労災で後遺障害11級に認定された場合、労災保険から障害(補償)等一時金として給付基礎日額に223日を乗じた金額、及び、障害特別支給金として29万円が支給されます。
また、会社に安全配慮義務違反がある場合、11級の慰謝料の相場である420万円と、逸失利益を請求することができます。
この記事では、後遺障害11級の認定を受けることができる症状や慰謝料・逸失利益の計算方法について解説いたします。
目次
労災で後遺障害11級|取得できる損害費目
後遺障害11級で認定される症状は下記の通りです。
1号 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
2号 | 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
3号 | 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
4号 | 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
5号 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
6号 | 一耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
7号 | 脊柱に変形を残すもの |
8号 | 一手の人差し指、中指又は薬指を失ったもの |
9号 | 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの |
10号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当程度の支障があるもの |
労災により被災した従業員に発生する可能性のある損害項目は下記の通りです。
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 後遺障害逸失利益
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、労災事故により入院や通院をせざるを得なくなったことに対する補償です。
入通院慰謝料は、基本的に入院・通院期間に対して金額を計算することになります。
労災事故における入通院慰謝料の相場については、交通事故による慰謝料の相場が参考になります。
交通事故の慰謝料の計算方法については下記のページをご参照ください。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、被災者に後遺障害等級が認定される症状が残ってしまったことに対する精神的苦痛に対する補償のことをいいます。
後遺障害慰謝料は認定された等級に応じて金額の目安が定められています。
後遺障害11級の場合の相場は420万円です。
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺障害によって労災事故前よりも働きづらくなったことにより、将来収入が減ってしまうことに対する補償をいいます。
後遺障害逸失利益は、下記の計算式をもって計算されます。
基礎収入とは、基本的に労災事故の前年の年収をいいます。
労働能力喪失率は、後遺障害等級によって、あらかじめ定められています。
後遺障害11級の労働能力喪失率は20%です。
労働能力喪失期間は、症状固定となった時点から67歳までの期間をいいます。
ライプニッツ係数とは、中間利息を控除するための係数です。
ライプニッツ係数を考慮する理由は、将来の収入の補償を前もって一時金としてもらうことになるため、中間利息を控除しもらいすぎにならないようにする必要があるからです。
後遺障害11級の労災保険からの支給
労災保険からから取得できる損害項目
①障害(補償)等一時金
障害(補償)等一時金とは、給付基礎日額に認定された後遺障害等級に対応した給付日数を乗じた金額をいいます。
後遺障害11級の場合、給付基礎日額に223日を乗じた金額が障害(補償)等一時金として給付されます。
②障害特別支給金
障害特別支給金とは、後遺障害等級に応じて定められている上乗せ分の給付金のことをいいます。
後遺障害11級の場合は、29万円です。
③障害特別一時金
障害特別一時金とは、労働福祉事業から労災保険給付の上乗せ分として給付される金額をいいます。
後遺障害11級の場合、算定基礎日額の223日を乗じた金額が障害特別一時金として給付されます。
- 給付基礎日額とは、障害補償等給付の金額を算出する際に用いる1日単価であり、労災事故の直近3ヵ月の給与から計算します。
- 算定基礎日額とは、障害特別一時金の金額を算出する際に用いる1日単価であり、
労災の後遺障害11級の慰謝料はいくら?
労災の後遺障害の慰謝料は、交通事故の慰謝料の基準が参考にされています。
等級に応じて、慰謝料の金額が決まっており、後遺障害11級の慰謝料の相場は420万円です。
労災の後遺障害11級の逸失利益はいくら?
労災の後遺障害11級の逸失利益は、被災者の年収や年齢に応じて異なります。
そこで、下記想定ケースを踏まえてご説明いたします。
想定ケース(下記金額はあくまで仮想の金額です。)
- 災害の種類:業務災害
- 年齢:42歳
- 怪我の内容:ライン作業中に右手の人差し指の第2関節より先を切断(11級8号)
- 年収600万円(内ボーナス50万円が2回の計100万円)
- 給付基礎日額:1万3700円
- 算定基礎日額:2700円
以上を踏まえて、後遺障害11級の逸失利益は下記の通りです。
600万円 × 20% × 17.4131(労働能力喪失期間27年の場合のライプニッツ係数)= 2089万5720円
なお、勤務先等に請求できる逸失利益は2089万5720円から労災保険から給付される305万5100円(223日 ✕ 1万3700円(特別支給金29万円は除く))を差し引いた1784万620円を請求することになります。
【想定ケースで勤務先等から支払われる金額】
- 後遺障害慰謝料:420万円
- 後遺障害逸失利益:2089万5720円
- 合計額:2509万5720円
他の後遺障害等級ごとの相場については下記のページをご覧ください。
労災の後遺障害11級でもらえるその他の賠償金
労災の後遺障害11級でもらえるその他の賠償金の例としては下記の項目が挙げられます。
- 治療費
- 通院交通費
- 入院雑費
- 休業損害
治療費
業務中あるいは通勤中の事故によって怪我を負った場合、治療を受ける必要があります。
そこで、治療のために支出した治療費、入院費、薬代等が発生します。
治療費については、労災と認定された場合、労災保険より支給されることになります。
通院交通費
事故によって、病院に通院する際に交通費も請求することができます。
自家用車を使用した場合には、燃料代として1km15円、公共交通機関を利用した場合には、その実費を請求することができます。
入院雑費
入院した場合には、日々、雑費がかかります。
こうした入院雑費は、1日1500円を損害として請求することができます。
休業損害
業務中あるいは通勤中の事故による治療のため、仕事を休んでしまった場合に給料が減った分を請求することができます。
なお、有給を取得した場合には、あくまで給料が支払われた扱いになるため休業損害を請求することができないことには注意が必要です。
また、労災保険により給付される休業補償は上記休業損害の一部であることについても注意する必要があります。
労災の後遺障害11級で賠償金を受け取るポイント
労災の後遺障害11級で賠償金を受け取るポイントは下記に挙げる通りです。
後遺障害申請に必要な書類を収集する
後遺障害申請に必要な書類は下記の通りです。
- 請求書(様式第10号、通勤災害の場合は16号の7)
- 後遺障害診断書
- レントゲン、CT、MRI等の画像(必要に応じて提出)
- その他医療記録(例えば、カルテ・医師の診断書・意見書・鑑定書等を必要に応じて提出)
後遺障害申請をするにあたって、様式第10号の請求書を作成する必要があります(通勤災害の場合は様式16号の7)。
引用元:厚生労働省
これに加えて、医師が作成する後遺障害診断書、レントゲン・CT・MRIの画像を病院から取り寄せる必要があります。
診断書の書式は下記のページをご参照ください。
このように、後遺障害申請をするにあたって様々な必要書類を用意する必要があります。
症状をきちんと診断書に記載してもらう
医師に診断書を作成してもらったとしても、後遺障害11級に該当する症状について正確に記載されていなければ後遺障害11級を認定してもらうことはできません。
そこで、主治医と相談し、後遺障害11級に該当する症状について正確に記載してもらうようにしましょう。
後遺障害診断書の記載方法等の詳細につきましては下記のページをご覧ください。
労働基準監督署による調査に応じる
後遺障害申請を行った場合、労働基準監督署は、被災した従業員に残っている症状が後遺障害等級に該当するかの審査を行います。
その際に、提出された書類だけでなく、被災した従業員との面談による調査、医師への医療照会、会社への事実関係の確認といった調査が必要に応じて行われます。
従業員との面談の流れは下記の通りです。
- ① 労働基準監督署から従業員に面談の連絡
- ② 被災した従業員は、労働基準監督署に出向き、労働基準監督署の調査官や医師(地方労災医員)との面談
面談内容としては主に以下の内容が確認されます。
- 提出された書類の内容確認
- 被災者の症状の状態
- その他被災者に直接会ってしか分からない事項の確認
*被災した従業員は、自身の症状や労災事故に関する事項について誠実に回答しなければなりません。
労災に強い弁護士に相談する
労災に被災した場合、被災者が行わなければならない手続きが多いことが難点です。
このような複雑な手続きを治療を行う傍で行うのは非常に大変であることが予想されます。
そこで、労災に強い弁護士に複雑な手続きを任せてしまうことをお勧めします。
また、労災保険で受けられる補償には限界があります。
例えば、休業補償の場合、労災保険から受け取ることができるのは一部でしかありません。
慰謝料については、労災保険からの給付はありません。
残りの休業補償や慰謝料については勤務先に請求する必要があります。
ただ、被災者の方がご自身で勤務先とやり取りしたくないと思われた場合には、弁護士にご依頼いただいたほうが良いでしょう。
他にも、職場復帰も視野に入れており勤務先とトラブルになりたくないと思われている方もいらっしゃると思います。
こうした場合であっても、被災者ご自身で請求する際に裏方として弁護士が助言することも可能です。
その他の労災について弁護士に依頼するメリットは下記の通りです。
- 示談交渉や裁判で適切な賠償を獲得することができる
- 会社との対応を弁護士に全て任せることができる
- 労災申請のサポートを受けることができる
- 適切な後遺障害認定を受けることができる
- 疑問や不安をその都度解消できる
労災の後遺障害11級についてのQ&A
労災の後遺障害11級で一時金はいくらもらえる?
この一時金は認定された等級に応じて金額が定まっています。
後遺障害11級認定を受けた場合の障害特別一時金は、算定基礎日額☓223日です。
後遺障害11級7号でもらえる金額はいくらですか?
ただ、現在、労災保険の障害等級表には、11級7号の等級は存在していません。
もっとも、交通事故の自賠責保険の等級表では、11級7号は「脊柱に変形を残すもの」として等級の定めがあります。
労災の後遺障害等級表では11級5号に同じ内容の定めがあります。
これらの等級は、骨が変形していることに着目して認定される等級です。
したがって、保険会社からは、単に骨が変形しているだけで体の身体能力には影響がなく労働能力の喪失はないと主張されることがあります。
実際、裁判においても、自賠責保険の11級7号(労災は11級5号)は、他の11級の等級に比べて逸失利益を制限する傾向があります。
こうした保険会社への主張に対しては、骨の変形だけでなく、痛み等の神経症状も残っており、労働能力に影響を与えていることをしっかりと主張していく必要があります。
まとめ
以上のとおり、後遺障害11級の認定を受けることができる症状や慰謝料・逸失利益の計算方法について解説いたしました。
後遺障害11級の認定を受けることによって、労災保険から適切な補償を受けることができます。
一方で、労災保険から受け取ることができない慰謝料については勤務先等に請求していかなければなりません。
そこで、労災保険の申請や勤務先への慰謝料請求等についてお悩みの場合は、一度労災を専門とする弁護士に相談することをお勧めいたします。
当法律事務所は人身傷害部を設置しており、労災事故を専門とする弁護士が所属しており、
後遺障害に悩む被害者をサポートできる体制が整っております。
LINE等のオンラインや電話相談を活用して全国対応も行っていますのでお気軽にご相談ください。