死亡退職金|相場・非課税枠・相続税の計算方法を税理士が解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

当事務所には、相続問題を専門に扱う相続対策チームがあり、死亡退職金の非課税枠や相続税の計算方法等について、多くのご相談が寄せられています。

このページでは、税理士の資格を持つ弁護士が建物の死亡退職金について、わかりやすく解説いたしますので、ぜひご参考にされてください。

 

死亡退職金とは

死亡退職金とは、一般に、会社員などが本来会社から受け取るはずであった退職金のことをいいます。

会社員などが在職中に亡くなってしまうと、ご遺族に対して、死亡退職金が支払われることがあります。

相続財産とみなされて相続税の課税対象となる死亡退職金は、次のように定義されます。

被相続人(亡くなった方)の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与を受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの

「死亡後3年以内に支給が確定したもの」とは、具体的には次の2つをいいます。

  1. ① 死亡退職で支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
  2. ② 生前に退職していて、支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの

参考:国税庁ウェブサイト

 

死亡退職金と退職金の違い

上記の死亡退職金の定義に当てはまらない退職金は、相続税ではなく、所得税の課税対象となります。

退職金を受け取る時期 退職金の種別 課税
死亡後3年以内に支給が確定した場合 死亡退職金 相続税
生前に本人が受け取った場合 退職金 所得税
死亡後3年経過後に支給が確定した場合 退職金 所得税

 

死亡退職金の受取人

本人が死亡しているため、当然本人は退職金を受け取ることができません。

このような場合、死亡退職金の受取人は、通常、当該会社の規程(「退職金規程」など)に基づき支給されることとなります。

会社によって規程の内容が異なる可能性があるため、具体的には規程を確認する必要があります。

例えば、次のような条項を定めている会社は少なくないでしょう。

第◯条
本人死亡のときの退職金を受ける遺族の範囲及び順位は、労働基準法施行規則の第42条から第45条までに定めるところによる。

多少の表現の違いはあるかもしれませんが、上記のように労働基準法の遺族補償の条項を準用している会社は少なくないと思われます。

この場合は、次の順位で死亡退職金が支給されることとなります。

第1順位 配偶者(事実婚を含む。)

第2順位 子供

第3順位 父母(養父母を実父母より優先)

第4順位 孫及び祖父母

第5順位 死亡した労働者の収入によって生計を維持していた者、または、生計を一にしていた者

※同順位についてはその人数で等分する

参考:労働基準法施行規則|電子政府の窓口

 

死亡退職金の相場

かつて、日本では多くの大企業が死亡退職金制度を導入していたといわれています。

しかし、現在は労働力の流動化が見られる傾向にあり、終身雇用制度が崩壊しつつあります。

そのため、死亡退職金を制度として導入しない企業や制度を廃止する企業も増えていると考えられます。

死亡退職金の制度を運用している会社の支給額については、その会社の方針によるため一概には言えません。

経団連が2年に1度発表している資料によれば、「管理・事務・技術労働者(総合職)」の 60歳では、大学卒が 2255万8000円、高校卒が2037万7000円なっています。

参考:2018年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果

もっとも、経団連の企業会員等の中の一部の集計結果ですので、中小企業などには当てはまらないでしょう。

 

 

死亡退職金の非課税枠

死亡退職金については、相続人が取得したものとみなされた金額の合計額のうち、下記の非課税金額までの金額に該当する部分の金額について、相続税は課されません。

非課税金額 = 500万円 × 法定相続人の数

なお、相続の放棄をした者および相続権を失った者については、相続人ではないため、この非課税枠の適用はありません。

※法定相続人の数は、相続放棄をした者がいても、控除しません(相続放棄がなかったものとして法定相続人の人数に含めます。)。

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法定相続人の調べ方

 

具体例

死亡退職金の額:2000万円
法定相続人:A、B、Cの3人

この場合、非課税となる金額は1500万円となり、500万円が課税対象となります。

非課税:500万円 × 3人 = 1500万円

課税対象:2000万円 − 1500万円 = 500万円

 

相続放棄をしたら死亡退職金はもらえない?

相続放棄とは、相続財産の一切を放棄することができる制度です。

民法上、人が死亡したときには、相続人が相続開始のときから被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するものと定めています(民法896条)。

しかし、相続人の中には、遺産相続を希望しない人もいますので、そのような場合のために相続放棄という制度が用意されています。

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相続放棄について

では、相続放棄をした場合、その者は死亡退職金を受け取ることはできないのでしょうか。

公務員の場合、法令(国家公務員退職手当法、条例)により、死亡退職金は、受取人の固有の財産であり、相続財産ではないと考えられています。

したがって、相続放棄をしても、死亡退職金を受け取ることが可能です。

では、民間企業の場合はどうでしょうか。

この場合は、当該死亡退職金の規程の定めによって判断することとなります。

規程の文言を見て、死亡退職金が相続財産に含まれると判断される場合、相続放棄をすると、死亡退職金は受け取れません。

上記で紹介した条項例の場合はどうでしょうか。

第◯条
本人死亡のときの退職金を受ける遺族の範囲及び順位は、労働基準法施行規則の第42条から第45条までに定めるところによる。

この条項例の場合、死亡退職金を請求できる者として、配偶者等が具体的に定められています。

したがって、死亡退職金は受取人の固有の財産であり、相続放棄をしても死亡退職金を受け取ることが可能です。

 

相続放棄をした場合に死亡退職金を受け取れるか

公務員 受け取ることが可能
民間企業 退職金規程が受取人を具体的に定めている場合 受け取ることが可能
退職金規程が受取人を具体的に定めていない場合 受け取れない

 

 

死亡退職金と弔慰金の違い

弔慰金とは、企業が亡くなった従業員等の功労があった場合に、支給する金銭のことを言います。

支給金額については、死亡退職金の場合と同様、企業によって異なります。

また、最近では弔慰金制度を導入しない、または廃止する企業もあります。

 

弔慰金の場合の非課税枠

被相続人の死亡により相続人等が受ける弔慰金等がある場合には、その弔慰金について下記の金額に該当する部分については非課税となります。

業務上の死亡

普通給与の3年分

業務上以外の死亡

普通給与の6か月分

弔慰金については、その金額にもよりますが、多くの場合は非課税のケースが多くと考えられます。

 

 

死亡退職金の相続税の計算

死亡退職金の課税対象となる金額は、下記の計算式により算出されます。

死亡退職金の課税対象額 = 相続人が受け取った死亡退職金の金額 – 非課税限度額

相続放棄がある事案は、計算が複雑となるため、以下、具体例で解説します。

具体例 相続放棄がある場合

【死亡退職金の額】2000万円
【法定相続人】A、B、Cの3人

A:死亡退職金を1000万円受け取った。

B:相続放棄を行ったが、死亡退職金を1000万円受け取った。

C:死亡退職金を受け取っていない。

【STEP1】非課税限度額の算出

500万円 × 3人(法定相続人の数)

※Bは相続放棄を行っていますが、法定相続人の数に参入します。

【STEP2】各人の非課税金額の計算

A:1500万円 ×(1000万円 ÷ 1000万円)= 1500万円
B:0円
C:相続放棄をしているため非課税金額がない

【STEP3】 課税される死亡退職金の金額を算出

A:1000万円(受け取った死亡退職金の金額)− 1500万円(非課税金額)= △500万円
B:0円
C:1000万円(受け取った死亡退職金の金額)− 0(非課税金額)= 1000万円

この場合、非課税となる金額は1500万円となり、500万円が課税対象となります。

500万円 × 3人 = 1500万円(非課税となる金額)

2000万円 − 1500万円 = 500万円(課税対象となる金額)

以上から、Cさんのみ1000万円が課税されます。

なお、上記は、他に遺産がない場合を前提としています。

相続税の計算は、死亡退職金などを個別に計算するわけではなく、すべての遺産の相続税評価額を合計して算出します。

相続税の計算は、とても複雑で、一般の方が自分で計算するのは大変です。

当事務所では、相続税の概算をシミュレーションできる計算機をホームページ上に公開しております。

相続税の概算を計算したい方はぜひ御覧ください。

 

 

まとめ

以上、死亡退職金について、非課税枠や課税対象額の計算について詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

死亡退職金の非課税枠は、相続人の数が増えるほど大きくなります。

また、弔慰金については、ほとんどの事案では課税されないことが予想されます。

しかし、相続税の計算は、建物などを個別に計算するわけではなく、すべての遺産の相続税評価額を合計して算出します。

相続税の計算は、とても複雑で、一般の方が自分で計算するのは大変です。

そのため、相続に関するお悩みをお持ちの方は、相続問題に精通した専門家にご相談されることをお勧めいたします。

この記事が相続問題に直面されている方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 


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