相続税の税率とは|早見表、計算の流れを解説【自動計算機付き】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

相続税の対策をする際や、相続税の申告をする際に相続税の税率は気になるところです。

この記事では相続税の税率の計算方法や節税のポイントについて、相続税について詳しくない方でも理解できるように分かりやすく解説します。

相続税の計算方法がよくわからないという方向けに相続税が自動で計算できるシミュレーターも掲載しています。

この記事を読んで相続税についての理解が深まれば相続対策が見つかるかもしれません。

是非ご覧になってください。

相続税の税率とは

相続税とは

相続税とは親などが亡くなった際に受け継いだ財産について課せられる税金です。

相続税の課税対象となる財産の範囲は広く、不動産や預貯金はもちろんですが、亡くなった方が保有していた自動車や動産なども対象です。

また、著作権や特許権のような無体財産権も相続税の対象となります。

生命保険金や死亡退職金などについては亡くなった方から受け継いだ財産ではありませんが、相続税の取り扱いにおいては、「みなし相続財産」といって、亡くなった方から相続したものとみなして課税対象となります。

 

税率はどのようにして決まる?

相続税の税率は相続税の課税対象となる遺産の総額を法定相続分で按分した金額に応じた税率となります

遺産総額に対して税率が決まるわけではありません。

法定相続分で按分するため、同じ遺産総額であっても法定相続人が誰であるかによって税率が変わるという点に注意しましょう。

また、相続税の税率は、超過累進税率といって受け継ぐ財産の額が多いほど高い税率が適用されるという特徴があります。

 

 

相続税の税率表

税率早見表

法定相続分に応ずる取得金額には次の税率を乗じて相続税を計算します。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

こちらの表にある通り、取得する財産の金額が大きければ税率も大きくなります。

具体例 課税遺産総額が1億円で法定相続人が妻と子ども2人の場合

この場合の法定相続割合や適用税率は以下の通りとなります。

法定相続割合 按分後の金額 適用税率 控除額 相続税額
妻A 1/2 5,000万円 20% 200万円 800万円
子どもB 1/4 2,500万円 15% 50万円 325万円
子どもC 1/4 2,500万円 15% 50万円 325万円
相続税の総額 1,450万円


相続税の計算過程については後述いたしますが、上の表で計算した相続税の総額を基に実際に財産を取得した方の相続税額を計算します。

相続税がどのくらいになるかの目安を知りたい方はご自身の状況に合わせてこちらの早見表を活用されることをお勧めします。

 

 

相続税自動計算シミュレーター


相続税の計算は後述するようにとても複雑なものです。

一般の方が自分で計算するのは非常に難しいものとなっております。

当事務所が制作した相続税の概算をシミュレーションできる計算機をご用意いたしました。

ご入力いただければ、概算の相続税額を算出することができますので、ご参考にされてください。

 

 

贈与税との違い

贈与税は課税方式が「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類あります。

複数の課税方式があるという点が相続税と贈与税の大きな違いです。

それぞれの課税方式について特徴を確認していきましょう。

 

暦年課税

贈与税の計算をするうえで年間の贈与により取得した財産から110万円を控除することができます

この制度を基礎控除といい、財産を受けとった人ごとに110万円の控除が認められます。

財産を渡した人ごとではないので注意しましょう。

例えばお父さんから100万円、お祖母さんから100万円の贈与を受けた場合、取得した財産合計200万円から110万円を控除した90万円に贈与税が課せられます

暦年課税の税率は、その年の1月1日において18歳以上の人が父母や祖父母から財産を取得した場合の「特例税率」と特例税率に該当しない場合の「一般税率」があります。

一般税率は兄弟間や夫婦間等の贈与に適用されます。

特例税率は一般税率に比べ税率が低いという特徴があります。

相続税と暦年課税との違いは、課税されない金額である基礎控除額の大きさや税率に違いがあります

相続税は3,000万円と600万円に法定相続人の数を乗じた金額の基礎控除がありますが、暦年贈与は年間110万円です。

最高税率は同じ55%ですが、相続税が6億円超で最高税率が適用されるのに対し、暦年贈与については特例税率は3,000万円超、一般税率については4,500万円超で最高税率である55%が適用されるため贈与税の方が税負担が大きいと言えます。

 

一般税率

一般税率について確認しましょう。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

たとえば兄弟の間で600万円の贈与があったとします。

600万円から110万円の控除をした残額が490万円です。

490万円 × 30% – 65万円 = 82万円

このように贈与税は82万円となります。

 

特例税率

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

親から子へ600万円の贈与があった場合を例に確認します。

600万円から110万円を控除した残額は490万円です。

490万円 × 20% – 30万円 = 68万円

贈与税は68万円となります。

同じ贈与財産であっても、一般税率に比べ親子間等に適用される特例税率の方が低い税率となっていることが見て取れます。

 

相続時精算課税

60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子または孫への贈与に対して選択できる制度です。

この制度は2,500万円までの控除額が認められています。

この控除額は複数年にわたり利用することになっており、たとえば適用初年度に2,000万円の贈与をした場合は、翌年以降に利用できる控除額は500万円です。

暦年課税と違い毎年控除額が認められるのではなく、複数年の贈与について2,500万円までの控除が認められています。

暦年贈与は基礎控除を使っても翌年にはまた基礎控除を使えますが、相続時精算課税の控除額は一度使いきってしまうと再度使うということはできません。

相続時精算課税は2,500万円を超える部分の税率が一律20%となります。

 

贈与者ごとに選択

相続時精算課税の適用は贈与をする人ごとに選択が可能です。

たとえば父からの贈与は相続時精算課税を選択し、母からの贈与は暦年課税のままということもできます。

相続時精算課税の選択をする場合は贈与税の申告書に「相続時精算課税選択届出書」の添付が必要です。

 

暦年課税に戻せない

相続時精算課税を選択すると暦年課税に戻すことはできません

相続時精算課税を選択すると、年間110万円の基礎控除という暦年課税のメリットを享受することができなくなります。

 

相続税の課税対象

相続時精算課税により取得した財産は相続税の課税対象となります。

相続税の計算対象となる価額は贈与があった時の価額で計算します。

そのため、価額が上がることが見込まれる財産などは相続時精算課税であらかじめ贈与しておくと節税につながる場合があります

 

 

相続税の税率の計算方法

基礎控除額とは

基礎控除額とは3,000万円と600万円に法定相続人の数を乗じた金額をいいます。

基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 ✕ 法定相続人の人数

基礎控除額は相続税の計算において相続税の対象となる財産の価額から控除することができます。

相続税の対象となる財産が基礎控除以下の場合は相続税の納税は無く、申告も必要ありません

 

相続税の計算の流れ

STEP1 課税価格の計算

亡くなった方の財産のうち、相続税の対象となる価格を計算します

墓石や仏壇など日常礼拝をしている物や、相続によって取得したとみなされる生命保険金や退職手当金のうち一定の金額については非課税財産といって相続税の課税対象とはなりません。

亡くなった方の葬式費用や債務については相続税の計算において遺産から控除することができ、税負担を少なくすることができます。

葬式費用のうち読経料など領収書が発行されない支払いもありますので、支払金額がわかるように記録を残しましょう。

亡くなった方からの贈与により取得した財産のうち、一定の要件を満たすものについては相続税の対象となります。

先ほどご説明した相続時精算課税により取得した財産と、暦年課税により相続開始前3年以内に取得した財産が相続税の対象となります。

課税価格 = 遺産総額 – 非課税財産 – 債務等 + 贈与を受けた財産のうち一定のもの

 

STEP2 相続税の総額を計算

課税価格から基礎控除額を控除します。

基礎控除とは先ほどご説明した通り3,000万円と600万円に法定相続人の数を乗じて計算されてた金額です。

基礎控除額を控除した金額を法定相続分を基に按分します。

按分後の金額に税率をかけた金額の合計が相続税の総額となります。

具体例 
課税価格:1億円
法定相続人:妻、子ども2人
基礎控除額:3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円
基礎控除後の金額:5,200万円

法定相続割合 按分後の金額 適用税率 控除額 相続税額
妻A 1/2 2,600万円 15% 50万円 340万円
子どもB 1/4 1,300万円 15% 50万円 145万円
子どもC 1/4 1,300万円 15% 50万円 145万円
相続税の総額 630万円


 

STEP3 各個人の税額計算

①算出税額の計算

算出税額は相続税の総額に財産の取得割合を乗じて計算します。

実際の相続割合は法定相続分と必ず一致するとは限りません。

分割内容は遺産分割協議において自由に決めることができるため、遺産総額を相続人に均等に分割することや、特定の誰かに財産を集中して分割することもできます。

 

②相続税額の2割加算

財産を引き継いだ方が次のいずれかに該当しない場合は、その方の相続税額は2割相当額が加算されます

  • 亡くなった方の一親等の血族(子どもや両親)
  • 亡くなった方の夫や妻

養子も一親等の血族ですが、孫が養子になっている場合は原則的な取り扱いは加算対象となります。

ただし、孫の親(亡くなった人の子ども)が亡くなったことにより相続人となる場合(代襲相続と言います)は2割加算の対象となりません。

亡くなった方の兄弟姉妹は2割加算の対象となります。

兄弟姉妹が相続人となる場合や遺言により財産を残す場合は税負担が増えることもありますので、相続対策などを行う際は考慮に入れましょう。

 

③税額控除

相続税は亡くなった方と相続人の関係性や状況、二重課税の排除等の理由から税額控除が認められています。

算出税額にこれらの税額控除を加味して納付税額を計算します。

税額控除は次の6種類です。

  • 配偶者の税額軽減:亡くなった方の配偶者に対する税制優遇
  • 贈与税額控除:相続税の計算に含まれた財産に贈与税が課されていた場合の控除
  • 未成年者控除:相続人が未成年の場合は成年に達するまでの年数に応じた控除
  • 障害者控除:相続人が障害者の場合は85歳に達するまでの年数に応じた控除
  • 相次相続控除:亡くなった方が10年以内に相続税を納付していた場合は一定額を控除
  • 外国税額控除:外国で相続税が課せられる場合は一定額を控除
具体例
上記の例を基に納付税額の計算をしてみましょう。子どもCは17歳であり、18歳に達するまでの年数に10万円を乗じた金額の未成年者控除が受けられます。

財産の取得割合 算出税額 税額控除 納付税額
妻A 0 0万円 0万円
子どもB 2/3 420万円 420万円
子どもC(17歳) 1/3 210万円 10万円 200万円


 

配偶者控除とは

亡くなった方の夫や妻には配偶者の税額軽減という優遇措置があります

これは亡くなった方の財産は夫婦の協力によって築かれたものだと考えられ、税負担を軽くするための制度です。

1億6千万円と財産総額に配偶者の法定相続分を乗じた金額のいずれか大きい金額までは相続税がかかりません

配偶者の法定相続分は配偶者以外の法定相続人が誰であるかによって決まります。

法定相続人 法定相続分 法定相続分
配偶者、子ども 配偶者 1/2 子ども 1/2
配偶者、親 配偶者 2/3 親 1/3
配偶者、兄弟姉妹 配偶者 3/4 兄弟姉妹 1/4

 

計算例

法定相続人が亡くなった方の妻と子どものケースで確認しましょう。

財産総額が3億円の場合は3億円に法定相続分である2分の1を乗じた金額は1億5千万円です。

この金額より1億6千万円の方が大きいです。そのため1億6千万円までは相続税がかかりません。

財産総額が4億円の場合の法定相続分は2億円です。1億6千万円より大きいため2億円までは相続税がかかりません。

このように財産総額や法定相続人が誰であるかによって相続税の取り扱いが変わります。

 

 

相続税の節税のポイント

生前贈与による節税

贈与を行い相続財産を減らせば相続税の節税になります。

贈与には「暦年課税」と「相続時精算課税」があるというのは先ほど説明した通りです。

節税という観点からそれぞれの贈与の方法の注意点について解説します。

 

①暦年課税:名義預金は贈与ではない

名義預金とは銀行口座の名義人と実際の所有者が異なる預金のことです。

例えば子どもの名義で開設した口座について親が管理しているような場合が該当します。

この場合、親が口座へ入金しても贈与とは認められず親の財産となります。

名義預金と認定されないためには名義人が口座を管理し自由に使える状態であることと、贈与者と名義人の間で贈与が成立していることです。

贈与とは贈与する人が「財産をあげます」という意思表示と贈与を受ける人が「財産をもらいます」という意思表示がそれぞれあって成立します。

名義預金のように贈与する人の意思だけでは贈与とは言えません。

贈与を行うのであれば贈与契約書を交わし、後になってからでも証明できるようにしましょう。

 

②相続時精算課税:どんな財産が適しているのか

「値上がりが見込まれる財産」「収益を生む財産」は相続時精算課税による贈与に適しているといえます。

相続時精算課税により取得した財産は贈与時の時価により相続税の評価をします。

そのため将来値上がりする財産をあらかじめ贈与すれば節税につながります。

賃貸不動産のように収益を生む財産については贈与しておけば、その物件の家賃収入については相続財産となりません。

収益物件の贈与は相続財産を減らす効果と相続財産を増やさないという効果が見込まれます。

 

財産の組み換えによる節税

相続税の財産評価は時価により行います。

上場株式等の有価証券は証券市場などで時価が明らかになっており、財産評価額と換金価値はそれほど離れていません。

しかし、土地や建物等の不動産については証券市場のように時価が明らかではありません。

そのため路線価方式や倍率方式といった相続税特有の方法で評価を行います。

この評価額は一般的には実際の取引価額より低い金額となることが多いです。

また、賃貸用不動産については借り手の権利分を考慮し、自分で使っている不動産よりも低い金額で評価されます。

現預金や上場株式が豊富にある場合は不動産を購入し財産を組み替えることによって、相続税評価額を抑え節税につながるケースもあります。

 

 

まとめ

相続税の税率と計算の流れについてご理解いただけたでしょうか?

相続財産が多い場合は高い税率が適用されるケースもあります。

節税策を含めた相続対策に不安を抱えている方は専門家にご相談することをお勧めします。

この記事が相続問題に直面されている方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 


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