医療ミスにあってしまうと、
- なぜ、このようなことになってしまったのか?
- これからどうなってしまうのか?
- 治療やリハビリはどうすればよいのか?
- 病院や医師に損害賠償を請求することはできるのか?
など、多くの疑問、困りごとが生じてきます。
こうした場合、多くのケースでは、まずは病院に、原因や経緯、責任の所在及び今後の治療等に関する説明を求めることになるでしょう。
損害賠償の請求をする可能性もある場合は、早めに医療過誤に強い弁護士に相談することも大切です。
他にも、医療安全支援センター、医療事故情報センターが紹介している相談窓口などに相談することも考えられます。
今回の記事では、医療ミスにあったら相談できる弁護士などの窓口、医療ミスを弁護士に相談するメリット、医療ミスの被害者が注意すべきポイントなどについて解説していきます。
医療ミスにあったらどうすればいい?
病院で医療ミスにあったら、患者やご家族は、次のような思いを持たれると思います。
- ① 適切な治療を受けて健康を取り戻したい
- ② 医療ミスが起こった原因・理由を知りたい
- ③ 医者や病院の責任を追及した
こうしたことについての相談窓口としては、以下のようなものがあります。
- 病院の相談窓口
- 医療ミス問題に強い弁護士
- 医療安全支援センター
- 医療事故情報センターが紹介している相談窓口
- 消費生活センター
それぞれの窓口について、ご説明していきます。
なお、病院に苦情を入れたい場合の窓口、対応方法などについては、以下のページもご参照ください。
医療ミスの相談窓口
医療ミスの相談窓口としては、次のようなところがあります。
病院の相談窓口
まずは、医療ミスを起こした病院に苦情を申し立てることが考えられます。
医療ミスにあったら、問題が起こった経緯・原因、医療ミスかどうかに関する病院の見解、損害賠償を支払う意思の有無、謝罪・再発防止策の策定などを行う意思の有無などについて、病院の窓口を通して説明を求めましょう。
こうした申入れは、弁護士に依頼して行うことも可能です。
ほかに、今後の治療やリハビリはどのように行えばよいかについても、病院に尋ねることが考えられます。
医療ミス問題に強い弁護士に相談する
医療ミスにあったとお考えの場合は、早いうちに、医療ミスの問題に強い弁護士に相談することをお勧めします。
特に、病院に損害賠償を支払ってもらいたい場合や、苦情を言っても病院が責任を認めない場合には、早めに弁護士に相談すると良いでしょう。
そのような状況にない方でも、病院に説明を求める段階から弁護士に依頼していれば、説明が十分なものか、おかしな点はないかといったことについて一緒に確認してくれますし、分からないことがあったときにも気軽に弁護士に質問することができるというメリットがあります。
ほかにも、弁護士に相談・依頼すれば、病院側の責任を追及する手続きを行うために必要な手続きも代わりに行ってくれますし、医師などに過失が認められるかどうかの見込み、損害賠償額の見込みなどについてもアドバイスしてくれます。
医療ミスを弁護士に相談することのメリットについては、後にも詳しくご説明いたします。
医療安全支援センター
医療安全支援センターは、全国に設置されており、医療に関する不満・心配などの相談に対応しています。
セカンドオピニオンを受けたい場合や、どの診療科を受診すればよいのかわからない場合などにも相談に乗ってくれます。
医療ミスによって新たに治療が必要となった場合、適当な病院があるかを尋ねてみることも考えられます。
注意する必要があるのは、医療安全支援センターはあくまで中立的な機関なので、必ずしも患者の側に立って対応してくれるわけではないということです。
また、病院のしたことが医療ミスに当たるかを判断したり、医療機関の責任を追及したりしてくれるわけでもありません。
医療ミスの責任追及、原因追及に関する相談をしたい場合は、医療ミスに詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
医療事故情報センターが紹介している相談窓口
医療事故情報センターは、患者側の代理人として活動する全国の弁護士によって構成されている団体です。
医療事故情報センターの下記HPには、医療ミスの問題を取り扱っている各地の弁護士による相談窓口が掲載されていますので、これらの窓口に相談してみることもできます。
また、医療事故情報センターに依頼すれば、医療ミスに関する相談窓口をまとめた「全国相談窓口一覧表」などを送付してくれます。
消費生活センター
消費生活センターは、商品・サービスなどの消費生活全般に関する苦情や問い合わせ等の対応に当たる機関です。
医療に関する苦情や問い合わせも、消費生活センターで受け付けています。
消費生活センターに相談すると、解決のための助言を得られたり、弁護士など他の適切な相談窓口を教えてもらえたりします。
消費生活センターに相談する際には、消費者ホットライン(188番)に電話をすると、最寄り消費生活センターを案内してもらうことができます。
参考:国民生活センター
医療ミスを弁護士に相談するメリット
医療ミスにあったら、上にご紹介した相談窓口の中でも、医療ミスに強い弁護士に相談・依頼することをお勧めします。
弁護士に依頼するメリットとしては、次のようなものがあります。
- 中立的な立場ではなく、依頼者の立場に立って活動してくれる
- 医師の責任を追及する方法を教えてくれる
- カルテの取り寄せ、医学文献の収集など、必要な証拠収集をしてくれる
- 法的に「医療ミス」と認められる見込みがありそうかについて調査し、アドバイスをしてくれる
- 協力医を探してくれる
- 損害賠償額の見込みについて説明してくれる
- 示談交渉や裁判への対応を代わりに行ってくれる
- 精神的な負担が軽くなる
医療ミスに関する問題は、法的な知識も医学的な知識も必要となる大変難しいものですので、患者本人や家族だけで対応しようとすると、大変大きな負担となってしまいます。
医療ミスにあったら、なるべく早く、医療過誤問題に詳しい弁護士に相談し、対応を依頼するようにしましょう。
そうすることで、患者自身や家族の負担が軽減され、健康回復のために必要な治療・リハビリ、生活の再建などに集中することもできるようになります。
医療過誤を弁護士に相談することのメリットについては、以下のページもご覧ください。
医療ミスの被害者が注意すべきこと
病院側に対して高圧的な態度に出すぎないこと
医療ミスがあったと思うと、患者側としては、病院に対して大きな不満を持ちます。
そうした不満は、激しい怒りにもつながってきます。
もちろん、患者側としては、医療ミスによって健康を損なった、場合によっては身内の方を亡くすことになった、などとの思いがありますので、病院に対して激しい怒りを覚えるのは当然ではあります。
そして、そうした気持ちがあると、病院側に対し、激しい怒りをぶつけたくなったり、謝罪などを強く要求したくなったりすることもあるかと思います。
しかし、こうした行為は、行き過ぎると、刑法上の侮辱罪、強要罪などに該当してしまうおそれがあります。
万が一警察に逮捕されたり、捜査の対象とされたりしたら、大変なことです。
医療ミスがあったと思われる場合でも、できるだけ冷静に話をする、ということを心にとめておいてください。
また、冷静さを保つためにも、早めに弁護士に依頼し、交渉や説明の席に同席してもらうと良いでしょう。
法的には「医療ミス」とはいえない可能性もあることを知っておく
病院の治療で満足のいかない結果が生じたからといって、必ずしも「医療ミスがあった」と認められるとは限りません。
患者の立場で「医療ミスだ」と思った場合でも、以下のように、法的には「医療ミス」とは認められない場合もあります。
- ① 手術による避けようのない合併症の場合
- ② 服用が必要な薬の副作用で、避けようがない場合
- ③ 小さなクリニックなどでは治療する義務を課すことができないものの場合(高度な緊急救命手術など)
- ④ 一般的な医療水準を超える最先端の治療が必要だった場合・・・など
さらに、医療ミスであること = 医師等に過失があったことは、患者側で主張・立証しなければなりません。
この主張・立証が上手くいかないと、医療ミスの可能性があったのに、医療ミスであると認められない、ということになる可能性があります。
医療ミスであると認められる可能性を高めるためにも、医療ミスにあったら、なるべく早く、医療過誤問題に詳しい弁護士に相談しましょう。
医療ミスの具体例、医療ミス問題に対応する際のポイントについては、以下のページで詳しく解説しています。
和解・示談による解決も視野に入れる
医療ミスにあったら、問題解決の方法として、裁判という方法だけでなく、和解・示談という方法もあることを知っておきましょう。
実際、医療ミスによる紛争の多くは、訴訟前の示談や裁判中の和解により決着しています。
裁判所の統計をみても、医療関係訴訟のうち、半数以上は、判決が出される前に和解により終局しています。
参考:医事関係訴訟事件の終局区分別既済件数及びその割合|裁判所
医療ミスに関する事件が和解等によって決着することが多いのは、和解によって解決することに次のようなメリットがあるからだと考えられます。
- 裁判を起こすために労力、時間、費用等を掛けなくて済む
- 鑑定費用等の負担が発生することを防ぐ
- 判決で公的に「病院に医療ミスはなかった」とされたくはない
- 判決では得ることが難しい、説明、謝罪、再発防止の約束などをさせることができる可能性がある
- 裁判となった場合や裁判が長引いた場合の労力、時間、費用等を掛けなくて済む
- 判決で公的に「病院に医療ミスがあった」と判断されたくない
- 証人尋問による医師等の負担を無くす
- 保険会社が納得する内容の和解・示談であれば、保険金から賠償金を支払うことができる
医療ミスにあったら、和解や示談によって解決することもできる、ということを、知っておきましょう。
時効の成立に注意
医療ミスによる損害賠償にも、時効があります。
医療ミスによる損害賠償請求権には、不法行為に基づく損害賠償請求権と診療契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権の2種類があり、損害賠償を請求する際は、これらのうちどちらか一方を行使することになります。
このうち、不法行為に基づく損害賠償請求権は、
- ① 損害及び加害者を知ってから5年(2020年3月31日以前の事故の場合は3年)、又は
- ② 医療ミスから20年のいずれか短い方の期間が経過
すると、消滅してしまいます。
診療契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権は、
- ① 権利を行使できると知った時から5年又は
- ② 権利を行使できる時から20年のいずれか短い方の期間が経過
すると、消滅します(2020年3月31日以前の事故の場合は、権利を行使できる時から10年で消滅します)。
医療ミスについて損害賠償を請求する場合には、これらの期間が経過する前に、訴えを提起するなどの手段をとる必要があります。
また、医療ミスによる刑事責任にも、5年(被害者がケガや後遺症を負った場合)又は10年(被害者が死亡した場合)の時効があります。
医療ミスの被害に遭った場合、又はその可能性があると考えた場合は、時効完成前に手続きを行うためにも、なるべく早く、医療ミスに詳しい弁護士に相談しましょう。
医療ミスと時効については、以下のページで詳しく解説しています。
医療過誤に強い弁護士に相談する
医療ミスにあったら、なるべく早く、医療過誤に強い弁護士に相談することをお勧めします。
医療過誤問題は、医療と法律の両分野に関する専門知識が必要になる難しい問題ですので、医療過誤に注力している弁護士を探して依頼することが、大変重要になります。
例えば、裁判を提起する際に提出する訴状を作成する場面一つをとっても、医療過誤問題に強い弁護士に依頼をしたかどうかで違いが出てきます。
医療過誤問題に強い弁護士であれば、訴状を作成する際、医学的な知見と医療過誤に関する各種裁判例の動向に関する法的知識に基づいて、医師の行為のどの部分を「医療ミス」として取り上げるべきかを見極めて的確に記載し、必要な医学文献などの証拠も揃えてくれるでしょう。
一方、医療過誤問題に詳しくない弁護士だと、医師のどの行為を問題とすべきか、どのような注意義務違反(過失)を主張すればよいか、どのような文献が証拠として適切か、といったことを把握することが難しく、適切な主張・立証をすることが難しくなることがあります。
訴状に適切な記載ができていなかったり、必要な医学文献を揃えて提出することができていなかったりすると、裁判で不利になったり、審理が不必要に長引いてしまったりする可能性があります。
医療ミスについて弁護士に依頼するときは、医療過誤に強い弁護士かどうかを見極めるようにしましょう。
以下のページで、医療過誤問題に強い弁護士の見つけ方などについて解説しておりますので、こちらも参考にしてみてください。
医療ミス被害についてのQ&A
医療ミスは誰が責任を負うのですか?
- ① 医療ミスをした当人(医師、看護師等)
- ② 病院を開設している人・法人
- ③ 医療ミスを起こした医師等の雇用主である人・法人
②と③は同じ人・法人であることがほとんどですので、結局のところ、医療ミスをした当人(医師、看護師等)と医師等が勤務している病院の開設者が民事上の責任を負うということになります。
なお、刑事上の責任、行政上の責任(医師免許の取消し、医業停止等)については、①の医療ミスをした医師、看護師等が責任を負います。
医療ミスをした医師が負う刑事責任、行政上の責任については、以下のページでも詳しく解説しています。
医療ミスの和解金はいくらですか?
和解金の金額を左右する主たる要因としては、
- ① 医師・病院の法的責任が認められる見込みの強さ
- ② 生じた被害の大きさ
を挙げることができます。
たとえば、①医師・病院の法的責任が認められる医療ミスで、②死亡という結果が生じた場合、和解金は数千万円から1億円以上に及ぶ可能性があります。
一方、①医師・病院の法的責任が認められる見込みがあまりない場合で、②死亡・重い後遺症などの結果が生じているという場合、数百万円から500万円くらいの和解金となるケースが見られます。
①医師・病院の法的責任が認められる見込みが薄く、②生じた結果も一時的なもので、既に快復しているという場合には、数十万円程度の和解金となる可能性もあります。
どこからが医療ミスに当たりますか?
具体的にどのような行為が注意義務違反になるかは、その医療契約の内容、病院の規模、事件当時の医療水準などにより異なります。
事件当時にその医療施設に求められていた医療水準に達しない医療行為が行われた場合には、医師に注意義務違反(過失)があったこととなり、医療ミスに当たることとなります。
「医療水準」の具体的な内容は、ケースごとに異なってきますので、詳しくは、医療過誤に詳しい弁護士にご相談ください。
まとめ
今回は、医療ミスにあった場合はどのような窓口に相談できるか、医療ミスを弁護士に相談する場合に得られるメリット、医療ミスの被害者が注意すべきことなどについて解説しました。
医療ミスの問題に対応しようとすると、法律と医療の両方に関する知識が必要となるため、一般の方や医療過誤問題に不慣れな弁護士では対応が難しくなります。
医療ミスにあってしまった場合は、なるべく早く、医療過誤問題に強い弁護士に相談して対応に当たることをお勧めします。
医療過誤問題に強い弁護士に相談・依頼すれば、医師の行為が医療ミスに当たるかについて調査し、アドバイスしてくれる、請求できる賠償金の見通しなどについても説明してくれるといったメリットがあります。
加えて、弁護士であれば、依頼者の味方になって活動してくれますし、示談交渉や裁判への対応も代わりに行ってくれますので、医療ミスに遭った被害者にとって心強く、精神的な負担も軽くなります。
当事務所でも、交通事故によるケガに関する対応を重ねて医療知識を培ってきた人身障害部の弁護士が、医療ミスで苦しんでおられる方々に寄り添って、共により良い解決に向かうべく、皆様のご相談に対応しております。
電話・オンラインによる全国からのご相談も受け付けております。
お困りの方はぜひ一度、当事務所までご連絡ください。