相続税の申告期限とは?期限を過ぎたらどうなる?

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA


相続税の申告期限とは、その日までに相続税の申告書を提出し、併せて原則として相続税を納税しなければいけない日です。

申告期限を過ぎてしまうと様々なペナルティの対象となってしまいます。

申告期限までに申告書を提出しないと無申告としてペナルティの対象になり、申告期限を過ぎて申告書を提出すると期限後申告としてペナルティの対象になります。

また、長期間無申告状態となると税務調査の対象となることもあり、申告期限を守ることはとても重要です。

これらに対するペナルティは、相続税の本税の他にかかってくる罰金のようなものですから、せっかく相続した遺産を減らしてしまうことにもなりかねません。

この記事では、相続税の申告期限の意味や期限を過ぎた場合のリスク等を解説していきます。

相続税についてご不安な方はぜひ参考になさってください。

相続税申告の期限は10ヵ月以内

相続税の申告書は、相続の開始(被相続人が亡くなったこと)があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に納税地の税務署長に提出することとされています(相続税法27条)。

参考:相続税法|e-GOV法令検索

この申告書の提出期限のことを相続税の申告期限といいます。

亡くなったことを知った日の「翌日」からとされているため、申告期限はいわゆる応当日となります。

応当日とは、例えば1月15日に亡くなった方の相続税の申告期限は、10ヵ月後の同じ日である11月15日となります。

相続税の申告期限

10ヵ月と聞くと長いように感じるかもしれませんが、葬儀を執り行い、四十九日の法事まで忙しく、実際に税理士などに相談して相続税申告の準備に取り掛かるのは数か月経ってからになります。

相続税の申告に必要な戸籍などの書類などを取り寄せたり、財産評価のために必要な手続きを行うことを考えると10ヵ月は充分な時間とはいえず、思いのほか早く過ぎてしまうはずです。

相続税の申告の際は、常に期限を考えながら対応することになります。

 

起算点は?いつから10か月?

相続税申告の期限は被相続人が亡くなったことを知った日が起算点となっています。

この被相続人が亡くなったことを「知った日」とはいつでしょうか。

被相続人と同居している場合などには、亡くなったことを知った日は原則として死亡日になります。

以下のような場合には、死亡日=亡くなったことを知った日ではないことがあります。

  • 別居し、疎遠となっており、死亡の事実を知らなかった場合
  • 海難事故などで失踪宣告があった場合
  • 相続人の廃除に関する裁判の確定があった場合

海難事故での死亡などの場合に、遺体が見つからないと失踪宣告がなされますが、その後認定死亡という手続きが取られます。

例えば海難事故がXX年3月31日にあり、海上保安庁が4月1日に行方不明者を捜索した後、行方不明者の住所地の市区町村に対して死亡の報告を行います。

その後、遺族が市区町村に死亡届を提出することになりますが、この場合の相続の開始があった日は、この海上保安庁が死亡の報告を市区町村に対して行った日となります。

そのため、相続税の申告期限は亡くなった日から起算するものとはされていないのです。

単に相続税の申告期限が10ヵ月であることを知らなかっただけの場合は、該当しませんのでご注意ください。

 

具体例で解説

相続税の申告期限について具体例で確認をします。

(亡くなった日=相続の開始があったことを知った日としています。)

  • 亡くなった日:令和6年3月15日
  • 相続税の申告期限:令和7年1月15日

  • 亡くなった日:令和6年4月30日
  • 相続税の申告期限:令和7年2月28日

亡くなったのが、4月29日〜30日の場合、10ヵ月後が2月末となる場合2月28日(うるう年の場合、2月29日)となります。

 

期限が土日や祝日にあたる場合

10ヵ月後の応当日が土日祝日にあたる場合、その翌日以降となります。

  • 亡くなった日:令和6年3月18日
  • 相続税の申告期限:令和7年1月20日(月曜日)

(1月18日が土曜日、1月19日が日曜日であるため)

 

相続の放棄の手続き期限は3ヵ月以内

亡くなった方の遺産について相続人が相続放棄をする場合には、家庭裁判所に相続放棄の申し立てをする必要があります。

この手続きの期限は相続の開始があったことを知った日から3ヵ月以内とされています。

相続放棄があった場合には、後順位の相続人が遺産を相続することになりますので、後順位の相続人について相続税の申告が必要となる場合があります。

 

準確定申告の申告期限は4ヵ月以内

亡くなった方が亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得がある場合、相続人が税務署に所得税の申告をする必要があります。

これを、所得税の準確定申告といいます。

所得税の準確定申告は、亡くなった日の翌日から4ヶ月以内が申告期限とされています。

例えば、亡くなる直前まで個人事業主として事業を行っていた場合や、賃貸アパートなどを所有していて不動産所得がある場合には、所得税の準確定申告が必要となります。

相続税の申告期限よりも早く到来しますので、相続税申告のための財産の把握とともに所得税の準確定申告の準備も同時に進めていきましょう。

 

 

相続税の申告期限を過ぎたらどうなる?

相続税の申告書は申告期限を過ぎても提出することが可能です。

申告期限後に提出することを「期限後申告」といいます。

期限後申告の場合、以下の付帯税のうち無申告加算税や延滞税の対象となります。

付帯税はその名のとおり、支払う相続税とは別にかかってきますので、申告期限を超過したことによるペナルティや罰金のようなものです。

付帯税の税率は相続税の本税に対しての税率になりますので、納めるべき相続税が多いほど付帯税の金額も多くなるので注意が必要です。

付帯税の種類 内容 税率
無申告
加算税
申告期限までに申告書を提出しなかった場合 5%~30%
※自主的に期限後申告書を提出したか、税務調査後に申告書を提出したかなどにより税率が異なる
過少申告
加算税
申告書は提出したが、財産の申告漏れなどにより、申告した税が少なかった場合
税務調査前に自主的に期限後申告を行った場合 なし
税務調査の通知後に修正申告した場合 5~10%
税務調査を受けて修正申告した場合 10%~15%
延滞税 相続税の納付が遅れた場合(令和6年分の税率)
申告期限から2ヵ月以内の部分 2.4%
申告期限から2ヵ月を超える部分 8.7%
重加算税 財産を意図的に隠ぺいするなど悪質な場合
過少申告の場合 35%
無申告の場合 40%

 

 

申告期限ギリギリになってしまったらどうする?

相続専門の税理士や相続に強い弁護士に相談しましょう。

申告期限ギリギリになってしまった場合、期限後申告をすると無申告加算税などのペナルティの対象となるので、現時点で把握できている情報で申告書を作成し、税務署に提出したほうがよいです。

申告後の財産調査により、申告していない財産が発見されたなど申告した税額が少ない場合には、修正申告を行い、申告した税額が多すぎた場合には、更正の請求をする必要があります。

相続税の申告期限の延長は認められる?

相続税の申告期限の延長は原則として認められません。

例外として以下の条件を満たす場合に限り、2ヵ月の申告期限の延長が認められています。

  • 申告期限前1ヵ月以内に死亡退職金の支給額が確定した場合
  • 認知等により相続人に異動があった日から1ヵ月以内に申告期限がある場合
  • 相続人となるべき胎児が申告期限後に生まれた場合

いずれも本来の申告期限から2ヵ月延長されるのではなく、それぞれの事由が生じた日から2ヵ月以内となりますので、ご注意ください。

また、災害その他やむを得ない理由により、申告期限までに申告できないことを個別に税務署長に申請をし、その承認を受けることにより、災害などの理由がやんだ日から2ヵ月の範囲で申告期限の延長を受けることができます。

申告期限の延長については、特例的な取り扱いですので、ほとんど利用することはできないと考えていただいた方が安全です。

 

 

相続税の申告期限のポイント

相続税の申告期限のポイント

①未分割であっても必ず申告期限内に申告する

遺産分割について親族間で揉めており、遺産分割協議がまとまらない場合であっても、相続税の申告期限までに相続税の申告書を提出しましょう。

この場合、相続財産は法定相続分により相続したものとして申告しますが、相続税の特例である小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など相続税額が少なくなる特例が適用できません。

しかし、期限内申告と同時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することにより、当初の申告後に更正の請求書を提出して、各種特例の適用を受けることができます。

 

②既に申告期限を過ぎている場合

既に相続税の申告期限を過ぎてしまっている場合でも、課税される付帯税を軽減するために速やかに申告することが必要です。

また、何らかの事情があって申告期限を過ぎている場合、個別申請による申告期限の延長ができないか、税務署や専門家に相談しましょう。

 

③納税資金の不足が見込まれる場合は早めの準備を

相続税の申告期限は、併せて相続税の納付期限となります。

納税が出来ない場合であっても申告書は提出する必要があります。

その際には、延納(相続税を分割払いすること)や物納(現金以外の財産で納税すること)ができないか、税務署や専門家に相談しましょう。

延納や物納は申告期限までに必要書類を用意する必要がありますので、納税資金の不足が見込まれる場合には、相続税の申告同様、早めの準備が必要です。

 

④相続専門の税理士に相談する

相続税の申告が必要なことを認識しておらず、申告期限ギリギリになってしまった場合には、すぐにでも相続専門の税理士に相談しましょう。

相続専門の税理士であれば、何らかの対策を考えてくれるはずです。

最も良くないのはそのまま放置してしまうことです。

 

⑤相続に強い弁護士にも相談する

相続税の申告で対応することは、税金の申告だけではありません。

相続税の申告をするために遺産分割協議が必要となります。

この遺産分割協議については税理士が関わることができません。

最初から税理士に依頼した場合、遺産分割協議については相続人自らまとめる必要があります。

遺産分割協議についての法的な側面からのアドバイスを受けることはできません。

遺産分割協議に不安のある方は、是非とも相続に強い弁護士に相談してください。

 

 

相続税申告の期限についてのQ&A

相続税の申告期限から5年経つとどうなる?


相続税の申告書を提出して還付を受けられるような場合、申告期限から5年を経過すると相続税の申告書を提出することができません。

暦年贈与や相続税時精算課税贈与による申告を行い、贈与税を納税した場合に、相続税の申告書を提出することにより、還付金を受けられることがあります。

この還付金については、税務署から案内があるわけではありませんので、ご自身で申告漏れとならないよう注意する必要があります。

 

相続税申告が必要な人には税務署から何か通知が来るの?


相続税の申告が必要な方に税務署から特別な通知は来ません。

税務署は相続税の申告が必要であるかどうかがわかるほど個人の財産を把握していないからです。

ただし、亡くなった方の戸籍の情報から相続税のお尋ねという書面が税務署から送られてくることがあります。

これは相続税の申告が必要な方に送っているのではなく、お尋ねの中で財産額を計算して相続税の申告が必要かどうか回答するようになっています。

このお尋ねの通り財産額を計算して基礎控除以下となった場合には、相続税の申告書を提出する必要がありませんが、相続税の申告が必要であるとなった場合には、相続税の申告書を申告期限までに提出する必要があります。

 

 

まとめ

相続税の申告期限は10ヵ月以内であることを解説致しました。ポイントは以下の通りです。

  • 戸籍の取り寄せ、不動産の評価などを考慮すると10ヵ月は思いのほか短い
  • 無申告加算税などのペナルティは相続税の本税とは別にかかってしまう罰金
  • 原則として申告期限の延長は認められない

申告期限は納税期限でもあるので申告書の作成とともに納税も準備が必要

申告期限を超過したことによるペナルティの対象とならないように、早めに専門家に相談をしましょう。

また、相続が発生してからの節税などの対策は極めて限定的です。相続税についてご不安のある方は生前から専門家に相談することが可能です。

生前からご相談頂けますと、事前に相続税の見込額を把握して、節税対策や納税資金の準備をすることもできますし、申告時に慌てることなく申告準備を進めることができます。

当事務所には、税理士や相続に強い弁護士からなる相続対策チームがあり、相続でお悩みの方を強力にサポートしています。

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