知識と経験が必要な分野であることから、知識や経験の少ない弁護士に依頼してしまうと、かえって時間と手間がかかるリスクや、相続放棄が認められなくなるリスクがあります。

相続にくわしい弁護士かどうかを判断するためには、次のような点に注目するとよいでしょう。

  • 弁護士紹介ページに、専門分野として「相続」が明記されている
  • 弁護士のホームページやブログ、SNS等で相続に関する情報発信をしている
  • 弁護士のホームページ等で相続問題の取扱件数を明記している(取扱件数が多い)

 

信頼できる弁護士を選ぶ

さらに、信頼できる弁護士を選ぶことも大切です。

相続問題は家族問題に関わるセンシティブな分野であることから、安心して相談できることが大切です。

信頼できる弁護士かどうかは、次のような観点で判断することができます。

  • 丁寧な対応をしてくれるか
  • 説明はわかりやすいか
  • 相性がよいか
  • 明朗会計か
  • スムーズに連絡が取れるか

横柄な弁護士や会話が噛み合わない弁護士、費用を明確に教えてくれない弁護士、なかなか連絡のとれない弁護士などに対しては、安心して相談することができません。

信頼できる弁護士かどうかを確認するためには、次のような方法があります。

  • 実際に依頼した人の口コミや評判を参考にする
  • 初回の法律相談を活用する
  • 費用の見積もりをもらう

「法律相談」とは正式な依頼をする前に弁護士に相談をすることをいいます。

初回の法律相談の相場は1時間あたり5000円〜1万円程度で、相続については初回の相談を無料としている弁護士も少なくありません。

初回の法律相談を活用して、実際の受け答えや連絡のやり取りなどから上記の観点を確認してみるのがよいでしょう。

 

司法書士に依頼したほうが良い場合とは?

相続放棄申述書の作成のみを代行してもらえば足りる場合には、司法書士に相談することで費用を安く抑えることができます。

具体的には以下のような場合です。

  • 相続放棄をすべきかどうかの判断に迷いがない場合(被相続人の遺産の数が少なく、遺産の内容も明確な場合)
  • 他の親族の関係が良好であり、相続トラブルに発展するリスクがない場合
  • 他の相続手続きについても特に疑問や不安がない場合

上記の項目について1つでもあてはまらないものがある場合には、相続に強い弁護士に相談されるのがおすすめです。

 

 

相続放棄手続きを自分で行う方のQ&A

相続放棄の司法書士費用はいくらくらいが相場ですか?


相続放棄を司法書士に依頼する場合の費用の相場は、申述人1人あたり3万円〜5万円前後となることが多いようです。

相続財産の調査を依頼する場合には別途10万〜30万円程度の費用がかかると思われます。

また、相続放棄の手続きを期限ぎりぎりに急ぎで依頼する場合や、相続放棄の期限を過ぎてから依頼する場合には、追加料金を支払う必要があります。

 

弁護士に相続放棄を依頼するといくらくらいかかりますか?


相続放棄を弁護士に依頼する場合の費用の相場は、申述人1人あたり10万円〜15万円前後となることが多いようです。

司法書士の場合と同様、相続財産の調査を依頼する場合には別途10万〜30万円程度の費用がかかると思われます。

また、相続放棄の手続きを期限ぎりぎりに急ぎで依頼する場合や、相続放棄の期限を過ぎてから依頼する場合には、追加料金を支払う必要があります。

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まとめ

  • 相続放棄の手続きは専門家に依頼せず、自分で行うこともできます。
  • ただし、相続放棄は、一切の遺産を引き継がないという重大な効果をもたらすものであり、相続放棄の申述が一度受理されると原則として撤回・取消しは認められないものです。
    そのため、相続放棄をすべきかどうかの判断は慎重に行うことが大切です。
  • 相続放棄の手続きを自分でする場合には、相続放棄をすべきかどうかを適切に判断できず後悔することとなるリスクがあること、手続きのミスにより相続放棄が認められなくなるリスクがあること、対応を間違えてトラブルにつながるリスクがあること、時間と手間がかかること、などのデメリットがあります。
  • 相続放棄の手続きを相続にくわしい弁護士に依頼することで、上記のデメリットを解消することができます。
    相続放棄の手続きについて少しでも疑問や不安がある場合には、相続にくわしい弁護士に相談されることを強くおすすめします。
  • 当事務所では、相続にくわしい弁護士で構成する「相続対策専門チーム」を設置しています。

相続放棄に関するご相談はもちろんのこと、相続トラブルの解決、遺言書の作成や遺産分割協議、相続登記、相続税の申告・節税対策など、幅広いご相談をうけたまわっています。

遠方の方についてはオンラインでのご相談も受け付けていますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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