病院に対して不満がある場合、以下のようにしてクレームに関する相談等をすることが考えられます。
- その病院の受付窓口に直接訴える
- 医療安全支援センターに相談する
- 消費者センター(消費生活センター)に相談する
ただ、上に挙げた窓口では、どのように問題に対処すればよいか、といった相談には乗ってくれますが、医師の過失の有無について意見したり、交渉の代理人になったり、病院とのもめごとを仲裁してくれたりはしません。
医療過誤・事故について医師の過失の有無を知りたい、医師の責任を追及したい、という場合には、早いうちに医療過誤問題に強い弁護士に相談し、調査や示談交渉、訴訟提起などを依頼することをお勧めします。
今回は、病院に対するクレームに関する相談を受け付けている窓口をご紹介するとともに、医療過誤・事故があった場合には弁護士に相談すべきこと、弁護士に相談することにより得られるメリットなどについて解説していきます。
目次
病院へのクレーム窓口一覧
病院での診療、対応などに不満がある場合、次のような窓口等に相談することが考えられます。
それぞれの特徴や連絡先などについて、ご紹介していきます。
病院の受付窓口
病院に不満がある場合、まずは、病院自体に直接クレームを伝えることが考えられます。
医師の治療などに関する不満だけでなく、入院中の日常的な不満、職員などに対する要望などもクレームとして伝えることができます。
規模の大きい病院であれば、クレームを入れると、問題の診療科だけではなく、医療安全管理部など専門の担当部署が対応に当たる場合があります。
医療安全支援センター
医療安全支援センターは、医療法に基づき、全国に設置されています。
医療安全支援センターでは、医療に関する不満・心配などの相談に対応してくれます。
病院の窓口に相談したけれども解決しない場合や病院の窓口には相談しづらい場合などに、医療安全支援センターの利用を検討することが考えられます。
医療安全支援センターのHPでは、対応している相談の具体的な内容として、以下のようなものを挙げています。
- 検査をたくさん受けたけれども、検査の必要性が理解しづらい
- 主治医以外の医師の意見も聞いてみたいが、主治医にどのように切り出したらよいのかわからない
- カルテの開示を求めたいが、可能なのかわからない
- 院内処方と院外処方の違いは何か知りたい
- 現在使用中の薬の服用について詳しく知りたい
ほかにも、近くにどのような医療機関があるか、何科を受診すればよいのか、といった質問もできますし、病院の職員の対応に不満がある、医師の説明でよくわからなかったことがあった、といった場合などにも、相談に乗ってくれます。
このように、医療安全支援センターでは、病院に対する様々な疑問、悩みの相談に対応してもらうことができます。
以下のページから、全国の医療安全支援センターの一覧表をご覧いただくことができます。
ただ、医療安全支援センターは、あくまでも中立な立場の機関ですので、必ずしも患者側の立場に立って対応してくれるわけではありません。
また、医療行為の内容の適否、医師の過失の有無について判断したり、症状について診断をしたり、医療機関と患者のもめごとを仲裁したりといったことも行っていませんので、注意してください。
以下に、主要な医療安全支援センターを簡潔にご紹介します。
リンクも掲載しておりますので、どうぞご活用ください。
東京都医療安全支援センター
東京都では、医療安全課及び多摩地域の5か所の都保健所に医療安全支援センターが設置されています。
なお、各特別区、八王子市及び町田市では、独自に医療安全支援センターを設置しているところがあります。
さいたま市医療安全支援センター
さいたま市医療安全支援センターは、さいたま市内の医療機関に関する相談を受けるため、相談電話の運営などを行っています。
大阪医療安全相談センター
大阪府では、保険所に医療相談窓口が設置されています。
医療機関の所在地を管轄する保健所に相談にいきましょう。
神奈川県医療安全支援センター
神奈川県医療安全支援センターでは、県内の医療機関に関する相談を受け付けています(横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市、藤沢市及び茅ヶ崎市(寒川町を含む)所在の医療機関は除く。これらの各市所在の医療機関に関する相談は、各市の医療安全相談窓口等にご相談ください。)。
原則として、電話によって相談を受け付けています。
詳しくは、以下のページをご覧ください。
福岡医療安全相談センター
福岡市の医療安全相談センターでは、保健所に医療安全相談窓口を設置しています。
また、希望すれば、弁護士による無料の法律相談を案内してもらうこともできます。
消費者センター
消費者センター(消費生活センター)は、全国に設置されている、商品・サービスなどの消費生活全般に関する苦情や問い合わせ等の処理に当たる機関です。
医療に関する苦情や問い合わせも、消費生活センターで受け付けてもらうことができます。
消費生活センターでは、消費者からの相談を聞き、解決のための助言をしたり、トラブルの相手である事業者との交渉を手伝ったり、弁護士など他の適切な相談窓口を教えたりしています。
消費生活センターに相談したい場合、消費者ホットライン(188番)を利用することができます。
消費者ホットラインに電話をすると、最寄りの消費生活センターや消費生活窓口を案内してもらうことができます。
なお、全国の消費生活センターの所在地、電話番号などは、以下のページから調べることができます。
参考:全国の消費生活センター等
医療過誤・事故の相談は弁護士へ
上でご紹介した窓口は、いずれも患者の苦情を聞いてくれて、心配事や疑問に対するアドバイスをしてくれます。
しかし、上に挙げた機関で相談するだけでは、医療過誤・事故を起こした医師の責任を追及することは困難です。
相手方である病院が話し合いに応じる態度を見せていないような場合にも、上に挙げた機関に相談するだけでは解決することは難しいでしょう。
医療過誤・事故に関する医師の責任を追及することを考えている場合や、病院側との話し合いがスムーズに進まない場合には、医療過誤に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
医療過誤・事故の相談とは?
医療過誤・事故に関する相談としては、例えば次のようなものもあります。
- 医師に勧められて手術をしたが、失敗されてしまい、より健康を害してしまった。
- 毎年健康診断を受けていたのに、がんを見逃されてしまった。
- 他の患者と取り違えられて関係のない薬を飲まされ、副作用で苦しむ羽目になった
- 無痛分娩の際の麻酔の方法が不適切で、母親が亡くなってしまった。
- 手術後十分な看護がなされず、褥瘡が発生した。
- インフォームド・コンセントが適切に行われなかった。
上のようなケースで、単に改善を要求するだけでなく、法的責任の有無を明らかにしたい、賠償金支払いなどの形で責任をとってもらいたい、という場合には、最初から、医療過誤に詳しい弁護士に相談した方がよいでしょう。
また、主に改善(再発防止策の策定、謝罪など)を要求したい場合でも、病院側が話し合いに応じない、納得のできる解決策を提示してこない、など、話し合いが進まない場合は、一度、医療過誤に詳しい弁護士に相談してみるのも良いかもしれません。
医療過誤とはどのようなものかについては、以下のページもご参照ください。
弁護士に相談するメリットは?
医療過誤問題について弁護士に相談・依頼すると、次のようなメリットがあります。
- 医師の法的責任の有無について調査してくれる
- 医師の法的責任が認められるか否かの見通しを教えてもらえる
- 賠償金の相場を教えてくれる
- 病院に対して示談交渉の申し入れをし、交渉の窓口にもなってくれる
- 医師の責任を追及するための手続(訴えの提起、刑事告訴など)を行ってもらえる
- カルテ、医学文献など必要な証拠を揃えてくれる
医療過誤問題は、法律と医療の両方に関する専門知識が必要となる、高度な専門性が求められる分野です。
そのため、医療過誤問題を相談する際は、医療過誤・事故に十分に対応できる、医療過誤問題に強い弁護士を探すようにしましょう。
医療過誤問題に強い弁護士の探し方、医療過誤問題を弁護士に相談するメリットについては、以下のページで詳しく解説しています。
ぜひ一度ご覧ください。
弁護士に相談するとどうなる?
弁護士に医療過誤・事故について相談すると、まず、弁護士は、相談内容を吟味し、医師に法的責任を問うことができる可能性があるか、その可能性はなさそうか、について考えます。
医師に法的責任を問える可能性がなさそうだとは言えない場合には、依頼者の意向を踏まえたうえで、カルテを入手する、文献を調査する、協力医の意見を聞くなどの方法でさらなる調査を行います。
カルテを入手する際には、必要な場合には、裁判所を介して証拠保全の手続を行うこともあります。
そうして調査した結果、法的責任を問うことができそうな見通しが立てば、依頼者の意向を確認しながら、
- 示談交渉の申し入れをする
- 訴訟を提起する
- 医療ADR・民事調停を申し立てる
といった方法で、病院の責任を追及していきます。
弁護士に相談して医療過誤訴訟を起こす際の手続の流れについては、以下のページでも詳しく解説しています。
医師会はクレーム窓口ではない!?
医師会にも、医師等への苦情が数多く寄せられています。
医師会の中には、患者などからの相談に応じる窓口を設けているところもあります。
しかし、医師会は、本来的には医師同士で組織された業界団体であり、患者の困りごとを解決するための機関ではありません。
そのため、医師会に相談しても、必ずしも問題が解決するわけではありません。
なお、医師に対して行政処分(医師免許取消し、3年以内の医業停止、戒告など)や厳重注意の行政指導が行われる場合、医師会の医道審議会による審議が行われ、行政処分等を行うべきか及びその内容に関する答申が出されます。
そのため、医師会にクレームを入れれば、医師に対する行政処分が行われると思っている方もおられるかもしれません。
しかし、医師会(医道審査会)は、厚生労働省が処分対象として挙げた医師に関しての答申を行うだけであり、医師会単独で行政処分を行っているわけではありません。
医師に対する行政処分を求めたい場合には、
- ① 刑事告訴を行い、医師が有罪判決を受けるようにする
- ② 厚生労働大臣あてに行政処分をするよう求める
といった方法をとる必要があります。
詳しくは、一度、医療過誤に詳しい弁護士にご相談することをお勧めします。
病院へのクレームについてのQ&A
医者の態度が悪いのですが、どこに相談したらいいですか?
まずは、その医者が所属している病院の相談窓口に相談してみましょう。
それでも解決しない場合は、医療安全支援センターや消費生活センターに相談することが考えられます。
ただし、これらの機関は、対応方法などに関する相談に乗ってはくれますが、患者側の立場に立って一緒に問題解決をしてくれるとは限りません。
医師の態度について医師の責任を問いたい、医療過誤・事故があった、というような場合には、一度、医療過誤などに詳しい弁護士にご相談ください。
まとめ
今回は、病院に対するクレームがある場合はどこに相談すればよいか、各種相談窓口の特徴と限界、医療過誤・事故に関する問題は弁護士に相談すべきことなどについて解説しました。
病院へのクレームには、意見を言って現状を改善してもらえれば済むものもありますが、健康を損なうなど取り返しのつかない事態が生じ、医師の責任を追及したいというものもあります。
医師の責任を追及したい場合や、病院との話し合いがスムーズに進まない場合には、医療過誤問題に詳しい弁護士に相談してみるとよいでしょう。
そうすれば、どのような解決が可能か、医師の責任を問うことができるか、といった点について弁護士からのアドバイスをもらうことができますし、責任追及のための手続についても教えてもらえます。
さらに、弁護士に事件を依頼すれば、弁護士が依頼者の代わりに病院と交渉したり、裁判手続きを進めたりもしてくれます。
当事務所でも、交通事故によるケガに関する対応を重ねて医療知識を培ってきた人身障害部の弁護士が、医療過誤・事故で苦しんでおられる方々のご相談に対応しております。
電話・オンラインによる全国からのご相談にも対応しております。
お困りの方はぜひ一度、当事務所までご連絡ください。