借金については、相続税の計算上、プラスの財産から控除することができます。
マンション等を購入した場合の相続財産の圧縮
ローンを組んで、マンション等を購入した場合(手許の預金で購入する場合も同じ効果です。)、相続財産の圧縮が可能です。
具体例 10億円の資産を有する方が借金をした場合の相続税評価額の推移
① 現状
資産:10億円
② 銀行から物件購入のための3億円を借り入れる
資産:10億円
預金:3億円
借入金:3億円
※預金:3億円/借入金:3億円
純資産は0(現時点では何の対策にもなっていない)
③ 預金 3億円で不動産(建物 1億円、土地 2億円)を購入
資産:10億円
建物:時価1億円、土地:時価2億円
借入金:3億円
④ 相続税評価額
上記の例において、不動産の相続税評価額は購入価額の3億円ではありません。
土地の評価については、路線価方式などになります(評価の安全性という考え方から公示価格の80%を目途としています。)。
建物については、固定資産税評価額になりますが、通常、固定資産税は、実際の購入金額の4~5割程度となり、貸家の場合は更に減額されます。
計算例【土地】2億円 × 0.8(安全性)× 0.88(貸家建付地評価※、借地権割合40%の場合)= 1億4080万円
【建物】1億円 × 0.5(固定資産税評価額)× 0.7(貸家評価)= 3500万円
【合計】1億7580万円
資産:10億円(課税対象)
土地・建物相続税評価:1億7580万円
借入金:3億円
※土地・建物:1億7580万円/借入金:3億円(借入直後に相続が開始した場合)
⑤ 相続税はどうなるか?
相続税評価額:10億円 +1億7580万円 - 3億円 = 8億7580万円
仮に相続税の税率が50%の場合は 6210万円相続税が減ります。
借金は相続の対象となる?
上記は、相続税を算定する場合の評価のポイントです。
相続が発生すると、相続税の問題だけではなく、当該借金を引き継がなければならないかを検討しなければなりません。
民法は、相続について、原則として、一切の権利義務が対象となると規定しています(896条)。
この「一切の権利義務」とは、不動産(自宅など)、動産(車など)、債権(預貯金など)のほかに、債務(借金)をも含みます。
したがって、借金も相続の対象となります。
また、この借金は、返済期限が到来しているか否かを問いません。
なお、連帯債務の場合は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じて債務を承継します。
連帯債務についての詳しい説明はこちらのページをご覧ください。
相続放棄の検討
相続放棄とは、相続財産の一切を放棄することができる制度です。
資産に比べ明らかに大きな借金があるときや、相続に伴うトラブルに巻き込まれたくないときなど、相続人は相続放棄をすることにより借金を負わなくてもよいことになります。
そのため、借金がある場合、この相続放棄について検討することを忘れてはなりません。
また、相続放棄を行うには、相続開始を知ってから3ヶ月以内などの条件があるので注意が必要です。
相続放棄について、詳しくはこちらのページをご覧ください。
遺産分割についても検討が必要
相続が発生すると、相続税の心配だけでなく、遺産分割を検討しなければならない場合が多くあります。
遺産分割においては、対象となる遺産の確定と、その評価がとても重要となります。
相続税や遺産分割について適切に判断するためには、相続法に関する専門知識やノウハウが必要です。
当事務所の相続対策チームは、相続問題に注力する弁護士と税理士で構成される専門チームであり、相続税や遺産分割に直面された方を強力にサポートしています。
相続税や遺産分割については、当事務所の相続対策チームにお気軽にご相談ください。
当事務所のご相談の流れについてはこちらのページをご覧ください。